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WINGBEAT COFFEE ROASTERS

all 第27回リトバス草SS大会(ネタバレ申告必要無) - 主催 - 2009/02/19(Thu) 00:32:27 [No.930]
Future_Drug - ひみつ@4940バイト 1秒遅刻するのも1日遅刻するのも同じ。 - 2009/02/21(Sat) 03:04:05 [No.941]
しめきるー - 主催 - 2009/02/21(Sat) 00:18:56 [No.940]
[削除] - - 2009/02/21(Sat) 00:00:59 [No.939]
みんないっしょに - ひみつ@14804byte - 2009/02/20(Fri) 23:57:41 [No.938]
透明な涙 - ひみつ 20464byte - 2009/02/20(Fri) 23:51:44 [No.937]
彼女と赤橙の空 - ひみつ@20428 byte - 2009/02/20(Fri) 23:49:52 [No.936]
リトル・ホリデイ - ひみつ@17364byte - 2009/02/20(Fri) 23:48:02 [No.935]
ダブルサプライズ - ひみつぅ@1851 byte - 2009/02/20(Fri) 22:47:06 [No.934]
ある晴れた日のカクテル光線 - ひみーつ@10741byte - 2009/02/20(Fri) 10:12:23 [No.933]
愛のおはなし。 - ひみつ@11951byte - 2009/02/19(Thu) 08:47:35 [No.932]


Future_Drug (No.930 への返信) - ひみつ@4940バイト 1秒遅刻するのも1日遅刻するのも同じ。

 過去はすぎさりもう無い。



 未来はきたらずまだ無い。



 現在はうつつにあって……



 僕はここにいる。




---Future_Drug---



「なんだ理樹、今日も脱走か?」
「うん、ゴメン真人、今日も頼まれてくれるかな?」
「任せとけって。その代わり、机の上にあるものは勝手に使わせてもらうけどな」
「わかってるよ。でも、ところどころちゃんと答えを変えておいてよ。全部同じだとさすがに先生も疑うから」
「どうせ寮じゃ同じ部屋だってのは向こうもわかってんだから、いまさら気にすることもねぇだろ」
「それでも、だよ」
「ちっ、しゃーねーな。所々てきとーに片付けるか」
「そうしてよ。じゃ」
 それだけ短く真人に告げて僕は部屋を出た。行き先は学校。夜の学校。誰もいない、夜の学校。少し前には人が居た、夜の学校。

 しんと静まり返った廊下を一人で歩いている。時間は前に進んでいるのに、足も前に向かって歩いているのに、目に見える世界は変わっていくのに、何も変われていない。夜の学校を行くあても無く徘徊して、ありもしない未来を望んでいる。
 僕の望む未来は来ない。それは『未だ来ず』じゃなくて『決して来ず』。僕が望んでいるのは決して来ない未来。
 誰もいない廊下。ただ一言だけ、僕は呟いた。こうしているといつか彼女に逢える……そんな気がした。いつかのように僕を締め上げて、その後生徒証を忘れて、僕がそれを届けにいく。そしてまたあのデタラメなに地上が始まる。
 それはいつかの夢現。
 ここではないどこかで、ここでしかないいつか。
 沙耶と一緒にすごしたい。沙耶と一緒に未来を歩きたい。
 きっとこんな僕は周りから見れば滑稽で、哀れなんだと思う。でも、僕にとっては彼女と一緒にいられることこそが重要だった。手段も方法もどうでもよくて、結果彼女と一緒にいられればそれでいい。
 来年も、再来年も、それからもっと先も。『決して来たらず』な未来を僕は手に入れたいと願った。
 だから僕は今日も彼女の名前を呼ぶ。誰もいない廊下で、その誰かが訪れるその日まで、僕は彼女を呼び続けるのだろう。
「沙耶」
 ただ一言、彼女の名前を。

 目の前には扉。開かない扉。行くあてもなく彷徨って、結局いつも屋上にくる。そこは終着点。これ以上進みようが無い僕の現状を表すかのようで、それはまさしくその通りで、それでももうここ以外に行き場所が無いことを僕は知る。ここが僕のたどり着く終着点。そして再出発点。
 いつものように小毬さんから預かっているドライバを取り出して窓を開けようとしたら、そこはすでに外れていて入り口が出来ていた。誰もいないと思っていた屋上に先客がいた。
 沙耶……っ。
 いてもたってもいられなくなって僕は必死になって屋上に出ようと身を乗り出した。けど、何かに引っかかってうまく屋上にいけない。うまく体が動かない。焦れば焦るほど屋上には出られなくて、僕は余計に焦る。
 そんな僕の体を、誰かが引っ張った。
「沙耶っ!!」
 やっと逢えた。そう思って彼女の名前を呼んだけど、僕を引っ張り出したのは彼女じゃなかった。
「よう。今日は星がきれいだな」
「恭介か……」
「恭介か、とはご挨拶だな」
「どうしてこんなところに?」
「それはこっちが聴きたいところなんだけどな。まぁいいさ。今日は星がきれいだぞ」
 そういって空を見上げる恭介につられて、僕も上を見る。確かに星がきれいだった。そうだね、それだけ返事をしてフェンスに近づく。ここからは校舎がある程度見渡せる。
「『どうしてこんなところに?』っていうさっきの質問だけどな」
 視線は校舎を彷徨せたまま、うん、と短く返事をした僕に恭介は空を見上げたまま言葉を続ける。
「星がきれいだったから、だな」
「それだけ?」
「ああ、それだけだ」
「そっか」
 恭介だってそんな理由で屋上に来たくなる。そんな日もあるんだろうと、勝手に結論付けてみたけど、もちろん恭介が本当に言いたいことはそんなことじゃないだろう。なんとなく、わかる。
「なぁ、理樹」
「うん?」
「もう少し、肩の力を抜いてみないか?」
「……深夜徘徊を止めろって言わないんだね」
「俺は夜回り先生じゃないからな。それに、止めろと言ったところでどうにかなるものでもないんだろう?」
「うん」
「なら止めないさ。ただ……あんまりみんなを心配させるなよ、リーダー。リトルバスターズはお前の守ったリトルバスターズなんだからな。守り抜いてくれよ」
「そうだね。あんまり無理もしちゃよくないね。気をつけるよ」
「ああ、そうしてくれ」そういって大きなあくびをする恭介。「さてと、俺は眠いから先に寮に戻るな。あ、そうだ、理樹」
「なに? っととと。いきなり缶なんて投げないでよ、危ないなぁ」
「ははは、ナイスキャッチ。それでも飲んでゆっくりしてろよ。後、なにか困ったことがあったらいつでも言ってくれ。みんな、力になるぜ」
「うん、ありがとう」
 それだけ言って恭介は帰っていった。とりあえず、貰った缶のプルタブを引っ張って中身を呑んでみる。
「ぶっ……まずっ」
 不意に口の中を覆ったなんとも言えない不味さに噴出してしまった。なにこれ?
「とんかつジュース?」
 これって前に葉留佳さんが買って僕に押し付けていったやつだ。まさか今頃になって自分が飲む羽目になるとは。流石恭介、侮れない。
「はははっ」
 そのあまりの下らなさに思わず笑ってしまった。バカだなぁ。
「ありがとう」
 余計なお世話に一言だけお礼を言って、中身の入った飲みかけのとんかつジュースを思いっきり屋上から投げ捨てた。風紀委員が見てたら追い掛け回されることは間違いないだろうけど、そんなことは知らない。こんなものを自販機に設置しておく方が悪い。
 それから僕も屋上を出て、もう一回校舎の中を上の階から彷徨ってから寮に戻って眠りについた。
 明日も明後日もこれからも、僕は彼女を求めて現在を彷徨い続ける。


 決して来ない未来を掴み取るために。未だ来ない未来を終わらせるために。


[No.941] 2009/02/21(Sat) 03:04:05

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