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   直枝さんちのみどりちゃん - おりびい - 2008/02/12(Tue) 23:55:37 [No.165]



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直枝さんちのみどりちゃん (親記事) - おりびい

「パパ、ママ。このしゃしんなあに」

 みどりが懐かしいものを持ってきた。
 みどりが生まれてからはみどりが中心の写真ばかり飾られるようになったが、それまでは二人の写真そしてリトルバスターズの写真がこの家には飾られていた。
 その中でも一番目立つ位置に飾られていた写真がこの写真、僕と美魚との結婚写真だ。

「みどりちゃん。みどりちゃんは大きくなったら何になりたいの」
「うーん……ケーキやさん」
「どうしてかな?」
「えーとね、ケーキやさんだったらまいにちケーキがたべられるから」

 クスッと美魚が笑う。
 たぶん今の僕も同じような顔をしているだろう。
 こんな素直に育ってくれて本当にうれしく思う。

「それも素敵ね。でもね、みどりちゃん、女の子が一番幸せになれるのは一つしかないのよ。何だかわかるかな」

 首を傾げ考えているがどうにも思いつかないらしい。
 そんなみどりに温かい目を向けながら、美魚の口が開いた。

「答えはね、お嫁さんよ。女の子は好きな人のお嫁さんになるのが一番幸せなのよ」

 パーッと花でも開いたかのようにみどりが輝いた笑顔に変わった。
 こんな顔を向けられたらどんな相手でも好きになってしまうだろう。
 みどりには幸せになってほしいけれど、みどりが誰かのところへ行ってしまう日が来るかと思うと今から少し寂しくなる。



「およめさんかぁ、じゃあ、みどりパパのおよめさんになる」
「ダメです。こんな人のお嫁さんになってはいけません。不幸になりたいのですか」
「えええーっ!」

 久しぶりだなこれ。
 でも思わずこの驚き方をしてしまうくらい今の言葉は衝撃的だった。
 今までの話の流れと全然違ってるよ。
 みどりの方もいまいち話が飲み込めず混乱したような顔に変ってる。

「およめさんはしあわせ?」
「はい」
「でもパパはダメ」
「はい」
「じゃあどうしてママはパパのおよめさんなの」
「……」

 みどりの一言に返す言葉が見つからないらしい。
 日頃はものすごく頭がいいのにまだ4歳のみどりに言い負かせられるなんて。

「それは……パパみたいな悪い男のせいで誰かが不幸にならないよう、ママが犠牲になっただけです」
「でも、しゃしんのママとってもえがおだよ」

 あれこれ考えているみたいだけど答えは見つからないと思う。
 だって美魚の言っていることは誰だって嘘だとわかるから。
 意外な姿が見られて少し楽しいけれど、さすがにこれ以上ほっておくのはかわいそうだから助け船を出してみる。

「みどり、ママはねパパのことが本当は大好きなんだけど恥ずかしくて言えないんだ」
「そうなの」
「そうだよ。それでパパもママが大好き。だからみどりはパパのお嫁さんになれないんだ」
「ダメなの」
「うん。だからみどりはパパ以外で誰か好きな人のお嫁さんになってね」
「うーん、わかった」

 そう言ってみどりは写真を持って部屋から出て行ってしまった。
 あとには僕とちょっと怒った感じの美魚が残った。



「何をニヤニヤしているのですか」
「えっと、僕の奥さんてとってもかわいい人だなって」

 そういってますます少しの恥ずかしさが混じった怒り顔になった。

「かわいくなんてありません。嘘つきで見栄っ張りな嫌な女です」
「やっぱりかわいいよ。娘相手にやきもち焼いてくれたのだから」
「どうしてわたしがみどりにやきもちを焼くのですか。うぬぼれが過ぎます」
「うぬぼれるよ。こんなかわいい人と結婚できたのだから」
「そうやってわたしをからかって楽しいのですか。嫌いです」
「僕は美魚のこと大好きだけど」
「またわたしを甘い言葉で騙すのですか」

 そう言うとそっぽを向いてしまった。
 そんなかわいい僕の一番大切な人を言葉以外で騙そうと思う。
 こっちを向かない美魚を後ろから抱き締めそして唇を近付けてみる。
 美魚も僕の気持ちを受け入れてくれたのか、少しだけ顔をこちらへ向けてくれた。

「美魚」
「理樹さん」



 ピンポーン



「うわっ!?」

 チャイムの音に驚いて思わず大声を上げて飛びのいてしまった。
 ああ、せっかくいい雰囲気だったのに。
 残念がってる暇もなく玄関へ向かうと僕がドアを開ける前にドアが開かれた。

「あれ、恭介どうしたの」
「いや、みどりから電話がかかってきてな」
「みどりから」
「あっきょうすけちゃんきた」

 パタパタと部屋から駆けて来た。
 やっぱり僕の娘なんだな。
 恭介のことが大好きらしい。

「あのね、きょうすけちゃんおねがいがあるの」
「おお、何だ、言ってみろ」
「みどりね、パパのおよめさんになりたかったけどママがダメっていうの。だからね、きょうすけちゃんのおよめさんになる。いいでしょ」
「うっ……本当に俺でいいのか」
「いいよ」
「みどりが結婚できるぐらいの年には俺はもう40近いおっさんだぞ。そんなおっさんと結婚したらお前まで白い目で見られるぞ」
「よくわからないけどきょうすけちゃんかっこいいからいいとおもうよ」
「……そっか。何をビビっているんだ、俺は。世間がみどりを幸せにするとでも言うのか。世間がどう思おうとみどりが幸せでさえあればそれでいいじゃないか」

 あのもしもし恭介。
 なんでこんな子供の夢に人生の一大決心をするような真剣な表情になってるの。

「よしわかった。みどり、俺が必ずお前を世界一幸せな花嫁にしてやるからな」
「ほんと、やったー、きょうすけちゃんだいすき」
「待てよ、そうなると理樹が俺の義理の父親になるのか。まいったな、家族同然に思っていたけど、こんな形で本当の家族になるとはさすがに夢にも思わなかったぜ」
「みどり」
「みどりちゃん」

 呼びかけの言葉が美魚と重なった。
 きっとこれから言う言葉も重なるんだろう。

「ロリコンはもっとダメ」
「ロリコンはもっとダメです」



 天然なのか狙っているのか早くもこの子は小悪魔ぶりを発揮している。
 そんなところ叔母さんに似なくたっていいのに。
 はあ……僕も美魚もどうしたって『美鳥』に振り回されてしまうんだな。





あとがき

次のお題が「子供」なので賑やかしに以前2ちゃんで書いたものの転載。
理樹の娘が真人や謙吾のお嫁さんになるといってもほほえましく感じるのに、恭介だと急に犯罪っぽくなる不思議。


[No.165] 2008/02/12(Tue) 23:55:37
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