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No.133へ返信

all 第34回リトバス草SS大会 - 主催 - 2009/05/28(Thu) 21:27:13 [No.128]
そして、おほしさまに - ひみつ。ちこく。5116byte - 2009/05/30(Sat) 10:31:46 [No.145]
しめきり - しゅさい - 2009/05/30(Sat) 00:43:04 [No.142]
[削除] - - 2009/05/30(Sat) 00:04:04 [No.141]
キミを待つあのソラの下 - ひみつ@9898byte - 2009/05/30(Sat) 00:00:54 [No.140]
fly away - ひみつ@9574 byte - 2009/05/29(Fri) 23:58:00 [No.139]
星色夜空 - ひみつ 8506 byte - 2009/05/29(Fri) 19:28:14 [No.138]
リン、ジュテーム - ひみつ@20480 byte - 2009/05/29(Fri) 02:11:29 [No.137]
今にも落ちてきそうな空の下で - ひみつ@15546 byte - 2009/05/29(Fri) 01:55:03 [No.136]
ノンコミタル - ひみつ@13410 byte - 2009/05/29(Fri) 00:54:24 [No.135]
羂索は空から - ひみつ 6470 byte - 2009/05/28(Thu) 23:03:44 [No.134]
空の頭はいつまでも - ひみつ 14421 byte - 2009/05/28(Thu) 22:49:16 [No.133]
ふと空をのぞんでみれば - じみつ(誤字) 13946 byte - 2009/05/28(Thu) 22:26:03 [No.131]
婚礼には焼肉が必要だ。 - ひみつ 9131 byte - 2009/05/28(Thu) 22:16:03 [No.130]


空の頭はいつまでも (No.128 への返信) - ひみつ 14421 byte

「緊急事態だ」
 突然の恭介の招集、そして言葉に誰も驚かない。だって無駄だし。
「今度はどーした。またなんかくだらん事でもあったのか?」
 既にやる気がない鈴だが、それでも一応招集には応じている辺り律儀というかなんというか。
 そしてじっくりと間を取り、ためを作ってから一言。
「実はな、真人がバカじゃなくなったんだ」
「いい事じゃないですか」
 至極まともな美魚の言葉にカッと目を見開いて、ガシっと肩をつかむ恭介。
「いい事の訳あるか! 真人が、あの真人がバカじゃなくなったんだぞ! そんなのは真人じゃない、俺たちの愛する真人はバカでこそじゃないかっ!!」
「ふ、ふぇぇぇ〜!?!?!?」
 なぜか、小毬の肩を。突然の恭介の行動に、小毬の顔は赤く目は白黒と。
「そうだぞ小毬くん、真人少年はバカ。この真理が覆ったら余りにつまらないじゃないか!」
 そしてどさくさに紛れて後ろから抱きつき、小毬に頬擦りする来ヶ谷。ぷにぷにと柔らかい感触を楽しんでいる。
「はわわわわわ」
 そして小毬はと言うと。前には肩を掴んで顔を近づけてくる恭介、後ろからはおっぱいを押しつけて頬擦りしてくる来ヶ谷。顔どころか首まで真っ赤だ。
「や、やめてよ恭介さん、ゆいちゃん!」
「あ、ああ。すまん」
「おふぅ……」
 顔の赤い小毬の言葉で我に返った恭介は離れ、来ヶ谷は光悦の表情で崩れ落ちた。ダメージを受けつつもニヤけるその顔を見ると、何か新しい扉を開けてしまったらしい。
「来ヶ谷さんは受けだったのですね」
「いや、私はどっちもOKだ!」
 そしてすぐに復活して的確に受け答えをするダメ人間。
「って言うかさっきから気になっていたのですが、何で理樹くんがつっこまないのですかネ? なんで西園さんにつっこまないの!? って真っ先に突っ込みをいれそうなものですが」
「そう言えばさっきからリキの姿を見ないです」
「宮沢様と二木さん、それに騒ぎの張本人の井ノ原さんの姿もありませんわ」
 騒ぎに加われなかった葉留佳とクド、そして佐々美は蚊帳の外でほのぼのとそんな談笑をしている。ちなみに鈴は何かを諦めてレノンと戯れていたり。
「遅刻でしょーか?」
「真人くんや謙吾くんはともかく、理樹くんとお姉ちゃんが? 一番遅刻しなさそうな人たちですヨ?」
「ちょっと三枝さん! 宮沢様はともかくってどういう事ですの!?」
 葉留佳の言葉尻をとらえて目をつり上げる佐々美。
「まあ、落ち着けみんな。理樹と二木は真人の看病をしている」
「看病、ですか?」
 穏やかでない言葉にクドの表情が曇る。言った恭介も厳しい表情のままで全員を見回した。
「説明するより見た方が早い。理樹たちの部屋に来てくれ」



「こっ」
「これは」
 部屋に入った途端に絶句する一同。
「これはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「恭介、うるさい」
「はい、すいません」
 そして調子にのった恭介が理樹にたしなめられた。しかし他のメンバーはそれどころではない。机に向かってカリカリとペンを走らせている真人に目が釘付けだ。
「二木さん、出来ました。採点をよろしくお願いします」
 真人の声。真人の声なのだが、口調が全く違う。ここまでくると違和感しか生まれない。
「え、ええ」
 すっかり調子が狂ってしまった様子で真人から紙を受け取り、採点を始める佳奈多。その空いた時間を利用して、真人は入り口で固まっているリトルバスターズの面々を見てニッコリと微笑んだ。
「やあみなさん。揃ってどうなさったのですか?
 ああ、私が少し変わったからびっくりしているのですね。こんな私ですが、どうか今後とも仲良くして頂けると幸いです」
 おぞけが走る。
「い、井ノ原さんが敬語をっ!」
 一人、クォーターの少女だけが若干違う意味で戦慄していたけれど。
「ええ。この井ノ原さんなら理樹×井ノ原もありですね。ああ、礼儀正しい体育会系の少年を襲う直枝さん…………」
 また別の、本好きの少女も別の意味で我を忘れていたけれど。
「バ、バカがバカじゃなくなってる!」
 そういった特殊な例はさておいて、小さい頃に出会いその印象のまま育った鈴には特に衝撃が大きかったらしい。引きつった顔ままで後ずさり。
「顔色が悪いみたいですが、鈴さんはどうなさったんですか?」
「きしょいんじゃぼっけぇー!!」
 心配そうに隣の理樹の方を見た真人。その側頭部に後ずさった分だけ距離を稼いだ鈴の飛び膝蹴りが炸裂する。ぴんくだった。ピンクじゃなくてぴんくだった。
 足から崩れ落ちる真人。ふーふーふーと肩で息をしながら威嚇する鈴。それらを苦笑いで眺める理樹。
「で」
 そんな様を全く動じないで見ていた美魚が口を開く。
「どうして井ノ原さんはこんな気持ち悪くなったのですか?」
「やはは。みおちんも結構容赦のない事をいいますネ」
「それは俺から説明しよう」
 冷や汗を流す葉留佳と澄ました顔で言う恭介。横目でチラリと時計を確認する。
「そうだな、あれはだいたい2時間程前の事か」
 せつせつと語り始める恭介、その後ろから。
「はい、採点終わったわよ。4点」
「まだ私の勉強量は足りないのですね…………。やはりまだまだ勉強をしませんと」
「ごめんなさい、素直に気持ち悪いわ」
 佳奈多と真人が間の抜けた会話が聞こえてきていたりしたけれども、特に意味はない。勉強する真人なんて気色悪いものは全力で無視しているから。
「だからきしょいんじゃー!」
「ごばぁ!」
 鈴の蹴たぐり。残念ながら鈴は無視しきる事が出来なかったらしい。



 ◇



「忍術をやろう」
「ちなみに昨日読んだ漫画は?」
「スクレボさっ! 沙耶に迫る執行部の副部長・忍者東雲翔! くうぅ、燃えるぜ!!」
「だろうね…………」
 放課後、いきなり恭介に呼び出された理樹、謙吾、真人は揃って盛大なため息をついた。相変わらずの破天荒さにとにかくため息しか出ない。
「それで他のメンバーは?」
「まずは男だけだ。実験も兼ねてな」
 周りを見渡しながらの理樹に注釈を加えてから、こほんと軽い咳払いをする恭介。
「今回、覚えたいと思う忍術は空蝉の術だ。何度も沙耶を騙した翔の必殺技さっ!」
 ちなみに空蝉の術とは自分の外装だけを残し一瞬で隠れる術で、変わり身の術と隠れ身の術の複合応用技と言える。
「また難易度の高い技を…………」
「不可能な技とは言わないんだね、謙吾は」
 呆れる謙吾と更にそんな謙吾に呆れる理樹。
「そんなの当然じゃないか。この世に不可能な事などない!」
「すげぇ。この世に不可能な事はたくさんあるはずなのに言い切りやがった」
 そして便乗して調子に乗った恭介だが、今度は真人につっこまれる。
「ああ、この世に不可能な事はたくさんあったな。例えば真人が史上最高の筋肉を手に入れる事とか」
「この世に不可能な事はなーい!」
「だろう!? じゃあその筋肉を手に入れる手始めに空蝉の術をやろうぜ!」
「おっしゃあ! 任せろ恭介!!」
「おいおい恭介、いくらなんでも無茶じゃ……」
「真人が空蝉の術を覚えたら謙吾に勝ち目はなくなるな」
「やるぞぉー! 空蝉の術ぅー!!」
 結局やる事に。まずは真人。
「うぐぐぐぐぐ!」
 校舎を背にして思いっきり力入れている。そんな様子を見て手に汗を握る2人と1人。
「頑張れ真人!」
「もう少しで成功するぞ!」
「うおおおおおおおおおおおおおぉー!!」
 気合い一閃。空の下で大声をあげる真人。
「で、空蝉の術ってどうやるんだ?」
「知らん」
「って言うか、それが分からないで気合いを入れないでよ」
 真人と恭介の会話と特に恭介の責任感のなさに呆れた理樹だったが、謙吾の言葉で話が変わる。
「そうだな、自分の残像を残したまま高速でジャンプをすれば空蝉の術になるんじゃないか?」
「おおっ! 確かに」
「流石は謙吾だな」
「いやいやいやいや。無理だから、どう考えてもありえないから」
「ようし。そうと決まれば善はみそげだ!」
「やっぱり聞いてないし。って言うか善をみそいじゃダメでしょ」
 完全に理樹を無視しつつ、話は続いていく。足に力を溜めた真人は全力で垂直飛び。残像が見える程ではないものの、かなりのスピードで真上に飛び上がり、

 ガラ ガイン ドサ

 いきなり開いた窓から差し出された、ガラス板にしこたま頭をぶつけて地面へと落下した。しかも図ったようにまた頭から。
「「「「あ」」」」
 理樹たち3人とガラス板を出した人物の声が重なる。3階で呆然と立っていたその人物は、佳奈多だった。



 ◇



「で、お姉ちゃん。何で窓の外にガラス板を?」
 若干引き気味の妹に、疲れたように口を開く姉。
「理科の準備の手伝いをしていたのよ。3年生の光の勉強で使うらしいんだけど、埃がたまっていたから少し払ってくれって言われて」
「そ、それはすごいタイミングなのです。ベストタイミングなのですっ!」
「どちらかというとワーストタイミングな気がするよ〜」
「本当、二木さんは最悪のタイミングで窓を開けましたのね」
「それで佳奈多さんはどうしたのですか?」
 佳奈多を中心に変な盛り上がりを見せる女の子集団。恭介を放置して、今度は佳奈多の口から話の続きが語られていく。



 ◇



「せ、先生。失礼しますっ!」
「おい、どうした二木?」
 真人の惨劇を見ていなかった理科教師は、血相を変えて飛び出していく佳奈多を呆然と見送る事しかできない。佳奈多とて自分が原因の一端となった事に平常であろうはずもない。普段はしない廊下と階段の駆け下りも凄まじいスピードで走破していく。
 そうしてきわめて短時間で佳奈多は事故現場へとたどり着く。
「早いな二木」
「そんな事はどうでもいいです。井ノ原の容態は?」
 恭介の言葉をさらりと流して謙吾と理樹に介抱されている真人を凝視する。それに冷静な返事をするのは淀みなく手を動かし続ける謙吾。
「頭を強く打っているが、こぶもできている。外傷的には全く問題ない。脳へのダメージは気にはなるが……まあ大丈夫だろう。馬鹿は丈夫と昔から相場が決まっている」
「そう、よかった」
 謙吾の言葉を聞いて口元を少し綻ばす佳奈多。
「…………ぅぁ」
「真人、大丈夫?」
 噂をすればなんとやら。早速うめき声をあげながら体を起こして目をこする真人。
「ほら、大丈夫だ」
「全く、心配して損をしたわ」
 得意げな謙吾に、声には皮肉があるけど顔には小さな笑みが浮かんでいる佳奈多。
「ええ、心配させてしまったようで申し訳ありません」
 そしてその笑みが凍る。さわやか過ぎる笑顔の前に、全員が全員とも絶句する。
「ちょ、ま、おまっ!」
「ま、真人、だよ、ね?」
「もちろんですよ。私がそれ以外のどのような人間に見えるのですか?」
「どこをどう聞いても真人以外の何者にしか見えんわぁーーーー!!」
 謙吾の一喝。
「うるさいですよ、謙吾さん」
 そして真人の一般論にあえなく撃沈した。10点差をひっくり返されてWBC決勝に破れた守護神が崩れ落ちたようだった。バカに常識を諭されるのがよほどショックだったらしい。
「大丈夫ですか? 謙吾さん」
「放っておいてやれ。それが情けってものだ」
「はぁ、そうなのですか。それじゃあそろそろ帰りましょうか」
 曖昧に頷いた真人は唐突にそんな事を言う。
「おいおい、どうしたんだよ真人。空蝉の術はどうするんだ?」
「常識的に考えてそんなバカな事が成功するはずがないじゃないですか。それよりも明日の宿題の方が重要です」
「ぐ」
 真人の言葉によろめくが、そこは打たれ強い恭介。なんとか踏みとどまる。
「き、効いたぜ真人。まさかお前に冷静にバカ呼ばわりされる事がこんなにもダメージがでかいとは夢にも思わなかったぜ…………」
「あ、そうだ。理樹さん、二木さん」
 普通にスルー。今度こそ恭介は地面に沈んだ。
「な、なに。真人?」
「どうかし、したのかしら。井ノ原」
「そんなに警戒しないで下さいよ。ただ、勉強を教えて頂きたいだけです」
 爽やかな笑み。すごく爽やかな笑み。すごく爽やかな筋肉の笑み。
「「わ、分かった」」
 それに思わず頷いてしまった二人は後悔した。なぜなら、爽やかが更に増したから。
「ふ、ふたりとも」
 なぜか死にかけのような声を出す恭介。
「心配、するな。他のメンバーを……連れて、必ず助けに。行、く…………」
 がくりと力尽きながら、それでも絞り出した声を背中に受けて、理樹と佳奈多は死地に赴く兵士のように部屋と向かう。爽やかな真人の顔に連れられて。



 ◇



「根本的にお前のせーだろーが、ぼけー!!」
 長身の実兄に向かって踵落としを叩き込む鈴。だんだん足技のレパートリーが増えてきた。恭介の口がぴんくと動きながら倒れた気がするが、確証はない。
「それで、宮沢様はどうなさったのですか?」
 佐々美がキョロキョロと周りを見回しながら聞く。確かに話の渦中の一人である謙吾の姿が見あたらない。
「ああ。今し方見てきたが、謙吾少年ならば裏庭で打ちひしがれてたぞ」
「いつになったら立ち直るのよ」
 呆れた佳奈多の声に関係なく、ハテナと首を傾げるのはクド。
「そういえば来ヶ谷さんの姿がしばらく見えませんでしたけど?」
「ああ、ちょっと自室に取りに行くものがあったから取りに行っていたんだ」
「そーなのですか。それなら私が今までの話をまとめて話ましょうか?」
「はっはっは。クドリャフカ君の心使いはありがたいが、心配御無用」
 ふっさぁと舞う。小毬のスカートが。白を基調にした青の水玉模様だった。何がとは言わないが。
 一瞬だけ状況が理解できない小毬。
「ふえ?」
「こんな事もあろうかと、小毬くんのスカートの中に盗聴器をしかけていたのだよ。話は全て聞いた」
「ふえええええぇぇぇぇぇぇぇー!?!?!?」
 テンション高く声をあげる小毬だが、パニクっているせいか別段スカートを押さえる事はしない。重力に従って元通りになるのを待つのみである。
「…………、なんでわざわざそこに仕込みますかネ?」
 つっこみ役の理樹が思いっきり目を逸らしている為、代わりに葉留佳がつっこんでみる。
「うむ。純然たる趣味だ」
「ところで部屋から持ってきたものとは?」
 すこぶる反応がしにくい言葉が返ってきた為、美魚が別の話題を口にする。その言葉にガサゴソと懐を漁って古ぼけた巻物を取り出す来ヶ谷。
「これだ」
「これはなんでしょーか?」
「来ヶ谷代々伝わる忍術書だ。空蝉の術の詳細ももちろん乗っている」
「…………いつも思うんだけど、本当に来ヶ谷さんって何者?」
「はっはっは」
 笑うだけの来ヶ谷。しかも空蝉の術に興味ある3人がいない為に忍術書も宝の持ち腐れ。だが鈴はそれでもその忍術書をじっと見る。
「ちなみにそれにバカにする方法はあるのか?」
「いや、そんな忍術はこの世のどこを探してもないと思うが」
「なんだ。くるがやも案外使えないな」
「おねーさん今ぐさっと来たよ。鈴女史の毒性も最近あがってきたな」
 ちょっとひるんだ来ヶ谷。
「とーぜんだ。今必要なのは忍術がどうこうじゃなくてバカをバカに戻す方法だろう」
 そして平然と話を続ける鈴。彼女の視線の先には最初の攻撃から沈みっぱなしの真人の姿が。
「っていうかコイツはいつまでのびているんだ」
「これはアレじゃないっすかネ。いつもはバカだから立ち直りも早いけど、今はバカじゃないから立ち直りが遅いとか?」
「バカでもなくて筋肉でもないのか。酸素の無駄使いだな」
 ピク
「いやそんな真人がそんな事しか才能がないみたいな事は」
「じゃあ直枝は井ノ原にそれ以外のいい所を見いだせるのかしら?」
「あ、いや、それは…………」
「井ノ原さんは優しいです。私が重い荷物を持っている時に手伝って下さいますよ」
「そりゃ筋肉があるからじゃん? 筋トレをしなくなったらすぐに筋肉なんてなくなっちゃうって」
 ピクピクッ
「本格的に存在価値がないな、コイツは」
「点数も2桁いかないしね」
「と、いう事は勉強も筋肉もダメか。この筋トレグッズももはやただのゴミだな」
 ピクピクピクピクッ!
「ちょっと待って下さい」
 そこで唐突に美魚が口を開く。
「どうかしたかな、西園女史」
「井ノ原さんを見て下さい」
 全員がのびている真人へと視線を向ける。
「……筋肉」
 ピクピクピクッ
 真人が気色悪い動きをした。
「まさか」
「おそらく」
 アイコンタクト。全員が今の現象の意味を理解する。同時に自分の中の大切な何かを捨てる決意も固めた。
「きんにーく」
 ピクッ
「きんにーく」
 ピクピクッ
「きんにーく、きんにーく」
 ビックンピックン
「きんにーく、きんにーく、きんにーく」
 ピックピックピックピック
「「「きんにーく、きんにーく、きんにーく、きんにーく、きんにーく、きんにーく!」」」
 ピックピク ビックンピク ピックピク ピックピク
「「「「「「「「「きんにーく! きんにーく! きんにーく! きんにーく!!」」」」」」」」」
「うおおおおお! 筋肉レボリューションだぁ!!」
「きっしょいわぼけぇー!」
 復活した瞬間、鈴のハイキックで再び沈む。彼女の中で溜められたフラストレーションを思いっきりぶつけられた瞬間だった。
「せっかく元通りに目を覚ましましたのに、また眠らせてどうなさるのですの?」
「うっさい! さささは今のが蹴らずにいられるのか!?」
 逆切れる鈴だが、佐々美はなんとなく反論する気になれない。内容もともかく、さささと呼ばれるのもいい加減慣れたらしい。
「ほら、真人。起きて」
 苦笑しながら真人を起こす理樹。今回は比較的あっさりと目を覚ます真人。
「あ。理樹さん、おはようございます」

 ふりだしに戻る。


[No.133] 2009/05/28(Thu) 22:49:16

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