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No.138へ返信

all 第34回リトバス草SS大会 - 主催 - 2009/05/28(Thu) 21:27:13 [No.128]
そして、おほしさまに - ひみつ。ちこく。5116byte - 2009/05/30(Sat) 10:31:46 [No.145]
しめきり - しゅさい - 2009/05/30(Sat) 00:43:04 [No.142]
[削除] - - 2009/05/30(Sat) 00:04:04 [No.141]
キミを待つあのソラの下 - ひみつ@9898byte - 2009/05/30(Sat) 00:00:54 [No.140]
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星色夜空 - ひみつ 8506 byte - 2009/05/29(Fri) 19:28:14 [No.138]
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今にも落ちてきそうな空の下で - ひみつ@15546 byte - 2009/05/29(Fri) 01:55:03 [No.136]
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羂索は空から - ひみつ 6470 byte - 2009/05/28(Thu) 23:03:44 [No.134]
空の頭はいつまでも - ひみつ 14421 byte - 2009/05/28(Thu) 22:49:16 [No.133]
ふと空をのぞんでみれば - じみつ(誤字) 13946 byte - 2009/05/28(Thu) 22:26:03 [No.131]
婚礼には焼肉が必要だ。 - ひみつ 9131 byte - 2009/05/28(Thu) 22:16:03 [No.130]


星色夜空 (No.128 への返信) - ひみつ 8506 byte

修学旅行が終わって3ヶ月が経ったある日の夜。
星空の下、一人立ち止る。見上げるとビー玉をばら撒いたような星が輝いている。
無意識に描かれるあの子の姿。この星の下であの子はいったい何を思っているのだろう。
最近夜になってはそんなことばかり考えている。
素直になれたらいいんだけど、つい強がって素っ気無い態度をとってしまう。
本当は葉留佳のことが大好きで、一緒に居ないと寂しいのに……
もう一度上を見る。するとさっきは気づかなかった、2つの星。
仲良く寄り添って一際美しく輝いてる。
そんな輝きであるように、葉留佳を想い、願う。


そんなことを考えていると寮につく。あとは課題と明日の予習をして寝るだけ。
朝になるといつも通り強がってしまうんだろうか……
いや、それじゃあいけない。明日こそは素直になろう。そう心に決め、寝る私だった。


「おはよーお姉ちゃん」
「おはよう、葉留佳」
いつものように私は葉留佳と二人で学食に来た。
券を買って食べ物を受け取り、席に着くという習慣化された動作を行う。
「葉留佳、醤油とってー」
「またかけるの?好きだねー」
「だってこの魚味薄いんだもの、しょうがないじゃない」
「いや、これで普通かと……朝だし」
「そういうものなのかしら」


朝ごはんを食べ終えた私たちは教室へと向かった。
1時間目の準備をしていると、葉留佳がノートを持ってこっちに来た。
大体の予想はつくけど、ここで甘やかしちゃ駄目よね。
「お姉ちゃん、宿題を」
「だめ」
「即答!? 最後まで言わせてー」
「自分でやらないのがいけないんでしょ。昨日だって時間あったでしょ」
「うん、まあね……じゃあ姉御のとこ行ってくるー」
まったく、すぐそうやって人に頼ろうとするんだから。
でも先に私に言ってきたのはうれしかったかな……



授業が終わり昼休み。昼ご飯も葉留佳と一緒に食べる。
やっぱりこういう他愛ない時間が好きだ。
「ねえねえ、テキパキってどういう意味?」
「物事を手際よく迅速に処理するさま、という意味よ」
「うーん……迅速ってどういう意味?」
「すみやかなこと、きわめてはやいこと。だったと思うわ」
「じゃあさ、すみやかってどんな意味?」
「はやいさま、ひまどらないさまって言う意味よ」
「ひまどらないって?」
「そろそろやめにしない?」
「わからなくなりましたネ?」
「そんなことないわよ。あ、醤油とって」
「どうぞお姉ちゃん」
「ありがと」
「ホントに好きだよね、醤油」
「ケチャップも好きよ?」
「じゃあマヨネーズは?」
「普通かな。カロリー高いし」
「そこは気にするんだ!? はるちんの新発見!」
「いいじゃない。それより、はるちんっていう言い方子供っぽくない?」
「そうかなー。じゃあお姉ちゃんはこれからかなたんで」
「じゃあってなによじゃあって! そんな呼び方しても無視するだけよ」
「かなたん〜」
「無視よ無視。現在の世界情勢はどうなっているのかしら〜」
「むー、いいもん。無視されたってかなたんって呼ぶもん」
「くっ、それは反則よ……」
上目遣いでかなたんと連呼してくる葉留佳はとてもかわいい。
昼ごはんの代わりに食べてしまいたいくらいに。
その後も連呼されて大変だった。
理性が本能に辛くも勝利したところで予鈴がなった。







1日の授業が終わり放課後になった。
ここしばらく活動していなかったリトルバスターズは、最近活動再開していた。
今も前と同じように野球をしているようだ。私はその様子を木の陰で見ていた。
葉留佳は楽しそうに皆と野球をしている。
それは本当に楽しそうで、うれしくもあり、少しうらやましい。
入ってみたいという気持ちはある。でも私から入りたいなんて絶対にいえない……
自分の中で揺れる気持ちが戦っていた頃、練習の方は終わったようだ。
しばらくして葉留佳が走って来た。
「ふー、今日も疲れましたヨ」
「疲れるんだったらやらなきゃいいのに」
「いや、身体は疲れたけど精神的には元気ー!」
「ちゃんと休みなさいよ。授業とかで寝ないように」
「疲れてなくても寝るから大丈夫!」
「自信を持って言うことじゃないでしょ」
「やはは。それよりさ、そろそろリトルバスターズに入らない?」
「それはちょっと……あ、でも」
反射的に出てしまった否定の言葉を訂正しようとするが、それより早く結論が出された。
「やっぱりダメか、しょうがないよねー。まあ気が変わったらいつでも言ってよ」
どう返せそうか考えているうちに、寮に付いてしまった。
はあ……なにやってるんだろ、私。


もうすぐ夜になる。また今夜も葉留佳のことを想いながら過ごすのだろう。
そう考えていると1つの考えが浮かんだ。
今葉留佳と話せば素直になれるのではないか。
ずっとこんな気持ちでいるなんて嫌だ。
そう思った私は少し迷ったが、葉留佳にメールを送った。
『話があるから9時に校門前に来て』と。







私が校門前についたのは8時50分。葉留佳はまだ来ていない。
誰かに見つかるといろいろ言われそうだが、今の私にはどうでもよかった。
正直これからのことで精一杯だ。
その5分後くらいに葉留佳がゆっくりと歩いてきた。
軽く挨拶してから中庭に向かう。
私の隣で歩く葉留佳はいつもと違う感じだった。かなりおとなしい。


しばらくして中庭に着いた。木に寄り添うようにして二人腰を下ろす。
「ところで話ってなに?今しか出来ないようなこと?」
「うん。正確には私が話せなかっただけなんだけど……」
不思議そうにして見つめる葉留佳の目を見ながら話していく。
「さっきはあんなこと言ったけど、やっぱり私もリトルバスターズに入って葉留佳や
みんなと居たいの」
「……それだけ?ホントにそれだけ?」
「そうよ。なにその『えー、それくらいのことでわざわざ呼び出し?別にそれくらいどうってことないじゃん。そんなことも出来ない気弱な性格だっけ?あまりのギャップの激しさに引くなー』って顔は!」
「惜しいかな。ギャップが激しくてかわいいとは考えてたけど」
普通に返された!? しかも今さらりとかわいいって……
私の顔が赤くなっていくのがわかる。きっといきなり言われたからだ、これは。
「今のお姉ちゃん、なんか話しやすいな」
「それは……」
せっかく今は葉留佳と二人きりなんだ。この際思ってることを言ってしまおう。
「それは、私が夜になるといつも葉留佳のことを考えてるから」
「そうだったの?」
「ええ。だから今しかこんなこと言えないんだから」
「ふーん。まあでも、私もお姉ちゃんのこと考えてたかな……」
てっきり今の言葉に突っ込んでくるかと思ったら、意外にも控えめだった。
何か様子がおかしいので聞いてみると、
「お姉ちゃんと二人きりだとなんか調子でないっていうか……どうしてだろ?」
そんな答えが返ってきた。もしかしたら葉留佳も私と同じで今以外は素直に
なれないんじゃないのか、そう思った。
それをそのまま口に出すと、葉留佳は自分の恋心に気づいた乙女のような表情で
押し黙った。

沈黙が流れる。静かなのは嫌いじゃないけど少し気まずくなってしまった。
ともかく私の気持ちを正直に話そう。そうしないと伝わらないから。
「ねえ葉留佳、もう気にしてない?これまでのこと……」
「うん。それより私は今こうやって話せてることのほうがうれしいかな」
「そう言ってくれるのね、ありがとう」
「けどお姉ちゃんも大変だったんだよね。……でも風紀委員は辞めたんでしょ?
だったらさ……」
「そうね。これからは葉留佳とたくさん話したり遊んだりできるわね」
先を読んだつもりだったけど、それは外れた。
「それもそうだけど、ホントのお姉ちゃんを私は知ってる。みんなの前でもそうしていたら気が楽になるんじゃないかな?」
「……そうね。葉留佳にはもう嘘の自分でいたくない。そうして過ごせば私でも、自然に笑えるのかな?」
「きっと、いや、絶対に笑える。だって私たち双子でしょ?だったらお姉ちゃんにもそうなれる素質があるってことだよ。ね!」
だったら葉留佳もまじめになる素質はある、とはいわないでおく。
葉留佳には今のままが1番だから。変わってほしくないから。
そして、その言葉が私にはとてもうれしかったから否定はしたくない。



「ねえお姉ちゃん、星がきれいだよ」
「そうね。でも今そばにいる葉留佳の方がずっときれいよ」
「え、やだちょっと! 何言ってるの……」
照れて私に背を向けてる葉留佳。こういう仕草は双子なんだなと思った。
そして、こんな葉留佳を見ることをなかなかできないと気づいた私は、
もっと今まで見たことのない葉留佳を見たいと思った。
そっと後ろから抱きしめてみる。あ、温かい……
「わひゃっ! ど、どうしたの?」
「なんでもないわ。ただ反応がかわいいから、つい」
「姉御みたいなこと言わないでよー」
「他の人の名前今は出さないでよ……」
「お姉ちゃんがそんなことするからでは? というか、もしかして嫉妬してたりする?」
「まあ、ね」
当然じゃない。今まで1番葉留佳に近かったのはあの人なんだから。
「それじゃそろそろ戻ろうか」
「……いや。もっと葉留佳と居たい」
「ホントに性格変わってますネ。……でも私もこの時間は終わってほしくないな」
「夜をとめておく魔法があればいいのにね」
「そうだね。ならあと30分だけ。ね?」
「わかったわ。……楽しい永い夜になりそうね」
どうせ時間が延びるだろうと思いそう返した。



名目上の30分という時間。私はここで1番言いたいことを伝える。
「ねえ葉留佳、上手くいえないけど……ごめんね。それとありがとう。私は葉留佳のことが心から大好きだから。」
「そんなこと思ってくれてたんだ……私もお姉ちゃんのこと大好きだよ」
「ありがと。これからはずっと一緒よ。何があっても絶対に離れない。約束よ?」
「うん、約束。じゃあ半分こだね」
ポケットからビー玉を見せる葉留佳。それは一際美しく輝く2つのビー玉。
空を見上げる。そこにはやはり昨日と同じように2つの星。
仲良く寄り添って一際美しく輝いている。
そんな輝きであるように、葉留佳を想い、願った。
その願いは届いたのだろうか。私たちは輝いているだろうか。
隣を見るとそこには、空の星のように、手に持つビー玉のように輝く唯一無二の妹がいた。
周りを見ると、星やビー玉以外にもいろいろなものが光っている。
それでも私のそばにいる存在が、1番輝いて見えた。


[No.138] 2009/05/29(Fri) 19:28:14

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