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修学旅行が終わって3ヶ月が経ったある日の夜。 星空の下、一人立ち止る。見上げるとビー玉をばら撒いたような星が輝いている。 無意識に描かれるあの子の姿。この星の下であの子はいったい何を思っているのだろう。 最近夜になってはそんなことばかり考えている。 素直になれたらいいんだけど、つい強がって素っ気無い態度をとってしまう。 本当は葉留佳のことが大好きで、一緒に居ないと寂しいのに…… もう一度上を見る。するとさっきは気づかなかった、2つの星。 仲良く寄り添って一際美しく輝いてる。 そんな輝きであるように、葉留佳を想い、願う。 そんなことを考えていると寮につく。あとは課題と明日の予習をして寝るだけ。 朝になるといつも通り強がってしまうんだろうか…… いや、それじゃあいけない。明日こそは素直になろう。そう心に決め、寝る私だった。 「おはよーお姉ちゃん」 「おはよう、葉留佳」 いつものように私は葉留佳と二人で学食に来た。 券を買って食べ物を受け取り、席に着くという習慣化された動作を行う。 「葉留佳、醤油とってー」 「またかけるの?好きだねー」 「だってこの魚味薄いんだもの、しょうがないじゃない」 「いや、これで普通かと……朝だし」 「そういうものなのかしら」 朝ごはんを食べ終えた私たちは教室へと向かった。 1時間目の準備をしていると、葉留佳がノートを持ってこっちに来た。 大体の予想はつくけど、ここで甘やかしちゃ駄目よね。 「お姉ちゃん、宿題を」 「だめ」 「即答!? 最後まで言わせてー」 「自分でやらないのがいけないんでしょ。昨日だって時間あったでしょ」 「うん、まあね……じゃあ姉御のとこ行ってくるー」 まったく、すぐそうやって人に頼ろうとするんだから。 でも先に私に言ってきたのはうれしかったかな…… 授業が終わり昼休み。昼ご飯も葉留佳と一緒に食べる。 やっぱりこういう他愛ない時間が好きだ。 「ねえねえ、テキパキってどういう意味?」 「物事を手際よく迅速に処理するさま、という意味よ」 「うーん……迅速ってどういう意味?」 「すみやかなこと、きわめてはやいこと。だったと思うわ」 「じゃあさ、すみやかってどんな意味?」 「はやいさま、ひまどらないさまって言う意味よ」 「ひまどらないって?」 「そろそろやめにしない?」 「わからなくなりましたネ?」 「そんなことないわよ。あ、醤油とって」 「どうぞお姉ちゃん」 「ありがと」 「ホントに好きだよね、醤油」 「ケチャップも好きよ?」 「じゃあマヨネーズは?」 「普通かな。カロリー高いし」 「そこは気にするんだ!? はるちんの新発見!」 「いいじゃない。それより、はるちんっていう言い方子供っぽくない?」 「そうかなー。じゃあお姉ちゃんはこれからかなたんで」 「じゃあってなによじゃあって! そんな呼び方しても無視するだけよ」 「かなたん〜」 「無視よ無視。現在の世界情勢はどうなっているのかしら〜」 「むー、いいもん。無視されたってかなたんって呼ぶもん」 「くっ、それは反則よ……」 上目遣いでかなたんと連呼してくる葉留佳はとてもかわいい。 昼ごはんの代わりに食べてしまいたいくらいに。 その後も連呼されて大変だった。 理性が本能に辛くも勝利したところで予鈴がなった。 1日の授業が終わり放課後になった。 ここしばらく活動していなかったリトルバスターズは、最近活動再開していた。 今も前と同じように野球をしているようだ。私はその様子を木の陰で見ていた。 葉留佳は楽しそうに皆と野球をしている。 それは本当に楽しそうで、うれしくもあり、少しうらやましい。 入ってみたいという気持ちはある。でも私から入りたいなんて絶対にいえない…… 自分の中で揺れる気持ちが戦っていた頃、練習の方は終わったようだ。 しばらくして葉留佳が走って来た。 「ふー、今日も疲れましたヨ」 「疲れるんだったらやらなきゃいいのに」 「いや、身体は疲れたけど精神的には元気ー!」 「ちゃんと休みなさいよ。授業とかで寝ないように」 「疲れてなくても寝るから大丈夫!」 「自信を持って言うことじゃないでしょ」 「やはは。それよりさ、そろそろリトルバスターズに入らない?」 「それはちょっと……あ、でも」 反射的に出てしまった否定の言葉を訂正しようとするが、それより早く結論が出された。 「やっぱりダメか、しょうがないよねー。まあ気が変わったらいつでも言ってよ」 どう返せそうか考えているうちに、寮に付いてしまった。 はあ……なにやってるんだろ、私。 もうすぐ夜になる。また今夜も葉留佳のことを想いながら過ごすのだろう。 そう考えていると1つの考えが浮かんだ。 今葉留佳と話せば素直になれるのではないか。 ずっとこんな気持ちでいるなんて嫌だ。 そう思った私は少し迷ったが、葉留佳にメールを送った。 『話があるから9時に校門前に来て』と。 私が校門前についたのは8時50分。葉留佳はまだ来ていない。 誰かに見つかるといろいろ言われそうだが、今の私にはどうでもよかった。 正直これからのことで精一杯だ。 その5分後くらいに葉留佳がゆっくりと歩いてきた。 軽く挨拶してから中庭に向かう。 私の隣で歩く葉留佳はいつもと違う感じだった。かなりおとなしい。 しばらくして中庭に着いた。木に寄り添うようにして二人腰を下ろす。 「ところで話ってなに?今しか出来ないようなこと?」 「うん。正確には私が話せなかっただけなんだけど……」 不思議そうにして見つめる葉留佳の目を見ながら話していく。 「さっきはあんなこと言ったけど、やっぱり私もリトルバスターズに入って葉留佳や みんなと居たいの」 「……それだけ?ホントにそれだけ?」 「そうよ。なにその『えー、それくらいのことでわざわざ呼び出し?別にそれくらいどうってことないじゃん。そんなことも出来ない気弱な性格だっけ?あまりのギャップの激しさに引くなー』って顔は!」 「惜しいかな。ギャップが激しくてかわいいとは考えてたけど」 普通に返された!? しかも今さらりとかわいいって…… 私の顔が赤くなっていくのがわかる。きっといきなり言われたからだ、これは。 「今のお姉ちゃん、なんか話しやすいな」 「それは……」 せっかく今は葉留佳と二人きりなんだ。この際思ってることを言ってしまおう。 「それは、私が夜になるといつも葉留佳のことを考えてるから」 「そうだったの?」 「ええ。だから今しかこんなこと言えないんだから」 「ふーん。まあでも、私もお姉ちゃんのこと考えてたかな……」 てっきり今の言葉に突っ込んでくるかと思ったら、意外にも控えめだった。 何か様子がおかしいので聞いてみると、 「お姉ちゃんと二人きりだとなんか調子でないっていうか……どうしてだろ?」 そんな答えが返ってきた。もしかしたら葉留佳も私と同じで今以外は素直に なれないんじゃないのか、そう思った。 それをそのまま口に出すと、葉留佳は自分の恋心に気づいた乙女のような表情で 押し黙った。 沈黙が流れる。静かなのは嫌いじゃないけど少し気まずくなってしまった。 ともかく私の気持ちを正直に話そう。そうしないと伝わらないから。 「ねえ葉留佳、もう気にしてない?これまでのこと……」 「うん。それより私は今こうやって話せてることのほうがうれしいかな」 「そう言ってくれるのね、ありがとう」 「けどお姉ちゃんも大変だったんだよね。……でも風紀委員は辞めたんでしょ? だったらさ……」 「そうね。これからは葉留佳とたくさん話したり遊んだりできるわね」 先を読んだつもりだったけど、それは外れた。 「それもそうだけど、ホントのお姉ちゃんを私は知ってる。みんなの前でもそうしていたら気が楽になるんじゃないかな?」 「……そうね。葉留佳にはもう嘘の自分でいたくない。そうして過ごせば私でも、自然に笑えるのかな?」 「きっと、いや、絶対に笑える。だって私たち双子でしょ?だったらお姉ちゃんにもそうなれる素質があるってことだよ。ね!」 だったら葉留佳もまじめになる素質はある、とはいわないでおく。 葉留佳には今のままが1番だから。変わってほしくないから。 そして、その言葉が私にはとてもうれしかったから否定はしたくない。 「ねえお姉ちゃん、星がきれいだよ」 「そうね。でも今そばにいる葉留佳の方がずっときれいよ」 「え、やだちょっと! 何言ってるの……」 照れて私に背を向けてる葉留佳。こういう仕草は双子なんだなと思った。 そして、こんな葉留佳を見ることをなかなかできないと気づいた私は、 もっと今まで見たことのない葉留佳を見たいと思った。 そっと後ろから抱きしめてみる。あ、温かい…… 「わひゃっ! ど、どうしたの?」 「なんでもないわ。ただ反応がかわいいから、つい」 「姉御みたいなこと言わないでよー」 「他の人の名前今は出さないでよ……」 「お姉ちゃんがそんなことするからでは? というか、もしかして嫉妬してたりする?」 「まあ、ね」 当然じゃない。今まで1番葉留佳に近かったのはあの人なんだから。 「それじゃそろそろ戻ろうか」 「……いや。もっと葉留佳と居たい」 「ホントに性格変わってますネ。……でも私もこの時間は終わってほしくないな」 「夜をとめておく魔法があればいいのにね」 「そうだね。ならあと30分だけ。ね?」 「わかったわ。……楽しい永い夜になりそうね」 どうせ時間が延びるだろうと思いそう返した。 名目上の30分という時間。私はここで1番言いたいことを伝える。 「ねえ葉留佳、上手くいえないけど……ごめんね。それとありがとう。私は葉留佳のことが心から大好きだから。」 「そんなこと思ってくれてたんだ……私もお姉ちゃんのこと大好きだよ」 「ありがと。これからはずっと一緒よ。何があっても絶対に離れない。約束よ?」 「うん、約束。じゃあ半分こだね」 ポケットからビー玉を見せる葉留佳。それは一際美しく輝く2つのビー玉。 空を見上げる。そこにはやはり昨日と同じように2つの星。 仲良く寄り添って一際美しく輝いている。 そんな輝きであるように、葉留佳を想い、願った。 その願いは届いたのだろうか。私たちは輝いているだろうか。 隣を見るとそこには、空の星のように、手に持つビー玉のように輝く唯一無二の妹がいた。 周りを見ると、星やビー玉以外にもいろいろなものが光っている。 それでも私のそばにいる存在が、1番輝いて見えた。 [No.138] 2009/05/29(Fri) 19:28:14 |
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