[ リストに戻る ]
No.145へ返信

all 第34回リトバス草SS大会 - 主催 - 2009/05/28(Thu) 21:27:13 [No.128]
そして、おほしさまに - ひみつ。ちこく。5116byte - 2009/05/30(Sat) 10:31:46 [No.145]
しめきり - しゅさい - 2009/05/30(Sat) 00:43:04 [No.142]
[削除] - - 2009/05/30(Sat) 00:04:04 [No.141]
キミを待つあのソラの下 - ひみつ@9898byte - 2009/05/30(Sat) 00:00:54 [No.140]
fly away - ひみつ@9574 byte - 2009/05/29(Fri) 23:58:00 [No.139]
星色夜空 - ひみつ 8506 byte - 2009/05/29(Fri) 19:28:14 [No.138]
リン、ジュテーム - ひみつ@20480 byte - 2009/05/29(Fri) 02:11:29 [No.137]
今にも落ちてきそうな空の下で - ひみつ@15546 byte - 2009/05/29(Fri) 01:55:03 [No.136]
ノンコミタル - ひみつ@13410 byte - 2009/05/29(Fri) 00:54:24 [No.135]
羂索は空から - ひみつ 6470 byte - 2009/05/28(Thu) 23:03:44 [No.134]
空の頭はいつまでも - ひみつ 14421 byte - 2009/05/28(Thu) 22:49:16 [No.133]
ふと空をのぞんでみれば - じみつ(誤字) 13946 byte - 2009/05/28(Thu) 22:26:03 [No.131]
婚礼には焼肉が必要だ。 - ひみつ 9131 byte - 2009/05/28(Thu) 22:16:03 [No.130]


そして、おほしさまに (No.128 への返信) - ひみつ。ちこく。5116byte

「ドルジ、おまえどうした?」
「ぬお〜」
「寝てるのか?だとしたらそれはいびきなのか?それとも寝言なのか?」
「ぬお〜」
「おまえは寝言までその鳴き声なのか……やっぱ変なやつだな」
「ぬお〜」


  そして、おほしさまに


 僕は夢を見た。僕が夢を見ることはない。しかし…なぜ、突然夢を見ることが出来たのか。それだけが、謎に包まれたままだった。

 夢は起きたらすぐ忘れるとよく耳にした。
 だけど。
 僕は忘れなかった。忘れられなかった。幸せな夢でもない。夢の内容を手帳へと書いたわけでもない。誰かに話したわけでも、二回、三回も続けて見たわけでもない。一回だけ、初めて見た夢だった。
 また、悪夢は永い間記憶に残るとも聞いたこともある。
 でも。
 僕が見た夢は悪夢でもなかった。誰かに殺されてしまう夢、誰かを殺してしまう夢。大切な人がみんないなくなってしまう夢。そんなことはなかった。
 そして、夢で見たことが実際に起こる事。所謂予知夢というもの。そんな風にも見えなかった。
 僕が見たのものはただ、ずっとドルジが出てくる夢だった。何をするわけでも何かがしたいわけでもなく、僕の夢にはドルジが居座っていた。夢の中では何も起こる事はなかった。そして、ぬお〜という鳴き声が耳から離れる事はなかった。

 今朝、真人に僕の夢の内容は伏せて少し話してみたら、僕が夢を見たことに少し驚いていたけれど……その後すぐに、こんなことを言い出した。
「なあ理樹、知ってるか?」
「なにが?」
「寝てる時に見た夢は、起きた時にすぐ空に昇って星になっちまうみたいなんだぜ?」
「へぇ……」
 初めて聞いた説だった。
「もしかしたらさ、オレが見た筋肉の夢も星になっているんじゃねーかと少しワクワクしてるんだっ!星の名前も付けられるみてぇだし、最近オレはどんな名前にしようか迷ってるんだ。理樹も一緒に考えてくれねーか?いまんとこの名前の候補はだな……」
 マッスルスター……マッスル星……筋肉……どれもこれも似たようなものばかりだった。
「それで、真人。誰がそんなこと言ってたの?」
「あん?あぁ、謙吾のやつから」
「多分、それ真人をだますための嘘」
「な…なんだってー!?」
 とてもショックを受けていた。

 僕は授業中でも、授業が終わった後でも夢のことを引き摺って考えていた。
 今朝、真人が言った事を思い出していた。その時は適当に流していたけど、今になって急に気になり始めた。そう思ったときにはもう既に僕は窓の外を見上げていた。しかし、今は昼。当然星は見当たらない。いや……見えない、と言った方が正しいのかもしれない。
 僕はまだひとつ気にかかることがあった。ドルジのことだ。どうしてもドルジのことが気になった。昨日は鈴と一緒に居たところを見かけた。なら、今日も一緒に居るはずだ、と思い僕は席から立ち上がる。教室に飛び交う様々な話に興味を向けることもないほど、今の僕はドルジのことでいっぱいだった。廊下を抜ける途中

、真人と謙吾がバトルをしていた。だけど、僕は脇目も振らずに駆け抜ける。そして、僕は中庭へと出た。
 辺りを見渡すと、鈴と猫が数匹。そこにドルジは居なかった。鈴を見てみると、ずっと空を見上げている。他の猫達もそうだった。ドルジのこともそうだけど、鈴に少し疑問に思った僕は、迷わず鈴に話しかけた。
「ねえ、鈴」
「……」
 鈴の表情を観察してみると、驚いたような。考えているような。謎に包まれた物を見ているような。そんな風に僕には見えた。
「鈴」
 肩に手を置いてみると。
「にゃっ!?」
「そんなびっくりしなくても……」
「なんだ、理樹か。びっくりさせんな」
 ごめん、と心の中で謝っておく。そして鈴は今、何をしているのか僕は訊ねた。
「空を見上げてただけだ」
「それはわかってるから……じゃあさ、なにを見てたの?」

「ドルジ」

 その鈴の一言に、僕は心臓がドキドキと鳴る。鈴の表情も変わらぬままだ。この瞬間に、その名前が出てくるのがとても予想外だったからだ。また、同時に疑問が浮かぶ。鈴が空を見上げていて、なぜドルジを見ていたのか。それは、ドルジが空を飛んだ。でも、なぜ空を飛んだのか……理由が見つからない。わからないことだらけだった。僕は少しでも疑問を減らそうと、鈴に深く追求することにした。

「その……ドルジは昨日どうしてた?」
「昨日は、そうだな……ずっと寝てた。ぬお〜と鳴きながらずっと寝てた」
「放課後、ドルジはどうしてた?」
「寝たままだった」
「寝顔はどんな風だった?」
「笑ってた。寝ながらゴロゴロ転がりそうだった」
「じゃあさ、なんでドルジは空を飛んだの?」
「そんなの知るかぼけっ!ていうか質問攻めはやめろ!」
 怒られてしまった……でも、質問だらけだったのも悪かったかなと思い、一旦僕は空を見上げる。また戻ってくるのかなと考えたけど、その様な気配はひとつも感じられない。真人が言ってた事から、僕の夢が原因でドルジは空に昇ってしまって、星になったのかと思った。でも、逆に考えたらドルジが空に昇るからこそ、僕はドルジの夢を見たのかとも考えられる。だけど…このことは誰にもわからない。
「そうだ、理樹」
「え、なに?」
「ドルジが空を飛ぶ時、羽が生えてた」
「羽……?」
「そうだ。あれは鳥のような羽じゃなくて天使の羽のようだった」
 そこで僕はひとつのあることが思い浮かぶ。
 そう、それは。
 「死」
 死の間際に天使に迎えられたと、僕は考えた。また、流れ星は死を意味すると聞いた。何処から、誰から聞いたかはもう覚えていない。僕が見た夢が星となって、そして流れ星となって――。だけど、そう考えても不思議と悲しい、という感情は浮かんでこなかった。また、ドルジのぬお〜という鳴き声が聞こえるかもしれなかったからだ。
 ひとつだけ、鈴に訊ねたい事があった。
「ねえ、鈴。最後にひとつだけ質問いい?」
「なんだ…?そんな深刻な顔して」
 今、僕はそんな顔してたのかと思った。そう言われてすぐに表情を直す。
「別れに立ち会えるのと、立ち会えないのってどっちが悲しいのかな?」
「…知らん」
 鈴は少し考え込んだけど、僕の質問は一蹴された。
「そっか」
 僕は、そう言うことしか出来なかった。


[No.145] 2009/05/30(Sat) 10:31:46

この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 60 日間のみ可能に設定されています。


- HOME - お知らせ(3/8) - 新着記事 - 記事検索 - 携帯用URL - フィード - ヘルプ - 環境設定 -

Rocket Board Type-T (Free) Rocket BBS