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No.158へ返信

all 第35回リトバス草SS大会 - しゅさい - 2009/06/11(Thu) 23:22:09 [No.154]
そりゃ、煙じゃ腹は膨れねぇが。 - ひみつ@10211byteここからがほんとうの遅刻だ! - 2009/06/13(Sat) 18:28:57 [No.171]
しめきりー - しゅさい(笑) - 2009/06/13(Sat) 00:23:57 [No.167]
どくどく - ひみつ@8596byte - 2009/06/13(Sat) 00:06:48 [No.165]
[削除] - - 2009/06/13(Sat) 00:00:08 [No.164]
駕籠の鳥と毒りんご - ひみつ 8074 byte - 2009/06/12(Fri) 23:56:40 [No.163]
精神解毒薬 - ひみつ@7950byte - 2009/06/12(Fri) 23:53:01 [No.162]
気の毒な姉妹 - ひみつ@1071 byte - 2009/06/12(Fri) 19:10:20 [No.161]
毒は上に積もる - ひみつ 9397 byte - 2009/06/12(Fri) 18:25:23 [No.160]
コルチカム - ひみつ@12180byte - 2009/06/12(Fri) 14:34:55 [No.158]
(No Subject) - ひみつ@12180byte - 2009/06/12(Fri) 14:36:16 [No.159]
修正しといたよ! - すさい - 2009/06/13(Sat) 00:17:30 [No.166]
Sweet Baggy Days - ひみつ@14977 byte - 2009/06/12(Fri) 04:34:51 [No.157]
彼岸花 - ひみつ@7372 byte - 2009/06/12(Fri) 00:21:30 [No.156]
彼岸花 - 橘 - 2009/06/28(Sun) 15:37:45 [No.207]
『彼岸花』修正しました - 橘 - 2009/06/28(Sun) 15:42:27 [No.208]
All I Need Is Kudryavka - ひみつ@18627byte - 2009/06/12(Fri) 00:05:09 [No.155]


コルチカム (No.154 への返信) - ひみつ@12180byte

 本来ならば人間と言うのは異性を好きになる動物らしい。女は男に惹かれ、男は女に惹かれる。
それが普通の恋愛なのだと言う。少し下品な言い方をするのであれば、欲情や性的興奮を覚えるも
のらしい。
 だがしかし。そんなことを言っても人間と言うのは意思を持ち、自らの感情にしたがって生きる
動物なのだ。稀にそのルールから外れる者も居るには居るのだ。そう、私みたいに。
 私の性別は女。胸もまあそこそこに膨らんでおり、全体的に丸みを帯びている体系からもわかる
だろう。まあ腰の辺りは丸みを帯びて欲しくないが。出来れば余計な脂肪は胸等に行って
欲しいものである。是非ともそう願いたい。今の自分に不満がある訳ではない。親族による負の
連鎖から逃れ、最愛の妹とも仲良く過ごすことが出来ている。
 そして、自慢ではないが私はそこそこ男子に人気があるらしい。それに気がついたのは前よりも
雰囲気が丸くなった、と妹に言われてからだが。成績もまあまあ良い。
それは以前の癖が抜けていないせいで必要以上に勉強してしまうから。つまるところ、私の生活は
充実していた。他人から見れば、だけれど。
 私には授業中や食事時、就寝前に必ず考える悩みがある。
その悩みと言うのは口に出して言ってしまうと他人から変な目で見られてしまうものであり。
そして解決が非常に困難であると言うものだ。


 上でも触れたが、私二木佳奈多は。
 同性が、好きになってしまったのだ。


 その相手は違うクラスの女子で、来々谷さんと言う。同級生なのにとても大人びていて、
綺麗な人だ。おまけに頭も良くて運動も出来てスタイルも良い。それなのにお茶目と言うか、
飄々としている。妹の言葉を借りるならば「姉御」と言う感じである。
 私がその「姉御」を何故好きになってしまったのか。
それは別に特別な出来事があったわけでもなく。ただ、あの人の優しさに不用意に
触れてしまったからだと思う。その時の事は今でも鮮明に思い出すことが出来る。


 高校に入学し、暫くたった頃だった。その頃の私はまだ葉留佳に厳しく当たらなくてはいけな
くて、心身共に辛かった。そんな時、あるクラスメイトが話しかけてきた。
いや、正確に言うならば科学の実験の際に組んだので話さなくてはいけなかった、というのが
正しいのだろうけど。けれどその些細な出来事で、私は救われ恋に落ちた。単純だな、と自分で
も思う。
 来々谷さんと話したのはその時が初めてだった。印象としては変わった人だなと思った。私が
実験の用意をしている時も彼女はずっと座って腕を組んで、私を見ていた。少しは手伝ったら
どうなのか、と言おうと思ったけど止めた。一人でやったほうが早いと判断したから。
 一通り準備を終え、私が椅子に座ったその時だった。

「二木女史、実験をする時は立ったほうが良いと思うぞ」

 正直驚いた。私に話しかける人なんて居ないと思っていたし、何よりも名前を呼ばれた事に。
私は動揺を悟られないように、黙って腰を上げた。

「ふむ、中々に素直でよろしい」
「…実験、するの?しないの?」

 何故か少し腹が立ったので、さっさとやる事を済ませて会話を止めたいと思った。だけど
来々谷さんは少し顔を微笑ませこう言った。

「まあ急がなくても良いだろう。こんな実験やる方が無駄だ」

 小学生でも出来るようなものをやらせる意味がわからない、と小さく付け足した。この時
彼女に好意を抱いた。恋愛的な意味では無く、親愛的な意味で。少し、勇気を出すことにした。

「来々谷…さんだったわね、何で私に話しかけたの?」
「なに、そんなに深い意味は無い。ただ君が可愛いからだ」
「…お世辞が上手なのね」
「素直な気持ちで言ったのだが」
「口説くなら他の子にしたら?」

 見せ付けるように溜め息をついたのにも関わらず、来々谷さんは余裕の笑みで私を見ていた。
まるで私の全てが分かっているかのように。その後は彼女と取り留めの無い話をしつつ
実験をした。来々谷さんが手伝ってくれたのが意外だったけど。これがきっかけで私達は
休み時間などに話すことが多くなった。例えばある休み時間で

「佳奈多君、おねーさんとゆっくりとお茶でもしないか」
「次の時間が数学だからって私を誘わないで」
「君の成績と生活態度なら別にサボタージュしても平気だろう?」
「日々の積み重ねが大切なのよ、こういうのは」
「真面目すぎるのが佳奈多君の悪いところだな。少しは羽目を外してみるといい」
「放課後にするわ」

 ちなみにこのやり取りをしてる時、私は一度も来々谷さんの方を向いていない。
何故かと言うと、私はその時数学の予習をしていたから。昨夜うっかりと数学の予習をせずに
寝てしまい、それに気がついたのがつい先程。毎回予習は三十分ほどかけてやるので確実に
間に合わないということは理解していたけれど、それでもやらずには居られなかった。
 そんな私の様子を見ていた来々谷さんは、何を思ったか隣の席に座りノートを覗き込んできた。
何事か、と思ったけれどそんな事に気を配っている余裕が無い。私は再び予習を始めた。すると
不意に横から手が伸びてきた。

「ここ、少し違うな。おそらく途中の計算が間違っているのだろう、見直してみたまえ」

 近づいた顔と甘い香り。シャンプーか何かだとは思うが、やけに甘く感じた。不覚にもぼうっと
してしまった私に気がついた彼女が手を伸ばしてきた。

「おい?佳奈多君、どうかしたか?」
「…別に、何でもないわ」
「顔が真っ赤なのに何でも無いことは無いだろう、保健室にでも行こう」
「え?ちょ、ちょっと…」

 無理矢理手来々谷さんにを引かれ、教室を出る。その途中でこの人は数学をサボる理由が
欲しかっただけじゃないか、と思った。本人に確認を取った訳では無いから
分からないけれど、おそらくそうだろう。
 それか本当に私を心配してくれたか。そうだったら、とても、嬉しい、のだが。

 そんなことを考えながら彼女に引っ張られていた、その時だった。角から妹の葉留佳が
ひょっこり姿を現したのだ。その瞬間、どこか浮ついていた頭の中が一気に冷たくなった。
葉留佳はこんなにも傷ついているのに私だけがこんなに普通の生活を送っていて良いのだろうか。
そう思った瞬間にはもう私の手は来々谷さんの手から離れていた。それに気がついた来々谷さんが
振り向く。そして葉留佳に気がつき、私を見た。流石の彼女も私達が姉妹だとは分からなかった
のか珍しく困惑していた。
 久しぶりに見た葉留佳は、どこか元気が無く。私を見たというのに
睨みつけることすらしなかった。おそらくクラスに馴染めなかったんだろう。それでも私は精一杯
葉留佳に嫌がらせをするしかなかった。するしかなかったはずなのに、口が動かない。
 代わりに体が動いていた。葉留佳とは逆の方向へ全速力で走った。途中で躓いたりもした。けれ
ど止まらなかった。止まってしまったら、葉留佳の元へ駆け寄って抱きしめてしまうと思ったから。

 鐘の音でようやく足が止まった。ここは何処だろうと荒い息のまま周りを見渡した。自販機が
傍にあると言う事は、ここは裏庭なのだろうか。あまり来た事が無いので良くわからない。
 とりあえず飲み物を買うことにした。何も考えずに押したボタンから出てきたのは、オレンジ
ジュース。思わず笑ってしまった。私は柑橘類アレルギーだ。それなのにオレンジジュース。
 いっその事一気に飲み干してやろうか、とも思ったけど止めて置く。後ろから聞こえて来る足音
の主に迷惑は掛けたくないし。

「走ってきたみたいだから、これでも飲む?オレンジジュース」
「ありがたく受け取りたいのだが、君が買ったものだ。遠慮しておこう」
「良いのよ、私オレンジジュース嫌いだから。飲んでくれたほうが嬉しいわ」
「ふむ、じゃあ頂くとしよう」
「召し上がれ」

 プルタブを空ける音がやけに響いた。暫く私たちは無言だった。私は私で何と言って良いか
わからなかったし。来々谷さんはおそらく私が言い出すのを待っているだろうから。このまま無言
で居ても仕方ないから、私は重い口を開いた。

「さっきはごめんなさい…」

 …困った。とりあえず謝罪してみたのは良いけれど、この後が出てこない。私達の関係を暴露
するのもありかもしれない。でも出来れば彼女には知られたくない。
 こうなったら逃げよう、と思った。来々谷さんから逃げられるとは思えないけどもしかしたら。
 どの方向に逃げようか迷っていると、不意に背中に柔らかい感触を覚えた。それと同時に仄かに
甘い香りと、吐息も。やっと理解した。私は今、来々谷さんに抱きしめられているのだ。

「…君達の関係は良くわからないし、分かりたいとも思わない」

 その言葉は彼女にしてはとても優しげな声色で。

「けれど、君がなにやら悲しんでいる時に慰めてあげたいとは思う」

 思わず涙が出てしまったのも仕方が無いと思える程、暖かで。私は来々谷さんに抱きついて
涙を流してしまった。不様に声を上げて、情けなく弱さを晒して。それでも来々谷さんは何も言わ
ずに、私を抱きしめてくれていた。
 その時気がついた。私は彼女のことが好きなんだと。




「うううう…」

 さて、今現在の私はと言うと。ベッドで頭を抱えながら転がっていた。好きになった経過を思い
出していたらあまりにも恥ずかしくてどうにかなってしまいそうになったのだ。
 現にこの出来事の後から私は来々谷さんとあまり会話をしていない。彼女の顔を見たら顔が赤く
なってしまうからだ。
 二年になったら話す事は出来るだろうと楽観的に思っていたのが間違いだったのだ。いざ進級
してみたらどういうことか、あのお騒がせ集団リトルバスターズに彼女が入ってしまった。
その集団には葉留佳も入っていたから、近づくことすら出来なかった。それに私は風紀委員長とし
てその集団とは敵対しなければいけなかった。踏んだり蹴ったり、いや泣きっ面に鉢だと思った。
 でも、今は違う。違うのに、話すことが出来ない自分が馬鹿らしくなってくる。自分がこんなに
弱いなんて思ってもみなかった。

 いじけてベッドでごろごろと転がっていたら、突然ドアが開いて誰かが入ってきた。転がった
ままドアを逆さまに見ると、葉留佳が息を切らしてへたり込んでいた。
 普段なら慌てて姿勢を整える所だけど、今はそんな気分になれなかったし、葉留佳なら良いかと
思ったのでそのままだ。とりあえず、葉留佳に質問してみた。

「どうしたの?そんなに息切らして…」
「ちょっと姉御に追われてるんですヨ…ってお姉ちゃん凄いカッコしてるね」

 言われて自分の格好を見直してみると、成る程凄い格好だった。上の服はおへその辺りまで捲れ
上がっていてボタンも大体外れていたし、ズボンはお尻のあたりまで下がっていた。下着が両方
ちらりと見えているのが我ながら少し扇情的だな、と思った。

「休みの日なんだから良いじゃない…」
「まあはるちん的にはもうバッチコーイ!って感じなんだけど、多分姉御とかに見られたら」
「呼んだか」
「く、来々谷さん!?」

 いつの間にか来々谷さんが部屋に入ってきていた。私は慌てて服の乱れを直そうとしたけれど
その前に来々谷さんが私の両手を掴んでいた。しかも片手で。

「別に構わんだろう?休日だしな」
「は、離してください!あれは葉留佳だけだと思ったから…」
「私が居てはその格好は駄目か。じゃあたまたま持っていたこのメイド服でも着てくれ」
「そっちの方がよっぽど恥ずかしいわよ!」
「じゃあこのままで良いではないか」
「そういう問題じゃない!」

 この間も来々谷さんは私の両手を掴んでいて、振りほどこうにも何故か出来なかった。
来々谷さんの力が強いのか、それとも私に振りほどくつもりが無いのか。
 どちらにしても、今、来々谷さんと触れ合っているというのは変わらない。それが嬉しかったり
恥ずかしかったりで、顔が真っ赤になってしまった。

「は、葉留佳!助けて!」

 思わず葉留佳に助けを求めた。だけど我が愛しの妹は携帯を構えて

「ごめん、このまま姉御を応援してた方が可愛いお姉ちゃんが見れる気がするから…」
「うむ、ナイス判断だ葉留佳君。その期待には必ず答えると約束しよう」
「裏切ったわね葉留佳あああ!!!」



 十分後。結局メイド服に着替えさせられた私は二人の前で

「お、おかえりなさいませご主人様…」

 と言わされたりしてとても恥ずかしい思いをした。葉留佳にはお説教したけど、来々谷さんには
逃げられてしまった。まあ不幸中の幸いかもしれない、と思い直した。
 そして、未だ私の足元で正座中のアホな妹を見下ろして溜め息交じりに訪ねた。

「全く…なんで来々谷さんの加勢をしたのよ?」
「やはは…やだなぁ言ったじゃないですか。可愛いお姉ちゃんを見たかったのですヨ」
「嘘ね」
「全く信用されてない!?」
「メイド服なら一度着てあげた事あるじゃない」

 そう、あれは葉留佳に神北さん、それにクドリャフカと鈴さんと私を含めた五人で密かに開いた
お茶会での事。何故か私とクドリャフカがメイド服で給仕をさせられたのだ。あの出来事は、心の
奥深くにしまっておくと誓った。

「…怒らない?」

 どうやら正直に言う気になった様で、上目遣いで私を見上げてくる。とても可愛かったので、
まあ正直に言えば許してあげないこともないと思い頷いた。葉留佳はゆっくりと口を開き、小さい
声で言った。

「お姉ちゃんさ、姉御の事好きでしょ?だから…ってうわ?!」
「…なんで知ってるのよ…?正直に言えば今なら頑張って許すわ…!」
「い、一緒に寝た時に寝言で姉御の名前呼んでたから…」

 私はがっくりと両手をついた。まさかそんな時に自分でバラしてしまっていたなんて……
 うな垂れる私の肩に優しく手が置かれた。顔を上げると葉留佳がにっこりと微笑んでいた。

「協力するよ」
「え?」
「お姉ちゃんが姉御に想いを伝えるの、手伝うよ」
「…良いの?」
「姉妹だもん、遠慮は要らないですヨ」

 そう言って笑う葉留佳は、とても可愛かった。思わず抱きしめてしまったのも無理はないと思う
ぐらいに。






 その後。葉留佳や直枝達に手伝ってもらい、想いを伝える事が出来た。結果は、保留という事に
してもらった。来々谷さんは快諾してくれたのだけれど、私の家の事がが落ち着くまで保留という
事にしてもらったのだ。
 なので、まだ正式に付き合っては居ない、けれど

「かなたん、お茶を淹れてくれないか。喉が渇いた」
「自分で淹れなさい、ゆいちゃん」
「手が離せないのだから無理だ」
「私も誰かさんに抱きしめられているせいで動けないのだけれど?」
「言っておくが離すつもりはないぞ」
「…わ、私も離れるつもりはないわよ」
「ああ…佳奈多君は可愛いなぁ」

 落ち着くのはまだまだ先でも。それまでの生活は、退屈しないと思う。


[No.158] 2009/06/12(Fri) 14:34:55

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