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all 第37回リトバス草SS大会 - しゅさい - 2009/07/10(Fri) 07:21:01 [No.220]
しめきり が あらわれた - 主催的な何か - 2009/07/11(Sat) 00:20:50 [No.234]
牝犬の墓場  クドリャフカは濡れた - ひみつ@20476 byte - 2009/07/11(Sat) 00:11:47 [No.232]
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虚口 - ひみつ@10133 byte - 2009/07/10(Fri) 07:31:13 [No.221]


子供は過去と未来を繋いでく (No.220 への返信) - ひみつ 初です@9272 byte

僕と鈴の間に子供が産まれた。
驚いたことに三つ子だった。
更に驚いたことに、三人とも僕らに似ていなかった。そしてその面影達は、遠い過去の人物達にとても良く似ていた。

『あの事故』の後、僕と鈴は恭介やみんなに言われた通り強く生きてきた。
僕は就職活動、鈴は家事を必死に勉強した。結果、僕は良い職に就け、鈴は全くできなかった料理を軽くこなすようになった。
卒業してからも、同僚に高給取りと文句垂れられる程になり、鈴はパートに挑戦した。

少しでも立ち止まると、少しでも迷うと、『あの出来事』に心を潰されてしまうから、常に何かに必死だった。
しかし子供ができてから『何か』が揺らいでいった。

そして―今日は『あの事故』の日だ

子供は過去と未来を繋いでく

春人「あさだー!あそぼーぜ!父ちゃん!」
飛び込んで来た春人に叩き起こされる。
次男の春人はとてつもなく元気で楽しいこと大好きなおバ…いや、馬鹿と決まった訳ではない。まだ春人は小さい子供だ。未来は分からないんだ。しかし残念ながら見た目は将来筋肉に走りそうな子だった。
理樹「…強く生きろよ…」
春人「?」
真人そっくりな顔を?な感じにする。
鈴「どこかのバカと一緒にするな」
いつの間にか起きていた鈴が言う。
そうだ。春人は春人だ。たとえ何処からかビー玉を拾ってきて葉留花さんのようにビー玉まきびししようが―
唯花「おはよう」
唯花はいつの間にか鈴に抱きついていた。
鈴「ひゃっ!?驚かせるな!唯花!」
唯花「ふふふ。ごめんなさい」
多分一番僕らに似ていない長女の唯花。例えるなら来ヶ谷さんとクドの子だ(あり得そうで怖い)ようするに外国人っぽい。
美毬「おはようございます」
三女の美毬も起きてきた。
顔は小毬さんの生き写しだ。よく転ぶ所も似ている。そして何故か常に敬語だ。薄い本に走らないことを心から祈る。

何故リトルバスターズの皆にこれ程似ているのだろう。
鈴「理樹がみんなの遺伝子もってきたんだろう」
前に言われた言葉を思い出す。
理樹「いやいやそれは無いから」
鈴「それ以外かんがえられないだろ。男どもともいちゃついていたのは理樹だ」
…西園ワールドを展開しないでください。子供に悪影響です。特に美毬。最近僕と春人見る目が怪しい。
あいにくの空模様のため、部屋で遊ぶことになった。
理樹「さて、何しようか」
唯花「すかいだいびんぐ」
見事な平仮名英語で恭介もビックリのアイディアを宣う唯花。
理樹「…いつ知ったの?そんな言葉」
唯花「てれびでやってた。」
理樹「スカイの元に行けないからね。雨で」
唯花「えー。面白そうなのに」
唯花のアイディアは良く変な方向へ飛ぶ。
美毬「それでは…おえかきがしたいです」
理樹「うーん。せっかくだし皆でできる事のほうがいいな」
美毬「みんなでおおきなものに…」
春人「あ!あんじゃん!」
春人が壁を指差す。
理樹「壁画!?ダメだよ!絶対!」
春人「え?なんで?」
理樹「壁に描いたら消せないから絶対ダメだよ!あ、春人は何したい?」
急いで話を反らす。これで忘れてくれるだろう。
春人「たのしいこと!」
なんの解決にもならない。まぁ筋肉と言わないだけましだろう。春人はまだ筋肉を知らない。知らせてはならない。しかし鈴の「小学校で習うぞ。漢字と保健で」と言う一言に絶望した。
春人「それじゃあビーだままk「らめえぇぇぇ!!」
また悲劇を繰り返す気か。鈴に怒られるぞ。
唯花「それじゃあ、ちゃんばら」
理樹「ちゃんばら?」
唯花「うん。ほんものの刀ふってみたい」
理樹「危なすぎるからね!それ!刀なんて―」
ふと紙袋に入った新聞紙が目に入る。『あの記憶』が蘇る。
理樹「やろう!ちゃんばら!」
唯花「あるの?刀」
目を爛々と輝かせて言う。
理樹「あるよ。あそこに」
新聞紙を指差す。

唯花「ほんものの刀じゃない…」
理樹「まだ子供だからね」
いや、高校生でも大人でもダメだ。
新聞紙を細く巻いた『新聞紙ブレード』これなら安全だ。
理樹「じゃあまず唯花対春人!」
二人が向き合い礼。やっぱり礼は必要だと思う。
理樹「始め!」

春人「おらおらぁ!!」
一気に突っ掛ける春人。そのまま新聞紙ブレードを降り下ろす―
新聞紙(ryが空を切る
春人「!!」
呆然とする春人の頭を後ろに回り込んだ唯花が
唯花「かたじけのうごさる」
ぺちっと叩く。
理樹「…勝負あり」
瞬間移動したようにしか見えない。残像が見えそうだ。
春人「…なんだいまの…」
気にしないで良いぞ。お父さんも分かんない。
唯花「ほらまけた人は?」
春人「…むねんなり…」
唯花「あいむうぃーなー!」
勝ち名乗りする唯花。肩を落とす春人。
理樹「次、唯花と美毬」
両者前に出て礼。
理樹「始め!」

今度は唯花が仕掛ける。
美毬「ぁぅ」
美毬は何もないのに躓く。結果避ける形になった。続けて襲いかかる唯花。
美毬「ふわぁ」
転ぶ美毬。太刀筋に合わせて避けているように見えるのは気のせいだろうか?
美毬が転んだが唯花は仕掛けない。
理樹「偉いね。倒れている相手を叩かないのは武士道の一つだよ」
誉めると、
唯花「………ぃぃ」
理樹「え?」
唯花「………かわいい」
理樹「………………え?」
唯花「あ、なんでもないよ」
来ヶ谷さんを彷彿とさせる笑顔。
顔を青ざめる僕と鈴。特に鈴は今にも逃げ出しそうだ。
その後も笑顔の唯花は美毬を凌辱し続ける。相手をいたぶるのは武士道に反する、と言ったら渋々と止めた。
唯花「かたじけのうごさる」
美毬「…むねんなり」
唯花「たのしいね!これ!」
唯花の笑みに僕は顔をひきつらせることしか出来なかった。
理樹「えっと…次、美毬と春人」

理樹「始め!」

春人「ぬおりゃあっっ!!」
美毬「ひっ」
春人の威勢だけで転ぶ美毬。
春人「もらったあぁぁあ!」
新聞(ryを降り下ろす。
美毬は目をカッと見開く。迫り来る新聞(ryを(ryで横に凪ぎ払う。
吹き飛ぶry。
全員ポカーンとしているなか。美毬の
美毬「…かたじけのうごさる」と、ぽふっという音が響く。
春人「むねんなりいぃぃ!!」
余程ど悔しかったのだろう。大絶叫する春人。

理樹「…ねえ、今のって…」
鈴「…うん。謙吾だ」
呆然と見つめる僕達。しかし、
理樹「いや、違う」
鈴「?」

違う 違う 違う
心にぽっかりと穴が空いているかのようだ
認めてはならない
『あの時』を思い出したくない―

理樹「多分テレビで見たんだよ。それか凄い才能があるのかもしれない。だって美毬は美―」春人「父ちゃん!」
春人が抱きついてくる。
春人「おれ、つよくなりたいから、あいてしてよ!」
理樹「え、ちょっと…」
春人「いーからやろう!」
力強く引っ張られる。いつの間にこんなに強くなったのだろう。
鈴「行ってこい」
理樹「いや、でも…」
鈴「父親は休日は出血大サービスの日だ。いーから行ってこい」
理樹「今出欠が危ないほうの出血になってなかった!?」
春人「はーやーくー!」
春人が急かす。まぁ…いいか。
理樹「よぅし!やろう!」
春人「おう!」
隣を見ると美毬が顔を紅くしていた。
瞬間的に走る悪寒。
理樹「…どうしたの?美毬…」
美毬は胸を押さえて、
美毬「…なんででしょう…?おにいさんとお父さんを見ていると、ほぅっとして、むねがどきどきして―」
僕と鈴は顔を見合わせブンブンと首を横に振る。そんな事を教えた覚えはない。美毬は…美毬は大丈夫だと思ったのに…(学校ではそんな事習わないため)
唯花「お母さんもいっしょにやろう!」
鈴に抱きつく唯花。
鈴!ダメだ!そんな顔しちゃ!鈴「い、あ、う…し、試合開始!」

夜。子供達を寝かしつけ、僕らも早くに布団に入る。
2つの布団を引っ付けているがスペース的には1つで十分だ。
鈴「今日は楽しかったな」
理樹「…うん」
鈴「おつかれか?」
理樹「いや、鈴は毎日子供達の相手してるんでしょう?家事もやってくれるし。それに比べたら楽だよ」
鈴「今日は楽だったぞ?理樹が手伝ってくれたからな」
理樹「…うん」
鈴の頭を撫で撫でする。
鈴「…ぅみゅ…」
恥ずかしそうな、でも気持ち良さそうな鈴。
理鬼は考える。今夜はどう鈴を攻めようか―
鈴「ちょうど今日だな」
理鬼「え?」
鈴「…事故」

『あの日』の記憶
『今日』の記憶
すべてが濁流のように押し寄せる。

理樹「…そうだね…」
鈴「…うん」
鈴が何を言おうとしているのか分かった。
理樹「大丈夫だよ」
鈴「?」
理樹「唯花は唯花。春人は春人。美毬は美毬だよ。例えどんなに似ていても、それ以外の誰でもない」
鈴「そう…だけど」

心の穴が広がって行く
耐えられない

理樹「昔の事は、皆の事はもういいんだ。僕らは―」
鈴「本当に良いのか?」
理樹「え?」
鈴「理樹は本当に…本当に平気なのか?」
理樹「…平気に…決まってるじゃないか」

僕は未来へ進みたい
過去という迫り来る恐怖から逃げ去るために
心が潰される
僕は―、思いをねじ曲げる

理樹「恭介が居なくても、一人でなんとかなるよ」
―嘘だ 僕は恭介が居ないと何一つ上手くいかない
理樹「真人が居なくても明るいよ」
―嘘だ 真人が居ないと世界が薄暗い
理樹「謙吾が居なくても話し相手はたくさんいるよ」
―嘘だ 謙吾は何時でもどんな時でも誠実に話してくれる
理樹「小毬さんのより鈴のお菓子の方が美味しいよ」
―初めて食べた小毬さんのお菓子の味が蘇る
理樹「三枝さんが居ないから追いかけられる事も無いし」
―全力で走る楽しさが懐かしい
理樹「来ヶ谷さんみたいに襲って来る人は居ないよ」
―あれほど毎日が楽しそうな人は居ない
理樹「クドが居ないから犬に押し倒される事も無い」
―一緒になって転げ回った日々
理樹「西園さんの妄想のダシに使われる事も無い」
―そんな妄想を聞くのは案外楽しかった

理樹「ね?大丈夫…だ…よ…?」

いつの間にか僕は
涙を流していた。
そんな僕をただただ見つめる鈴。
嘘だ 全部嘘だ
―涙が止まらない
強がっても穴は大きくなるばかりだ
―鈴が僕を抱きよせる
僕にはどうする事もできない
―しゃくりをあげてしまう
僕は― 僕は―

唯花「お父さん…」
春人「父ちゃん…」
美毬「お父さん…」
子供達が僕を見つめる。

理樹「ぅ…っく、…皆…」
三人とも僕に抱きつく
理樹「…ごめんね。起こしちゃった?」

唯花「どうしたの?大丈夫?」
春人「はなしてよ。おれがなんとかするから」
美毬「どこか、いたいですか?」

みんなの顔が心配に染まっている
口々に出てくる労りの声
真っ白な心

僕達の子供達
―僕達が育てたのかい?
鈴を見る
滲んだ世界で鈴はうなずく。

瞬間、世界が澄みわたる
鈴 唯花 春人 美毬
そしてその後ろに立つ『みんな』

―良いのかな 思い出しても 後悔しても 弱いままでも 過去と向き合っても

恭介が真人が謙吾が小毬さんが三枝さんが来ヶ谷さんがクドが西園さんがうなずく

理樹「ありがとう…そして…これからもよろしく…」

皆が微笑む そして すぅっと消えた

鈴「もう平気か?」
理樹「うん…大丈夫だよ」
微笑むと鈴も微笑んだ。
理樹「もう大丈夫だよ」
皆の顔が安堵に染まる。
美毬「よかった…」
春人「まったく、しんぱいかけやがって」
唯花「そうだ」
理樹「?」
唯花「こんやは、みんなでいっしょにねていい?」
僕を覗き込む3人の宝物。
そして僕の横で微笑む、鈴。

理樹「よし!皆で寝よう!」

弾ける笑顔。

もう嘘をつく必要はない
僕達は未来へ進む
『過去』を未来に繋げるために


[No.225] 2009/07/10(Fri) 21:26:18

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