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「理樹、俺は前からお前のことが好きだったんだ、結婚してくれ」 突然恭介が後ろから抱きついてきてそう囁いた。 「…うん、言ったら嫌われるかもしれないって思ってずっと言わなかったけど」 そう言って恭介のほうへ向きあう。 「僕も恭介のことが前から、大好き、だったよ」 「理樹…」 二人はそのまま床に倒れこんだ。 気色悪い夢を見た。 恭介と僕が友達関係を離れていちゃいちゃしている夢だ。 いきなり恭介が僕の部屋に来て、僕が好きだ、僕に伝えてくる。 その後は…あんまり思い出したくない。 しかしいきなりこんな夢を見るなんて僕もどうしたことだろう。 変に寝汗をかいてしまった。とりあえず制服に着替えて学校に向かう。真人は何回も揺すっても起きなかったから寝かせてあげることにした。 学校へ向かう。今日はよく晴れている。 今日は恭介を見ないことにしよう。なんか気まずい。 そうやって考えていると、 「よう理樹」 会った。 「お、おはよう恭介」 言って目を逸らす。やっぱ、気まずい。 「なんだ、妙によそよそしいな、熱でもあるのか?」 そう言って恭介は僕の額に自分の額を合わせてくる。 「ちょ、な、な」 「別に熱はないみたいだな」 「ちょ、ちょっと待った!」 深呼吸して息を整える。夢のせいか変に恭介を意識してしまっている。 「やっぱり顔が赤いな」 恭介は僕の体に触れようとする。湯気が出そうなくらい僕の顔は火照っていた。 「だ、大丈夫だって、たぶん朝風呂してきたからかな」 嘘だ。夢のせいだなんて口が裂けても言えない。 「そうか…確かになんかいい匂いがするな」 恭介が顔を近づけてくる。触れ合ってしまいそうなほど近くまで。 「わ、わ、わ」 「冗談だよ、じゃあな」 恭介はそう言って学校のほうへ歩き出した。 何気にほっとしている自分がいた。 携帯に目を落としてみると、もう始業五分前だった。僕は急いで学校に向かった。 学校についた時にはすでにチャイムは鳴っていた。。 理樹が遅れるなんてめずらしいな、と鈴に言われたが素直に、 「うん、ちょっと恭介にドキッとしちゃって」 なんて言えるわけもなく、いつもの持病がとごまかしといた。 真人はやはり来ていない。まだ夢の中だろう。 僕は授業中ずっと恭介のことを考えてて内容が頭に入らなかった。 恭介はどんなことを考えているのかとか今何をしてるのかとか、そんなことを。 …やっぱり今日の僕はおかしい。朝恭介におでこが触れ合ったとか匂いをかがれたとかそんなことだけで恭介に過敏になっている。 だいたい恭介もおかしい。いつもはあの時間には合わないしあったとしても挨拶くらいだ。 まさか恭介は僕のことを…。 顔が勝手ににやけてくる。そんな頭を振って雑念を追い出す。何を考えているんだろう僕は、だいたい僕と恭介は男同士じゃないか。 授業に集中する。退屈な授業でもとりあえず気分を紛らわすことができた。 昼休みになった。久しぶりに屋上で神北さんと一緒にごはんでも食べようかなと思って、胸ポケットにドライバーをしまって席を立つ。 階段を上る。屋上の入り口にたどりつく。胸ポケットからドライバーを出してネジを抜こうとすると、すでにネジが外れていることに気づいた。 (…神北さん?) そう思って窓からひょいと顔を出すと、そこには恭介と神北さんがいた。 (…恭介がどうしてここに) 顔を引っ込めて聞き耳を立てる。どうやら真剣な話をしているらしい。 「俺は…が……好き………どう…」 「……気持ち……素直に……」 節々が聞き取れる。 「けど……は俺が……気づい……」 「でも………努力………」 「分かった………ありが……」 「気にしな……」 どうやら話が終わったようだ。 言葉の中に好きという言葉が入っている。僕なりに推測すると、 「俺は神北のことが好きだ、神北はどうなんだ?」 「ふええ?…気持ちはうれしいけど素直に言うとちょっとびっくりしてる、かな」 「けど本当は俺がお前のことを好きだって気づいてたんだろ」 「…でもね、まだ気もちの整理がつかないよ。努力してみる、ってことじゃダメ?」 「分かった、けど俺はお前のことが本気で好きだからな、覚えておいてくれ、ありがとな」 「気にしないようにがんばるよー」 …こんなところだろうか。というかこの設定だと恭介が神北さんのことを好きっていうことにーー 足音が聞こえる。恭介がこっちに近づいてくる。僕は反射的に階段を駆け下りていた。 教室まで足早と歩く。自分の席に着くとすぐさま机の上に突っ伏した。 気持ちがぐるぐると頭を渦巻いて離れない。 恭介が神北さんを好きだとか別にかまわない。僕には関係ない。 神北さんが恭介を好きだとか別にかまわない。僕には関係ない。 けどこの気持ちは何だろう。胸をぎりぎりと締め付けてくる。 これが恋というやつなのだろうか。 いやいや、と頭を振る。まだ誰かを好きになったことはないが、これが恋だとしたら僕は相当な変態だと思う。 やっぱりあの夢のせいだ、と思いなおす。 恭介が僕に思いを伝えて、僕がそれを受け入れて、恭介と僕は… (こんなことを夢に見るなんて、ほんとにおかしくなったのかな僕は) お腹がくーと鳴った。そういえば昼食がまだだったなと思い食堂に行くことにした。 昼休みも終盤に近づいていて食堂にはほとんど人はいなかった。ちらほらと女子の集団が片付けを始めている。 僕はサンドイッチとオレンジジュースを買っていつも座っている席に着いた。 そういえば今日はいろんなことがあったな…と記憶を回想していると 「今日は遅いな」 と言って恭介が隣に座ってきた。 「あ、あれ、恭介も遅いね」 「ちょっと野暮用でな」 そう言ってクラブハウスサンドと牛乳を食べ始めた。 「……野暮用って?」 「…なんでもいいじゃないかよ、就職活動だよ」 恭介は食べる手を止め僕から目をそらした。 嘘だ。僕は知っている。恭介が屋上で神北さんに告白したことを。 でも本人が何も話したがらないのだから無闇に立ち入ってはいけないことなのだろう。とりあえず、 「そっか」 とだけ言って僕も黙々とサンドイッチを食べることにした。 本当は全部問い詰めて聞きたかったが、そんなことをして、変なやつだな理樹は、とか思われたら嫌なので黙っていた。 なんだかぎこちない。いつもはどうでもいい話をして盛り上っているのに、今日は二人とも無口だ。 僕が恭介を意識してるだけなのか、それとも恭介も意識しているの分からないが、どちらからも話し出そうとはしなかった。 食べ終わったので僕は、ごちそうさま、とだけ言って食堂を後にした。 教室に帰ると、鈴がどこかぐあいでも悪いのかと聞いてきた。僕はそんなひどい顔をしていたのだろうか。 ちょっと調子が悪いんだと言うと、鈴はそうたいしたほうがいいと言って僕を教室から追い出した。 ひどい扱いだなぁ。 教室に戻ってもまた鈴に追いかえされるだけだと思って、廊下を歩いていた先生に気分がすぐれないので早退しますと伝えて寮へ向かった。 寮の自分の部屋に着いて体温を計ってみると、案の定平熱だった。熱があったら熱のせいにでもできたのに。 布団に入って気持ちを整理しようとした。 神北さんは恭介の告白を受け止めるつもりなのだろうか。もしそうだったら恭介は神北さんと…。 だめだ、想像が勝手に妄想に変わってく。 もやもやしたものを抱えながら布団の中にいると、いつの間にかまどろんでいた。 「神北、俺は前からお前のことが好きだったんだ、結婚してくれ」 「…うん、恭介さんだったらいいよ」 「小毬…」 そう言って恭介は唇を重ねる。そのまま恭介は神北さんをベッドの上へと押し倒した。 夕方独特の西日で目が覚めた。 四時間ぐらい寝てしまっていたらしい。 また嫌な夢を見てしまった気がする。神北さんと恭介がえっちをしている夢だ。 朝見た夢の僕の場所に神北さんがいる。 なんていう夢を見てしまったんだろう。朝は僕で次は神北さんだなんて。 昨日までの僕なら単に嫌な夢を見ちゃったなぁ、早く忘れようと思うだけだが、今日の僕はそういう風に思えなかった。 胸が苦しい。胃が焼ける。頭が痛い。 気がつくと僕は泣いていた。 そうなんだ、僕は恭介のことが好きなんだ、と気づいたのは泣きやんだ後だった。 自分の気持ちに鈍感だなぁと思った。 そんなことを考えているとドアをノックする音がした。真人はノックをしないから、誰かほかに客がきたのだろう。僕はドアを開けに行く。 「具合が悪いって聞いたけど、大丈夫か理樹」 恭介が部屋の中に入ってきた。 「恭、介」 「やっぱり朝からおかしいと思ってたんだ。ほらみろ、これを貼ってやるからじっとしてろ」 そう言って僕の額に熱冷まシートを貼ろうとする。 僕はその手を乱暴に払いのけた。 「って、どうしたんだ理樹」 「恭介は今日の昼就職活動で昼食が遅くなったって言ったよね」 「…それがどうした」 「僕は見てたんだよ、恭介が屋上で神北さんと…」 「……」 恭介は目を見開いて、少しうつむいた。 「なら説明はいらないな」 恭介はさらに僕に近づいてくる。僕は後ずさりした。 「どうして分かってくれない、理樹」 「分からないよ!どうして恭介は神北さんのことが好きなのさ!なんで僕じゃないのさ!」 言ってから、しまったと気づいた。うっかり僕は恭介が好きと宣言してしまった。 「……っく」 「?」 「はははははは!」 そう笑って恭介は僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。 「…っつ、なんで笑うのさ!」 「馬鹿だなぁ理樹、俺が好きなのは神北じゃなくて」 恭介が顔を近づけてきた。 「お前だよ」 そう言って僕の唇に恭介の唇を重ねてきた。 あっさりとした短い口づけ。 一旦離し、また口づけを交わす。 今度はさっきとは比べ物にならないほどの、濃厚なキス。 お互いの舌が複雑に絡み合い、僕の口の中で暴れ出す。 一通り蹂躙しつくされたあと、恭介は唇を離した。そしてこう言った。 「俺は理樹のことが好きだ」 恭介は僕の眼をじっと見つめている。 「僕は…」 今度は迷うことなく言える。 「僕も、大好き、だよ、恭介」 そう言って、今度は自分から唇を奪いにいった。 ずっと一緒だよ、恭介。 「大丈夫か、理樹」 「まだちょっと痛いよ…っつつ」 手を繋ぎながら校門へと向かう。手が汗ばんでいる。 「緊張してるのか?」 「そりゃあ、まぁ」 好きな人と一緒なんだからあたりまえ、かな。 「大丈夫だ、理樹」 「んっ…」 そう言って優しく口づける。 「俺がついてる、もう離さないからな」 「…うん」 [No.280] 2009/07/24(Fri) 23:57:37 |
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