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all 第38回リトバス草SS大会 - しゅさいって何? 美味しいの? - 2009/07/23(Thu) 23:27:34 [No.266]
ライカ - ひみつ@3292 byte 爽やかに遅刻 - 2009/07/25(Sat) 22:28:38 [No.293]
みおっち観察 - ひみつ@10861byte 遅刻 全年齢設定準拠 - 2009/07/25(Sat) 06:54:44 [No.291]
ワンダーフォーゲルと風見鶏 - ひみつ@7578 byte 遅刻… - 2009/07/25(Sat) 02:42:42 [No.290]
しめきり - 大谷代理 - 2009/07/25(Sat) 00:23:44 [No.287]
鈴のつゆだく 指つっこんでかき混ぜて - ひみつ@16765 byte - 2009/07/25(Sat) 00:18:26 [No.286]
世界の片隅にある森のそのまた片隅の誰も見てないよう... - ひみつ@6,092バイト 今日のしゅさいは牡蠣だった - 2009/07/25(Sat) 00:11:40 [No.285]
鈴と理樹 - ひみつ@20469byte - 2009/07/25(Sat) 00:04:12 [No.284]
引用元一覧 - 作者 - 2009/07/26(Sun) 02:29:00 [No.297]
[削除] - - 2009/07/25(Sat) 00:01:49 [No.282]
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風邪をひいた日 - ひみつ@5755 byte - 2009/07/24(Fri) 22:23:27 [No.279]
こころのそうだんしつ - ひみつはじめて@2253 byte - 2009/07/24(Fri) 21:37:59 [No.278]
元気の合図 - ひみとぅ@6764byte - 2009/07/24(Fri) 21:10:19 [No.277]
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理樹は恭介の嫁。異論は認める。 - ひみつ@6363 byte - 2009/07/23(Thu) 23:54:14 [No.268]


鈴と理樹 (No.266 への返信) - ひみつ@20469byte

だめだよ、ねえ、鈴、こんなのおかしいよ、と体温で温まった少し毛羽立った白いシーツの上に横たわって繰り返し繰り返し言う理樹の吐息が鈴の唇に吹きかかり、その生温かく湿った息に微かに薄荷の香りの混じっているのを感じながら、涙ぐんで光る瞳を上から覗き込む鈴もまた心臓がうるさいほどに高鳴っているのだが、なあ理樹、理樹は嫌いなのかこういうの、と問いかけると理樹はぎゅっと眼を閉じ、〈波間で光を浴びる透明このうえないクラゲたちと同じほどに、不動の配慮とは無縁になって、流れている〉細い髪を枕に擦らせて子供のように首を横に振り、その〈珠をきざんだような小づくりな美貌〉は〈蒼味をおびるまでに透きとおった、或る種の貝の真珠層を思わせるような皮膚の色をしてい〉るのだし、〈しかも皮膚の下に、ほんの少しでも吹けばたちまち消えてしまいそうな、小さな蝋燭のゆらめく焔があって、それが内部から貝殻の蒼味をほんのり明るませているといったふぜいである〉のだが、でもボクたち、女の子同士なんだよ、と震える小声で呟いて〈ぱっちりと眼を開けた。大きな潤のある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮に浮かんでいる〉のを鈴はじっと見つめ、理樹の唇に自分の唇をそっと寄せると抵抗はなく、前歯まで舌を這い入らせるのと同時に鈴の右手が、理樹の両足の間(明るい水色と澄んだ白との縞模様の、膝と足首が軽く曲げられているのでメリヤス編みのコットン地に僅かに皺のよった、きゅうっと脚全体を、特に白く細い太腿を締めつける長い長いオーバーニーソックスと、学校指定の幾重にも襞の重なる、真ん中に三角形を浮かび上がらせるように裾が腿の内側に滑り落ちて、余計に短くなってしまっている短いタータンチェックのプリーツスカートの間)に、乱れたスカートの生地を上へ押しやりながら滑り込み、うっすらと汗ばんで肌に吸いついた青と白の縞模様の下着(何週間か前、買ったばかりでまだ履いていないその下着とオーバーニーソックスを鈴に見せ、お揃いなんだ、と理樹ははずかしげに頬を染めていた)に指先を這わせると、口を塞がれた理樹の身体がびくりと動き、鈴の喉に息が熱く流れ込み、無数の虚構が、世界が、言葉が、ものがたりが流れ込んでくる。〈あの波がしら、あの蒸気船、あの湿った綱、あの白い壁、あの髪、あの日傘、あの扉、あの噴水、あの手袋〉が流れ込んで溢れ出す、〈あの声、あの身振り、あの空、あの水、あの炎、あの老眼鏡、あのペン先。そしてあの長方形、あの円運動、あの直線〉が、〈あの美しい畸形の怪物たち、あの過激なる現在〉が波立ち、泡立ち、溢れ出すと考えるのだったが、それ故〈書くとは、なににもまして複数の自分を受け入れる体験にほかならず、だからあらゆる書物は複数の著者を持たざるをえないのであって、そのとき著者の名前は、当然のことながらとりあえずの署名にほかならなくなるだろう〉と誰かが、


酔った鈴が灯の消えた駅に向かってふかーっ!と威嚇し、鈴以上に酔っ払った理樹に鈴を制止する理性はなく、一緒になってふかーっ!とやっていると唐突に真顔に戻った鈴が一言、歩いて帰ろう、とか言ったのに違いない。歩いて? 歩いて。ええー始発までどっかで時間潰そうよ。うっさい歩くぞ。しかし〈もう、ずいぶん長いこと歩き続けているのだが――かなり長いこと歩き続けている。どれくらいの時間が経ったのか、正確には、むろん、わからないけれど〉、見覚えのある風景が全然現れないので、鈴、ここどこかな、と問うと鈴は道端の電柱に凭れて眠り込んでおり、近づいて肩を叩いてみたら〈ぱっちりと眼を開けた。大きな潤のある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮に浮かんでいる〉のを理樹はじっと見つめ、鈴の唇に自分の唇をそっと寄せると触れ合う寸前に、何すんじゃぼけーと殴られた。
理樹の唇に自分の唇をそっと寄せると抵抗はなく、前歯まで舌を這い入らせるのと同時に鈴の右手が、理樹の両足の間に滑り込み、理樹、あたしの、お姉ちゃんの体で興奮してるのか、と唇を触れ合わせたまま訊くと、〈波間で光を浴びる透明このうえないクラゲたちと同じほどに、不動の配慮とは無縁になって、流れている〉細い髪を背凭れに擦らせて子供のように首を横に振るので、嘘つき、と鈴は言う。嘘つき。う、嘘じゃないよう……。それじゃあこの硬いのはなんだ? 屈み込んで弟の制服の革製のベルトに手をかける鈴が、その湿った細い体を包み込む夏服のブラウスの〈下に、それこそなんていうか、つまりなんにも着けていな〉いのを理樹はボタンを三つも外した襟元(一番上のボタンは糸が切れてしまったのを理樹が先週つけてあげたばかりだ)からはっきりと見止め、双子の姉弟として一緒に生まれた姉の〈眩しいような白い裸の胸とむき出しの乳房を、それこそほぼ完全に見ることができた〉のだが、ベルトを外す〈腕の動きにつれて柔かく柔かく揺れ、その乳房の先端のすごくとがった二つの乳首は、まるで遊んでいるみたいに〉ブラウスの薄い布地の〈裏側にくっついたり離れたりしていた〉のだ。鈴姉、もう、これ以上僕もう我慢できないよ、鈴姉、鈴姉。我慢しなくていいんだぞ、理樹。鏡を見るような思いで姉の顔に口をゆっくりゆっくり近づける理樹の勃起した性器を、頬や鼻梁や唇を這う理樹の舌の感触を感じながら鈴は繰り返し繰り返し擦り上げ、〈まったく外面的に観察すれば、それは単調にくりかえされるこっけいな動作からなっていて、生理学的には、興奮とそれに伴う脈搏増加、血圧上昇、発汗、局部の膨張と充血、脳波の奇妙な変化、などが観察され〉るにすぎない動きなのだが、痛いほどに握り締めて離さない鈴の柔らかな手の、五本の指が何度も何度も根元から先端へと搾り取るように這い回り、出るりんねえ出るよ出ちゃうよ、このまま出していいぞ理樹、〈その瞬間、目がくらむような快感のうちに身動き一つできぬまま激しく射精して〉鈴のてのひらの中で震え、しゃがみ込む鈴の下半身に白く粘ついた液体がべっとりとたくさんたくさん降りかかり(〈あの波がしら、あの蒸気船、あの湿った綱、あの白い壁、あの髪、あの日傘、あの扉、あの噴水、あの手袋〉、〈あの声、あの身振り、あの空、あの水、あの炎、あの老眼鏡、あのペン先。そしてあの長方形、あの円運動、あの直線〉、〈あの美しい畸形の怪物たち、あの過激なる現在〉も降り注ぎ)、両腿の間に挟み込まれて捲れ上がったタータンチェックのスカートや、太腿を甘美に覆う白と桃色のメリヤス編みのオーバーニーソックスにじっとりと染み込む粘液を、指のはらでたっぷりとすくい取った鈴が下着を着けていない自分のブラウスの胸元に幾重にも幾重にも塗り重ねるので、透けた布地が鎖骨や乳房やみぞおちにぴったりと張りつき、理樹、理樹、理樹、と自分と瓜二つの双子の弟の名前を酩酊したように繰り返し呼び、どーしてお前はあたしなのにお前なんだ、どうして鈴は僕なのにそこにいるのと二人でわけのわからないことを言い合って、酔い潰れて目覚めて居酒屋を出るともう、終電の時刻を一時間以上も回っていたのだ。電信柱を抱き枕にして寝入った鈴を背負うと理樹は歩き出した。自分にとって鈴がどんな存在なのか、だいぶ前からよくわからないのだった。〈下等生物が重なり合って、細胞液をひとつに融け合わせ循環させるような暮らし〉をずっと続けている気がするし、別れ話を切り出す雰囲気になったことも一度や二度ではないのだが、不思議と片時も離れたくはないと思うのはたぶん〈未練などというものではない。そんなやさしい余情さえ、とうに搾り取られていた。ただ、お互いに馴染みすぎた者どうしの濃い羞恥が残って、このまま別れてしまうと自分の片割れが、恥ずかしい片割れが自分から離れて一人で歩いていくのを、どこまでも想像で追ってうなされそうな、そんな不安に苦しめられていた〉だけだった。要するに、鈴のことがどうしようもなく好きなのだと思う。鈴、と呼びかけてみると、うみー、と返事が返ってきた。うみーってなんだ、うみーって(海?)。
〈もう、ずいぶん長いこと歩き続けているのだが――かなり長いこと歩き続けている。どれくらいの時間が経ったのか、正確には、むろん、わからないけれど――河口近くの橋の半ばまで来た時に、ようやく夜が終わりかけようとして〉おり、明るさと暗さの入り混じる夜明け前の空は〈すべてがクレゾール液に沈んでしまった世界〉のよう、〈誰もが知る様にクレゾール液は透明ではないのだが、ドラム缶に満たされた青く透明なクレゾール液の中に沈められ、空を見せられながら溺れ死んでゆく〉かのようだった。入院している時どこからか香るクレゾール液の匂いが、よくそんな悪夢を運んできたのだ。〈クレゾール液の匂い、奇妙な艶めかしさと鉱物質の揮発性が一緒になったようなあの具体的な匂いと肌触り……〉と呟いて立ちどまった。ひとを背負って歩くのに疲れたのだった。無人の公園に立ち入って、目覚めそうにない鈴の体を木製のベンチに横たえた。〈幅も奥ゆきもしかとは見定めがたいものの、一般的な居住空間に比してかなり広いことだけは察知される室内に据えられたソファー。暖かみを帯びた水色か、象牙色? たとえ長時間身をゆだねていたとしても(むしろ時間に反比例した希薄さで)、一場の記憶からは真っ先に消え去ってしまうようなともかく落ち着いた色合いの、そのゆったりとしたソファーのうえ〉に横たわった鈴の着る、〈肌がほんのり透けるほどに薄いオーガンジーを基調にし、付属品は黒革とアルミニウム〉で、〈ウエスト脇はコルセットをイメージした編み上げとなっ〉た〈漆黒のサマードレス〉の肩に手をかけると、白熱した電灯の下、〈光輝き、爆発し、炎をあげて燃えている太陽があるのと同様に、そして植物の花々自身も光輝き、炸裂し、花弁の束の間の火災で大地を美しくするのと同じに、炎で覆われるごとく髪で覆われて光輝いている〉鈴の顔に唇を寄せ、口を塞がれながら鈴は、だめだ理樹、お願いだから、と懇願して妹の、〈清楚なフリルが開いた襟周りに奢られた、ごく淡いブルーのワンピース〉のみぞおちの辺りを力なく押し返すのだが、大丈夫だよお姉ちゃん、ボクが優しくしてあげるから、大丈夫、と言うと、髪を結んでいた〈控えめな白のバックリボン〉で理樹は、鈴の両手首を頭の上で軽く縛り上げるので、サテンのリボンのほどけた理樹の長い長い髪が首筋、肩口から水の零れるように零れ落ちて鈴の頬に触れ、その感触に鈴は喘ぐように息を吐き出し、また吸い込んで、薄手の黒いサマードレスの胸元を押し上げる。
鈴は弱々しく、な、なにするんじゃぼけー、と妹に言った。嫌だったら抵抗していいんだよ、そんなリボンすぐほどけるからね、と理樹は嬉しげに告げ、姉が手首を縛られたまま泣き出しそうな顔で身じろぎ一つしないのを見て、そっか、お姉ちゃんそんなにボクにしてほしいんだ、はずかしいことしてほしいんだ、う、うっさい、変なこと言うなあたしの妹のくせに、妹にこんなことされてよろこんでるなんて、お姉ちゃん本当に変態さんなんだね、鈴の体の上でファスナーを下ろした空色のワンピースを、太腿や脇腹、腋の下のまるい窪みやふくらみかけの胸に麻の布地をくすぐったく擦りつけながら脱ぐと、下着も着けていない体を姉の前でさらし、鈴は全身が紅潮して酷く熱く、下半身に妹の体重を感じつつその幼い裸体を見上げるのだが、白い光に〈照らされた毛は絹のように滑らかで、上質のマントのように背中まで垂れてい〉て、〈首から鎖骨、それに肩にかけては稀代の芸術家が彫り上げた聖母の像のように美しいラインを描き、しなやかな腕は氷の彫刻のようだった。そして、それら無機質に感じられるほどに美しい体の中ほどにある二つの控えめな乳房が妙にイキモノ臭さを匂わせていて、ぞっとする魅力の中に温かさを宿してい〉る理樹の体が覆いかぶさってきて首筋から頤、唇までを舌が這い回るとその度に鈴は声を艶めかせ、理樹に捲り上げられるサマードレスの裾が、脚のつけ根や下腹を流れて胸まで昇り、脇腹に沿って落ちると露わになった下半身の、下着の紐がはらりはらりとほどかれて、〈暖かみを帯びた水色か、象牙色? たとえ長時間身をゆだねていたとしても(むしろ時間に反比例した希薄さで)、一場の記憶からは真っ先に消え去ってしまうようなともかく落ち着いた色合いの、そのゆったりとしたソファーのうえ〉で弟の体にまたがった鈴はブラウスのボタンをすべて外しているので、〈胸から腹へと辿る天性の自然な括れは、柔らかなままに弾んだ力をたわめていて、そこから腰へひろがる豊かな曲線の予兆をな〉すのが理樹には見え、〈光りから遠く隔たったその腹と腰の白さと豊かさは、大きな鉢に満々と湛えられた乳のようで、ひときわ清らかな窪んだ臍は、そこに今し一粒の雨粒が強く穿った新鮮な跡のようで〉、〈影の次第に濃く集まる部分に、毛はやさしく敏感に叢れ立ち、香りの高い花の焦げるような匂いは、今は静まってはいない体のとめどもない揺動と共に、そのあたりに少しずつ高くな〉るのだけど、もうどちらのものなのかわからないねっとりとしたシロップのような蜜(太腿の内側を幾筋も幾筋も伝い垂れて白と桃色の縞のオーバーニーソックスをべっとりと濡らしている)にまみれた互いの性器を頻りに擦り合わせながら、このままだと中に入っちゃうぞ、最後までやっちゃうぞ、理樹はあたしの弟であたしは理樹のお姉ちゃんなのに、双子なのに、近親相姦だ、なあ理樹こんなのだめだよなやめようか、と理樹の耳たぶを噛んだり舐めたり、指を一本ずつしゃぶったりしながら囁き続けるので、理樹はいつまでも焦らされるままで、鈴姉僕もう無理だよ、我慢できないよお願い、だめじゃないかさっき手でしてあげたばっかりなのに、そんなにお姉ちゃんのがほしいのか、うんほしいんだ鈴姉がほしいんだ、姉弟なのに双子なのに近親相姦なのにそんなこと言うなんて理樹はいけない子だな、うっすらと汗ばんで肌に吸いついた青と白の縞模様の下着(何週間か前、買ったばかりでまだ履いていないその下着とオーバーニーソックスを鈴に見せ、お揃いなんだ、と理樹ははずかしげに頬を染めていた)に指先を這わせると、口を塞がれた理樹の身体がびくりと動き、鈴の喉に息が熱く流れ込み(無数の虚構が、世界が、言葉が、ものがたりが流れ込み)、あるかなきかの毛の生え際を鈴が指先で撫でるので、理樹は鈴の体の下から逃れるように体を動かし、甘い息を吐き、鈴、鈴、そんなところ触られたらボク、〈その大きな黒眸がちの眼が、ひとりでに一層大きく張りを持ってきて、赤く充血するとともに、さっと露が潤んでくる〉のがたまらなく可愛いのだが、理樹の体を包む白いだぼだぼのセーターの裾を、胸元まで引っ張り上げて左のてのひらでブラウス越しに乳房を包むと、骨ばったところのなく〈すんなりと伸びて、白いところにうす蒼い静脈の浮いているの〉が綺麗なルームメイトの手の、温かな感触に理樹は深く深く、喘ぎ出す。
〈二人の舌は相手のなめらかな口の中の隅々までたしかめ合い〉、生まれた時から二人はずっと双子として〈ハープの弦や絞首台のロープみたいに、ぴんと張られている〉何かによって〈結びつけられ、拘束されてい〉て、それはまるで〈自分の体がどうなっているか、自分のいろんな部分やさまざまな匂い、自分のあらゆる衝動まで、まるで内側から見ているように、知り尽くしている人間がもうひとりいる〉みたいで、〈そんな状態に置かれているのは、なんだか淫らなことのような気が〉確かにいつの頃からかしていたのだが、鈴は弟の髪を片手で〈弄びながら、片手でしずかに美しい顔を撫で、目の赴くところに一つ一つ接吻した。富士額のしずかな冷たい額から、ほのかな眉の下に長い睫に守られて閉じている目、形のよい鼻のたたずまい、厚みの程よい端正な唇のあいだからかすかにのぞいている歯のきらめき、やわらかな頬と怜悧な小さい顎〉、喉仏の見えない〈白い咽喉元を、何度も強く吸ってほの赤くしてしまった。唇に戻って、唇を軽く圧し、自分の唇をその唇の上に軽い舟のたゆたいのように揺れ動かした。目を閉じると、世界が揺籃のようにな〉り、恥部同士がぐちゅぐちゅと擦れ合って熱く、りんねえ僕だめこのまま出ちゃうよ、ああお姉ちゃんももう我慢できないぞ、入れようか入れちゃおうか、双子の姉弟なのに入れちゃおうか、どうしよう鈴、女の子同士なのに気持ちいいの、こわいよボクこわい、大丈夫だこわくないぞ理樹、鈴は理樹の水色と白の縞模様の、濡れて白い部分の殆ど透明に透きとおった下着を膝元まで引き下ろすと、泣きそうな表情をした理樹の下半身にかがみこんで頬ずりしながら、理樹のここ、いい匂いがする、と言って、頬を真っ赤にして両のてのひらで顔を覆い隠す理樹は、はずかしいよ、ボクのそこなんて、いい匂いなんかするわけないよと言うのだがしかし、本当に陶然とする匂いなのだ。顔を近づけ、頬を押し当て、舌を這い入らせるたびにそこは〈乾草の匂ひ〉、〈獣が寝たあとの、石の匂ひ〉、〈鞣革の匂ひ〉、〈篩ひ立ての小麦の匂ひ〉、〈薪の匂ひ〉、〈朝毎に来るパンの匂ひ〉、〈くづれた土塀に沿うて咲いた花の匂ひ〉、〈木苺の匂ひ〉、〈雨に洗はれた常春藤の匂ひ〉、〈夕暮れ時に刈り入れる灯心草と歯朶の匂ひ〉、〈柊の匂ひ〉、〈蘚の匂ひ〉、〈生籬の蔭にある実り了って枯れた、黄いろの草の匂ひ〉、〈野芝麻とえにしだの匂ひ〉、〈苜蓿の匂ひ〉、〈牛乳の匂ひ〉、〈茴香の匂ひ〉、〈胡桃の匂ひ〉、〈よく熟れて摘みとられた果物の匂ひ〉、〈花を一ぱいにつけた時の柳と菩提樹の匂ひ〉、〈蜂蜜の匂ひ〉、〈牧場の中を流れる生命の匂ひ〉、〈土と川の匂ひ〉、〈いろごとの匂ひ〉、〈火の匂ひ〉を漂わせる。さまざまな匂いと言葉はそうして溢れ返っては消え去り、また別の方向から流れ込んでは引いていくのだし、〈架空の、不断に書き換えられつづける砂鉄の図〉は〈一陣の風が訪れればすべて散り消え、次には違うかたちを結ぶものでしかない。あらゆる書物は「どこにもない書物」であり、空っぽの鞄、消え去る記憶のメモ書きにほかならないのだ〉が、しかしものがたりはきっと、


ものがたりはきっと水のように流れ込んでくる。〈いったい言葉は、水と、いかなる遭遇を演じてみせることができるのか〉は定かではないけれど、たとえば〈枕辺の洗面器の水面が、壁にかかった垂直の鏡の面を反映して互いに光りあって〉いたり、〈死者たちは、濃褐色の液に浸って腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしりと浮かび、また半ば沈みかかってい〉たりするように、〈前日の猛だけしい雨が舗道をひびわれさせ、その鋭く切れたひびのあいだを清冽な水が流れ、河は雨水とそれに融かされた雪、決壊した貯水池からの水で増水し、激しい音をたてて盛りあがり、犬や猫、鼠などの死骸を素晴らしい早さで運び去って行った〉が、遠くに輝くものの正体は〈何万匹とも数の知れない、薄羽かげろうの屍体〉で、〈隙間なく水の面を覆っている、彼らのかさなりあった翅が、光にちぢれて油のような光彩を流してい〉たのだし、〈顔に張り付いた髪の毛、そしてじっとりとしめった衣服のあちこちから、ボタボタと〉汗を滴らせる鈴を、自分の汗ばんだ裸の胸とお腹に吸いつかせるように背後から抱え上げる理樹の、成長しきっていない乳房が鈴の背で柔らかに潰れて先端が擦れると、理樹は〈手の幼いふくらみ、しかもその指、その掌の清潔で細緻な皺、頬にふりかかった断髪のいさぎよい漆黒、その鬱したほどに長い睫〉を震わせて甘い溜息を吐き出すのだが、二つの乳房の上まで捲り上げられた鈴のサマードレスが自らの重みでお尻の側に流れ落ち、理樹は鈴の首筋に鼻先を埋めて、くすぐったい……と儚げな声で鈴が言ったその唇の、少し乾いているふっくらとした柔らかな肉質をなぞり、〈歯ならびをさぐって、唇のあいだをたどっていった。二度三度行きつもどりつした。唇のそとがかわき気味だったのに、なかのしめりが出てきてなめらかになった。右の方に一本八重歯があって〉理樹が〈親指を加えてその八重歯をつまんでみ〉ると、ひゃめろあにふるんら、お姉ちゃんの八重歯可愛い、目覚めると背凭れに寄りかかって眠る理樹が足もとにおり、居酒屋で飲んでいた筈なのにどうして公園のベンチで寝ているのかよくわからないが、とりあえず鈴は理樹を起そうとするものの、うみーと寝言を言うばかりで起きる気配がなく、うみーってなんだ、うみーって(海!)。仕方ないので鈴はその軽い体をおぶって歩き出し、〈もう、ずいぶん長いこと歩き続けているのだが――かなり長いこと歩き続けている。どれくらいの時間が経ったのか、正確には、むろん、わからないけれど――河口近くの橋の半ばまで来た時に〉あの朝焼けを見たのだった。東の空に眼をやると大きな大きな太陽の輝きが眼に映り、〈ほとんど白熱の塊のよう〉なその〈光の粒は、一つひとつ爆発しそうな熱をもって眼窩の奥深くへ、脳髄へと達して集まり、溶け合い、共振しながら、種々の神経や物思いの層を溶かしだしていくように感じられた〉のだったが、その時鈴は背に負った理樹の存在を強く強く感じ、二人で一緒に、他に誰もおらずたった二人だけで一緒に過ごしてきた日々のことを泣き出しそうになって思い返し、〈生物が生きるのに必ずしも必要でない感情や言葉の、大部分を溶けださせた後に残る生命の明快さといったことを考え、そんなものこそ幻想だと言う理性もいま少しで蒸発しそうだと感じながら、少なくとも今よりは身軽で透明であるに違いない地平を当てもなく待ち望ん〉でいたのだ。なあ理樹、そろそろ起きろ。重たくなってきたぞ。
さあお姉ちゃん我慢してないで、と言って理樹は鈴の〈腿を内側から支え〉、黒く艶やかなサマードレスの裾を前歯でくわえさせられた鈴は、自分の体を持ち上げている妹を恨めしげに見上げて、こんな格好はずかしい、と言いたいのだけど言えず、お姉ちゃんの〈腿を内から支えて、さしてあげたい〉ってボク昔から思ってたんだよ。だからボク〈させてあげるよ。ほら、いいんだよ。いやいやをする少女のように首を振〉る鈴の抱えあげられた素足は〈拇指から起って小指に終る繊細な五本の指の整い方、江ノ島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような踵のまる味、清冽な岩間の水が絶えず足下を洗うかと疑われる皮膚の潤沢〉、すべてがまるで宝石のようで、〈ととと、と可愛らしい音を響かせて、縮れ毛の狭間から女の水脈が、体の外にゆるやかな弧を描〉き始めるのだが、お姉ちゃん、お姉ちゃんのおしっこが飛んでるよ、もっと遠くに飛ばさないと服にかかっちゃうよ、〈ちょろちょろという水音がだんだん勢い激しく高くなってき〉て、顔を真っ赤に染めて二の腕で両眼を覆い、りきひゃめらみるらみらいでとサマードレスの裾をくわえながら言い続ける姉の脚を、理樹は大きく広げ、鈴が舌で柔らかなふくらみを押し上げ続けると〈ジョボジョボと下品な音がした。ついに我慢を超えたらしく、勢いのある放水が両脚の間から噴出していた。羞恥心に苛まれて〉理樹が、だめだよう見ないで見ないでよ鈴、と涙目に言うのを全く聞き入れずにその〈熱いしぶきを浴びながら、じっと身をかたくして幸福に酔っていた〉鈴は理樹の失禁がとまると、びしょびしょに濡れた匂い立つ黒地のジャケットを脱ぎ、襟からお腹にかけて温かな液体に濡れそぼったブラウス(絞れるほどに湿ったリボンの下に、桃色の下着の波模様が透けて見えている)を、ごめんなさい許して許してようと言い続ける理樹の胸に押しつけてしなだれかかり、理樹の太腿の半分以上を覆う水色と白のボーダーのオーバーニーソックスにべっとりと、水蜜桃のように滴る染みを指先でなぞって、気持ちよすぎておもらししちゃったのか、可愛かったぞ理樹、ふえぇぇはずかしいよ鈴いじわるだよ、そうだあたしはいじわるなんだ、だからこれから理樹にもっともっと、たくさんいけないことしちゃうんだ、理樹の耳元で囁かれたその言葉と共に〈あの波がしら、あの蒸気船、あの湿った綱、あの白い壁、あの髪、あの日傘、あの扉、あの噴水、あの手袋〉、〈あの声、あの身振り、あの空、あの水、あの炎、あの老眼鏡、あのペン先。そしてあの長方形、あの円運動、あの直線〉、〈あの美しい畸形の怪物たち、あの過激なる現在〉も降り注ぎ、溢れるものがたりの海(うみー)はしかし遥かに遠く、だから〈何はともあれ、わたしたちの畑を耕さねばな〉らないのかもしれず、理樹を背から下ろして玄関の脇の壁に寄りかからせてポケットを、あれ、ないぞ、うーみゅ落としたかな、などと呟きながら探っていると、理樹が目覚めたのでおはようおはようと挨拶し、ようやく発見した鍵を銀色のノブに差し込んで左に回すのだが、やっと帰れたね、そーだな、扉を開けて鈴と理樹は、


[No.284] 2009/07/25(Sat) 00:04:12

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