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風が心地よい昼下がり、わたしは草原に向かって歩く。 そこではるかが待っているから。 さらに歩くと、はるかが出迎えてくれた。 「あ、おねーちゃん! こっちこっち!」 「おまたせ、はるか。でもごめんね、寂しくなかった?」 「仕方ないよ、こうするしかなかったんだから」 2人同時の外出は禁止されているので、前の日に相談して時間差で出るよう決めたのだ。 はるかが後だといろいろ心配だから、私が後ということになった。 それでもいくつか問い詰められたが、そこは上手く切り抜けてきた。 「よし、遊ぼうか!」 「うん! ……あ、その前に待ってるとき見つけたプレゼントがあるんだった」 「くれるの?」 「うん、はんぶんこ」 黄色と白のグラデーションが映える、小さくて可憐な花。たしかカモミールだったと思う。 はるかはとても嬉しそうな表情をしてくれる。 わたしはそれに答えるかのように微笑み返す。 「おねえちゃん」 「うん? どうしたの?」 「また、ここに来たいな」 「もちろんよ、はるか」 花と笑顔を目に焼きつけ、わたしははるかと約束を交わした。 目が覚めた。ということは寝ていたことになる。しかも場所はなぜか中庭。 幼い頃の幻、か。ついつい感傷的になってしまう。 そうだ、確か放課後中庭の花の手入れをしようとして、そしたらついウトウトと……。 「おはよ、お姉ちゃん」 「おはよう、葉留佳……ってええ!?」 「寝起きから元気ですネ。いい夢でも見た?」 いい夢だったとは思うけど、しばらくはしんみりしたかった。まさかさっきの夢って葉留佳のせい? 「葉留佳がそうさせてるんでしょう! ていうかどうしてここにいるのよ!」 「花の世話でもしようかなー、と思って来てみたらお姉ちゃんが寝てたから観察対象を花からお姉ちゃんに変更したわけですヨ」 「勝手に人の寝顔見ないの。どうせ世話なんて気まぐれ程度で始めたんでしょう」 「違う! 1ヶ月前に種蒔いて、水も毎日撒いてるもん! ……あっ」 葉留佳は言ってから『しまった!』という表情そのものをしている。 そういえば一ヶ月前から私以外の誰かが育ててる気配のある花もあった気がする。 心当たりのある場所に行ってみると、なんとカモミールが元気に咲いていた。いつの間にか育っていったので当初は驚いたものだった。 「これは……あの時と同じ……」 「どしたの?」 さっきの夢と場所。とても偶然とは思えなかった。 「夢を、見てたの。小さい頃葉留佳と遊んだ時、この花をくれたよね?」 「……うん。私も1ヶ月前、花の図鑑見てたら思い出した」 「夢の中でも思ったんだけど……どうしてこの花を選んだの?」 ただ単に興味本位で聞いた質問。しかし葉留佳は真剣な表情で話し始める。 「私さ、小さいときは花にあこがれてたんだ。ただの種が成長して、綺麗な花を咲かせる。私もそんな風になりたくて。 だから道端の花なんかも注目するようになったんだ。それで目に留まったのが、カモミール。ちいさくてかわいい、儚げな花。 早速図鑑で調べてみると、逆境に耐える、逆境の中の活力、親交、仲直り、って意味があるんだって」 今聞いた事が事実ならば、葉留佳はその頃から劣等感を抱えていて、自らの願望を花と重ねたことになる。 そして、花言葉。もしそのままの意味なら、何を思って花を摘んでいたのだろうか。 それらを考えると、気付けなかった自分が本当に情けない。私の眼から、感情が水滴となってあふれ出す。 「ゴメンね、葉留佳……頑張ってたのに、気付いてあげられなくて……」 「ううん、お姉ちゃんは何も悪くないよ。だから、顔を上げて。泣いた後は笑わないと!」 ……葉留佳、あなたが気がついてるかはわからないけど、もう立派な花を咲かせたわ。それも今までで1番綺麗な。 そしてこれからも成長を続けて、枯れることなく、誰よりも素敵な花になるんでしょうね……。 心の底から、そう思わずにはいられなかった。 落ち着いてきたころ、葉留佳は私の手にそっと手を重ね、そっと呟いた。 「ねえお姉ちゃん、また……あの場所に行きたいな。もう一度、手を繋いで」 「じゃあ今週末にでも2人で行きましょうか」 「わーい、お姉ちゃんと週末デートだー」 「ち、違うわよ!」 ただ、そんな風に楽しく出来ればいいとは思う。 まあ……そんなの関係なく葉留佳といるだけで毎日楽しいんだけどね。 [No.311] 2009/08/07(Fri) 22:18:53 |
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