第39回リトバス草SS大会 - 代理代理 - 2009/08/06(Thu) 21:14:33 [No.303] |
└ 締め切り - しゅさい - 2009/08/08(Sat) 00:38:33 [No.324] |
└ 俺のいもうとがこんなにかわいいわけがないなんてこと... - ひみつ@6094バイト - 2009/08/08(Sat) 00:33:29 [No.323] |
└ [削除] - - 2009/08/08(Sat) 00:41:35 [No.325] |
└ 泡沫の - ひみつ@17926 byte - 2009/08/08(Sat) 00:30:33 [No.322] |
└ 立ち向かえ、現実に。 - HIMITSU☆6774byte - 2009/08/08(Sat) 00:15:48 [No.321] |
└ 大いなる幻影 - ひみつ@20030 byte - 2009/08/08(Sat) 00:11:05 [No.320] |
└ 幻日逃避行 - ひみつ@20432byte 逃げ出したいのは現実か虚構か? - 2009/08/08(Sat) 00:01:44 [No.319] |
└ ホラーでうわーで冷やー - ひみつ@11893byte - 2009/08/08(Sat) 00:00:34 [No.318] |
└ DB! Z - 光る雲を突き抜けたひみつ@12021 byte - 2009/08/08(Sat) 00:00:19 [No.317] |
└ マッスルKYOUSUKE〜壮絶な修行はあえて巻きで〜 - ひみつ@1743byte - 2009/08/07(Fri) 23:39:58 [No.316] |
└ [削除] - - 2009/08/07(Fri) 23:27:00 [No.315] |
└ おやすみなさい - 秘密 14565 byte - 2009/08/07(Fri) 23:25:46 [No.314] |
└ 「おやすみなさい」補遺 - 秘密(おまけ3129 byte) - 2009/08/08(Sat) 21:09:47 [No.327] |
└ 幻性少女@微修正 - 比巳津@20198byte - 2009/08/07(Fri) 23:01:10 [No.313] |
└ 井の中の争い - ひみつ@3934byte - 2009/08/07(Fri) 22:42:11 [No.312] |
└ 原始の幻視 - ひみつ@3644 byte - 2009/08/07(Fri) 22:18:53 [No.311] |
└ 儚き夢を追い続け - ひみつ@5,093 byte - 2009/08/07(Fri) 21:49:49 [No.310] |
└ ねむりのおと - 秘匿 3,911byte - 2009/08/07(Fri) 20:13:00 [No.309] |
僕の名前は、直枝理樹。 僕の役割は、沙耶が望む通りに「直枝理樹」を演じること。 ここでは彼女が全て。皆、彼女の願った世界の部品として、それぞれの役割を果たしている。彼女が望めば、僕たちは何でもする。 ただし、「ここから出て行くこと」はその限りではない。 辺りはもうすっかり暗くなっていた。僕は一人、中庭を歩いていた。 僕は、禁忌を犯してしまった。 自分の手のひらをじっと見つめる。沙耶の体温が微かに残っている、そんな錯覚に陥った。 なぜ、僕は出口を与えてしまったのだろうか?彼女の涙を見たせいだろうか、と考えたが、それはすぐに却下された。「直枝理樹」であればそんな彼女に心動かされ、何かしてあげたいと思うのかもしれない。だが、僕にはもとより、動かされるような心が無い。 ただ、ここに居てはいけないと判断した。この世界は沙耶の望みを叶えるためにある。だけど、ここにはそれ以外、何も存在しない。 沙耶の言葉を思い出す。僕は彼女に、何故この世界から出るのかと問うた。彼女は、生きるためにここを出る、と答えた。どうせここを出ても、ほんの少ししか生きられない、それを知っているにもかかわらず。 彼女にとって「生」はどんな意味を持っていたのか?僕には、最後までわからなかった。それほどにまで価値があるものとは思えなかったが、そこに答えがあるような気がする。 「あ―――」 突然バランスを崩し、僕は倒れ込む。顔面が地面に叩きつけられる。足元に目を遣ると、僕の足首が崩れていた。痛みも何も無いから、異変に全く気付かなかった。崩れた足は白い羽になって、空に、舞い散っていた。 僕は目を瞑り、沙耶の意識を探す。しかし、いや当然というべきだろうか。いくら経っても彼女を見つけることは出来なかった。 ああ、沙耶は今まさに、この世界を去ってしまったのか――― そして、その結果がこれか。僕はうつ伏せになり、上体を起こして、崩壊が自分の太ももへと進んでいくのをぼんやりと眺めていた。 周囲を見回してみる。木も草も校舎も、末端部や表面からボロボロと崩れ、崩れた部分が白い羽になって空中を踊っていた。おそらく、寮の中の生徒もみんな、同様に崩れ始めているのだろう。そして全てが白い、羽となって、この世界は白で塗りつぶされる。その白は、色の「白」であると同時に、空白の「白」なんだろう。 もうすぐ、僕はこの世界ごと、居なくなってしまう。これは、「死」と同じことなのだろうか。 何だ、僕たちも死ぬのか。だとしたら僕たちは、今まで生きていたということになる。人と同じように。 でも、人のように死ぬのが怖いとは思わない。これからずっと動くことがなくなる、というのが僕の認識だ。同様に、生きていて楽しいと思ったことは無い。決められた動作を繰り返す、沙耶が願えばその対応を行う、それだけが僕の中の「生」だから。 沙耶は、この世界から出て、どうなってしまったのだろうか。―――やはりすぐに死んでしまっただろう。しかし、そんな彼女を、僕は羨ましいと思ってしまった。自分の意思で生きる、僕にはよく分からないことだったが、それを何故か羨ましいと思ってしまったのだ。これは、果たして「直枝理樹」の感情なのだろうか? 空を見上げる。月が出ている。赤い、赤い月だ。それが白い羽に包まれる。空はもう羽に包み込まれてしまった。音も何も聞こえない。そこにあるのは静寂だった。そこにあるのは深々と舞い散る羽だった。 あぁ―――そこで僕は気付く。そうか、あのとき僕もまた、自分で選んだんだ。自分の意思で生きること。それにこそ意味があったのだ。 そして全ては散り果てた。校舎も木々も空も、僕の体も無くなった。 この世界には、羽の白と、そして果てしない虚空だけが存在していた。 [No.327] 2009/08/08(Sat) 21:09:47 |
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