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少し強めの春風に吹かれ、花弁の彼女達は吹雪の様に散り回る。 一瞬にしてコンクリートの灰色は、か弱い処女の頬一色に染まってしまった。 …こう譬えでもしないとやっていられないな。 桜花が彼方此方で咲き乱れ、最近では見るのもいい加減飽き始めてきた。 日本の風流とやらもここまで来ると邪魔以外の何物でも無い。きっと掃除も大変だろう。 そんな事を考える私に怒りを覚えたのか、少し濃い赤茶色の中に花弁が二枚落ちる。 ふむ。 しかし意に介さずそのまま味わう。温くなった紅茶が咽喉や胃に優しく沁みこむ。 丁度風も出てきて、何とも心地よい。 ふと、年代物のカフェテラスから物静かな灰色の箱を眺め思う。 飼い犬の様な色々ちんまい少女、野良猫の様なぺたぺた胸の少女、砂糖菓子の様なほわほわ胸の少女。 小さな背の彼女達は更に小さく背を丸め、必死にかりかりと数式を写しているのだろう。 握ったら壊れそうな小さな手で、必死に大きな消しゴムをごしごししているのだろう。 ああ、考えただけで大変な事になりそうだ。 花弁が舞う、茶葉の香る濃厚な蒼色の下で 一人の少女は悦と妄想と思考に耽る 「という訳で、第5回女だらけのリトルバスターズドキドキ桃色お泊り会を開催する」 「ちょっと待って、いきなりこんな事して、どういう訳だよっ。僕そんな事聞いてないよ!」 「ええい五月蝿い少年、喚くとそのピンクの唇をおねーさんの唇で塞ぐからな」 「っん……」 日の暮れた女子寮旧館の一室 数人の少女に囲まれた少年は想像でもしたのか、はたまた何も言い返せない事に腹が立っているのかは知らないが、頬をほんのり紅く染めて俯く。 うむ、やはり愛おしい程に可愛いな、理樹君は。 「やったー、久しぶりだね〜クーちゃん、理樹くんと一緒にお泊り〜」 「はいです小毬さん、うぇるかむーですリキー」 初めてのお泊り会の時に女装させたのが不味かったのか、以降理樹君のガードがかなり固くなってしまった。 女子寮に何度呼ぼうとしても謙吾達と一緒に遊ぶ、真人達と筋肉旋風をする、恭介の作った【スクレボボードゲーム 〜気になるあの娘はスパイin the sky!〜】をやると頑なに断る。 それは、西園女史が人目も憚らず興奮する程強く。 『直枝×棗×宮沢×井ノ原、直枝さんの総攻めに購えない恭介さん達…。 …ほうっ、少し井ノ原さんが美しくありませんが、大いにありです…。 今年はこれで行きましょう、Sな直枝…か弱いベビーフェイスの裏に潜む鬼畜…。はぁ…良いです』 いや、暴走だったか。 「あはははは流石は姉御、理樹くんとっても似合ってるですヨ。 んーでも、ちょっと自信無くなってきますね。この可愛さは」 「葉留佳さん…それ褒めてる様だけど全然うれしくないよ…。…はぁ、何で僕はまたこんな格好を…」 「理樹くん、だいじょうぶ。すごくかわいいよ〜」 「わふー、そうです!べりーきゅーとなのです〜」 「あはは…一応、ありがとう」 「直枝さん、はい、カシャン…カシャン」 「うわあああぁーーーーっ!! に、西園さん!こんな格好の僕を撮らないでよっ!!」 「大丈夫です、安心してください。悪いことには使いません」 「いやいや、そこで不適に笑わないでよ。ていうか何に使うのさっ、使うのもやめてよ!」 「直枝さん、私は笑っていません。後、我が儘です」 「いやいやいや」 それにしても、折角クドリャフカ君や小毬君を誘いに向かわせていたというのに、よく今まで断ってこれたものだ。おねーさんだったら直ぐに二人ともベッドまで連れていくぞ。 …まさか、この可憐な少年は本当に同性愛に目覚めてしまったのか。いつも断っていたのは美魚君の妄想通りだったからなのか。 だとしたらファッキン筋肉共は断罪だ、許さん。 「ま、まあまあ理樹くん、おかしでも食べておちついてー。はい、私のおすすめふわふわワッフル。 他にもチョコチップクッキーとか、ポテチなんかもあるよー」 「あ、ありがとう小毬さん、えっとワッフルを貰うよ。 ふう。来ヶ谷さんに呼ばれたから何かあるとは思ったけど、 お泊り会はともかく、また女装させられるとは思わなかったよ」 「きっと女の子の理樹くんが、姉御のストライクゾーンど真ん中だったんですね。 私と相部屋になれとか、これからは女装して登校しろとか言われたりして」 「来ヶ谷さんですと、案外冗談に聞こえませんね」 …む?思考に埋もれている間に何やら私の話になっている。 相部屋と女装での登校…。なるほど、葉留佳君も中々面白い事を考える。 いい反応をしてくれそうだが、どうしたものか…。 「た、確かに…。流石にそれはちょっとやだな…。 ん?どうかしたの?クド」 「むー、よく見たらリキ私より大きい胸をしています。これはおっぱいの小さな私に対するあてつけですかっ」 「いや、え、ちょ、ま、待ってクド。くすぐったい、ん、くすぐったいって」 「ほわあああぁーーー!くーちゃんがだいたんー」 「何やら面白そうですねぇ。クド公ー、はるちんも混ぜろー! はるちんウルトラダイナミックアターック!」 「えいっ、とりゃっ! わっわふー!?重たい上に痛いですー」 「受けの直枝さんは王道ですね、百合もやはり良いです…」 「だ、だから撮らないで、って葉留佳さん止め、やあ、そこは駄目っ手、手がっ」 「っと待て少年、何やら面白い事になっているな。 これはあれかっ、ハーレム状態ヒャッホウムヒョッス最高っスって奴か! ええい、おねーさんも混ぜろ!」 「うわわわわあーっ、あうっ!」 暫くの間室内は、怒声と嬌声と悲鳴と愉悦の色声、 そして軽い打撃音に包まれた 無機質な機械の低い音と、細い指が奏でる電子ピアノの高い音が、少し悲しげに響く室内 お泊り会翌日の昼休み、私は理樹君を昼食に誘った。 「昨日はすまなかった、理樹君。 変に浮かれて、調子に乗ってしまった…」 私が飛び込んだ後、理樹君はクドリャフカ君、葉留佳君、私の三人に押し潰され後頭部をフローリングの床に強打、気絶した。 その後一人遅れてきた鈴君に、何故此処に理樹君が女の子の格好をして寝ているのか問われ、事情を説明。人生で初めて正座をし、よく分からない説教を受けた。 「いや、別に良いよ。もう過ぎた事だしさ。 それに今日二回目だよ、謝るの」 鈴君とは必ず理樹君に謝罪をする事を約束、 他のメンバーには私の所為でお泊り会が中止になってしまった事を謝罪。 その後、理樹君の安静の為直ぐに解散した。 「寮での謝罪は誠意があまり籠ってなかったからな。 だから、もう一度だ」 「そう?そんな感じはしなかったけど…。 なら、今日僕を昼食に誘ってくれたのはそれが理由?」 「ああ、それと…理樹君と二人きりで話がしたかった、というのも少しある」 「え…あう、うんありがとう」 「ん?どうかしたか、少年」 「いやっ、何でも無い!何でも無いから!」 何処かよそよそしい上に頬が少し蒸気している。 ふむ、…まあ良いか。 「少年…頭はまだ痛むかね?」 「ううん、今朝より大分痛みもひいてきたから、今はもうあまり痛く無いよ。 それにたんこぶも出来てなかったし、もう大丈夫」 「…本当にすまなかったな、理樹君…」 怪我が無いとはいえ、痛い思いをさせてしまった。再度謝罪を口にする。 だが、そんな私に理樹君は怪訝な顔をする。 「…どうかしたの来ヶ谷さん、何からしくないね」 「らしくない?」 「うん、いつもだったら大事をとって私の膝枕で介抱してやろうとか、 今すぐ帰って付きっ切りで看病してやろうとか言って、からかってきそうなのに」 「……そうだな」 「来ヶ谷さん?」 らしくない…か、確かに今の私はそうなのだろう。その原因は間違いなく理樹君だ。 少年と話すと楽しい、少年が誰かと一緒に居ると寂しい、少年が傷つくとこちらまで悲しくなる。私が原因なら尚更。 …フフフ。欠陥品の思考回路、機械女等と言われてきたこの私が最近ではこんな事を思っている。少し笑ってしまう。 だがこの想いは日に日に強くなっていく。私の意思とは関係なく。 だからだろうか、昨日あんなにも浮かれ無様に我を失ってしまったのは。 もっと理樹君と話し合いたい、もっと理樹君と触れ合いたい、もっと理樹君と知り合いたい。 …何を考えているのだろうな、私は。 「来ヶ谷さんっ、本当に大丈夫?顔真っ赤だよっ」 「うむ、少し風邪をひいたのかもしれない。それとすまないが、代わりに窓を開けてくれないか?」 「うん、わかったよ」 開いたこの部屋唯一の窓から、少し強めの風が吹き込む。 理樹君の髪を撫で、彼の匂いを運んだ春風は私の髪を揺らし部屋の中を荒れ狂う。 プリントの束はバラバラに落ち、ノートのページはパラパラと捲れ、漱石1000mが此方を非難の眼で見るがそんな事など最早どうでも良くなってしまった。 「えっ、く、くるがっ、やさぁむぅん…」 後ろから抱きしめ、彼の唇を人差し指で塞ぐ。抵抗の無い彼の暖かさが私の身体全体に伝わってくる。 「理樹君…どうやら私は本当に病にかかってしまったらしい」 声が震える、頬が熱い、鼓動が痛い でも、そんな事よりも、私の温もりも彼に伝われば良いなと柄にも無く思った。 …ああ、おねーさん大打撃だよ。 花弁が舞う、春風の吹く濃厚な蒼色の窓辺で 二人の少年少女は熱と鼓動と匂香に耽る 「……ということで、君の膝枕で私を看病しろ…少年」 [No.354] 2009/08/27(Thu) 21:02:29 |
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