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「さてさてさて、今回もやって参りました! リトルバスターズ観察日記。観察者はもちろん私、朱鷺戸沙耶と!」 「結局お前は何者だったんだランキング2位、惜しくも来ヶ谷さんに僅差で敗れたこの西園美鳥と!」 「あ、御二方。お茶が入りましたよ」 だぁー。とずっこける沙耶と美鳥。そんな2人のリアクションを見てきょとんと首を傾げるみゆきだった。 メタフィジーク・ウィンドウ・アウト 「さて、改めまして」 こほんと咳払いをする沙耶。3人にお茶が配られ、お茶菓子も完備された所をしっかりと確認してから大声をあげる。 「さてさてさて、今回もやって参りました!! リトルバスターズ観察日記。観察者はもちろん私、朱鷺戸沙耶と!!」 ズズ〜。 「あ、古式さん。このお茶美味しいね。有名な奴?」 「ふふふ。いいえ、どこでも手に入るようなお茶ですよ。淹れ方にコツがあるんですよ」 「うんがー! 人の話を聞けぇー!!」 お菓子の羊羹までもぐもぐとさせている2人に沙耶の怒りが爆発する。 「落ち着いて下さい、朱鷺戸さん」 「そうだよ沙耶ちゃん。女の子はもっとおしとやかであれってね」 怒鳴られたのに結構平然と対応するみゆきと美鳥。あげくにお茶をすすめてまあこれで落ち着いて下さいなとか言い出す始末である。 「くそぅ。いいわよ、もうどうでもいいわよ」 泣きそうな顔をして差し出されたお茶をすする沙耶。だがしかしすぐにその顔はほころんでいく。 「あ、本当に美味しい。さっき言っていたお茶を淹れるコツってどんなのなの?」 「じゃあそろそろリトルバスターズの観察をしましょうか」 「スルー!? っていうか物凄く納得がいかないんだけど!」 ズビシと突っ込みを入れる沙耶に一切の関心を払わずに側にあった窓を開けるみゆき。その窓の外に映るのは空、その空の中でリトルバスターズの面々がいつも通りに野球をしている。 ――おりゃあ! 必殺、消える魔球ぅぅぅ!! ――殺してどーするんだこのぼけっ! そして一塁に送球するのに消してどうするんだばかっ! っていうか球が消えるかこのあほぉ!! 本当に、いつも通りに。 「いつも通りですね」 変わらぬ姿を見て微笑ましく笑いながらお茶をすするみゆき。その隣でさめざめと泣いている沙耶と、そんな沙耶をあやしている美鳥。 「美鳥さぁん、このマイペースっ子をどうにかしてぇ」 「もう諦めましょうよ、沙耶さん。こういう人だって割り切らなきゃ」 きぃんと窓の外から快音が響く。空に舞う白球は高く高く舞い上がる。 「ぎゃふ!」 そしてそれは窓を通過してゴンと泣く沙耶の頭に命中。 ――おお、大ホーマーだな、理樹。 ――また一個ボールをなくしちゃったけどね。 そんな呑気な声が聞こえてくる窓の外をキッと睨みつける沙耶。 「なにすんのよ理樹くん!」 「叫んでも聞こえる訳ないじゃないですか」 「っていうかあたしってこういう役!?」 「何を今さら」 当然と言わんばかりに返事をするみゆきを恨みがましく見る沙耶。その視線を完全に無視してほぅと温かい息を吐きながらお茶を味わうみゆき。 「くそぅ、この恨み、晴らさずでおくべきかぁぁぁ!」 叫びながら沙耶は飛んできたボールを思いっきり窓の外に投げ返す。 「あ」 そしてその行く先には、美魚の姿が。思わず美鳥の口から声が漏れる。 「ちょちょちょ、なんで美魚にボールを投げるのよ!」 「ゴメン、素直に手が滑った」 神妙に謝る沙耶だが、もちろんそれでボールが止まる訳がない。みるみる美魚に近づいていくボール。 「あああ! 美魚、危ないって!!」 「だから叫んでも聞こえませんって」 目をつぶってズズズとまったりお茶を飲みながら冷静にツッコミを入れるみゆき。そして片目だけ開けて、ウインクにもにた表情を作りながら補足する。 「それに、美魚さんは心配するだけ無駄でしょう」 「それでも心配するのが姉妹ってものでしょう!?」 「私、姉妹居ませんから」 ポヨンという間の抜けた音がして美魚の日傘で飛んできたボールが弾かれる。当然、美魚は無傷だ。 ――どこから飛んできたのでしょう? ――本当にな。他に野球をやっている訳でもないし、ソフトのボールでもないし。 ――やはは。案外さっき理樹くんが打ったボールが次元を捻じ曲げて飛んできたんだったりして。 「脈絡はないけどほぼ正解よ、三枝さん」 つまらなそうに言う美鳥。楊枝で羊羹を口に運びながら相づちをうっているみゆき。ガチャンと銃の整備を整備をしている沙耶。 「って朱鷺戸さんは何をしてるんですかぁ!?」 「え? 美魚さんに心配はいらないとか言われたのが悔しいから、実弾でも心配がいらないかなっていう実験」 「いきなりそんな恐ろしい実験コーナーを始めないで! 美魚が死んだらどうするの!?」 「あ、でも不穏な空気を感じたみたいね。電磁バリアーを用意し始めたわよ」 みゆきの言葉に言い争いをやめてガバと窓の外を見る2人。確かに窓の外には電磁バリアーを用意し始めている美魚の姿が。 「ねえ、美鳥さん。なんであなたのお姉さんは他次元からの攻撃の気配を感じ取れる能力を持ってるの?」 「そんなの私が聞きたいわよ、もう」 「これがNYPの本領発揮なのでしょうか?」 既にどうでもよさそうな3人だった。 校庭からリトルバスターズの面々が引きあげていき、もうすぐ夕食の時間になる。3人もみゆきが用意したきりたんぽ鍋をつつきながら窓の外に映る食堂の風景を眺める。ちなみに比内地鶏を含めた高級鍋だったりする。 「ホットケーキパーティーとかはやってたけどさ、鍋パーティとかはやらないのかな?」 「やるとしても冬になってからじゃない?」 はふはふと熱々の鍋に舌鼓を打ちながら話す沙耶と美鳥。ちなみにみゆきは黙々と食事に没頭していたりする。 ――ぉぉぉぉぉ。俺のリトルバスターズジャンパーがぁ!! ――お、すまん謙吾。またカレーうどんの汁が飛んだか? ――また飛んだぞ! これで何度目だと思っている!? 「そう言うなら宮沢さんも食事の時にはジャンパーを脱げばよろしいのに」 「一時も脱ぎたくないんだけでしょう? あれを着たまま部活に参加した時の二木さんの表情は面白かったし」 「っていうかみゆきちゃん、食事早いね!?」 いつのまにか自分の分の鍋を食いつくしたらしいみゆきに向かって思わずつっこみを入れる美鳥だが、みゆきはまたしてもスルーして窓の方を向くだけ。 「みゆきちゃんって冷たいよね」 「今さらじゃない。もうこういう人だって割り切らないと」 立場を入れ替えて慰め合う美鳥と沙耶。 ――で、鈴はまたカップゼリー付き? ――ち、違う。たまたまてきとーに選んだ奴にカップゼリーが付いてただけだ! ――あ、鈴ちゃんまたカップゼリーなんだ。カップゼリー、美味しいよね。 ――うん。カップゼリーは神だな。小毬ちゃん、1個食べるか? ――語るに落ちてるぞ、鈴。 ――ありがとー。じゃあ私の飴をあげるね。半分こでお互いにハッピーなのです。 「あ、沙耶さん。そっちの醤油を取って」 「はい」 「ありがとう」 「2人とも興味なくしすぎです。ところでデザートに桃のアイスがありますけど、どうです?」 「そういうみゆきちゃんも興味なくしてるよね。アイスは食べる」 「私も食べる」 ――さあさあクドリャフカ君。この牛乳を飲みたまえ。やはり大きくなるには牛乳だぞ。 ――や、やはり来ヶ谷さんも牛乳をたくさん飲んだからっ!? ――ん? ああ。私は外国暮らしが長かったからな。私が住んでいた所では特に牛乳の消費が多かった。 ――の、飲むです。暴飲暴食になる程飲むですっ! ――いや、物事には限度とか適正量とかいう物があるのだがな。 ――んっく、んっく。 ――はぁぁぁ。一生懸命に牛乳を飲むクドリャフカ君、萌え。 「この桃のアイス、美味しいわね」 「ありがとうございます。ちゃんと桃を使っていますから美味しいんでしょうね」 「みゆきちゃんの腕があってこそだと思うけどなぁ」 ――つまり、私も牛乳を飲めば胸が大きくなると? 「あ、やっぱり美魚は胸が小さいの、気にしてたんだ」 美魚が窓の景色に映ったと同時にいきなり窓の外に注意を払う美鳥。つられて窓の外に視線を向ける沙耶とみゆき。 「美鳥さんも胸の大きさは一緒ですけれども」 みゆきの発した言葉に思わず自分の胸を見る美鳥。沙耶の視線も自然にそこに向いてしまう。 「まあ、ドッペルゲンガーだし。それで?」 「美魚さんみたいに自分の胸の大きさを気にしたりはしないんですか?」 美鳥はそう言うみゆきの胸に視線を向けてみる。美乳。次に沙耶の方に視線を向ける。巨乳。窓の外の来ヶ谷を見る。爆乳。自分の分身である美魚の胸を見る。貧乳。 その全てを見て、はぁとため息をつく美鳥。 「全く気にしないって言ったら嘘になるけどね。胸が小さい方が好きな人だっていない訳じゃないし、しょうがないとしか言いようがないじゃない」 ――別にいいです。胸が小さい方が好きな殿方だっている訳ですし、私は気になんかしてませんから。 「美鳥さんは悟っているように聞こえるけど、美魚さんは物凄く悔しそうに聞こえるわ」 「というより、美魚さんのは負け惜しみ以外の何物でもないでしょう」 清々しい顔の美鳥と無表情の美魚を見ながら言いあう沙耶とみゆき。 ――ちなみに理樹少年は胸がある方とない方、どっちが好きなんだ? ――えええええ? そこで僕にふる訳っ!? 「ナイスです、来ヶ谷さん!」 思わず大声をあげる巨乳の沙耶。シニカルにフフと笑うのは美鳥。 「もちろん貧乳が好きなのよね、理樹くん。なんだって美魚とあそこまでしたんですし、それに1日中私とシた事を忘れたとは言わさないわよ」 「いえ、ですから忘れてると思いますよ?」 律義につっこむみゆき。もちろんそんなつっこみなんて聞いちゃいないけれども。 「あーはっはっは。何を言うかと思えば。中庭で私と一度きりの情熱的な逢瀬をした理樹くんが巨乳好きじゃない訳ないじゃない」 「能美さんとも情熱的にシてる事はシてますけどね」 みゆきは義理だと言わんばかりに一応こちらにもつっこみを入れておく。 「さあ」 「理樹くん」 ――胸がない方とある方。 ――どっちが好きなのかな? 前のめりになって鼻息荒く窓の外を覗きこんでいく沙耶と美鳥。窓の外の光景はもちろん美魚と来ヶ谷に迫られていてタジタジになっている理樹が映されている。 ――あ、あの。それは。 ――それは? ――それは!? 「「それはっ!?」」 ゴクリと唾を飲み込んで理樹の返答を待つ。そこから少し離れたところで話題から弾き飛ばされたみゆきがつまらなそうにしていたり。 ――む、胸が好きなんじゃなくて好きになった人の全部が好きなんじゃないかなって思うんだ。 「逃げたわ」 「逃げたわね」 「ええ、逃げましたね」 窓を見ながら頷きあう3人。この手の質問に逃げるなという方が無理な注文なのだろうけど。 「あ〜あ、つまんない。絶対巨乳の方が好きって言うと思ったのに」 「むしろ美魚の胸が好きって言った方が面白かったのに」 さらりと言う美鳥にみゆきの顔が少し引きつる。 「いや、それはいくらなんでも」 「冗談でもそう言ったら美魚の反応が本当に面白そう」 「本当に妹?」 ひどい事をためらいなく言う美鳥に沙耶の顔もひきつる。けれども美鳥の顔は平然としたまま。 「妹じゃなきゃ、冗談でもこんなひどい事言えないし」 「それもそうね」 妙な納得をした沙耶。そんな会話を聞きながらみゆきはチラと時間を計る。 「そろそろ時間ね」 「え、もう?」 「楽しい時間ってすぐに過ぎるから嫌」 沙耶と美鳥がつまらなそうな顔をする。その間にも眼前の窓の上から雨戸が音をたてながら徐々にしまっていく。消えていく窓の外では、まだ楽しそうに食事だかじゃれあいだかをするリトルバスターズの姿が映っている。 「あーあ。あっちは楽しそうなになぁ。なんで参加出来ないんだろう?」 「本当よ。たまには理樹くんと話をしたいのに」 「まあまあ、いいじゃないですか。私たちには永遠の時間があるんですから」 ふてくされる美鳥と沙耶をなだめるみゆきだが、逆効果らしい。2人そろってジロリと見られてちょっとだけたじろいでしまう。 「そういう古式さんだって、宮沢くんと話したいんじゃないの?」 「それはもちろん話せればそれにこした事はないのですけど」 もうほとんど雨戸に隠れてしまった窓だけど、一瞬だけ謙吾の顔が映った。満面の笑みのそれを見て、みゆきは寂しそうに笑う。 「御二方と違って私の場合は自業自得ですから」 そのしんみりとした顔を見て、居心地が悪そうに体をゆする沙耶。 「あたしが悪かったわ」 「あ〜、そういう辛気臭いのはナシナシ」 美鳥も一緒になってそう言う。 「そうですよね。終わりよければ全てよしと言いますし、終わりくらいは笑顔の方がいいですよね」 そう言って無理にではなく、自然に浮かんだ笑みで窓の方を見るみゆき。頬杖をついた美鳥と、花火を見終わったような顔をした沙耶も窓の方を見る。 3人の視線を受けたように、1日のうち僅かな時間しか開かない窓が、ピシャンと音をたててしまった。 [No.357] 2009/08/28(Fri) 03:18:24 |
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