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ぼーっと、窓の外の線を眺めてみる。線は水で。水は雨で。そんな事全部わかっているくせに私は感心したように「おー」とか言う。無駄に上を向いたりしてみた。見えるのは窓の縁とかそういうものばかりだった。そういえば上を向いた時にちらっと窓の外に何かを見たような気がする。何か変なツーテールの合羽少女が木に登って傘握って飛び降りようとしている場面だったような気もするが、まあ無視しよう。 「って無視デスか!? はるちんが今からスタントマンもびっくりスーパーなジャンプをしようとしてるのに!」 「窓を開けるな雨が入る鬱陶しいあとついでに紅茶買ってきてくれ」 「え? 紅茶? うんまあ良いけど…でもそれははるちんのジャンプを見てか」 窓を勢い良く閉め、私は寮へと向かった。こんな雨の日の暇潰しには、読書が良いだろうか。あとなんか最近葉留佳君が素直で怖いなぁ、なんて考えながら。 後ろで、そうだな例えるなら、高いところからジャンプしたのは良いけど着地の事とかまるで考えていないのを思い出して傘も一瞬にして裏返っちゃってそのまま尻餅ついた様な、そんな感じの音がしたが無視した。 寮に向かう途中で後ろから声をかけられた。葉留佳君の様な声だったので無視して部屋に向かおうとした。だが腕を掴まれてしまった。その手は濡れていた。酷く気持ち悪かったのでその腕を逆に掴み返し、一本背負いみたいな事をしてやった。漫画みたいに飛んでった狼藉者の正体はつまらない事に葉留佳君だった。これで佳奈多君とかだったら面白かったのだが。 「何今の!? 一本背負いっぽいのに凄い飛距離!」 「一本背負い・遠心飛行改だ」 「改って事は前のバージョンもあったんだ?」 「あれは飛びすぎて危険だったから封印指定を受けてしまってな。ところで紅茶は」 「あ、はいこれ。ストレートで良かったんだっけ?」 「うむ、ありがたい」 キャップをあけ、一口飲む。不味くも泣く上手くも無い液体を喉を鳴らして飲む。その様子を何故だか頬を赤らめつつ見つめている葉留佳君。悪い気はしないのだが、少し怖かった。 部屋に戻ってきてさて本でも読もうかと椅子に腰掛けた瞬間だった。いきなりドアが物凄い勢いで開いて佳奈多君が飛び込んできたのだ。私は椅子を少し下げ、足を伸ばし、腕を組んだ。転んだ佳奈多君の頭が丁度私の足の裏に当たったので思い切り押しのけてやった。 「いたい」 「それは当然だろう」 「と言うか何するのよ」 「無作法に飛び込んできた侵入者を足蹴にして何が悪い」 「マナーとかそういうのが悪いわ」 「ええいどうでも良いからさっさと変装を解け」 そう言うと佳奈多君もとい葉留佳君は髪形を変えていつも通りになった。それから首をしきりに捻り「あれー?」とか「うむむ?」とか呟き始めた。 「ねえ姉御、いつ気がついたの?」 「最初からだが」 「えー? 流石に嘘でしょ?」 「私は女の子ならおっぱいの大きさでわかる」 「男の子なら?」 「興味ないな」 そう言うと葉留佳君は「ふーん」とか言って本を物色し始めた。官能小説のあたりになってから顔を真っ赤にしていた。可愛かったが勝手に本に触らないで欲しい。 結局「…これ、借りても良いデスか?」と一冊の官能小説を借りて出て行った。いつにも増して意味がわからなかった。 次の日、赤い顔で「はるちんには難しすぎましたヨ…」と返しにきた。面倒だな、と思った。感想を聞きたかったが、生憎授業が始まってしまった。 葉留佳君とは放課後になっても会わなかった。雨だからだろうか。 いつも騒がしい子が居なくなると当然だけど結構静かだなぁとか思いながら寮に向かう。あのテンションをどんなに暑い日でもやるのは無駄に凄いと思う。それにしても暇だ。暇つぶしに葉留佳君が言いそうな台詞でも考えてみるか。 「あーねーごー!夏服になってから更にせくしーですねっ!ってこれ前にも言った? まあ良いやー」 そう、こんな感じだ。というか本当に出会ったな。もしかしたら私は超能力でも使えるのかもしれんな。 「うるさいぞ葉留佳君。出来る限りで良いから静かにしてくれないか」 「じゃあ静かにしますヨ…」 しゅん、とうな垂れて静かになった。意図せず葉留佳君の頭が目の前に着たのでとりあえずその頭にもずくを乗せてみた。うむ、気持ち悪い。 「ってちょっと!何もずくのせてんの?! うわーぬるぬる…」 「卑猥な子だな葉留佳君は…もう、こんなにして」 「いや、原因は姉御なんだけど…」 涙目になりながら頭の上のもずくを取っていく彼女は、正直可愛かった。もういっそそこらの教室に連れ込んで禁断の甘い行為でもしてやろうかとも思った。そう考えると、今は絶好のチャンスかも知れないし、粘つく液体まみれの葉留佳君とぐちゃぐちゃになるのは楽しそうだが今は遠慮しておく事にする。それによく考えてみると相手が葉留佳君なのがちょっと微妙だった。 長い間降り注いだ雨がようやく止んだ。それでも天気は快晴とはいかず、晴れと曇りが一緒になってる微妙な感じだった。 久しぶりに裏庭の秘密でお洒落なカフェテラスに行ってみると先客が居た。 「やっほー姉御ー。今日も綺麗で美しくてびゅーてぃほーで羨ましいデスよ」 「褒めてももずくかそこで拾った汚い赤い布しか出んぞというかやる」 「…それ、真人君のじゃ」 「そうか、言われてみればそうかも知れんな。捨てておこう。」 ぽいと布を捨て、少し湿った椅子に座る。葉留佳君がテーブルに突っ伏しつつ紅茶を差し出してきた。うむ、ナイスだ。 ゴクゴク紅茶を飲んでいると葉留佳君がモジモジし始めた。目障りだった。何でモジモジしてるのかわからんが、とりあえず止まって欲しかったので頭を鷲掴んだ。すると、葉留佳君は少し俯きながらこう言った。 「あ、あのさー姉御?」 「うん? なんだ?」 なんだかいやな予感がする。冷や汗も出てきた。 対面の葉留佳君がにっこり笑ってこう言った。 「姉御ってさー付き合ってる人とか居る?」 その日から、追われる私と追う葉留佳君という世にも珍しい絵が、後者の窓という窓からから見下ろせるようになった。放課後の予定が全て鬼ごっこで埋まった。 [No.371] 2009/08/28(Fri) 23:17:55 |
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