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「何か楽しいことないかなー」 私は、食後の昼休み特にすることもなく、中庭を適当にぶらついていた。 お姉ちゃんと仲直り出来たのはいいんだけど、依然として態度が冷たい。 正面から抱きついたりもしたけど、あっさり避けされた。壁に激突することになって、心も体も痛かった。 もっと素直になってくれてもいいのに。 「三枝さん」 「うお、みおちんいつの間に」 「最初からいましたが」 見ればみおちんは中庭の木の下でいつもどおり本を読んでいた。いつもの本に見えたけど、なんか違うことに気付き、聞いてみた。 「ねえねえ、その本なに? どんな本?」 「気になりますか? では説明するのでこちらへ」 そう言われたので遠慮せず隣に座ることにした。みおちんの髪の香りがなんとも鼻に心地よい。 どうやら最初からその本のことを説明するつもりでいたみたいなので、とりあえず聞くことにした。 「これは私が図書室で見つけたおまじないの本です。暇つぶしにやってみたのですが、地味にすごいです」 「……どういうこと?」 「内容は大した事ないのですが、1部を試してみたところ、全て成功しています」 確かに地味にすごい。どんなのか気になり、渡してもらって中を見る。 そこには、「茶柱を立てるおまじない」とか「勇気が出るおまじない」とか「次に買うアイスでアイス当たりを出すおまじない」 とか、ほとんどが地味だった。 「私はこれでアイスの無限連鎖を続行中です」 「おお、それいいね。お小遣いも減らないし!」 「ただ欠点は同じ種類のアイスしか食べれないということです」 それは確かに残念だ。どれにしよっかなーって選ぶのが楽しいのに。 後もよく似たのばっかりだった。飽きたから返そうとすると、かなり興味深いおまじないがあった。 えっと……体育館倉庫で2人きりになるおまじない……ってええ!? なんかものすごいのが自然に記されていた。 「みおちん、これ……」 「ああ、それですか。なぜか同性間限定です。しかもおまじないは本人の合意がないと出来ないので、棗X直枝は見れそうにありません……」 まあ体育倉庫って時点で見れないとは思うけど。 それにしても同性かー、それがなかったら理樹くんを選んでたかもしれない。 それはさておき、早速やってみることにした。さすがにこれは当たらないだろう。 「んじゃこれやってみるね。えっと、どうするの?」 「そこに書いてあるでしょう……まず10円玉を二枚出してください。出来ればギザギザ付きのやつを」 しぶしぶといった感じで教えてくれる。財布を確認してみると……あった。 「では縦に二枚立てて下さい」 「ええ!? それはさすがに無理じゃないかな?」 「だからギザギザ付きのを指定したんです」 ああ、なるほど。それでも難しいとは思うけど。 10円玉を一枚本の上に立てる。その後もう一枚の10円玉を左手の人差し指と親指ではさみ、ゆっくりと立ててある10円玉の上に持っていく。 少しでもバランスが崩れれば倒れる、少しでも下手にゆらしたら倒れる。あーもう、こういう作業苦手だー。 唾を一度飲み込み、意識を集中させる。 立ててある10円玉の上に人差し指で持っている10円玉が触れた。下のを倒さないよう、微調整をしていく。 このくらいで大丈夫だろうか、そう判断した私は人差し指を10円玉から離していく。 ……10円玉は倒れる様子はない。どうやらうまくいったようだ。 「やった、できた!」 「では誰か一人思い浮かべてください」 私は頭の中で迷い無くお姉ちゃんを思い浮かべた。 「では、『リタフニコウソクイイタ』と3回唱えてください」 「リタフニコウソクイイタ、リタフニコウソクイイタ、リタフニコウソクイイタ……」 そのとき、さっきまで倒れる気配のなかった10円玉が突然崩れた。後でみんなにも見せようかと思ったのに。 「で、誰を思い浮かべたんですか? ……私なんて言わないでくださいよ?」 「お姉ちゃんだけど? 一緒に入りたかった?」 「べ、別にそういうわけではないですが……」 素直にそう告げると、やや顔を赤くして、残念そうにするみおちん。 ……まさか、本当に入りたかった? 「今度は私にそのおまじないかけてみたら?」 「だから、違うと言っているでしょう」 「じゃあ私からかけようか?」 「……結構です。それでは」 「あ、ちょっと!」 ……行っちゃった。早足でとてとてと掛けていくその姿は、恋する少女みたいでかわいかった。 いつもは反応が薄いのに珍しいこともあるもんだと思う。どうしたんだろ? おまじないの効果を試すため、早速体育倉庫周辺をうろついてるんだけど、特に何も起こらないなあ。 やっぱり効果なし? そう考えてるとお姉ちゃんがいつの間にかこっちに来ていた。なぜか籠に入った大量のソフトボールを持って。 「よいしょっと……あ、葉留佳。ちょっと手伝ってくれる?」 「うん、いいよー。どうしたのそれ?」 「ソフトボール部に頼まれてね」 「そうなんだ。じゃあこっち持つね」 腕を震わせながら籠を持つお姉ちゃんを見かねて、私は手伝うことにした。 「もう風紀委員は辞めたっているのに、頼まれごとが多いのよね」 「それだけ皆から慕われてるってことだよ」 そんな話をしているうちに倉庫に着き、慎重に籠を降ろす。 「……よし、これで終わりね。さっさと出ましょう」 頼まれごとも終わり後は出るだけ。なんだ、やっぱり効き目ないじゃん。 そう思った瞬間、倉庫の鍵が何者かによって閉ざされた。 まさかホントに起こるとは思わなかったけど。そんなに暗くも無いからまあ大丈夫かな?。 「え、ちょっと、どういうこと!?」 予想通り慌ててる慌ててる。もっとめったに見れないその姿を見ていたかったけどしょうがない。 ここらで種明かしをしますか。 「実はね、おまじないなのですヨ。体育倉庫に2人で閉じ込められるっていう」 「……ふうん。笑えない冗談ね」 「ちょ、ちがうって! ホントなんだって!」 「何処の世界にそんなピンポイントなおまじないがあるのよ!」 「いや、現状がこれだし」 お姉ちゃんは唇に手を当て悩んでいるポーズをとる。 しばらく考えた後、ようやく口を開いた。 「……どうして、私なの? こんなシュチュエーションなら直枝あたりで良かったじゃない。なのに私? もしかして葉留佳……」 「いや、違うって! そのおまじない、同性限定で」 「いよいよ怪しくなってきたわね……」 う、なんか誤解されてるっぽい。なんか私が好き好んで閉じ込めたみたいだ。いや、実際そうなんだけど。 ここは変に誤解を解こうとして墓穴を掘るより、普通に話をしよう。うん、それが良い。 「ねえ、どこか出られそうなとこある?」 「あの窓しかないわね。でも高いうえに狭くてきついわ」 「まー、どーしましょうかネ?」 「……葉留佳?」 「やはは、ごめんごめん。でもお姉ちゃんともっと一緒にいたいな」 「っ!?」 私が言った何気ない一言におねえちゃんは1瞬体をビクッと震わせ、すぐさまそっぽを向いた。誰が見ても動揺している。 やっぱりお姉ちゃんはかわいいな。……あれ? 何か様子がおかしい。 こっちへと向き直り、潤んだ瞳で私を見つめ、四つんばいの状態で少しずつ詰め寄ってくる。 「葉留佳は……私と2人きりになりたかったのよね? 何をしようと思ったの?」 そんなこと急に言われても、普通に話をしたかったとしか言いようが無い。 他に答えようも無いので、そう答える。 「お姉ちゃん全然私と話してくれないじゃん。冷たいしさ。だからここならゆっくり話せるかなーって……」 「そう……でも私は話よりもしたいことがあるんだけど、わかる?」 気付けば私とお姉ちゃんの距離は数センチにまで迫っていた。しかも私は後ろが壁なのでこれ以上下がれない。 いつもの私ならここで軽く頬にキスでもして「わーお姉ちゃん顔真っ赤ー」とでも言って騒いでる筈なのに、それが出来ないでいる。 気恥ずかしさからか無意識に視線を逸らすも、求めるような視線を真っ直ぐに私へと向けてくる。 「私はずっと葉留佳をこの身体で感じたかった。今までは出来なかったけど、今は出来る。すぐにそうしたかったけど、 プライドと不安がそれを拒み続けて……。大好きよ、葉留佳」 「あぅ……」 今度は私が動揺する番だった。近すぎる距離に今の台詞。顔が熱を帯びていくのが自分でも分かる。 いっぱいいっぱいな私に、今にも触れそうなお姉ちゃんの唇がさらに近づく。それと同時に頬をつかまれ、顔を固定される。 ああ、もうこれ完全にキスの体勢だ。でも……嫌じゃない。むしろ嬉しい……かも。 目を閉じ、その瞬間を待つ。心臓は早鐘を打ち、口が一気に渇いていくのが分かる。 その直後、私の唇に暖かいものが触れた。 ほぼ同時に離れ、私の胸の中が温かいもので満たされた。きっとお姉ちゃんもだろう。いつもは見せてくれないような柔らかい表情をしている。 「葉留佳……もう貴女しか見えない。その全てを私に見せて……」 「うん、佳奈多になら、いいよ……」 その後放課後に姉御が扉を開けてくれるまで、私たちはずっと倉庫の中だった。 一段落ついた時に、姉御の声が聞こえて、すぐに扉が開けられた。 鍵は持ってなかったみたいだけど、どうやってあけたんだろう。 気になるけど今はそれどころではなかった。 「ところで、なぜ2人はそんなところにいたんだ?」 「えっと……」 答えられるわけがない。答えたなら私たちのことがばれる他に、他の女子の事も心配だ。 おまじないを知ったとたん、すぐ実行しそうだ。 こういう時頼りになるお姉ちゃんも今は普段を装うことで精一杯みたいだし。 「まあいい、今回は疲れているだろうからな。次に会うときは覚悟するといい。ではな」 どこかの魔王っぽい台詞を残して姉御は去っていった。 これってみんなの前で質問攻めにされるって意味じゃあ…… そんな心配をしていると、お姉ちゃんは意を決したように口を開いた。 「葉留佳、さっきの事は絶対に言っちゃだめよ。2人だけの秘密なんだからね」 「わかってるって。かわいかったよ、お姉ちゃん」 「……葉留佳のバカ」 「ゴメンゴメン。今もかわいいよ?」 「……もう知らないわよ、葉留佳のことなんて」 そう言ってそっぽ向くけど、やっぱり嬉しそう。 お姉ちゃんが素直になってくれて私も嬉しい。これはさすがに予想以上だったけど。 でもさっきみたいなお姉ちゃんを見たいと思ってるのも事実なわけで。なんか複雑な気分。 「葉留佳、今夜……寮長室に来てくれる?」 「え!? う、うん、わかった……」 何とか返事をするも身体は正直で、胸の鼓動は一気に加速する。 けれど不意に握られたお姉ちゃんの手で、それは安らかなものへと変わった。 やっぱり私はお姉ちゃんといると安心するんだ。今日改めて、それがわかった。 [No.372] 2009/08/28(Fri) 23:42:57 |
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