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「はい、棗くん」 私は買った品物をポイッと棗くんに手渡した。 「……おい、まだ買うのかよ」 ジト目で睨まれるが、買う物が多いんだから仕方ないじゃない。 店を回ってる内についつい目移りしちゃうし、なにより今日みたいな機会じゃないとこんなにいっぱい買えないし。 「持ってくれる人がいないと多くは買えないんだもの。なら今日のうちに纏めて買うほうが得策でしょ」 女の子一人で買い物は大変なんだから。 「巻き込まれる俺の身にもなってくれ」 「知らないわよー。もう、そんなに私といるのが不満」 さっきから文句が多いので少し顔を膨らませる。 棗くんって案外器小さいのね。 「大量に荷物持たされてるのが不満なだけだ。おまえなぁ、どんくらい俺が荷物抱えてると思ってんだ」 言われてまじまじと棗くんを見る。 「全然棗くんの顔が見えないわね」 「平然と言うなよ。真人が喜ぶレベルだぞ、この量は」 筋トレにいいとか言い出すな絶対とかブツブツと呟いている。 ……うーん、確かにちょっと普通の男の子が持てるレベルを超えちゃってるかしら。 それでもちゃんと持ってくれるのが棗くんよね。 「もう、じゃあ恋人っぽく振舞ってあげるから許して」 両手を合わせて片目だけ瞑って彼を見上げる。 もし頷いてくれたら仕方ない、恩もあることだし抱きついてあげよう。 三枝さんがやるみたいに胸を押し付けてみてもいいかもね、キャ。 「アレは冗談だ。つか今の状態で腕でも組まれたら確実に落とす。だからやんじゃねー」 「えー、ひどい。傷ついちゃったわ、私」 私はヨヨヨと両手で顔を覆う。 そんなにキッパリ断らなくても。 「お前がそんなので傷つくたまかよ」 ……いや、結構そうでもないんだけどね。 でもそんなのはおくびにも出さない。 私がそういう人間だと思ってるから彼は今のように付き合ってくれてるんだし。 「はいはい。仕方ないわね、そんなに言うなら一度どっかで休憩しましょうか」 なにか適当なお店ないかしら。 きょろきょろと周囲に首をめぐらせる。 「……おい、その言い方からするにもしかして後でまだ買うのか」 「当然」 何を分かりきったことを。 私が告げると棗くんがゲッソリとした顔で項垂れたのだった。 「あっ、あそこがいいんじゃない」 指差した先にはレストランが一つ。 「あれか。なんか食うのか?」 「そうね、デザートでも頼みましょっか」 「へいへい。お姫様のお望みどおりに」 棗くんは恭しく礼をすると、私の隣に立つ。 「うん、よろしく〜」 そんな彼に私はにっこりと微笑みかけた。 「で、どれにすんだ」 店の前のディスプレイを指差し聞いてきた。 「えー、なんか普通っぽい。執事っぽく尋ねてよ」 「細かい注文だな。つか元の設定は恋人じゃなかったか」 「うーん、それも魅力的な設定なんだけどね。やっぱいい男はかしずかせたいじゃない」 そういう願望は女の子なら大小あるもんよね。 「いい趣味だな」 呆れたように言わないでよ。 「はぁー。ではお嬢様、どちらになさいますでしょうか」 「うん、おっけおっけ。いやー、いい気分」 なにか言い知れない快感が。 「おい」 「はいはい、分かってるから睨まない。そうねー」 しばらくディスプレイと睨めっこしていると立てかけてある看板が目が留まった。 「これ、いいわね」 「ん?カップル限定特製パフェだとぉ!」 私が示したものを見て大げさに棗くんは驚いてくれる。 「なに、不満?」 「不満って言うかこんなの食うのか?」 「ええ、写真見る限り美味しそうだし」 答えるとありえないものを見るような目で見られた。 「マジか?こんなに甘ったるそうで量多そうなのに」 「そう?普通でしょ」 量はまあちょっと多いけど充分許容量だ。 「って、ああ二人分かこれ。……いや待て待て、一つの器を二人で食べるのか?」 「まあカップルだし」 「い、いや、さすがに本当の恋人でもないのにそれはちょっと……」 珍しくうろたえてるわねぇ。 「大丈夫よ、全部私が食べるし。あなたは代金だけ払ってくれればいいから」 「おおそうか。そりゃよか……って、よくねー。なんだ俺は。お前の財布なのか?んでもってこれ全部食えるのか?」 わー、凄いノリツッコミ。 「直枝くんばりの素晴らしいツッコミね」 「こればっかりは理樹と一緒でも嬉しくねえよ」 そんな不満そうな顔しないでよ、もう。 「まあまあさっきのは半分冗談よ。ね、行きましょ」 言いつつ彼の背中を押す。 「はぁー、俺って実は結構面倒見良かったんだな」 棗くんは深く溜息をつきながらも、それ以上文句を言わずお店に入ってくれた。 「お待たせしましたー」 「へー」 ドンと置かれたそれは特製というだけあってかなり大きい。 けれどそれ以上に美味しそうだ。 写真に比べて実物はお粗末ってのが多々あるけど、これは当たりかも。 「さあ食べましょ食べましょ。棗くんも食べる?」 量も量だし一応聞いてみる。 「……いや遠慮しとく。どうぞ一人で堪能してくれ」 「そう?悪いわね。じゃあ遠慮なく」 スプーンで頭頂部を掬い、口に含む。 その瞬間口の中全体に広がる甘さのハーモニー。 「んー、美味しい〜」 思わず叫んでしまった。 これならいくらでも入りそうね。 「そうかい。けど女って生き物はみんな甘いものが好きなのか?」 注文したエスプレッソコーヒーを啜りながら棗くんが質問してきた。 「うーん、まあ全部が全部とは言わないけど大半の女の子は大なり小なり甘いものが好きよ」 「あー、でもその量全部食えるのか?」 彼の声に若干呆れが混じっている気がする。 いや、まあ結構な量だけど。 「ほら、甘いものは別腹って言うでしょ」 なんだかんだで入っちゃうものなのよね。 女の子って不思議。 「……太るぞ」 「ちょ、それ禁句よっ」 全くなんてこと言うのだ。 せっかくファンタジーにしてたのに。 「悪かった。だからそう睨みつけるな」 あらま、どうやらいつの間にか睨んでいたらしい。 無意識って怖いわね。 「コホン。ま、まあ分かればいいのよ、分かれば」 私は軽く咳払いをしてその場を誤魔化した。 「へいへい。……ん、おい、ここ」 「え?」 なんだろう。棗くんは自分の頬を指差し、なにかジェスチャーをしている。 「頬っぺた。クリームついてるぞ」 「あらやだ。んー」 舌を伸ばして舐め取ろうするが、なかなか甘い味を感じない。 「コラコラ年頃のお嬢さんがはしたない」 なんか呆れられてしまった。 「むぅ。じゃあ棗くんとって」 「へ?」 またも呆気に取られたような表情。 ああ、珍しい。 でも意外にいいアイデアかも。 「ほら、お願い」 グイッと彼に顔を近づけおねだりをする。 「お前、んなの自分で取れよ」 「いいじゃない、ね。恋人っぽく振舞うんでしょ」 「……お前まだそれ続いてたのか。いい加減飽きたのかと思ってたぞ」 「むぅ、いいから」 飽きるわけ無いじゃない、と言う言葉を飲み込み再度催促してみる。 ……そう、飽きるわけが無い。彼のこういうところを見るのも、こういうやり取りもどれも楽しいのだから。 「たっく、仕方ねえな。ジッとしてろ」 彼が動いたのを見て思わずギュッと目を瞑る。 いやね、やっぱ恥ずかしいし。 「ほれ、取れたぞ」 「ふぇ?」 あ、あれ?なんか紙が触れたような感覚が。 恐る恐る私は目を開いた。 「ねえ、棗くん。それ何?」 「ん?紙ナプキンだが」 うん、そうね。テーブルの上に置いてあるやつね。 それをなんで丸めてあるのかしら。 ……やっぱそういうことよね。 「な、なんでそれで拭くのよっ。普通そこは指でしょ。むしろできれば舐め取ってよっ」 何故か憤りが隠せなくて気づけば私は叫んでいた。 「ばっ、何言ってんだお前っ。そういうのは本当にできたらしてもらえ」 額に手をやり心底げんなりとした表情で溜息まで彼は吐いた。 やっ、確かにちょっと調子に乗り過ぎたかもしれないけど、そこまで呆れないでもいいでしょうに。 それに舐め取るのはやり過ぎでも指で掬うくらいしてくれてもいいのに〜。 「ふん」 こうなれば自棄だ。 私は目の前に鎮座するパフェ目掛けてスプーンを振り下ろしめいいっぱい頬張った。 更に二度三度と繰り返し、どんどん高かった山を攻略していく。 「お、おい、ちょっとペース速すぎじゃないか?」 「うっひゃい」 なんか止まんないんだもん。 でも食べるたびに怒りが蓄積するような気がする。 「……はぁー」 「なによ」 盛大に溜息をついたのにイラつき、少々睨む。 「そんなに急いで食うからまた口の周りに付いてるぞ」 「なっ」 言うに事欠いてそれ? いや、分かるわよ。棗くんは悪くないって事くらい。 でもどうしようもないんだもの。 怒りのボルテージを更に上げ、私はパフェにスプーンを伸ばそうとした。 「だから待てって。付いてるって言ってるだろ」 「ふん」 彼の忠告を聞く気が起きず、私はそのままパフェを頬張った。 「たく、仕方ないな」 棗くんは観念したかのように呟くと指を伸ばす。 ああ、またナプキンで拭いてくれるのね。 普段なら嬉しいそれも、今はなにかムカついてしまう。 「え?」 だからそのまま彼の指が私の頬に触れたのを感じた瞬間、思考が一瞬停止した。 「ん、それほど甘すぎるってことも無いのか」 「な、な、な……」 んでもってそれを口に含まれた瞬間、私の頭は完全にスパークしてしまった。 ・ ・ ・ 「おーい、大丈夫か」 脳がオーバーフローを起こしたのはほんの数秒間だろう。 けれど棗くんの呼びかけにごめんと弱々しく答えることしかできなかった。 「たく、お前がやれって言ったんだぞ」 呆れたように呟かれてしまった。 「な、ぐ、心の準備は必要なのよ。だからいきなりやんないでよ、もう」 自分でも分かるくらい顔が熱くなっている。 やだ、絶対ばれてる。 ちらりと彼を見ると、あいつは楽しげに私の顔を見やり微笑んでいた。 「まあ可愛いところが見れたからよしとしよう」 「うっさい」 棗くんの巫山戯た言動にそう返すのが精一杯だ。 あーん、もうあとは無心よ。パフェを攻略することだけに専念してやる。 当然それ以上店の中で棗くんと会話することはなかったが、彼は終始楽しそうだった。 「はぁー、疲れた。ホント冗談抜きで真人でも連れて来ればよかったぜ」 私の部屋で荷物を下ろしながら棗くんは深い溜息をついた。 「ごめんねー、ちょっと買いすぎたかも」 あのあとちょっと自棄気味に買い物しちゃったものね。 はぁ、今月厳しくなっちゃったかも。 「まあいつものことだがな」 「ちょ、そんなに回数頼んでないわよ」 まだ3年になって両手で足りる回数しかお願いしてないはずよ。 「けど買う量は同じくらいだったと記憶してるんだが」 「いやー、ははは」 どうにも暴走しちゃうのよねえ。 「まあ、この穴埋めはそのうちしてもらうからいいさ」 「えー」 結構私に恥ずかしい事させたってのに満足してないのか。 うう、何させようっていうのよ。 「ああ、明日には腕が筋肉痛になりそうだ。こりゃそれ相応のお礼が必要だな」 なによ、あのデートじゃダメだって言うの?それ以上というと、え? 「ま、まさかキスとか?」 だ、ダメよそれは。は、恥ずかしいわよ。 「はっ?ばっ、なに言ってんだお前」 私の言葉に棗くんは僅かながらに頬を染めた。 ああ、今日はレアな彼の表情がいっぱい見られたわね。 うう、こんなに沢山いいもの見せてもらったらやっぱりそれくらいしなきゃダメなのかしら。 「で、でも私初めてだし、けど嫌ってわけでもないしあの…………できるだけ優しくお願いします」 頭の中がぐるんぐるん回る。ああ、気絶しそう。 「あほか」 「むぎゅ」 え?顔に手を押し付けられた? って、女の子にそんなことするっ? きっと彼を睨むと、棗くんの呆れたような表情が目に入った。あれ? 「いつ誰がキスして欲しいって頼んだよ」 「え?……あれ、そうだっけ」 なんか思考が暴走していたみたいだ。 いやー、失敗失敗。 「けど棗くんって結構可愛いとこあるのね。顔赤いわよ」 それを発見して徐々に調子を取り戻すことができてきた。 「うっせい。こういうのは初めてなんだ」 「え、そうなの?経験豊富かと」 ちょっと意外で少し嬉しくなる。 「お前俺をなんだと。俺は硬派なんだぜ」 「えー、信じられないわねー」 やっといつものようにからかう体勢も整ってきた。 「信じろって」 額に手をやりながら棗くんは溜息をつく。 うん、やっぱりこういうのいいな。 「だったら私で練習してみる?」 だからついつい私は調子に乗ってしまった。 「はっ?」 「やんもう、そんな間抜けな顔しないでよ。頬っぺたにならキスくらいしてあげるわよ。それともさせてあげようかしら」 さあどんな反応を示すのか。 私はワクワクしながら彼の様子を見守った。 「……そうだな」 「え?」 だからいきなり近寄られ、頬に手を置かれた瞬間どうすればいいか分からなくなってしまった。 え?なに?なにが起きたの? 「ん」 そのまま少々強引に顎を持ち上げられる。 え?まさかこのままキス?で、でもなんで? そもそも彼ってこういうこと軽々しくしないって言ってなかったっけ?……いや、言ってなかったわね。 思考がぐるぐると回るが、構わず彼の顔が接近してくる。 「あぅ……」 も、もう分かんない。 思考を放り出すとそのまま目を瞑った。 すると耳元に彼の吐息がっ!? 「顔赤くしながら誘っても締まらないぞ」 「……え?」 彼の言葉の意味が分からず思わず目を見開く。 すると棗くんは私からスッと離れニヤニヤと笑顔を浮かべていた。 なっ、まさか騙された。 「か、からかったわねっ」 「お前が最初にしたからだろ。いやー、それにしてもお前も相当ウブだな」 「くぅ」 私は思わず歯噛みをする。 まさか顔が赤いまま誘いの文句を口にしていたとは、迂闊。 「まっ、キスとかは恋人になってからするもんだ。軽々とするんじゃないぞ」 「うるさい。ふん、お固いのね、知らなかったわ」 「ああ、言ったろ、硬派だって」 くぅ、なんかもういいように手玉に取られてる感じね。 はぁー、今日はもうダメねー。 「まっ、面白かったし今日のお返しは今度俺の買い物に付き合ってもらうってことで許してやるよ」 「えー、また?」 ついこの前も付き合ったばっかりだ。 まあ隣で喋ってただけだけど。 「いいじゃねえか、荷物持ちさせようってわけじゃないんだし。ただの道中のお供がいると楽しいんでね」 「えー、リトルバスターズのメンバーは?」 寂しいなら彼らを誘えばいいのに。 「それはそれでやってるさ。理樹とかとよく買い物に行くぞ」 「……女の子は?」 いや、男同士で買い物に行くのを嬉々として喋られても困るんだけど。 「あー、それは無いな。あいつら誘うなら全員で行くって流れになっちまうからな。さすがにそれは騒がしい」 鈴も一人じゃ誘いに乗ってくれないからなぁとちょっと遠い目をされてしまった。 ホントどんだけ妹が好きなのかしら。 「はぁー、分かったわよ」 ここはもう了承しよう。 「お、受けてくれるか。まっ、今日と同じくらい付き合ってくれりゃいいから」 あんな恥ずかしい思いしてるのに同じだけってどうかと思うんだけど。 まあ一緒にいるのは楽しいし、いっか。 「ああ、軽い食事とかなら奢ってやるからな」 「え、ホント?もう、先にそれを言ってよ」 それを先に言ってくれれば悩まなかったのに。 「……本当に現金だな、お前」 呆れたように言われてもねえ。仕方ないじゃない。 「まあらしいちゃらしいか。さて、俺は帰るかね」 軽く笑うと棗くんはドアノブに手をかけようとした。 「ああ、待って。今日のお礼ってわけじゃないけど能美さんからいい茶葉を貰ったのよ。美味しいお菓子と一緒にいかが」 「お、そりゃいいな。んじゃ飲ましてもらうかな」 一転、くるっと回って中へと戻ってきた。 嬉々としちゃって。ホント子供みたい。 「ええ、その辺に座ってて」 彼がクッションの上に座るのを見て、私はお鍋を手に取りお水を注ぎホットプレートの上に載せた。 けどいつもこんな会話してるけど。 「本当私たちってなんなんのかしらね。知ってる?あなたには実は恋人がいるって噂」 「へー、知らねえなぁ」 本棚から取り出した漫画を読みながら彼は答えた。 ホント、こういう話題興味ないのね。 「うーんとね、私なんだって」 「ありゃ、そうなのか。そいつは悪いな、迷惑かけて」 背中越しに本当に済まなそうに侘びる声が届く。 「別に、気にしてないわ。あとはそうね、直枝君とか妹さんの名前が挙がってるわね」 「おい待て、俺はどんなやつだよっ」 私に食って掛かられても困っちゃうんだけど。 それに昼間のアレを見る限り、全くのデマってわけでもなさそうなのがなんとも。 「なんだよ、なんか言いたそうだな」 「べっつに〜。でも実際に恋人作ったりしないの?」 「うーん、めんどい」 バッサリ切って捨てるわねえ。 あなたの恋人になりたいって子はきっといっぱいいるのに。 「でも一緒に買い物行ってくれたりキスしてくれたり、もっと色々としてくれるかもよ」 そうすればきっと私を誘わなく……なるんだろうな。 「あー、別に今でも充分楽しいからなあ。やっぱいらねえ」 「なにそれ」 それじゃあまた私を誘う機会があるってことなのかしら。 「そんなに今がいいなら私を恋人にする?きっと現状からそれほど変わんないわよ」 そんなことを考えたからだろう。 つい、そんな妄言を口にしてしまっていた。たく何してんだが、私は。 「ん?……なるほど、それはいいアイデアかもな」 「え?」 なんて、言った? 「お前となら確かに一番楽しそうだ」 え?ええーっ!? 「な、棗くん、何を言って……」 慌てて振り向くとそこには楽しそうに笑う棗くんの姿。 ……あー、そういうこと。 「たく、またからかったのね。ホント、趣味が悪い」 「さあ、どうだろうな。……それより湯が沸いてるぞ」 「え?あらやだ、本当」 棗くんの指摘に慌ててスイッチを切り、ポットへと湯を注いだのだった。 ホント心臓に悪い。 [No.376] 2009/08/29(Sat) 21:03:48 |
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