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未明、という言葉について考えてみよう。 未だ明るからず、という意味で朝日が昇る前だという意味だ。つまり、平常な人間は眠っている時間帯である。 Q.E.D. いやまあ、私が平常な人間であるという部分に多少の異論は認めるが。 ピリリリリリ ピリリリリリ ピリリリリリ とか下らない事を考えても枕もとで甲高い音をたてている携帯電話は静かになってくれない。空気読め。 仕方なしにベッドで丸くなったまま手を伸ばし、携帯を掴んで通話状態にする。 「はい、もしもし」 『く、く、く、く!』 「く?」 『来ヶ谷さぁぁぁん! 朝から何してますですかぁぁぁぁぁ!!』 「寝てる。っていうかクドリャフカくんが朝から何をしているんだ」 電話の相手が可愛らしいクドリャフカくんじゃなかったら全殺しにしているところだ。ちなみにこんな時間に電話してくるクドリャフカくんは後で萌え殺しの刑に処するからよろしく。 『違います違います! 私に何をしたんですかぁ!?』 「落ち着きたまえクドリャフカくん。君に何をしたかと言われても、君をおかずに体を慰めただけだ。やましい事は何もしていない」 『それはやましい事じゃないのですかっ!?』 「いや、全く」 『そう…なのですか?』 「そうなんだ。じゃあ私は二度寝するから、おやすみ」 『あ、はい。おやすみなさいです』 ピというあっけない音をたてて電話を切る。そして萌え殺しの刑に処されているクドリャフカくんの夢を見る為に再び眠りの世界に旅立っていった。 ピリリリリリ ピリリリリリ ピリリリリリ! 引き戻された。なに寝てんじゃワレェ!! とか言いそうな迫力をたたえている感じの着信音だった。携帯電話はいつから発信元の迫力を送信できるようになったのだろうか。技術の進歩はすごいものだと素直に感心するしかない。 とか真面目な事を考えているのに枕もとで甲高い音をたてている携帯電話は静かになってくれない。だから空気読め。 さっきと同じようにベッドで丸くなったまま手を伸ばし、携帯を掴んで通話状態に。 「クドリャフカくん、君はいつから関西弁を話すようになったのかね?」 『なんの話ですかっ!?』 「おやすみ、クドリャフカくん」 『すいませんごめんなさい私が悪かったですので切らないで下さいぃぃぃ!』 電話の向こうの声はかなり切羽詰まっている感じがする。本格的に何かまずいのかも知れない。真人少年だったら遠慮なしに通話を切って電源をオフにしたついでに携帯も破壊する所だが、何でもしますからと涙目で見上げてくるクドリャフカくんが相手だとそう無碍な対応も出来ない。 「で、どうした?」 『責任とって下さい!』 「よし分かった、責任をとって君を飼おう」 『ありがとうございますっ!』 じゃあなと言って電話を切る。そして首輪とイヌ耳装備クドリャフカくんの夢を見る為に三たび眠りの世界に旅立っていった。 ピリリリリリ!ピリリリリリ!ピリリリリリ!! 着信音の迫力がシャレにならない領域まで達した。なんかもう、呪い殺されそうな雰囲気まで醸し出している。 そろそろ真面目にヤバそうなので、しっかりと起きてから通話状態に。 「はい、もしもし」 『グス、来ヶ谷さん、えぐ、たす、助けて、スン、下さい……』 マジ泣きしているらしい。けど正直責任を取って下さいと言われただけではなんの事か分からない。心当たりがありすぎて。 「まあ待て落ち着けクドリャフカくん。全く話の流れがつかめないから一から説明してくれ」 電話口からクドリャフカくんをなだめながら話を聞き出そうとする。 『はい。けど、どこから話をすればいいのでしょうか?』 「いや、それを私に聞かれても」 『一目見れば分かりますからっ!』 「私の携帯にテレビ電話機能はついてないのだが」 『写メ! 写メで送ります!』 ブツと通話が切れる。しばらくボーっとしながらクドリャフカくんからのメールを待っていると、やがてピロリン♪とメール着信の音楽が流れる。 題名も本文もなし。ただ添付ファイルが一つだけ。それを開いてみると写真が一枚。 腕が前に出ているのは自分で自分を撮ったからなのだろう。そしてその人物は泣きそうな顔、っていうか目元に涙の跡がついている辺り泣き止んだ後の顔なのかも知れないが、そんな顔をして写真に写っていた。 その人物を、来ヶ谷はよく鏡で見た気がする。しかもその人物がクドリャフカくんの寝まきを無理矢理着こんでいるのだから、その体の破壊力は推して知るべし。 「は?」 もう一度写メをよく見る。そして部屋に備え付けられている鏡を見る。どう見ても同一人物だ。 メールの発信者を見る。わふー書いてある。間違いなくクドリャフカくんから送られたメールだ。 最速のスピードでクドリャフカくんの番号をプッシュする。 ピリリリリリ ピリリリリリ ピリリリリリ ピリリリリリ ピリリリリリ ピリリリリリ! ピリリリリリ!ピリリリリリ!ピリリリリリ!! ピ! 『こんな朝早くからなに、来ヶ谷さん?』 「すまん理樹少年間違えた」 ピ! OK。クールだ、クールになれリズベス。大丈夫、クドリャフカくんは逃げられない。 今度はしっかりと間違いなくクドリャフカくんの番号をプッシュする。そしてワンコールの間もなく通話状態になる。 『来ヶ谷さぁん……』 「ああ、確認した。ところで写メの人物は誰だ?」 『私ですよぅ』 半ば確信していた事ではあるのだが、やっぱりそうらしい。 「しかしどうしてクドリャフカくんが私と同じ姿に? っていうか私はどうやって責任を取ればいいんだ?」 『そ、それは……』 「流石に自分と同じ姿のペットを飼う趣味はないのだが」 『そっちですかっ!?』 ボケたらきっちり反応してくれる。うむ、ボケがいがあるな。って、ボケてばかりもいられない。流石にあの写メはまずい。涙目の自分の姿と言うのは怖気と共に得体の知れないゾクリとした快感がはしる。そして何より小さいクドリャフカくんを愛でられなくなるというのは非常にまずい。 「ところで、何で私に責任を取れというセリフが出てきたんだ?」 急に冷静になって質問をしてやる。私の姿になっているのだから私が関わっていると考えるかも知れないが、事実上私は何もしていないのだ。いきなり責任を取れという以上、そこには理由があるはず。 『そ、それはですね。夢に来ヶ谷さんが出てきたのですよ』 「ふんふん」 『それでその来ヶ谷さんはなんというですか、いわゆる魔女っ子の格好をしていましてですね』 「ほ、ほぉう。私が魔女っ子の格好を、か」 『はい。それで 魔女っ子ゆいたん、ただ今惨状★ ロリっ子ボディのわふーちゃんの願いを一つだけ叶えちゃうZO★ って言いまして』 「待て待て待て、ツッコミどころが多すぎるぞそのセリフは!!」 『それで私は宇宙飛行士になりたいって言ったんですよ』 「スルーかっ!? いつからそんな高等技術を身につけたんだ能美女史!」 『そしたらゆいたんは、 分かったわ★ ロリっ子ボディーのわふーちゃんは私みたいな豊満な外見の女性になりたいのね★ と』 「ゆいたん言うな!」 『ステッキがキラキラと光り、ゆいたんは魔法を唱えたんです。 ゆいたん★ゆいたん★魔女っ子ゆいたん★ 汝、闇の契約を望ム者。ならバ魂を代償に、願ワくば我がGカッぷの体と長キ黒髪を与えタまえ。邪神王フェんたロルよ、こノ幼女の願いヲどうカ……!!』 「後半、魔女っ子のセリフじゃないぞ」 『そうしてゆいたんの体から光る珠が飛び出して、どこもなく消えていったんです。体がボロボロと崩れ始めるゆいたん。それに従って私の体はゆいたんと同じように変わっていったのです。消える直前にゆいたんはニヒルな顔で言いました』 「使うのゆいたんの魂なんだな!?」 『だから叶えられる願いは一つだったのSA★ でもわふーちゃんの願いを叶えられたから悔いはないZE★』 ゴメン、クドリャフカくん。今自分でゆいたんって言って自己嫌悪中だ。 『ゆいたんの体は完全に灰になりました。そこで私が飛び起きると、体が来ヶ谷さんの体になっていたんです! 責任を取って下さい!』 「魔女っ子に取らせろ!」 『冷たいですゆいたん!』 「すまん、私が悪かった。お願いだからゆいたんはやめてくれ……」 ずーんとベッドの上で落ち込む私。気が付いたが、ベッドの上で落ち込む全裸の女性って構図なんだよな、今。 『それで来ヶ谷さん、私はどうしたらいいのでしょーか?』 「いや、どうしたらって言われても……」 そんなもん私が聞きたい。 「もう一度寝て、魔女っ子が出てきてお願いをし直せばいいんじゃないか?」 『で、でもまた願い事を曲解されたら――』 「頑張れ」 そう言って通話を切る。ついでに電源も落とす。 既にいっぱいいっぱいだった。 ちなみにこの日の朝食に来ていたクドリャフカくんは普通にクドリャフカくんだった。 どうやらもうひと眠りしたらマジで魔女っ子が出たらしい。 よく曲解されなかったなと聞けば、魔女っ子りきやんだったらしい。 っていうか、お互いに寝ぼけただけなんじゃないか? そう言ったらクドリャフカくんはにっこり笑って写メを見せてくれた。あの送られてきた写メだった。 ゴメンナサイって、一応謝っておいた。 願わくば、本当に夢であって欲しかったのに。 [No.394] 2009/09/11(Fri) 21:13:21 |
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