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繰り返される前後運動に、私の心はとうにすり切れていた。 どれだけ繰り返せば気が済むのだろう。 きっと私の懺悔が終わるまで。きっと彼の懺悔が終わるまで。 つまるところ、お互い終わらせる気などないのだと笑った。 果てのない懺悔。果ての見えない懺悔。 それでも果てる体。 私に覆いかぶさるように、彼が倒れてくる。息が荒い。疲れているのか、憑かれたいのか。泣き笑いのような顔で脱力している。 彼に触れている体が熱い。彼の体温が渡ってくる。同じように、私の体温も彼に渡される。 体温を交換するごとに、罪悪感も溜まっていく。 彼の肩に歯を立てる。犬歯が肌を食い破る。どろりとした罪の味が、舌の上をはいずりまわった。 熱く黒く染まる。もっと、もっとと責めたてるように体がうずく。 「葉留佳さん……」 唇が交わる。舌が触れ合う。唾液がからまる。 体温と罪悪感が、さらに高まる。 「葉留佳さん、葉留佳さんっ」 そうしてまた懺悔が始まる。終わりがあるから始まりがあるのか。始まりがあるなら終わりはあるはず。終わらないということは始まってすらいないのか? 果てのない懺悔。果ての見えない懺悔。 それでも果てる体。 私たちの世界は、たったひとつのベッド。それから、私たち。 カーテンの向こうは、光が満ちている。だからここから出て行かないのだ。光は、白。黒く染まった私たちは、ただ消え去るしかない。 朽ち果てるまで朽ち果てても、ふたりの懺悔は続いていく。 まるで迷子の子供のように、同じ場所を回っている。出口はない。 「葉留佳さ……!」 果てのない懺悔。果ての見えない懺悔。 それでも交わされる、心地よい体温。この体温はあの子のもの(私が奪った)。 それでも交わされる、求め合う言葉。この言葉はあの子のもの(私が奪った)。 それでも交わされる、柔らかい愛情。この愛情はあの子のもの(私が奪った!!)。 「…… 、さん……」 私は待っていた。いや待っていなかった。 この世界を終わらせる言葉。たったひとつの魔法の言葉。 ようやく気がついたのか。すでに気づいていたのか。 カーテンが開かれていく。闇が払われていく。光が侵入してくる。 沈んでいくように彼は目を閉じる。死に逝くように彼は眠る。 光が当たった場所から、ベッドは崩れ去っていく。崩壊は足元におよび、舞い上がる灰の中に体を溶かしていく。痛みはない。当たり前だ、これは夢と同じものなのだから。 ――次は早く気づきなさい。 ――気づいたのなら、私のことは見捨てなさい。 ――すべてを救うことはできない。必ず、誰かが犠牲にならなければいけない。 ――それが私でもかまわない。あの子が幸せになれるのなら。 ――だから……さようなら。 最後に思ったのは安堵。 あの子から奪った物を返すことができる。 最後に見たのは寝顔。 ペパーミントに包まれて眠る彼の横顔は、愛おしいぐらいに歪んでいた。 [No.401] 2009/09/12(Sat) 00:10:13 |
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