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No.437へ返信

all 第42回リトバス草SS大会 - 代理人 - 2009/10/09(Fri) 22:56:28 [No.430]
締め切りです - 主催代理の代理の代理ぐらい - 2009/10/10(Sat) 01:04:56 [No.440]
Re: 締め切りです - もう代理じゃなくていいや - 2009/10/10(Sat) 01:20:06 [No.441]
恋と魔法と色欲モノ。2 - 期待に応えて@5187 byte - 2009/10/10(Sat) 00:50:15 [No.439]
[削除] - - 2009/10/10(Sat) 00:24:23 [No.438]
生きてく強さ - ひみつ@12330byte - 2009/10/10(Sat) 00:02:24 [No.437]
やべぇ、「アレ」置いてきた。 - ひみつ@18975byte - 2009/10/10(Sat) 00:00:05 [No.436]
待ち合わせ - ひみつ@3551byte  - 2009/10/09(Fri) 23:59:04 [No.435]
To want it would catch paid. - ひみつ@10999 byte - 2009/10/09(Fri) 23:31:42 [No.434]
胡蝶の夢々 - ダーク風味@18086 byte - 2009/10/09(Fri) 23:29:08 [No.433]
終わった順番。 - ひみつ@べ、別に初投稿でドキドキしたりとかしてないんだからねっ! 1696 byte - 2009/10/09(Fri) 23:22:26 [No.432]


生きてく強さ (No.430 への返信) - ひみつ@12330byte

〜クドリャフカ〜

 生きることは死ぬことよりも辛いことを知った。
 日本に来るまで、私は周りに罵倒され続けてきた。両親のこともあるが、基本的には私の能力に低さにあきられた。
 私は悪くない。そう言い聞かせて頑張った。たとえ他の子が私よりもどれだけ優れていようと、何を言われても、それは両親のせいだという思いが私を日々支配していた。
 両親も私にあきれていると思った。私のお父さんとお母さんは宇宙について権威で、この国をより良い方向に導いてくれていた。
 私はそんな両親と比べられて育った。精神的にも肉体的にも幼い私はそれに対して何も言い返せずに、ただ笑ってごまかした。私の唯一のとりえは「笑うこと」だから。
 でも限界がきて、私は逃げるように日本へと旅立った。両親から背を向け、現実から背を向け、自分自身にさえ背を向けた。すべてに対して嫌気がさした。
 祖父が日本に精通していたので、私もその影響を受けて育った。
 日本での生活は楽しかった。クラスで私は比べられることなく楽しく過ごした。理樹たちと一緒に遊ぶことができて楽しかった。ここでの生活は向こうの生活と比べたら雲泥の差だった。
 でもふとなぜ私は英語をアピールし始めたのだろうと思った。
 初めは気づかなかったが、徐々にそれは自分という確立した存在を強調するためだと気づいた。
 向こうでの学校は楽しくなかった。日々勉学に勤しむだけ。愉快さとは全くの無縁だった。だがこちらでは仲間がいる。その安心感が私をさらに追い込んでいった。
 ニュースを見たあの時、私は大事なことを忘れていたことを後悔した。日本を旅立って捕えられてからもその考えが頭の中を回り続けた。
 でも理樹は教えてくれた。私は私だと。他の何にも左右されることのない、確固たる存在なのだと。
 私は勇気をもってこの運命という名の鎖を、打ち砕く。
 
〜神北小毬〜
 
 生きることは何かを失うことだと悟った。
 幼いころにお兄ちゃんを亡くしてから、私は変わってしまった。お兄ちゃんのことに蓋をし、鍵をかけて心の奥底に深くしまいこんだ。
 蓋がはがれそうになることもあった。今だからこそわかるけど、あれはただのわがままが起こした行動だ。
 時々お兄ちゃんが夢に出てくることがあった。私はそれすら幻想だと思いこみ、蓋から零れ落ちた真実を偽って毎日生きた。
 溢れた滴が私の心を満たすと、私はそれらを零すために心の殻を壊した。
 壊れてから決まって私はお兄ちゃんを探す。これもわがままでしかない。「お兄ちゃんはいなかった」という事実から「お兄ちゃんは生きている」という記憶のすり替えだ。
 理樹くんをお兄ちゃんと決めてから、私は理樹くんにお兄ちゃんとして接してきた。理樹くんは私がお兄ちゃんと呼ぶたびに悲しい目をして僕はお兄ちゃんじゃないと言い聞かせた。
 殻が壊れた私には何も届かない。そう知っていた私は、理樹くんをお兄ちゃんと呼ぶことを止めなかった。というよりもそれについての自覚すら消え失せていた。
 けど理樹くんが私に気づかせてくれた日、私の悲しみという蓋は音もなく消え去った。
 たった一人しかいない私のお兄ちゃん。もう天国へ旅立ってしまった大切な、お兄ちゃん。
 私の前に開けて見えた真実は残酷なものであると同時に、私にとってとても大切な、かけがえのない「なにか」を気づかせてくれた。
 理樹くんはこんな私のために願ってくれた。一生懸命頑張ってくれた。そして気づかせてくれた。だから私も理樹くんにとってお願いをする。理樹くんに「なにか」を気づかせるための願いごとを。
 私は流れ星に願いをかけながら、消えゆく世界に別れを告げた。
 
〜三枝葉留佳〜

 生きることは時として残酷だと気づいた。
 たとえ食事がなくても、寝るところがなくても、寒さに震えても、私は約束さえ覚えていればそれだけで幸せだった。
 あの時、私が約束を疑わなければと今になって何度も思う。
 髪飾りを渡してくれたあの日から、お姉ちゃんが私に厳しく当たるようになったとしても、私はそれに姉妹の絆というものを再確認していた。
 だからお山の人から私が裏切られたと告げられた時、私の中にあった「なにか」が音を立てて脆くも崩れ去った。何度も髪飾りを捨てようと思った。絆そのものであったはずの髪飾りは、いつしか絆を壊すための道具と化していた。
 でも恨みながら、悔みながら、私はいまだに首飾りをつけていた。
 きっと私の心のどこかではお姉ちゃんに裏切られたなんて嘘だという意識があったのかもしれないと今になって思う。
 恨むことをやめてから、私は自分に素直になることができた。
 お姉ちゃんって呼びたい。お姉ちゃんと話したい。お姉ちゃんともっと触れ合いたい。
 叶わない願いと知っていた。約束を勝手に破って勝手に戻して。しかも約束がまだ二人を縛り付けていた。
 それでもお姉ちゃんはお姉ちゃんのままだった。私のわがままにも付き合ってくれた。何より、お姉ちゃんは私のことを好きなままでいてくれた。
 私は過去の自分と別れを告げ、親愛なるお姉ちゃんと握手を交わす。
 
〜来ヶ谷唯湖〜

 生きることは無くすことだと思った。
 昔から「私」が「人」だと言うことを疑いながら育った。
 周りの子とは異質な存在。自分は本当に人間なのだろうか。そんな考えが度々私の心を締め付けた。
 勉強ができても嬉しくなかった。むしろ勉強が出来過ぎてしまうことがより一層私を人から遠ざけた。
 高校に入って嫌がらせに会うようになった。大方何でもできてしまう私のことを妬ましく思った生徒が腹いせにやったのだろう。私は素知らぬ顔で無視を決め込んだ。だって私に感情はないのだから。
 二年生になってからも無視した。しかし、未だ感情というものがよく分からない私にとって、それは心苦しく、徐々に心の奥深くに蓄積していった。
 でも私にも感情というものはあったらしい。一度感情が爆発した。
 仲間のためを思う心が私にもあると自覚できた日だった。あそこまで感情の高ぶりを覚えたのは初めてだった。
 薔薇を咲かせていた私の心は、いつしか向日葵のような光に面と向かえる花を咲かせていた。
 自分と向き合えた瞬間だった。表面上取り繕ってきた私は、柄にもなく寮に帰ってから涙をこぼしていた。
 しかし、このことに気づけた代償はあまりにも私にとって残酷なものだった。感情に気づいてしまった私が、感情を記憶できないなんて。
 ぼんやりと窓の外を眺めながら、こうして理樹くんと私は何もなかったことになるのかと考えた。
 胸が苦しかった。理樹くんに全てぶちまけてしまいたかった。でも、私はそれすらも忘れてしまっていた。
 無くしてしまうのが怖かった。思い出を、感情を。何より、理樹くんを。
 
 何かを無くしたのは覚えている。だが、何を無くしてしまったのかが思い出せない。とても大事だったはずの、何か。気がつくと私の手は放送室のピアノに向かっていた。
 私はいつ誰に向けたとも覚えていない奇想曲を再度、奏でる。
 
〜西園美魚〜

 生きることは幻想だと思うことすら忘れた。
 私の大切な妹である美鳥を忘れてからどれくらいの月日が経っただろうか。私は何事もなかったかのように生きていた。
 あっさりと霧を払うかのように消えてしまった美鳥。しかしその微量ながらに残った水は、消えることなくひっそりと私の心の中に潜み続けていた。
 美鳥を思い出したあの日、私は謝らずにはいられなかった。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。でも美鳥に面と向かって言うこともできなかった。
 浜で二人残されたあの日、私はずっとあの詩を思い出していた。
 「白鳥やかなしからずや空の青海の青にも染まず漂う」
 自分で言ってて悲しかった。美鳥を忘れたこの私がこんな詩を読むなんて。みんなと遊びたかった白鳥は、私のために孤独にならざるを得なかったというのに。
 幻想を現実に、現実を幻想に。そう思ったのはいつからだろうか。私は美鳥の代わりに空と海を漂い続けた。
 どこまでも尽きることのない青。その中に一人佇む絶対の白。
 どこまで行っても私は孤独で、誰とも出会わない。私以外のなにもかもが全て違っていた。
 美鳥が生きてきた世界。あるのはただの孤独。でも私と美鳥とでは違いすぎる。美鳥はこの孤独の中を悠然と舞っているが、私は仲間を求めてさまようだけだった。悲しみで満ちていた。
 でも美鳥は許してくれた。こんな私でも。自ら孤独の中に帰っていく美鳥に、私は感謝と決別とを込めて別れを告げた。
 私は本を片手に、遠い幻想の彼方を回想する。
 
〜笹瀬川佐々美〜

 生きることは支えあうことだと信じた。
 人以外の動物は自分で自分を殺すことはしないとニュースで聞いたことがある。
 その時人は勝手な動物だと思った。親からもらった命を放棄する権利が自分にあるなんてなんて無責任なんだろうと思った。
 でも、それは私が一番言えることなのだ。
 勝手に命を拾ってきて、自分の都合のためにその命を勝手に置き去りにした。
 あの日泣きじゃくりながら、私は自分勝手にあの子のことを忘れようと考えてしまった。でも、自分勝手な私は忘れることができずに、心の奥底にその出来事を焼きつけた。
 あれからずいぶん経った今でもその後は残り続けている。でも猫が長命だとはいえ、今日まで今日まで生きているだろうなどとは思っていなかった。
 その分こうやって会えたのは奇跡だと思った。神様がいるのなら、今日この奇跡はそのおかげだろう。
 人は一人では生きてはいけない。ともに支えあい、助け合うことで生かされているのだとそう気付かされた。
 私はクロに抱きながらありがとうとさよならを言って、散りゆく幻想に別れを告げる。
 
〜二木佳奈多〜

 生きることは時として残酷だと気づいた。
 実の妹のためにと思って託した髪飾り。それが後に二人の絆を引き裂くと知っていたら私は躊躇わずにどぶの中にでも捨てただろう。
 信じ続けることの困難さ。私は身をもって体感した。
 いつでも私は葉留佳に勝ち続けた。それが二人の約束を守り続ける唯一の方法だと知っていたから。
 葉留佳はそう思ってなくても。たとえそれが自分勝手なルールでも。私は遵守し続けた。
 この時決めたこの自分勝手なルールがより一層葉留佳を傷つけると知りながらも。私は葉留佳に恨まれていると分かっていたが、それでもより一層厳しく接した。
 私は心のどこかで葉留佳が信じていてくれることを願っていたのかもしれない。葉留佳と顔を合わせるたび毎回そんなことを思った。
 理樹くんのおかげで今こうして姉妹仲良く笑っていられるのが奇跡だと思う。
 苦しかったあの日から考えると、私たちは想像もできないような幸せに囲まれている。
 私たちの髪飾りは姉妹である証。そう確認できたのは一度すべてが崩れてからだというのがなんとも滑稽な話だ。
 私は過去の自分と別れを告げ、親愛なる妹と握手を交わす。
 
〜朱鷺戸沙耶〜
 
 生きることは死ぬことだと感じた。
 私がいるところには生と死が溢れていた。銃弾が飛び交う戦場。私と父さんも生と死の真っただ中にいた。
 転々と戦場を回った。どの戦場も同じだった。絶望の闇に呑まれた戦地。その中で光っている銃を持って戦う子供の眼。いつ呑まれるとも分からないその光は戦場において唯一光を灯していた。
 酸素を求めて水面を目指す金魚のように。殺されると決まっていてなお且つ死に抗う飼いならされた牛のように。
 私は分からなかった。戦場で救った人々は生きるために死地に赴く。わざわざ死にに銃を持って戦うのだ。
 救った命。この時まだその重みを私は知らずに生きていた。
 けど知ってしまった。この事故をもって気づいてしまった。私は喉が壊れ、皮膚がちぎれ、手足がもげ、血を吐こうとも大声で叫んだ。
 助けて、と。
 初めて生きたいと思った。戦場に赴く患者の眼の中にある光の意味がわかる気がした。恐らくこの時私の眼にも生への渇望という名の光が浮かんでいたことだろう。
 それからどれくらいが経っただろう。いつの間にか私は「あや」から「沙耶」になっていた。
 この世界での冒険は楽しかった。理樹くんと一緒にたくさん旅した。地下迷宮を何度も攻略した。
 だけど気づいてしまった。この世界で何度も死を体験して悟った。ここは私のいる世界じゃない。私のいる世界はもっと生に充ち溢れた世界であると。
 理樹くんとのお別れはさびしかったけど、もう時間だ。
 私は生きるために、自分の頭に向けて銃の引き金を引く。

〜棗鈴〜

 生きることは信じることだと分かった。
 私が助けるために学校去ったあの日、隠すことも何もないが不安でいっぱいだった。
 背中を押してくれた理樹に直接さよならも言えず、独りよがりなまま私は出発した。
 新しく見えた学校は前の学校とは全然違った。前の学校は笑いがあった。私が笑っていてもなにも違和感なく日常が流れて行った。それが普通であるかのように。
 この学校は違った。どす黒い雰囲気が教室を支配し、私は笑うことすら許されなかった。加えて誰とも話すことができず、授業が終わったら真っ先に寮に逃げ帰っていた。私が何のためにここに来たかも忘れて。
 理樹に何回もメールを送った。頑張れとしか返ってこなかったが、私はぎりぎりそのおかげで少し自分を保つことができた。でもそんなやせ我慢にも限界が来てしまった。
 理樹が逃げようとメールを送ってきた時、私はそれにすがった。いつの間にか救う側と救われる側が反対になっていることに気付かないまま、私はその甘い誘いに乗ってしまった。
 結果、私は壊れてしまった。いや、むしろ私は自ら壊れに行ったのかもしれない。これから襲いかかるであろう過酷な現実に背を向けたまま。
 理樹がいなかったらと思うとぞっとする。人間は一人では生きていけないということをこの時に知った。
 リトルバスターズを結成した時、理樹がいるなら何でもできると思った。
 実際その後真人と謙吾と兄貴も仲間になって、いつもどおりの日常が戻ったと思った。
 でも、実際はこの時のリトルバスターズも「解散」するために「結成」されたのではないかと思った。世界が壊れかけている時、理樹に手を引かれている時、そんなことを頭の片隅でぼんやりと考えた。
 そのあと私たちを待っていたのは過酷な現実だった。バスは倒れ、血を流すクラスメート。最初は冗談じゃないかと思った。こんな世界より元いた世界の方がましだと思った。
 一度背を向けた世界。でも、この時も理樹は手を引いてくれた。私は嬉しかった。現実に戻っても理樹は理樹のままなんだなと思った。
 どんな時でも、どんな過酷にも立ち向かって、今でも手を引いてくれる理樹にこう誓う。
 『ひとりが辛いからふたつの手をつないだ。ふたりじゃ寂しいから輪になって手をつないだ。きっとそれが幾千の力にもなりどんな夢も断てる気がするんだ』
 私は逃げないためにみんなと手をつなぎ、どんな困難にも立ち向かっていく。


[No.437] 2009/10/10(Sat) 00:02:24

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