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No.486へ返信

all 第44回リトバス草SS大会 - 大谷(主催代理) - 2009/11/06(Fri) 00:01:38 [No.483]
赫月ノ夜ニ咲キ誇レ悪徳ノ華 - ひみつ@遅刻11087 byte - 2009/11/07(Sat) 16:44:04 [No.502]
主題歌 - ひみつ@遅刻11087 byte - 2009/11/08(Sun) 04:45:31 [No.511]
設定資料 - ひみつ@遅刻 悪ノリにも程がある - 2009/11/07(Sat) 16:45:38 [No.503]
花摘み - ひみつ@6331 byte 遅刻 - 2009/11/07(Sat) 02:39:47 [No.501]
供え - ひみつ@3,678byte - 2009/11/07(Sat) 01:56:52 [No.500]
しめきり - 大谷(主催代理) - 2009/11/07(Sat) 00:34:13 [No.499]
好きだからこそ - ひみつ@4761 byte - 2009/11/06(Fri) 23:54:25 [No.497]
アンソダイトの森のなか - ひみつ@9144 byte - 2009/11/06(Fri) 23:20:37 [No.496]
寄り添いながら - ひみつ@7295byte - 2009/11/06(Fri) 23:03:28 [No.495]
幸せの三つ葉のクローバー - ひみつ@7104byte - 2009/11/06(Fri) 21:21:35 [No.494]
名付けられた一輪 - ひみつ@13732byte - 2009/11/06(Fri) 20:29:56 [No.493]
おっぱい消失事件 -Momoto-Yuri - - 秘密@13621 byte - 2009/11/06(Fri) 20:21:03 [No.492]
不可思議な事もあるもんだ - ひみつ@12181 byte - 2009/11/06(Fri) 19:30:53 [No.491]
台風一過と幸せと - ひみつ@15953byte - 2009/11/06(Fri) 04:18:40 [No.488]
終わりのない友情 - 秘密になっていないのはわかっている@10057 byte - 2009/11/06(Fri) 00:43:25 [No.486]
狂花狂酔 - 秘密 16850 byte - 2009/11/06(Fri) 00:35:18 [No.485]


終わりのない友情 (No.483 への返信) - 秘密になっていないのはわかっている@10057 byte

「神北さん、今日もありがとうね」
「私も楽しかったですよ〜。お疲れ様でした〜」
 小毬の趣味はボランティア。ちなみに他人に強制されたり、報奨を目的としたそれは厳密にはボランティアではない。ボランティアは無償を前提とした善意の奉仕活動なのだから。
「じゃあこれはお礼のお菓子。いつも余り物で悪いんだけど……」
「わあ、ありがとうございます。そんな事ないですよ〜、お菓子をよく食べるので助かってます」
「太らないようにね〜」
「うえ〜ん。それ禁句〜。一ヶ月前から100gも太ったのに〜」
「いや、それ太ったって言わないから……」
 そんなほのぼのとした会話を繰り広げながら老人ホームのおばさんからお菓子の詰め合わせを受け取る小毬。だがこれは親睦会で余った分のものであるし、元来小毬もこのお菓子を目当てでここに来ている訳ではない。たとえお菓子が貰えなくったって小毬は笑顔を絶やさない。
 一方の老人ホームでも食べ物をただ捨ててしまうのも気が引ける。少ない予算を切り詰めて、みんなが楽しめるようにたくさんのお菓子を用意したのだ。食べら切れないから捨ててしまうのでは、いささか人情に欠けてしまうという話だろう。
 つまりこれは小毬流に言うのならば幸せスパイラル。あなたが幸せで私も幸せ。みんなが幸せ。
「それじゃあ神北さん。また暇になったら来てね。あなたが来るとみんな嬉しそうだから」
「はい。じゃあまた――」
 言いかけて止まる。小毬の視線は一つに釘つけ。そちらの方には色とりどりの花束が。今時はビニールハウスもあるので、季節感もバラバラである。それを見て微苦笑するおばさん。
「ああ、あれね。小学生がお金を出し合って花を贈ってくれたんだけど、あの量は困るわよねぇ。ホーム中がお花だらけになってしまうし。
 悪気はないだろうけど、中にはヘンテコなお花もあるし、やんちゃ坊主が面白半分で選んだのが目に浮かぶわ」
「――おばさん」
「ん? 神北さん、どうしたの?」
「あのお花、いくつか譲って貰えませんか?」
 小毬の言葉に目をしばたかせるおばさん。こんな風に自分から何かを欲しいという小毬は初めてだ。
 だが別にそれでどうという訳でもない。いつも来てくれる小毬に対してこんな小さな願いを聞けない訳がない。それよりなにより、正直この花山を少しでも減らしてくれると非常に助かる。
「ああ、もちろん。好きなものを好きなだけ持って行きなさい」
「ありがとう、おばさん。友達にあげてみたいなって思ったんだ」
 満面の笑みを浮かべて笑いあう2人だった。





 終わりのない友情





「と、いう訳で今日はみんなにお土産があります〜」
「なんだよぅ、花かよぅ。喰えねぇじゃねえかよぅ……」
「小毬ちゃんに向かって失礼な事を言うなぼけー!!」
 バキィ!
「ごばぁ!」
「今のは井ノ原さんがが悪いと思いますよー。ますよー。すよー」
「井ノ原さんにはデリカシーが無さ過ぎです」
「わわわ、ごめんね真人くん!」
「神北も謝る必要は全くないな」
「お菓子の詰め合わせなら貰って来たよ。食べる?」
「明らかに真人少年は食べられる状態にないが」
「じゃあみんなで食べようか〜? で、これは真人くんの分、と」
「小毬ちゃんは優しいな……」
「そんな事ないよ〜」

「と、いう訳で今日はみんなにお土産があります〜」
「始まりから物凄くグダグダだったね……」
 仕切り直してそう言った小毬の二回目のセリフは一回目を言ってからもう20分以上経っていて、思わず理樹がため息をつく。ここは小毬の部屋。彼女に呼び出されたリトルバスターズ+αがこの部屋に集まっていた。
 そして復活した真人は自分の分のクッキーをほおばっていた。
「土産のお菓子なら美味しかったぜ」
「だから小毬ちゃんの善意を無駄にするなぼけー!」
 今度は鋭いローが弁慶の泣き所に。
「は。そんな蹴りがオレの筋肉に効くかよ!」
「なぁに〜……! じゃああたしの必殺蹴りを受けてみろっ!」
「そこ、無駄にバトらなくていいから。やるならちゃんと武器を使って。っていうかまた話が脱線してるし。
 小毬さん、プレゼントってなに?」
 無理矢理話を戻す理樹、しかも花が見えていて、しかももう真人が無神経に話を振ったと云うにわざわざそこから聞き直す気遣い。それを感慨深くうんうんと頷いて見ている恭介。
「うん。ボランティアにいった老人ホームでお花があったから、無理を言って貰ってきたんだ〜。
 みんなに似合うかと思って」
「けどよう、オレたちの部屋に花瓶なんてないぞ?」
 どうするんだよといった風情で理樹を見る真人。その情けない顔に、萌える要素はもちろん皆無である。これでテンションがだだ下がりの来ヶ谷と美魚であるが、まあその辺りはどうでもいいから割愛。
「ペットボトルでも切って使えばいいんじゃない?」
「おお、そうか! 理樹はやっぱり頭がいいな!!」
「いや、真っ先に気がつく範囲だと思うけど」
 不安がなくなったとばかりに満面の笑みを浮かべる真人に、逆に不安がいっぱいになったといった風情の理樹。
 そんな2人の声を聞きながら、小毬が貰って来た花々を恐る恐る見やるのはクド。ちょっと変な花もたくさんあるのが不安を誘う。
「か、神北さん……。これは、その、大丈夫なのでしょうか? 色々と」
「大丈夫だよ、多分毒はないから」
「や、普通に鈴蘭とかあるんだが」
 冷や汗をかきながら言う来ヶ谷。
「え? 鈴蘭って毒があるんだ?」
「ああ。結構有名な話だと思っていたんだが」
 不思議そうな顔をする小毬にひきつった顔をする来ヶ谷。
 それを気にもしないで話にあがった鈴蘭を取って、渡す小毬。
「じゃあまずこれはかなちゃんだね」
「…………それはどういう意味かしら?」
 口元をひくつかせて言う佳奈多だが、話の流れからするとこれは仕方がない。けれども小毬は満面の笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「えへへへへ。鈴蘭の花言葉はね、『意識しない美しさ』と『純粋』なんだよ」
 その純粋さを見てしまうと、まさか突っぱねる訳にもいかない。嘆息しつつ小毬から花を受け取る佳奈多。
「…………参ったわね。そう言われちゃうと受け取らざるを得ないじゃない」
「そして毒入り、と」
「葉留佳、一言余計過ぎ」
「やはは。性分ですよ、しょーぶん。それでそれで小毬ちゃん。私の分は?」
 ギロリと睨む佳奈多なんてどこ吹く風。きらきらと輝く笑顔で小毬ににじりよる葉留佳。
「はるちゃんにはね〜、これ。ヒアシンス」
「お、なかなか可愛らしい花じゃないですカ。これの花言葉は?」
「『しとやかな可愛らしさ』だよ、葉留佳くん」
「…………」
 来ヶ谷の言葉に、微妙な顔で沈黙する葉留佳。
「それともう一つ。『初恋のひたむきさ』っていうのもあるんだけどね」
 小毬の言葉で、別の意味で微妙な顔をする葉留佳。
「こ、これ以上追及すると、藪つついて蛇がでそなのでやめときます」
「賢明だな、葉留佳くん。時に神北女史。私の分はどれだ?」
 ランランと目を輝かせながら花々を見やる来ヶ谷。そして小毬は1つの花を抜きだして来ヶ谷に差しだす。その花の名前は白粉花。
 それを受け取って満足そうに頷く来ヶ谷。
「うむ、納得だ」
「ねね、姉御。その花言葉はなに?」
「『不思議』」
「『素敵』」
 来ヶ谷と小毬の声が重なる。
「…………なるほど」
 そうとしか言えない葉留佳。そして小毬は次に抜きだしたのはピンク色で少女チックな花。
「はい、真人くん」
「まさかのオレかよっ!? 一番この花とかオレに似合わなくね?」
「ちなみにこのお花の名前はストック。花言葉は『努力』だよ」
「オレの為にあるような花だな」
「いや、これが真人のためにあるとか、イヤ過ぎだから」
「出来れば『筋肉』っていう花言葉の花が欲しかったが、な。まあ仕方ないか」
「そんな花言葉を持つ花、イヤ過ぎだから」
「『エネルギー』っていう花言葉のサルビアっていうお花はあるんだけど、老人ホームにはなかったんだ。ゴメンね」
 そう言いながら小毬は的確に酷い事を言う理樹へ花を差し出す。それは理樹にも分かる花、カーネーション。
 それを受け取りながら、理樹の顔はやや赤くなっていく。
「これの花言葉、たしか『純粋な愛情』じゃなかったっけ?」
「ふえええ!? た、確かにそれもあるけど、これは違うよ。『あらゆる試練に耐えた誠実』だよ」
「ああ、そうなんだ」
 ほっとしたような残念そうな顔を浮かべる理樹に、ほっとしか表情しか浮かべない小毬。そしてそんな2人を面白くなさそうに見る何人か。
 次に小毬は恭介を見る。恭介はごく自然にその視線を受けて頷いた。
 そして小毬から差し出された花はカンガルーポー。花言葉は『あなたはみんなを楽しませる』。
「なるほど。俺の為にあるような花言葉だな」
「喜んで貰ってもらって嬉しいです、恭介さん。次は謙吾くん」
「俺か。俺にはなんだ?」
「ハイビスカス」
「……また、微妙な花を」
「ごめんね、今回は花言葉重視で選んじゃったから。花言葉は『勇ましさ 』なんだよ」
「確かにそれだと受け取るしかないな」
 花を見た時からうって変わって、満足そうにそれを受け取る謙吾。
 そして小毬の視線はまたも女の子たちへ。残った人物は鈴にクド、そして美魚。その中でクドの方を見る小毬。
「わ、私なんでしょーか?」
「うん、次はクーちゃん。クーちゃんにはこの花だよ」
 小毬が手渡した花は原色の、またも南国っぽい花。それを見ながら南国出身のクドは首を傾げながらその花の名前を自信がなさそうに言い当てる。
「これは……確かデネヴにもあったような。アンスリウムでしょーか?」
「惜しい! これはね、姫アンスリウム。花言葉は『粋でかわいい』なんだよ」
「わふっ! そんな花言葉があるのですかっ!?」
 八重歯を出しながら驚きを露わにするクド。そんなクドの頭を撫でると、新しい花を手に取る。
 その花を見て無表情のままで頷き、一歩前に出ながら口を開くのは美魚。
「なるほど。オオトリは鈴さんですか」
「あれ美魚ちん。その花の名前と花言葉って分かるの?」
「まあ、このくらい有名な花ならば。その花は桔梗で、花言葉は『清楚・気品』ですね」
「自分でその花言葉が出た瞬間に立ちあがるのはどうなんだ?」
 不用意な言葉を口にした真人の頭にガスッと薄い本が突き刺さる。
「うぎゃぁぁぁぁーー!! いてぇぇぇぇぇ!!!!」
「御心配なく。それは間違って2冊買ってしまった奴ですから」
「この期に及んで本の心配なんか誰がするかつーの!」
「いやいやいや。本の心配はしないけど、真人の心配もしないよ?」
「なんでっ!?」
「真人が悪いから」
「ああ、お前が悪い」
「フォローの余地は全くないわね」
「あのぅ、井ノ原さん。さすがにその言葉はどうかと……」
 クドにまで言われて、がっくりと腰を落としてしまう真人。だが事が事だけにもちろん誰も彼を慰められない。
 それをどうしていいのか分からない様子でみていた小毬だが、周りのほっとけサインとうずうずとしている鈴を見て彼女に花を差し出した。
「名前はベコニア。『幸福な日々』だよ」
「うん、嬉しい小毬ちゃん。ありがとう」
 口下手な鈴だけれども、しっかりとお礼を言ってから、ぎこちない笑顔で可愛らしいその赤い花を受け取った。そして無邪気な笑みでその贈り物を抱きしめる。
 そしてそこでふと、理樹が気がついて小毬に話しかけた。
「小毬さん。一つだけ花が余っているみたいだけど」
「ふぇ? ああ、これね。これはね、この部屋に飾ろうと思ってたんだ」
 そう言って小毬は最後に1つだけ残った花を、彼女自身が用意した花瓶に生ける。そしてそれを彼女と空いている机の間に置いた。
 不思議な机、誰もいないはずなのに、キチンともう一人分の生活用品がしまいこんだその机。もちろん机だけじゃなくて、タンスやクローゼットにも覚えのない服がおさめられていた。
 まるでもう一人同居人が居たようなその2人部屋に、小毬は一輪の花を添える。その花の名前は千日紅。そしてその花言葉は――――

「それじゃあみんな、今日はありがとー!」
 柔らかに言い切る小毬。その言葉を聞いて、口々に挨拶をしながら貰った花を大事に抱いて、自分たちの部屋に帰っていくメンバーたち。
 みんなを見ながら、千日紅は静かに咲いている。


[No.486] 2009/11/06(Fri) 00:43:25

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