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「だからぁ、わたしだってさびしいのよぅ」 佳奈多が、ガン、と手に持っていたトゥインクルルビーをちゃぶ台に叩き付けるようにして置く。中身が少し飛び散った。しねばーか。 「知ったこっちゃないわ、ボケー」 真似してガン! と梅酒をちゃぶ台に叩き付けるようにして置こうとしたら、手からスポっと抜けてちびちびとビールを啜っていた佐々美のデコに、缶だけにカーンとぶつかった。開けたばっかりの四本目の中身は。 「ぎゃー! 目が、目がー!」 「おう、悪い」 「ちょっとりんさん、きいてるの!?」 佳奈多が潰れたトマトみたいに真っ赤な顔してずずいっと詰め寄ってくる。こいつの酔い方はいつもこんなんで、正直ウザくてしょうがないのだが、毎度毎度バカでアホでお人好しでだがそこがいい佐々美が連れてきやがるのだ。つまり梅酒はわざとなのだ。さすがあたし、元天才ピッチャー。だがあたしは基本ノーコンなので偶然かもしれない。真実はいつもひとつだが、たまにはふたつみっつあったっていいだろう。ちなみに今日はやっつぐらいある。 「おねがいだから、きいてってばぁ」 「目がー! 目がー!」 トゥインクルルビーみたいに甘ったるい声。しかも炭酸抜けて、ただバカみたいに甘いだけ。そのまま飲んだら気持ち悪いが、かき氷のシロップにならちょうどいいかもしれない。 「そうだ、かき氷を食おう」 「目がー! 目がー!」 「かきごおり! いいわねいいわね!」 「目がー! 目がー!」 「うっさいしねばーか」 佐々美が口を閉じた。両手で目を押さえたままゴロゴロしてるのは変わらないのでどっちにせようっさいしねばーかだったが、まあ佐々美はそれぐらいがちょうどいい気がする。とりあえず足伸ばしてちゃぶ台の下から蹴りを入れてやった。 「かきごおりは、かきごおりはまだなの!?」 ガンガンと缶でちゃぶ台を叩きまくる。うぜー。 「考えてみたらかき氷の機械なんて高価なもの持ってなかった」 「ええー」 口を尖らせてぶーぶー言ってる。うぜー。うざいなりに知恵を働かせたのか、ケータイを取り出した。胸元から。うぜー。うっぜー。ついでに普通にズボンのポケットに入ってるあたしのケータイが震えた。ひゃん。バイブってあれだよな。うん。 「もしもし〜? うん、わたしわたし。は? さぎじゃないわよばかじゃないの? そう、かなちゃん。よってなんかいましぇーん。で、あんたはつまみかってくるのにどんだけかかってんのよばかじゃないの? ついでにかきごおりのきかいかってきてね、じゃ」 返事をする間もなく切れた。何か言うつもりもなかったが。どうやったら直枝と棗を間違えるのか。ばーかばーか。でもそういえば、クラス替えの後は理樹の後ろの席だったな。暇な時につついて遊んでた気がする。暇じゃなくてもつついてたけど。ばーか。 「かっきごおり〜、かっきごおり〜」 トゥインクルルビーを飲み干した佳奈多が、今度はスクリュードライバーを呷っていた。残念ながらかき氷の機械はやってこないし、そもそもこんな真冬にかき氷食いたいなんて言うバカはおまえだけだばーか。 がちゃり、と遠いような近いような。まあどっちでも。ただいまー。おかえりー。吹き込んでくる寒風が火照った体に気持ちいいと思ったら大間違いでぶっちゃけ寒いからさっさと閉めろばーか。 「遅くなってごめん」 「柿ピーとちーかまよこせ」 「はいはい」 投げるなばーか。ナイスキャッチあたし。ビリッ。柿ピー齧る。ぽりぽり。うまうま。 「ちょっと、かきごおりは!?」 「いやいやいや、こんな真冬になんでかき氷?」 「うわあああああん!」 「あーもう鬱陶しいなぁ。ほら笹瀬川さんも邪魔だから」 蹴ってやれ蹴ってやれ。 「トイレ行くけど鈴も来る?」 どんな誘い方だうっさいしねばーか。 トイレからげげごぼうぉえー! まだ吐いてんのかあいつ。佳奈多と佐々美が釣られて吐いた。しねばーかども。 [No.5] 2009/03/06(Fri) 14:26:25 |
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