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アパートへ帰ってきたらもうすっかり日が落ちたというのに、電気もつけず葉留佳さんがぼーっと座っていた。最近葉留佳さんの様子が少しおかしかったりする。いや、葉留佳さんだけじゃない、佳奈多さんも。三人の暮らしを始めてすぐのころはいつでも三人一緒にいたのに、今は二人とも出来るだけ分かれて行動しようとしているように思う。以前のような激しく争うようなそんな雰囲気はない。ただどこか一緒にいるのがつらくて避けているようなそんな雰囲気がある。男一人女二人の生活はやっぱりおかしいのだろうか。三人で行動することが多かったころ何度も僕らをいやらしいものでも見るかのような視線を感じたことある。正直僕だって他人がこんな生活をしていると聞けばあまりいいようには思わないだろう。それでもこれが僕らの選んだ暮らしだから絶対幸せでいたいと思う。 「ただいま」 「えっああっ!? お、おかえり理樹くん」 僕の言葉に驚いたかのように葉留佳さんはラッピングされた小箱を後ろに隠した。プレゼントなんだろうか。佳奈多さんへのプレゼントだったらちゃんと言ってくれるだろうから多分僕に対するプレゼント。やっぱりどこか佳奈多さんに対して遠慮があったのだろうか。 「葉留佳さんその箱は」 「やだなあ、理樹くん箱なんてどこにもないじゃないですか」 箱を後ろ手に隠したまま立ち上がり眼をきょろきょろさせながら一歩づつ後ろに下がっている。ひょっとしたらこのまま気づかないふりをしている方がいいのかもしれない。でも多分もうすでにほころびは始まっている。このまま放っておけばますますひどくなるだろう。だから覚悟をもって前へ進まないといけない。たとえそれが誰かにとってつらい結果を招くことになったとしても。 「ごめん」 そう言って僕は葉留佳さんの腕をつかんだ。葉留佳さんは抵抗はしたけれど、男女の体力差があるのだからすぐに箱を手放してしまった。ポトリと落ちた箱を見てとうとう葉留佳さんは観念したかのような顔になった。 「……理樹くん私の話を聞いてくれますか」 いつでもおちゃらけているようでそのくせ周りをうかがうような臆病な目をすることが多い葉留佳さんが、今はまっすぐに僕の方を向いている。僕は決してその眼からは逃げてはいけないんだ。 「悩んでた。お姉ちゃんと理樹くんは恋人になったのに私はそれを邪魔しているんじゃないかって。今の関係は不自然じゃないかって」 落ちた箱を葉留佳さんが拾いそれを僕に差し出す。訴えかけるような眼に促されるように僕は包装紙をはがし箱を開ける。 「男の子とその人が好きな姉妹が一緒に暮らしているってやっぱりおかしいと思う。だから……」 「これは!?」 水色と白の縞パンだった 「理樹くん、それをはいて女の子になって」 「いやいやいやいやいやいやいやいや」 新記録になりそうなくらいいやいや言ってしまったじゃないか。なんでそこでそういう発想になるの。 「理樹くんが女の子になったらお姉ちゃんと恋人じゃなくなってしまう。そうしたらお姉ちゃんを傷つけることになってしまう。それでも私理樹くんたちと一緒にいたいの」 「ごめん突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込めばいいのかわからないよ」 僕の胸に頭を預け葉留佳さんは泣き出してしまった。そんな場面じゃないでしょこれ。 「ただい……ま!?」 この最悪の状況下で佳奈多さんが帰ってきてしまった。女の子を泣かせそして僕の手は縞パンをつかんでいる。うん、どんな凄腕弁護士でも弁護不可能だな。 「一体これはどういうこと!」 今までのことを佳奈多さんに話すと最初は鬼のような形相だった顔が徐々に緩んでくる。さすがにこんなあほな理由だと分かれば佳奈多さんもすぐに許してくれるだろう。 「あなたもだったの」 「も?」 そう言って佳奈多さんは自分のタンスの中からさっき見たのと同じような包みを取り出した。開けたくない。絶対開けたら後悔する。けれどそんな無言の抵抗は佳奈多さん、そしてやや元気を取り戻した葉留佳さんには何の意味ももたないらしい。二人の強い瞳に促されて開けると、そこには水色と白の縞ブラがあった。 「ごめんなさい。直枝私はあなたのことが好き。その気持ちは嘘じゃない。でも私の一番は今でも葉留佳なの。ごめんなさい……ごめんなさい」 「それはいいんだけどそこで縞パンとか縞ブラが出る発想は無視できない」 「お姉ちゃん」 泣きそうになった佳奈多さんを葉留佳さんが抱きしめる。 「お姉ちゃん、女の子の一番大事なところを守れないんじゃ理樹くんがかわいそうじゃない」 「……葉留佳こそ一番女性らしい部分のことを忘れていたじゃない」 「ははは、二人ともダメですネ」 「そうね、私たちは二人一緒で初めて一人前なのね」 「お姉ちゃん……」 「葉留佳……」 「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」 あっさり記録更新しちゃったよ。これそんな感動的な場面じゃないでしょ。なんか無駄にきれいなBGMが流れているよ。誰だよBGM流しているの。 「というわけで理樹くん着替えましょう」 「安心して直枝。ちゃんとこれは男性用ブラでなく女性用ブラだから」 「何を安心するの!」 「「それじゃあ」」 「ああーっ!?」 その夜の二人はかなりSでした。 [No.518] 2009/11/20(Fri) 21:20:39 |
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