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No.52へ返信

all 第30回リトバス草SS大会 - 主催 - 2009/04/02(Thu) 22:17:21 [No.43]
締切 - 主催 - 2009/04/04(Sat) 00:23:32 [No.54]
僕らの七日間戦争 - ひみつ@13675 byte - 2009/04/04(Sat) 00:12:50 [No.53]
名探偵クドリャフカ - ひみつ@14093byte - 2009/04/04(Sat) 00:07:19 [No.52]
[削除] - - 2009/04/03(Fri) 23:48:59 [No.51]
枯れ木に花を咲かせましょう - みかん星人 - 2009/04/03(Fri) 23:32:29 [No.50]
あなたの支配者 - ひみつ@11695 byte - 2009/04/03(Fri) 23:19:27 [No.49]
心にもない言葉は空から投げる。 - ひみつ@9759 byte - 2009/04/03(Fri) 22:48:25 [No.48]
三千世界のからすを殺し - ひみつ@3906byte - 2009/04/03(Fri) 21:57:02 [No.47]
きみのためなら踏める - ひみつ@12526 byte 誰得 - 2009/04/03(Fri) 21:41:51 [No.46]
- ひみつ@10066 byte - 2009/04/03(Fri) 01:44:16 [No.45]


名探偵クドリャフカ (No.43 への返信) - ひみつ@14093byte

 名探偵のもとに事件が転がり込んでくるのは必然だ。事件がなければ探偵は存在できない。そういうわけで、名探偵《犬犬わんわん》こと能美クドリャフカと彼氏である僕が一緒に渡り廊下を歩いていたとき、女子寮内から悲鳴が聞こえてきたのはやはり必然なのだと思う。
 さらに言えば、名探偵は難事件を解いてこそ名探偵なのだ。小学生でも解ける馬鹿みたいな謎を解いても名探偵とは呼ばれない。そういうわけで、今の悲鳴の先に待ち受けているのは想像を絶する難事件のはずだ。だが、名探偵は難事件を解き明かすからこそ名探偵なのだ。分かりませんと匙を投げるようでは名探偵と言えないし呼ばれない。そういうわけで、名探偵《犬犬わんわん》の前にはいかなる謎も無力だ。僕は安心してクドの推理を聞いていられる。
 女子寮に入るとクドの部屋の前で、小毬さんが泣き喚いていた。僕とクドは悲劇に慣れているので、慌てず落ち着いて室内に踏み込む。
 部屋の中央に二人の人間が折り重なって倒れていた。四肢が根本から切り離されて、胴体の近くに放置されている。二人分の血が放射状に広がって床を汚していた。死体の顔を見て僕は驚く。彼らの顔は直枝理樹と能美クドリャフカのものだ。僕とクド自身がそこで死んでいる。
「リキ、部屋に誰も入ってこないよう見張りをお願いします」
 僕が頷くと、クドは部屋中をくまなく見て回る。
「窓には鍵がかかっていますね。細工をした形跡もありません。誰かが潜むことのできる場所もなさそうです。まぁ、ドアの方は普通に開いていたわけですが」と言いつつ、今度は死体の傍に屈み込む。「確かに死んでますね。それにこの顔、やっぱり変装の類ではなく本物で間違いありません。それから切り離された手足ですけど切断面が荒れてます。刃物で切ったというよりは力任せに引き千切ったように見えますね」
 クドが淡々と喋るのは彼女が《犬犬わんわん》だからだ。
 名探偵はこれぐらいのことで動じない。
 続いてクドは、廊下に座って体を震わせる小毬さんのもとに向かう。腰を落として視線の高さを合わせ「小毬さん、話を聞かせてもらえますか?」と言った途端に彼女は小毬さんに抱きつかれていた。小毬さんはわーわー泣いて涙で顔をくしゃくしゃにしていて、とても質問に答えられる状況じゃなさそうだ。辛抱強く泣き止むのを待ったクドが、その後に小毬さんから引き出した証言は、難事件に対して一般人に毛が生えた程度の耐性しかない僕をさらに混乱させた。
「ついさっき、理樹くんとクーちゃんから頼み事されたんだよ。今から部屋に入るけど、絶対に誰も中に入れないで欲しいって。二人とも真剣な顔してたから、事情とか聞かずに分かったって言ってその通りにした。そしたら一分後ぐらいに中から苦しそうな声が聞こえてきて。思わずドアを開けてみたら」と言って小毬さんは目元を手の甲で拭う。「あれってクーちゃんと理樹くんだよね。私ちゃんと顔見たもん。でもじゃあ、どうして二人ともここにいるの?」
 クドは黙考するだけで何も答えず、代わりに「絶対に部屋には誰も入ってませんか?」と問う。
「絶対だよ。だって私、ドアに背中を預けるみたいにして二人が出てくるのを待ってたんだから。誰か入ろうとしたらすぐ分かるよ」
「では、部屋の中から誰かが出て行ったということは?」
「私ずっとここにいたんだから、見落とすはずがないよ」
 小毬さんの言うことが確かなら、これは密室で起きた殺人事件だ。被害者は僕とクドで、犯人は一分以内に二人の両手両足を刃物もなしに切り離したということになる。意味が分からない。凄まじい難事件だ。僕の貧困な想像力では、密室という部分だけに着目してみても、小毬さんが嘘をついていたという推理ぐらいしか出てこない。助けを求めてクドに視線を向けると、彼女は腕組みをして目を閉じている。頭の中で情報を整理しているように見える。《犬犬わんわん》は名探偵なので事件解決の糸口を既につかんでいるかもしれない。
「ねぇ、何か分かった?」
 クドはゆっくりと目を開けて「ええ。私をみくびってもらうと困ります」と言う。
「何が分かったの?」
「すべて分かりました。犯人も犯行方法も」
 自信満々に宣言するクドを前に、僕は目を丸くする。事件を取り巻く要素はどれも難解なのに、彼女がこの短時間で答えを出せたことが信じられなかった。だが名探偵は意識的にそうしない限り、ふつう推理を間違えない。ただの探偵なら地道な事情聴取やらアリバイ確認やらの紆余曲折を経てようやく答えに辿り着くところだが、《犬犬わんわん》は名探偵なのでその過程をすっ飛ばして答えに至ってもおかしくはないのだろう。
 いやしかし、ここには小毬さんと僕たちしかいない。せめて三人ぐらいそれらしい容疑者を用意してから推理を始めるべきじゃないだろうか。僕や名探偵《犬犬わんわん》が犯人というのは正直勘弁して欲しいし、かといって小毬さんが犯人というのも芸がない。それとも今回は殺害方法やトリックという面に主眼が置かれているとかで、犯人については割とどうでもいいのだろうか。
「順に説明していきましょう。まずは密室についてです。と言ってもこれは別に重要じゃないのです。亡くなったあの二人が密室を作りたいと思い、そのために小毬さんにドアの見張りを頼んだから密室になったというだけのことです」
 小毬さんが首を傾げる。「どういうこと?」
「つまり、二人は自分の身を守るために密室を作ったのです。もちろん自分たちの意思でです。ですが密室は何の役にも立たず、彼らは命を奪われてしまいました」
「誰がそんなひどいことしたの?」と小毬さんは素早く問いかける。
 多くの探偵は段取りにこだわるから、他人が勝手に話を促すのは御法度な気がするがまぁいいかと思い直す。名探偵の助手的な役割の僕がこういうことを言うとあれなのだけれど、実のところ僕は長々とした解説はいいからさっさと結論を言え的な考えを持つせっかち人間なので「そうだよ。誰がそんなことを?」と言って、さりげなく小毬さんに同調しておいた。
「誰が、というとちょっと難しいのです」と《犬犬わんわん》は言葉を濁す。
「というのも、二人の死は事故のようや不可抗力のような、そんな感じだからです」
 事故や不可抗力で人がばらばらになるはずがないと思いつつも口には出さない。名探偵の推理は絶対だから、僕みたいな凡夫が底の浅い指摘をしても恥をかくだけだ。
「直枝理樹と能美クドリャフカは自分たちが死ぬことを知っていました。だから小毬さんにお願いして密室を作り、どうにかして死から逃れようとしました。しかしそれは叶わず、二人はばらばらになって死んでしまいます。それを見た小毬さんが悲鳴を上げ、そこに私たちが駆けつけた。これが事件の流れです」と言ってクドは一旦言葉を切る。「ではどうして、二人は死んでしまったのか? それは名探偵である私《犬犬わんわん》とリキの存在に責任があります」
 小さく悲鳴を上げて後ずさりする小毬さんに向けて、クドは「勘違いしないで下さい。私とリキが共謀して彼らを殺したというわけではありません」と言う。
「私とリキは能美クドリャフカと直枝理樹なのですが《オリジナル》の存在ではありません。だって《オリジナル》の能美クドリャフカは《犬犬わんわん》なんて名乗りませんよね。そういう意味で言えば私は偽者なのです。でも同時に能美クドリャフカと呼ばれる存在でもあるのです」
 小毬さんは頭を抱える。「あなたは誰なの?」
「ですから、名探偵《犬犬わんわん》です。またの名を能美クドリャフカ」
「じゃあ、あっちにいるのは?」
「《オリジナル》の能美クドリャフカと直枝理樹です。この世界に私とリキが登場したことで、存在の整合性が取れなくなって彼らはばらばらになったんです。そして《犬犬わんわん》は《名探偵》だからこの事件を解決することになりました」と《能美クドリャフカ/犬犬わんわん/名探偵》は淀みなく答える。
「でも《事件が起きた》から《名探偵が現れた》のか、《名探偵が現れた》から《事件が起きた》のか、どっちが正しいのかは分かりません。『ニワトリが先か、卵が先か』という議論と似たようなものですね。ともあれ、これで事件は解決なのです」


 密室バラバラ事件を見事に解決した《犬犬わんわん》と話を聞いていただけの僕が女子寮を出ると、狙いすましたように今度は男子寮から悲鳴が聞こえてきた。名探偵はどんなに気が進まなくとも疲れていても面倒でも難事件を解決せずにはいられないから、僕たちは揃って男子寮に向かう。
 僕と真人の部屋の前に人だかりができている。ひとまず現場を確認しなければならないので、僕とクドは人の輪を潜り抜けて室内に入ろうとする。だがドアの手前で誰かに道を阻まれる。誰かと思ったら来ヶ谷さんだ。彼女は僕たちを見て「……どういうことだ」と戸惑いの言葉を漏らす。
 その真意を図りかねながらも、僕は「来ヶ谷さん、悪いけどどいてくれないかな」と言う。
「いや……実は中に誰も入れないよう、名探偵に頼まれていてな」と来ヶ谷さんは歯切れ悪く答える。
「名探偵?」
 どういうことだろう。名探偵なら僕の隣にいる。
 考えていても仕方がないので、強引に突破して僕たちは室内に踏み入る。
 部屋に置かれた二段ベッドに、恭介が磔となっていた。胴体と両足はハシゴに結びつけられていて、左右に広げられた両手はベッドの板の隙間に挟まって固定されている。脇腹には包丁が突き刺さったままだ。流石の僕にもこれが何を意味しているのかぐらいは分かる。これはいわゆる《見立て殺人》というやつだ。見立ての内容はもちろんキリストの死だ。だけど僕が本当に唖然としたのは、この《見立て殺人》を目にしたときでなく、恭介の死体を傍で観察する二人の男女を見たときだ。彼らは僕たちと同じ顔をしていた。僕たちはまたしても自分たち自身と対面することになったのだ。
 能美クドリャフカの方が、僕たちの存在に気づく。
 彼女は余裕の微笑みを浮かべてこちらにそっと手を伸ばす。
「どうも初めまして。名探偵《クドリャフ21》です」
「こちらこそ初めまして。名探偵《犬犬わんわん》です」
 僕と向こうの直枝理樹をそっちのけで彼女たちはお互いに自己紹介を終える。
 僕たちと彼らがこの世界に同居できるのは、四人ともオリジナルの存在ではないからだ。オリジナルの能美クドリャフカと直枝理樹は、自分以外の自分を許容できない存在だからこそああして引き裂かれたのだ。僕たちは何人増えても特に問題ないだろう。
 だがどうして名探偵が二人もいるのだろうか。協力すれば確かに能率が上がるのかもしれないが、名探偵はそもそも単体で事件をきっちり解決する能力を持っている。それに能率が上がるとなると事件がとっとと終わってしまって、名探偵的には見せ場がなく消化不良に陥るだろう。推理勝負をするにしたって、名探偵は推理を間違わないのだから勝負にならない。あるいは真実に辿り着く速度を競うのだろうか。だとしたら少なくとも僕には不毛なことのように思える。
 例えば凄まじい速度で謎を解く名探偵が連続殺人事件に挑んだ場合、予定ではそして誰もいなくなるところが最初の一人目で犯人をつかまえて普通の殺人事件に格下げすることができるかもしれない。あるいは事件発生前につかまえて殺人未遂に格下げすることもできるかもしれない。できるかもしれないが実に盛り上がらない。実に盛り上がらないので実際にはとろくさい名探偵の方が需要があるように思える。なので解決までの速度というのは探偵の格づけをする上であまり意味がない気がする。
 しかしこんな考えは全然これっぽっちも当たってなくて、単に可愛らしい名探偵を二人も出せば盛り上がるじゃないか的な考えが作用して二人も出てきたのかもしれない。だとしたら最悪なのでそうでないと祈ることにする。
「《クドリャフ21》さんは本当に名探偵さんなのですか?」
「私は本当の本当に名探偵なのです。どうして《犬犬わんわん》さんが現れたのか理解に苦しみます。私は他の名探偵さんに助けてもらわなくてもあっさり難事件を解決しちゃうのですよ!」と言ってぷりぷり怒る《クドリャフ21》を向こうの直枝理樹がなだめている。僕と同様に彼もまたクドの彼女なのだろう。
 僕は三人を放っておいて来ヶ谷さんに話を聞くことにする。そこで初めて気づいたのだが、室内側の扉のあちこちに板がぶら下がっていて、周辺の床には釘が散らばっている。金槌も落ちている。どういうことか彼女に訊いてみると、最初はどうやら内側から板と釘によって扉が開かないように細工されていたという返事が来た。何人かと協力して壁に体当たりを食らわせてようやく破れたという話だから、相当厳重に封印されていたらしい。一応窓も調べてみたがやはり施錠されている。鍵のタイプ的に糸での細工も無理だ。というわけでまたしても密室での事件ということになる。
 僕は今調べた内容を、恭介の死体を調べている最中の《犬犬わんわん》に伝える。クドは「ありがとうなのです、リキ」と言って何度か頷く。それから「謎はすべて解けました!」と高々に言い放った。
 別に意地になっているわけじゃないだろうから、クドは本当に謎を解いたのだ。それも最初からいた《クドリャフ21》よりも早く。名探偵は推理を絶対に間違えないから、つまり《犬犬わんわん》は《クドリャフ21》を出し抜いたということになる。解決までの速度にあまり意味はないと言ったが、何となく僕は誇らしい気分になる。
「お手並み拝見なのですよ、名探偵さん」と《クドリャフ21》は言う。「ちなみに私はとっくの昔に真相を暴いているのです。《犬犬わんわん》さんの推理を聞きたくて黙っていましたけど」
「ふん、望むところなのです。この事件は実に単純明快なのです。まず恭介さんは板と釘と包丁と紐と金槌を持ち込んでこの部屋に入りました。次に板と釘を使って扉を開かないようにしたのです。それからベッドのハシゴに背中を預けて両足と胴体を紐でハシゴに固定します。最後に包丁で自分の脇腹を刺して、広げた両手をベッドの板の隙間に挟めば見立て死体の完成なのです」
 僕は言葉を失う。
 いくら《犬犬わんわん》の推理でもこれは無茶苦茶だ。
「何なのですかそれ? 自殺ってことですか?」と《クドリャフ21》は問いかける。
「違います。恭介さんは《見立てられて》殺されたんじゃないのですよ。《見立てられるために》殺されたのです。つまり恭介さんに自由な意思なんてなかったんです。だって考えてもみてください。名探偵は《事件を解決するため》に存在しているんです。だから難事件に合わせて名探偵が登場するわけです。この世界には《神》がいます。この世界を創って難事件なんてものを発生させている《神》がいるんです。その《神》の意思の前に、私たちは無力なのです。《神》が見立て殺人を起こしたいと思ったら見立て殺人が起こるし、恭介さんは見立てのためだけに死にます。そういうものなのですよ」
 僕は胸を締めつけられる気がした。つまり《能美クドリャフカ/犬犬わんわん/名探偵》は、僕たちが揃って単なる《世界の駒/キャラクター》でしかないと言っているのだ。僕たちはただ、この世界とこの物語を創る《神》に弄ばれているだけなのだと。だとしたら僕のクドに対する想いも嘘だし、クドの僕に対する想いも嘘なのだ。そういうものがあるように見せかけられているだけなのだ。
 そして《名探偵/犬犬わんわん》は推理を間違えない。だからクドの言うことは正しい。絶望的だった。僕は床に膝から崩れ落ちそうになる。だがそのとき、「何を言っているのですか。馬鹿げた推理もほどほどにするのです」と言って《クドリャフ21》が笑う。
「私の推理を聞くといいのです。恭介さんは自分で自分の脇腹を刺したわけでは断じてありません。この世界とは別の流れにいる直枝理樹の手で殺されたのです。何故ならこの世界にいる恭介さんはオリジナルで、世界の《神》だからです。恭介さんの創る世界を気に入らない、無数の世界にいるリキのうちの一人が恭介さんという絶対の《神》を殺したのです。だから神の子とされるキリストの死に見立てられて恭介さんは殺されたのです」
「無茶苦茶なのです! どこに証拠があるのですか!」と《犬犬わんわん》が叫ぶ。
「証拠? ないです。でも名探偵は推理を間違えません。だからこれは真実なのです」
「そんなことを言うなら私だって名探偵なのです! 私の推理は正しいのです!」
 さらに叫び返した《犬犬わんわん》が何かに気づいたように顔を上げる。
 その様子を見て《クドリャフ21》は頷く。
「そうです。私たちの推理はどちらも正しいのです。世界が二通りの真実を持っているのは、この世界の内部に別の法則を持つ新たな世界が生成されていて、真実も二通りあるからに他なりません。《犬犬わんわん》さんと別種の真実をつかみ上げた、私《クドリャフ21》の存在こそがその証拠なのです。《犬犬わんわん》さん、あなたは物語の駒として《創作者》という《神》に操られることはないのです。そんな悲しい真実に支配された世界に生きることはないのです。人が自由な意思と心を持つ世界に、私と一緒に行きましょう」
 この世界で名探偵の言葉は何より強い。僕とクドは、《クドリャフ21》の差し伸べた手をそっとつかむ。《クドリャフ21》が能美クドリャフカである以上、《犬犬わんわん》にだってその世界に至る資格があるはずなのだ。《創作者》という《神》のいないその世界で、《犬犬わんわん》は名探偵になんてなれないだろう。たぶん推理を間違うし、そもそも難事件になんて遭遇しないかもしれない。それでいい。だってふつうはそうなのだ。
 僕はもう自分以外の誰かの意思によって、クドを好きになることはない。《好きになるべき》だから《好きになる》のではなく、《好きになりたい》から《好きになる》のだ。そんな当たり前のことが許される世界に僕たちはきっと行ける。行ってみせる。


[No.52] 2009/04/04(Sat) 00:07:19

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