![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
もうすぐ文化祭。 各クラス、部活はそれぞれの出し物の準備で大わらわだ。 かくいう僕らリトルバスターズも遅まきながら文化祭に参加すべく準備を開始した。 披露するのは演劇。演目は『眠りの森の美女』。 以前幼稚園向けに準備したオリジナルの演劇が中途半端に終わった事に対するリベンジだそうだ。 それ自体は一向に構わないのだが、何故か配役決めでリトルバスターズ内で大規模な内紛が勃発する事態となった。 それはもう激しい戦いだ。 最初はジャンケンで決着を付けようとしたのだが、一向に終わらず様々な方法を試し、最終的に大バトルにまで発展する始末だった。 取り合っている配役?もちろんそれはお姫様…………ではなく王子様だ。 肝心の主役であるお姫様はと言うと。 「はぁ〜〜〜〜〜〜〜」 何故か全員一致で僕がやることとなった。 いやなんで僕?女の子もたくさんいるのに何故か誰も反対せず、逆に推薦されてしまった。 そのため僕以外のリトルバスターズメンバー全員で王子役を取り合っているのだ。 ……そう、全員。その事実が僕の頭痛を更に酷くする。 「はぁ〜〜〜〜〜」 再度溜息。 みんな戦いに掛かりきりなので現状僕だけぼーっと事の推移を見つつ、黄昏れるしかすることがないのであった。 「暇そうねー、直枝くん」 「ああ、あーちゃん先輩。まあ暇と言えば暇ですね。僕の配役以外まだ決まってませんから。そういうそちらは?」 遊びに来たのかと一瞬思ったが、この時期はなんだかんだで忙しいはずだ。 何をしに来たのだろう。 「いやねー、貴方のお仲間が学園の施設全部を使って色々やってるでしょ。だから立場上注意をしに来たんだけど……」 ちらっとあーちゃん先輩は廊下の端を見る。釣られて僕もそちらに首を向ける。 そこには飛び交う武器と木霊する声、熱狂する群衆。 戦いの凄惨を物語る音が学園の至る所で響き渡る。 「ちょーと入っていける雰囲気じゃなくてね。割って入ったら確実に巻き込まれそうだしね。風紀委員の子も躊躇してるみたいよ」 「確かに、そうですね」 あの戦いの渦に入っていける猛者はそうはいない。 僕が知る限り躊躇いなく入っていけそうな人物たちは揃って戦いの中心にいるし。 「まあそういうわけで私もここで傍観してるって訳」 「なるほど、そういうことですか」 ホント、いつ終わるのやら。 僕は呆れ半分で事の成り行きを眺めていた。 「そう言えば直枝くんは誰に王子様役をゲットして貰いたいの?」 興味津々と言った顔つきであーちゃん先輩は尋ねてきた。 いや、そんな目で見られても困るんだけど。とりあえず。 「女子なら誰でもいいですよ」 「あらー、直枝くんも案外男の子なのねー」 いやらしそうな目を向けられてしまった。 「別にそう言うわけでは。と言うより男とキスしたくないですので」 「あら、そうなら振りでしょ」 「いえ、その場合きっと西園さんが監督と演出に就任すると思うので」 むしろ女の子相手にするよりも過激なことさせられそうで怖い。 恭介たちもなんだかんだで拒否しなさそうだもんなぁ。 「なんかげんなりしてる?」 「ええ。誰が勝っても憂鬱そうだなって」 そう、例え鈴たち女子の誰かが王子役をゲットしたとしてもそれはそれで精神疲労が非道いことになりそうだ。 僕の未来に光は全く見えなかった。 「が、頑張って。……えーとそう言えば見たわよ、お姫様姿」 「はぁ」 「似合ってるじゃない」 「いえ、全然嬉しくないですが」 女装が似合うと言われて嬉しいはずがない。 むしろ更にげんなりだ。 「そう、可愛かったわよ。うちの学年でもかなりの数の写真が出回ってるし」 「ちょ、なんですかそれっ」 写真ってなにっ? いつの間に誰が撮ったの? 「さあ?とりあえず貴方がお姫様の格好をした次の日から出回ってるわよ」 「えええええー!!」 あれっていつだったかな。 結構前のような気がするんだけど。 「そういえば直枝くんの役が決まった日にすぐ衣装合わせが行われたって聞いたけど、いつ準備したの?」 「知りませんよ。お姫様役に推挙された後すぐに衣装渡されましたから。直しもほとんどありませんでしたし」 サイズもいつ測ったのやら。 現在、その衣装は手芸部により更なるパワーアップが進められているらしい。 いや、あれ以上フリルとか追加されると軽く死ねるんだけど。 「今度直に見せてね」 「……考えておきます」 そう答えるしかなかった。 そしてしばらくあーちゃん先輩と雑談をしていると辺りが急に静かになった。 「あら、終わったみたいね」 「え?」 あーちゃん先輩の言葉に慌てて周りを見ると、至る所にメンバーの倒れ伏した姿が見える。 そしてそんな仲間たちの屍を越えて一つの影が僕たちに向かって近づいてきた。 その姿は満身創痍。 姿はボロボロで片足を引き摺り、地面を這うように荒い息を吐きながら徐々に近づいてくる。 けれどその目に宿る眼光は鋭く、何かをやり遂げたかのような力強い光が宿っていた。 「勝者はあなたなのね」 あーちゃん先輩の言葉に応えるだけの力がないのか、僅かに首肯だけして僕の前に立つ。 その姿に僕は何も言えなかった。 恥ずかしいって気持ちはあるし、どんなことをさせられるか不安は当然ある。 けれど王子役を手に入れるためここまでみんなボロボロになって頑張ってくれたんだ。応えないわけにはいかないじゃないか。 僕は勇気を出し、そっと手を差し出した。 「頑張ろう、ドルジ」 「ぬお〜〜!」 僕らはギュッと熱い握手を交わした。 ちなみに当然のように第二回王子役争奪杯が開催されたのだった。 [No.551] 2009/12/04(Fri) 14:08:40 |
この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 60 日間のみ可能に設定されています。