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all 第49回リトバス草SS大会 - 大谷(主催代理) - 2010/01/22(Fri) 00:00:33 [No.633]
じゃっじめんと - 遅刻の秘密@6617byte - 2010/01/23(Sat) 19:02:01 [No.646]
しめきり - 大谷(主催代理) - 2010/01/23(Sat) 00:36:19 [No.642]
はぴねす - ひみつ@13917byte - 2010/01/23(Sat) 00:22:47 [No.641]
チェシャ猫とハローキティ - 秘密@7354byte - 2010/01/23(Sat) 00:02:33 [No.640]
熱血チャーハンホルモン風 - ひみつ@7816 byte - 2010/01/22(Fri) 23:14:57 [No.639]
希望の朝 - 秘密@4366 byte - 2010/01/22(Fri) 22:22:19 [No.638]
Graduation - 秘密@5926 byte - 2010/01/22(Fri) 21:20:20 [No.636]
Re: Graduation - 秘密@5926 byte - 2010/01/22(Fri) 21:27:58 [No.637]
彼女の趣味 - ひみつ@20326 byte - 2010/01/22(Fri) 21:08:11 [No.635]


じゃっじめんと (No.633 への返信) - 遅刻の秘密@6617byte


 佐々美はソフトボール部の練習を終えて、疲れ果てた身体を動かして部屋へと戻る。その後ろでは後輩たちが三人、わいわいとなにやら楽しそうに話していた。部屋へと戻る途中に佐々美が見ていた景色には同じ扉しか見当たらなかった。
 ようやくのところで佐々美は自分の部屋の扉を見つける。その扉の前で佐々美は三人の後輩たちと「ではまた夕食の時に会いましょう」と別れを告げる。後輩たちもそれに返事をして自分たちの部屋へと戻っていった。
 佐々美は後輩たちと別れたところで気を取り直して扉のノブを動かして引こうとするが、ガチャガチャと音をたてるだけで変化はなかった。「神北さんはいないみたいですわね……」と呟きながら制服のポケットからかわいらしいキーホルダーがついた鍵を取り出し、扉にある鍵穴へと入れて回す。かちゃん、と音が過ぎ去って佐々美は改めてドアノブに手をかけた。
 しかし、そこで佐々美はなんだか言いようもない変な予感を察知するが、気にせずに部屋の中へと踏み込んだ。
 部屋の玄関に立ち、靴を確認してみると知らない誰かの靴が置いてあった。更にここからではよく聞こえないが、寝室の方からは奇声みたいなものがかすかに聞こえる。そして、部屋の中へと目を向けてみると疲れがどこかに吹き飛ぶほどの異様な光景が佐々美の目に入り込んできた。
 そこには下着が無造作にバラ撒かれていたのだ。小毬が持っている純白のぱんつや、薄ピンクのぱんつ、しましまのもの、レース、そして黒のぱんつにいたるまで様々なものが廊下まで舞っていて折り重なっていた。また、よく見ると佐々美自身のぱんつも散乱していた。
 佐々美は「神北さんはこ、こんなに所持していたんですの……」とその圧倒的な量に驚きや動揺を隠しきれていなかったが、とにかく首を振って落ち着きを取り戻す。そして、佐々美は寝室にいる犯人はまだ自分に気付いていないだろうと確信を持って多量の下着を踏みしめながら、寝室へと向かった。しかし、犯人がどこからどうやってこの部屋に忍び込んできたのかが不明のままだった。
 声がだんだんと鮮明になって、犯人はまだそこにいるということは分かり……ついに、寝室の前までやってきたが……そこでは更に声がよく聞こえてきて、佐々美に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「こまりちゃん! こまりちゃん! ささみぃーっ! さしすせぇえええええええええええ! こまりちゃぁああああああああああああああああああああああん!!! にゃあぁああああ…ああ…にゃあっっー! にゃあぁああああああ!!! こまりちゅわぁああああん!!! にゃあぁ! ちゅっちゅスーハー! スーハースーハー! こまりちゃんとささみの枕と下着はいい匂いだなぁ…くんくん、んはぁっ! さしすせささみの髪をクンカクンカしたい! クンカクンカ! にゃああぁあ!!  間違えた! モフモフしたい! モフモフ! 髪髪モフモフ! モフモフ…もえもえきゅんきゅん!! 屋上で寝てるこまりちゃんかわいかったぞ!! にゃあぁぁああ…あああ…にゃあっあぁああああ!! にゃぁぁあああんんっ!! お菓子がいっぱいあって良かったねこまりちゃん! にゃあぁあああああ! かわいい! ささみいい! かわいい! にゃあっああぁああ! こまりちゃんとお友達になれて嬉し…いやぁああああああ!!! にゃああああああああん!! にゃあああああああああああ!!! にゃあああああああああああああん!! 絵本なんて現実じゃない!!!! あ……この世界もよく考えたら……こまりちゃんは現実じゃない? にゃあああああああああああああん!! うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!! いやぁぁぁあああああああああ!! はぁああああああん!! ばかあにきいいいいぃぃ!! この! ちきしょー! やめてやる!! 虚構世界なんかやめ…て…え!? 見…てる? 屋上のこまりちゃんがあたしを見てる?  こまりちゃんがあたしを見てるぞ! ささみがあたしを見てるぞ! ピッチャーのささみがあたしを見てるぞ!!  サードのこまりちゃんがあたしに話しかけてるぞ!!! よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだなっ! あたしにはこまりちゃんがいる!! ささみがいる!! やったぞ理樹!! ひとりでできるぞ!!! あ、こまりちゃああああああああああああああん!! いやぁあああああああああああああああ!!!! にゃあっにゃあんにゃああっにゃああんささみ様ぁあ!!! こまりちゃぁああああああん!!! にゃぁあああ!! ううっうぅうう!! あたしの想いよこまりちゃんに届け!! リトルバスターズのこまりちゃんへ届け!」

 佐々美はそこまで聞いてその場から逃げ出した。その間、佐々美はずっと衝撃を受けて呆然と立ち尽くしていた。まさかほんとに知り合いの声だとは思わなかったからだろう。それもいつも佐々美が目の敵にしている鈴。佐々美は散りばめられていた様々な単語からその声の持ち主が棗鈴だと確信できた。それも、自分の名前が間違えられているといういつものおまけつきで。
 そして佐々美は寮の廊下へと飛び出した。佐々美はそこで自分の頬をつねっていた。しかし、痛みを感じてつねっていた指をすぐに離す。さっきのことが夢だったらどんなによかったことだろうか、と佐々美は思った。
 佐々美がふと気付くと、小毬が廊下の向こうから鼻歌交じりに歩いていた。小毬は佐々美の姿を確認すると、とてとてと、走りながら近づいてきた。そこで、小毬は佐々美の具合が悪そうな様子に気付いた。
「あれ? さーちゃんどうしたの? 気分悪いの?」
「え……ええ。まあそうですわね…」
 今更ながら、佐々美はあの場で寝室への扉を開けなくて正解だった、と感じた。あのまま扉を開けていたら恐ろしい光景を目の当たりにしていたのだろう。
「うん、じゃあ部屋で休もう」
「神北さん! ちょ、ちょっとその前に聞きたいことが…」
「なあに?」
 今の部屋の惨状を知っている佐々美は扉を開けようとした小毬を静止させた。小毬は笑顔で佐々美に振り向いた。
「え、えーと…棗さんに部屋の鍵を渡してませんわよね……?」
「鈴ちゃんには鍵は渡してないなぁ」
「それじゃあ誰かに取られたりとかは…」
「ううん、ちゃんと持ってるよ」
 小毬はそう言ってポケットから鍵を取り出した。「そう……分かりましたわ」と言い、佐々美はそこまでの確認をして鈴がどうやって部屋に忍びこんだのかを考えようとしたが、扉を開こうとする小毬が目に入ってそこで更に止めようとした。しかし、何か喋ろうとした時には既に扉を開けてしまっていた。渋々、佐々美は小毬と一緒に入ってみるが、玄関を見てみると棗鈴の靴が置いてなかった。部屋の中ではさっきと同じように大量の下着がそのままになっていて、お出迎えをしてくれた。さすがに二度目ともなる佐々美はその光景に衝撃を受けなかった。
 しかし、隣にいた小毬はと言うと……。
「ほぇええええええええええええええええええええええええええ!?」
 寮中に叫び声が響き渡った。

 その小毬の大きな叫び声を聞いて誰よりも早くやってきたのは鈴。しかも、寮の廊下側から扉を開いて中に入ってきた。
「こっ、こまりちゃん! なにがあったんだ!?」
 冷静でいようと心がけていた佐々美もなにがなんだか分からなくなってくる。
 どうやって棗鈴が部屋に入ってきたかを佐々美は考えたが、答えは出てこなかった。佐々美は今日、朝練がなかったためゆっくりと窓の戸締りを確認をした。そして、小毬が鍵を渡したり失くしたりしてないことも確認した。その小毬は今気を失ってしまっている。
 そこで、佐々美は簡単なことに気付いた。目の前の人物に聞けばいいと。だけど…鈴になにかされるかもしれない、と佐々美は思ったがその考えを捨てて声を振り絞った。
「棗鈴!」
「なんだ、ささみ」
「ジャッジメントですの!」
 佐々美は威勢よくそう言ってみたはいいものの、鈴は扉を閉めたままどこかへ消えていた。
 謎だけがその場所に残った。


[No.646] 2010/01/23(Sat) 19:02:01

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