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「結婚しよう、理樹君」 来ヶ谷さんの不意打ちに僕は面食らった。 「え…いきなりどうしたの? この前まで『結婚するといやに余所余所しくなっていけないな。理樹君とはまだまだラブラブしていたいものだ』って言ってたのに」 「いや…実を言うとだな…その、親がうるさいのだよ」 「親?」 「私の両親のことだよ。そろそろ結婚してもいいのではないかという電話がひっきりなしにかかってきてな」 「ああ…確かに」 今年で僕と来ヶ谷さんは23になる。晩年化が進んでるとはいえ、高校から付き合っているならもう結婚してもいいというのが世間一般の見解だろう。 「さらに言うとな、孫がほしいらしい」 「ぶっ!」 飲みかけのジャスミンティーを盛大に吐き散らした。 「いや、私もほしくないわけではないぞ。むしろ子供は多いほうが賑やかでいいだろう」 「でもいきなり結婚って早すぎるよ!」 「それがな、こればっかりは逆らえんのだよ」 「なんで?」 来ヶ谷さんが顔を暗くしながら俯いた。 「爺様が危篤らしい。この前まで朝にパンツ一丁で乾布摩擦までしていた人が…な」 いつもはこういうを軽くいなす来ヶ谷さんが、珍しく真剣な話をしている。僕もそれに合わせて手に膝を置いて話を聞く。 「床に臥しながらしきりに『一度でいいから孫の顔が見たかった』と呟いているらしい。あの方には小さいころからよくしてもらったからな…せめて孫は見せてやれなくても、結婚式には出席させてあげたいというのが私と私の親の考えなのだよ」 近くで熱を吐き出しているヒーターの音がやけに大きく聞こえる。それと合わせて僕の心臓も早鐘を打っている。 目尻に涙を溜めながら来ヶ谷さんは顔をあげた。いつも頼りげのある顔がくしゃくしゃに疲れたような、やつれたような顔をしていた。なぜかとても守ってあげたくなった。来ヶ谷さんの顔を胸元に抱き寄せた。 「結婚しよう、来ヶ谷さん」 「本当か?」 「本当の本当。何なら今から誓ってあげようか?」 「いや、それは神父の前で言おう。私はクリスチャンだからな」 ふふ、と来ヶ谷さんが笑う。やっぱり、来ヶ谷さんに泣いた顔や疲れた顔は似合わない。 「というわけで」 そう言って来ヶ谷さんはクローゼットの中からスーツケースを取り出した。 「明日、早速本家に向かおうと思う」 「ええええ!?」 「なんだ、まずかったのか?」 「いやいやいや、まず第一に連絡取れてないでしょ。っていうかまず僕が来ヶ谷さんのご両親に会ったことないし!」 「案ずるな」 胸ポケットから携帯電話を取り出してピポパと番号を押している。家に電話をかけているらしい。スリーコールしないうちに電話に出た。 「母上か…そろそろ段取りが整いそうなのでそちらのほうにも連絡をお願いしたい。…ああ、そういうことだ。…大丈夫だ、そんなことはない。私が見染めた男だからな。…よろしく頼む。ではな」 携帯の通信を切る。あまりの早業に僕はぼーっとしているだけで何もできなかった。携帯をしまってこちらを向いて来ヶ谷さんが言う。 「何を呆けた顔をしているんだ? 明日の朝にはこちらを出るから早く準備をしなければ間にあわないぞ?」 恋はいつだって突然だ、という言葉はこの状況を表すのにとても的を射ていると思う。 その夜、僕は荷造りやら親への挨拶の練習やらプロポーズの言葉やらを考えるのに興奮して全く眠れなかった。 三駅乗り継いでタクシーに揺られること三十分。都市から田舎へと景色が移り変わり、やってきたのは100坪はあるかという豪邸だった。百数年はその場所にとどまっていたのか、風格が漏れ出している。門と塀が家を覆い、門の前には門番さえいる。 こんな光景を目の前にして僕ができたことと言えば―ただ脚をがくがく震わせること―ぐらいだった。 「案ずるより産むが易しという言葉を知っているか理樹君」 来ヶ谷さんが僕の肩に手を置いてくる。そういう来ヶ谷さんは着物姿で、僕はスーツ姿だった。来ヶ谷さんの着物姿がそれはそれでとてもきれいだったのだが、その時の僕にそんな余裕はなかった。 「こんな豪邸だなんて聞いてないよ!」 来ヶ谷さんの昨日の話し方からそこらへんにある普通の家を予想していた僕にとって、これはかなりの衝撃だった。電車やタクシーの中でしていた『来ヶ谷さんをお嫁にください!』の練習がとてもちっぽけに見えてくる。 「ふむ、爺様はこのあたりで成功した地主の方の跡継ぎでな。したがってこうなってしまったわけだ」 「…しょうがなくってこと?」 「理解が早くて助かるよ。でもまぁ、……得てして外見と中身は違うということが多いのだよ。例えば、真人君はあの体型の割に少女漫画が大好きとか、鈴君は無邪気そうながら、実はクローゼットの奥にエロ本を隠していたりな」 「ぶっ! っごほ!」 「安心しろ、半分冗談だ」 「それってどっちが!?」 「人の秘密はあまり漏らしてはいけないものだよ。くわばらくわばら」 そこで会話が切られてしまった。煮え切らないものの、仕方なく屋敷に目を移す。 風格、気品、優雅な佇まい、それらを全てひっくるめたようなとても言葉にはできないような日本情緒あふれる屋敷なのに、今はそれが僕にとって獲物を待ち構えて舌なめずりしている蛇に見える。もちろん僕は兎だ。そう考えると来ヶ谷さんも蛇の仲間? 「ぼーっとするな理樹君。向こうではもうお待ちかねだぞ」 「はっ」 考え込んでいると、来ヶ谷さんが門の中に入るように促してきた。強面の門番が僕たちを待っている。おっかなびっくりしながらも、門番に目を合わせる。 「唯湖様と理樹様ですね?」 「え、っは、ハイ!」 「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」 門番の人が内側にいるもう一人の門番に合図してかんぬきを外す。ギギギッ…、と重苦しい音を立てて門が開いた。来ヶ谷さんと目を合わせて頷きあってから僕は門下をくぐった。 目の前の景色は想像のはるか上を飛んでいた。緊張していたので見ていなかったが、入ると同時に竹林が周りを取り囲んでいた。その中に家の玄関らしき場所まで続いている道が一本、それとあと他に道が一本あった。 「なぜに家の中に竹林が…」 「爺様の父上の趣味らしい。ここに来た時はよくこの竹林でかくれんぼをしたものだよ」 「あとこっちの道は何?」 「そっちは別宅に通じている…らしい」 「らしい?」 「いや、実を言うと私もあまりここに来たことがなくてな。小さい頃はあっちに行くのは危ないからここで遊んでなさいと言われていたし」 「何もかもが超弩級だね…」 「私の場合は胸だな」 胸を寄せあげる。 「そんなこと言ってないで行くよ」 ふざけている来ヶ谷さんの手を取って玄関まで歩いていく。余所見する余裕はなかったが、来ヶ谷さんが言うにはこの奥に池があるそうなのだが、竹林が邪魔で見えなかった。 心臓の鼓動を隠すようにずんずんと玄関まで進んでいると、いつのまにか玄関に着いてしまっていた。内心、このまま玄関まで辿り着かなければいいな、と思っていただけに少しがっかりする。はやる自分の気持ちを抑えるかのように手に胸を当てて鼓動を鎮めようとする。 「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大夫丈丈夫大」 「事が大丈夫かどうかは置いといて、理樹君の頭の中は今まさに混沌だな」 「だってお父様とお母様がアレだよ!?」 「何があれなのかは分らないが、まず私の両親をお父様お母様と言っている時点で落第点だな」 自分でも緊張してるのはわかっていた。心臓が早鐘を打って、呂律は全く回りそうにない。かといえば血液は沸騰しそうで、今この場で短距離走に出たら間違いなく新記録をマークするだろう。そのぐらいテンパっていた。 来ヶ谷さんは呆れた顔で僕を見た後、何かを観念したような顔でこう言い放った。 「――私を後悔させないでくれよ」 「え?」 返事をするかしないかというところで、来ヶ谷さんは玄関を開けた。いきなりのことに僕はどぎまぎしながら敷居をくぐり、挨拶の言葉を言う。 「ただいま」 「こ、こんにちわ! 来ヶ谷さんの婚約者の直枝理樹と申します!」 「ん? おお、よく来たね!」 そうやって返事をしてくれたのは――パンツ一丁の――来ヶ谷さんのお父さんだった。 「いやぁ、久しぶりに檜造りの風呂に入ったらちょっと気がおおらかになっただけさ」 「だからってお召物が下着だけというのはいささか短絡的じゃないかしら?」 「ホントすまんすまん。だからその手に持ってる包丁をどうにかしてくれないか?」 「あら、私は料理をしてるだけよ?」 来ヶ谷さんのお父さんが来ヶ谷さんのお母さんに怒られている。あの後、来ヶ谷さんのお父さんは来ヶ谷さんが説教をかまされ、それから来ヶ谷さんのお母さんに別の部屋へ連れてかれた。僕はそれを唖然としながら見ていた。一部始終が終わると、来ヶ谷さんが「馬鹿な父上で済まない」と言ってこの客間に連れてこられた。 「いやぁ本当にすまなかったね直枝君。私も君が来るって聞いたからドキドキしながら待ってたんだよ?」 「そうですよ。私も包丁片手に待ってましたよ」 「はぁ…」 そういう来ヶ谷さんのお母さんの前の大きいちゃぶ台には、和洋折衷とでも言わんばかりの絢爛な食事が並んでいた。とても一晩で作ったようには思えないような手の込んだものもあった。その中からエビをつまもうとする来ヶ谷さんのお父さんを来ヶ谷さんが牽制しながら言う。 「今日は結婚の話をしに来たのだが」 「ええ、知ってますよ。まずはお茶をどうぞ」 僕と来ヶ谷さんに湯呑を渡す。その雰囲気についついお茶を啜ってしまいそうになる。この空間が不思議なのか、ただ僕がおかしいだけなのか分からないが、はやる気持ちが抑えられそうにない。それをぐっとこらえて勇気を振り絞る。 「来ヶ谷さんを僕にくださいっ! なんとしても!」 一歩後ろに下がり、地面に頭をつける。 「タイミングが早すぎる! というかテンパるな理樹君!」 来ヶ谷さんが怒鳴って、一瞬茶の間がしーんとなる。自分でもやってしまったというのが分かり、冷や汗が体中から噴き出る。来ヶ谷さんは頭に怒りマークを浮かべながら腕組みをしてじっと待っている。 獅子おどしの乾いた音が屋敷中に響く。静寂が場を支配すると思いきや、案外にも破ったのは来ヶ谷さんのお父さんだった。 「別にいいんじゃないか? なぁ母さん」 「ええ、私もお父さんの意見に賛成ですよ」 「……え? え?」 あまりにも事が簡単に進んでいることに、僕だけがおいてけぼりにされている。対する来ヶ谷さんのお父さんとお母さんは本当に嬉しそうに笑っていた。 「大体リズベスが選んだんだから間違っているはずはない! なんたって私の娘だからな!」 「まぁお父さんったら。いつも以上に親バカだこと」 「親バカでない親なんぞいるもんか!」 ははははは、とまるでアメリカのホームドラマばりの展開が巻き起こっている。来ヶ谷さんもほっとして笑っている。 「な? 外見と中身は得てして違うものだよ。父上の分りの良さにはいつも助けられているんだ」 「そういうわけだ。さぁ今日はめでたい日だ! 母さん、酒持ってこい、酒! 直枝君も一緒に飲もう!」 「実は飲みたかっただけなんじゃないんですか? 父さん?」 「そういうことは言わない約束だよ、母さん。さぁ直枝君、今夜は飲み明かそう!」 「は、はぁ…」 「よかったじゃないか理樹君」 光陰矢の如しとはよく言ったものだ。 暫く飲んでいると、酔いが回ってきたのか、来ヶ谷さんの、いや、お義父さんが目の前で千鳥足になりながらおちょうしを回している。 「とっとと…少し酔いすぎてしまったな…目の前が回って見えるぅ…」 「ちょっといくらなんでも飲みすぎだと思いますけどねぇ」 お義母さんはお酒にめっぽう強いらしく、顔色一つ変えないでおちょうしに口をつけている。実を言うと、僕は緊張からか酒を飲んでも全く酔えていなかった。むしろ頭がさえてようやく事態を把握し始めていた。来ヶ谷さんと僕が婚約を結んだという実感を。 「あー…ちょっと酔いすぎたみたいだぁ……外出てくる。直枝君も一緒に行かないか?」 「え、あ、はい」 千鳥足なお義父さんを肩に担いで、ゆっくりと外に歩きだす。来ヶ谷さんが「正念場だぞ、理樹君」と言って僕を送り出した。その言葉の意味を知ることとなるのは、その時になってからだったのだが。 息が白い。冬の夜、今日は特に冷えている。客間との温度差に身を震わせながら、廊下の縁側にお義父さんと隣り合わせで座る。 「まだ目の前が回ってるな…気持ち悪い」 「大丈夫ですか?」 お義父さんの背中をやさしく摩る。息が荒い。 「…リズベスだけどな」 「はい?」 「あいつは小さいころから『本当に』笑ったことが一度もなかったんだ」 「…」 来ヶ谷さんの小さい頃の話。それをお義父さんが話してくれている。誰でもない、この僕に。 「私はリズベスを笑わせるために色々した。会社の同僚に試して、間違いなく笑いがとれると思ったことはいくらでもやった」 さっきまでとうって変わっての話に、辺りが静寂さを増す。 「でもあいつは『間にあわせ』の笑顔しか作らなくてな。それが悲しくて何回も何回も笑わせようとしたよ。しかし、そうして試しているうちにいつの間にかあいつは高校生になっていた…」 そう言っているお義父さんの顔は見えない。口調が荒くなる。 「ところが、ある日とても上機嫌で帰ってきてある男の子の話ばかりしかしなくなった。その男の子のことは言わなくても分かるね?」 たぶん、十中八九僕だ。 「それを語ってるときのあの子の笑顔は紛れもない『本当』の笑顔だったよ。それは、今までそれを作ろうとしてた私にはとても眩しかったよ」 「それは…」 「分かってる。君を責めてるわけじゃないんだ。むしろ私は嬉しいんだよ。あの子が本当の笑顔を見せてくれることなんて、もしかしたらないんじゃないかと思ってたからね」 笑顔を作ろうとしても作れなかった人と、作れた人にどんな違いがあっただろうか。結果的に笑顔が見れたからといって、その違いを埋めるのはなかなか容易いことではないだろうと思った。 「そこで、だ」 「はい」 こちらを向くようにお義父さんが座りなおした。まじまじと対面すると、その眼には揺るぎない決意の炎が浮かんでいた。 「君はあの子の笑顔を一生守りきれると誓えるかい? どんな時でもあの子の笑顔を絶やさない、そう言い切れるかい?」 「…」 「君を信じていないわけではない。ただ、これ以上あの子の笑顔を絶やしてはいけない気がするんだ。僕にとっても、君にとっても」 来ヶ谷さんが笑わない時期をこの人はただ一人で戦ってきたのだ。どんなに失敗してもめげずに何度も。この人はそれを背負って、なお来ヶ谷さんを笑顔でいさせ続けられるかといううことを聞いているのだ。 暫く静寂が続いた。梟の鳴き声がやけにひどく響く。 沈黙を破ったのは僕だった。自分でもびっくりするぐらい自然に声が出た。 「最初はいっしょにいるだけ楽しかった。でも、気が付いたら来ヶ谷さんは僕にとってかけがえのない物になっていました。もう空気と同じなんです。来ヶ谷さんの笑顔も同じです。僕は来ヶ谷さんの笑顔が見られるなら、それでいい。笑顔を燃やし続ける火種となって、彼女を守ります。これは、彼女を愛すると決めたときから変わらない気持ちです」 本当に自然に、お義父さんもびっくりするぐらいに流れるように言えた。 「…それでこそリズベスの選んだ婿だ。おめでとう理樹君!」 突如、背後でクラッカー特有の乾いた音がした。僕とお父さんの背中にクラッカーの屑が降りかかる。振り返ると、笑顔のお義母さんと、照れ笑いをしている来ヶ谷さんと、満面の笑みのおじいさんが立っていた。 「かっかっか。それでこそよ! 天晴れ天晴れ」 なにやらおじいさんが高笑いしながら僕を褒めている。 「来ヶ谷さん…この人は?」 「爺様だ」 「危篤って言ってなかったっけ!?」 「ああ、あれか。嘘だ」 「ええ!?」 あまりの衝撃の事実に、口が塞がらない。このあと数十年は生きそうな人が来ヶ谷さんのおじいさんで…? 「なに、このままだと結婚を逃しそうだったのでな。爺様をダシに理樹君を釣ったのだよ」 それを聞くと、本当にしょんぼりしたような顔でおじいさんが答えた。 「まだまだワシは元気なのにのぅ…」 「そろそろ逝っちゃってくれてもかまいませんよ? 生命保険がかかってますからね」 「おお、ワシは邪魔者扱いかの? 悲しいことじゃ、かっかっか」 さっきまでの神妙な雰囲気はどこへ行ったやら、いつのまにか宴会モードに戻っている。というか今更ながら来ヶ谷さんにはしてやられたと思った。そしてなぜか自然に笑顔がこぼれた。ホッとしていると、僕の頭にこつん、と拳が触れた。来ヶ谷さんだった。 「冷や冷やものだったぞ理樹君」 「ごめん来ヶ谷さん…じゃなくて唯湖さん?」 「うむ、正解だ」 僕の呼び方に笑顔を作る唯湖さん。いつかの時の約束がこれで果たせたと思った。 「でも僕でもびっくりするぐらいするすると言葉が出たよ」 ホッとしている僕に、唯湖さんは意外なことを言った。 「そうだな。あそこでちょっとでも間違えればこの話は無しだったからな」 「……え?」 「いや、実はさっきの問答が最終試練だったのだよ。そういう取り決めだったんだ」 平気な顔でしらっと唯湖さんは言った。そして自信ありげに僕を見つめてこういった。 「言っただろう? 私を後悔させるなと」 「はは、全くその通りだよね…」 「そう、詰まるところ、案ずるより産んだほうが易かったな理樹君」 こんな問答も唯湖さんの笑顔の火種になるのなら、僕はとても幸せな人なんだろう。本当にそう思う。 ひとしきり笑った後、来ヶ谷さんがこう言った。 「あと、これからあんな恥ずかしい言葉は言わないことだ。恥ずかしかったぞ、馬鹿…」 照れた唯湖さんの笑顔は、僕の心にとても映えた。 「よし、理樹君もう一回飲もう! 今度は爺様も一緒でな」 「ワシに酒を飲ませると恐いぞ? 誰が真っ先につぶれるかの勝負じゃ!」 …どうやら今夜は長くなりそうだ。 「そういえばこのことみんなにも言わなきゃね」 「そうだな。集まるならどこがいい?」 そんなの、もう決まってる。 「いつもの、あの場所で」 「うむ、了解した」 これから、僕と来ヶ谷さんの未来が広がっていく。 [No.654] 2010/02/05(Fri) 23:54:21 |
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