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例のアレでアレした結果、私の妹の三枝葉留佳は死んだ。ついでにクラス丸ごと+αが死んだ。二人を除いて。 お葬式は、合同の形で行われた。なんというか、あまりに唐突だったので防災訓練みたいな感覚で参列してしまった。反省。 額縁に入れられた写真がずらーっと並んでいた。泣いてる人の中で、私はぼんやりと妹の遺影を眺めていた。そもそも三枝葉留佳は違うクラスの人間だったはずなのだが、なんでか事故に巻き込まれて見事に死んで見せてくれた。あまりの幸の薄さに脱帽。 写真の三枝葉留佳は、私が遠くからしか見たことの無い笑顔をしていた。やたらと弾けた感じ。私の近くでは、苦笑い、とか、愛想笑い、とか、そんな感じ。ちょいブルー入ってしまう。 葉留佳の写真の前には、私以外立っていない。友達の少なさに笑いそうになる。不謹慎なので耐える。耐え切れずこぼれ出る笑い声を無理矢理手とかでおさえる。プルプル震える。やべー、マジ葉留佳さんっパねぇっす。 そんなギリギリ限界LOVERSの私の肩にそっと誰かが手を置いた。やばい、マジ怒られるっしょ。不謹慎だとか怒鳴られる。ちょ、逃げないとやばいよ。とか考えてたら、女の子の声で、「大丈夫?」と聞こえたので一先ず安心した。とりあえず、びっくりしたおかげで逆に落ち着いた私は、ゆっくり振り向いたら声掛けたの直枝理樹で、ちょ、素で女の子と間違えた! とか再びツボに嵌って笑いそうになるのを堪えた結果、物凄い不細工な顔になったくさいから、走って逃げた。 それから、結婚するとかどうとか家の事情があんまりにめんどくさいことになったから家出することにした。何事にも金が必要なので家から結構な額をパクった。折角なのでウェディングドレスもパクって質に入れた。 とりあえず、遠くに行かないと話にならないので、電車でたぶん五百キロ程離れた土地に行った。追手とかマジちょろい。ネカフェ難民しながら、今まで出来なかったことをしようと考えていた私は、手始めに買い物をしまくった。服とか、まあ色々。すごい楽しくて、すごい勢いで金使ってたら大分なくなっててウケた。身分証明も無いし、普通のバイトとか出来ないなぁ、と考えてたらパチンコ屋が目に入ったので、ここで稼いでみようと入ってみたら、金の減り方が凄まじいことになってウケた。 昼パチンコ屋、夜ネカフェ、の生活を繰り返すこと数日。金尽きかける。ここで、私の運を試す! と勝負を賭けた結果、金尽きる。流石の私も若干凹む。しょうがないのでパチ屋の休憩室で物思いに耽ることにした。 お家に帰ってみようと思ったけど、帰る金が無いし、お金借りるにも身分証明いるし。ヒッチハイクとかしてみようかしら。そんなことを考えていたら、気持ちの悪い顔したデブ男がハアハア言いながら近くに来た。キモっとか思ってると、キモデブが話しかけてきて臭っとか思った。話の内容は三万円でおっぱい揉ましてということだった。ビンタした。でも三万円は貰った。そして、すぐにパチンコで無くなった。また休憩所で物思いに耽ることにした。 さっきのお金で家帰れば良かった。再びちょいブルー入っていると、さっきのキモデブがまた来た。先にビンタした。おっぱいは揉まれた。三万は貰った。よーし家に帰ろうと思った。 そして、家に帰った。追い出された。何故だ。 近所の公園でブランコを漕ぎながら物思いに耽ることにした。物思いに耽るとお金が貰えるの法則を信じて、人目に付きやすい公園のブランコを選んだ。結果、夜になってました。それでも漕ぎ続けること通算八時間。諦めた。 もう一度家に行ってみた。色んなものを渡されて結局追い出された。何故だ。 もう物思いに耽ってもどうしようもないことは分かったので、住み込みバイト出来るところを近所のファーストフード店で飯を食いながら探すこと二十分。結構あった。まず、給料のいいパチンコ屋でバイトすることにした。履歴書さらさら、証明写真パシャリでペタリ。電話で応募。軽く面接。その場で合格。屋根付き寝床確保。今日から住んでOKということで、早速部屋を見てみると、豚小屋と間違えたかと思うようなモッサリ感だったけど、家具やらなんやら付いていたのでそこは我慢。久しぶりに布団で寝た。グッスリング睡眠だった。 次の日から早速バイトが始まった。結構なヘビーさだった。でも、バイトの人たちは優しく教えてくれたので、なんとかやっていけた。男共は完全に私に惚れてるなと感じていた。そんなこんなで、うまーいことやっていった。 数か月経ちバイトにも慣れ、色々とまあ充実した生活を出来るようになってきたある日、なんと直枝理樹が来店した。ばれない様にコソコソと動いていたが、運悪く見事に彼の交換を私が受け持つことになっていしまった。Ohジーザス。下を向いて近づき、フガっとか言って箱を持った瞬間、「あれ、二木さんじゃん。超奇遇」とか声を掛けられてしまった。交換しながら喋ってみると意外に面白い男で、もうすぐバイトも上がる時間だったので、成り行きで飲みに行くことになった。 飲み屋に入って、とりあえず生中二つ頼み乾杯。ぷはぁ、一気飲み。 最近どうよ。ぼちぼち。そっちは? ぼちぼち。 他愛ないことを喋り、飲み、食べ、飲み。 「二木さんさあ」 「なに?」 「葬式の時、すごい顔で泣いてたよね」 「いや、別に」 寧ろ、笑ってましたが何か? 「強がりはよせよ!」 「え、何キャラ?」 「泣いちゃう気持ちとか、僕めっちゃ分かるから。マジすげーから」 「はあ」 「二木さんには、あの時から、なんだか僕と一緒だな、って感じる所あったんだよね」 「私は一つも無い」 「佳奈多を見てるとさ」 なんで唐突に呼び捨てだよ。 「葉留佳のことを思い出しちゃうんだ」 お前誰だよ。 「僕は葉留佳のことが好きだったんだ」 「そう」 「佳奈多には葉留佳の面影があるよね」 「まあ、お姉ちゃんだから」 「え、マジで?」 「イエスアイアム」 「じゃあ、葉留佳を失った悲しみは同じ感じだね!」 「いや、全然悲しみとか自分感じて無いんで」 「強がりはよせよ!」 だから、お前誰だよ 「葉留佳って呼んでいい?」 「意味が分からない」 「葉留佳好きだ!」 「佳奈多なんで、超困る」 「葉留佳ぁ! 愛してるぅ!」 「あんた棗鈴と付き合ってるんじゃないの?」 「鈴なんか所詮オナホールみたいなもんさ!」 「鬼畜な男らしさにキュンときた!」 「葉留佳ぁ! 超愛してるぅ!」 「キュンときた!」 そして、私は直枝理樹と寝た。 *** ズバっ! いい音がした。ノートを引き裂くと、意外にも気持の良い音がでることが分かった。 学校にて葉留佳が突然、「やばい超やばい超ノート忘れた!」とか叫びだしたので、妹思いの姉である私は、「お姉ちゃんが取って来てあげるね!」と素直には言えずに「まったくあんたは抜けてるわね。まあ、ちょうど寮に一度向かう予定があるからついでに取って来てあげてもいいわよ」と若干捻くれた感じではあるが、今まで虐めてきてしまった妹の為に出来ることを買って出てみた結果がこれよ! なにこのノート! 憎しみノートとか書いてあって、ちょいブルー入るじゃない! 二木佳奈多覚醒編とかあるじゃない! 覚醒剤編ってこと! 覚醒って漢字で書けるなんて葉留佳超頭いいじゃない! 「超やばい! お姉ちゃん、こっちの引き出しのノートは見ちゃダメ、って超見てる! 超やばい!」 「葉留佳」 妹の名前を呼ぶ。顔はこれまでの人生で一番の笑顔になっていると思う。 「え、なに? 意外と上機嫌? チャンス? はるちんチャンス?」 「葉留佳にこんな才能があったなんてね」 「いやー、照れますねー、やははー。文豪三枝葉留佳、みたいな?」 「こんなに、こんなに人を怒らせることが出来るなんてね、そうはいないわ」 「へ?」 「人って、怒り過ぎると笑顔になるのね。知らなかった」 「は、はわわわ」 「覚悟、出来てる?」 「だって、この時はお姉ちゃんが酷いことばかりするから、ね? 入院中暇だったから、つい、ね? 溢れ出る憎しみをシャープペンシルに乗せて、ね? うん、お、怒っちゃやーよ」 「葉留佳!」 「ひえー!」 その後、三枝葉留佳の姿を見たものはいないこともない。 [No.66] 2009/04/18(Sat) 00:10:00 |
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