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夕日の差す教室。待ち人が来るまで外を眺める人影一つ。 ちらりと時計を見る。さっき見た時との違いは秒針が反対側にきているだけ。何度時計を見させせれば気が済むんだと、言いようのない憤りをまだ来ない待ち人にぶつける。 その後も何回時計を見たのか。やがて遠くからコツコツと廊下に響く音がその耳に届く。 ガラリと音がして扉が開く。思いっきり振り向きたい衝動をこらえて外を見続けた。 「あれ。居たんだ、鈴。早いね」 「呼んだのは理樹だろーが」 ワクワクなんてしていない。ドキドキなんてしていない。だから返事がぶっきらぼうになるのは当然なんだ。窓に映る顔が赤いのは当然夕焼けのせいだ。 心の中で何度もそう繰り返し、鈴はまだ理樹に背を向けたまま。 「それで理樹。呼び出してなんの用だ?」 「あ、うん。実はね……」 窓に映る理樹の姿は少しまごついているよう。何か言い出しにくい事が喉元まできているようで、それを一生懸命表に出そうとしているようで、そんな姿を見てますます鈴のドキドキが止まらないが、そんな事はしったこっちゃないと言わんばかりに鈴は意地で外を見続ける。 「……好きな人に告白したいんだけど、どう告白するべきか鈴の意見を聞きたくて呼び出したんだ。鈴は何かいい案はない? 鈴だったらどう告白されたいか、とか」 「知るかぼけーーーー!! 振られろ、告白して振られろーーーー!!!!」 彼が彼女に告白するまで 「ダメでした」 「ですよねー」 「ですよねーって……」 「ああ、いや。葉留佳くんの言う事は気にするな、理樹少年。今は過去の事にとらわれず、未来について考えるべきではないのかな?」 あの後、振り向きざまの鈴に思いっきり平手打ちをくらい、視界が揺れている間に鈴はいなくなってしまった。蹴りではなく手が出た辺りで鈴の乙女心に気がついてもよさそうな感じだが、赤く染まった顔の鈴や涙目の鈴を見ていない理樹にそこまでを期待するのは酷かも知れない。 で、鈴がいなくなった教室で数分間呆然とした後、フラフラと自室に戻ってみんなに連絡。〜第4回・理樹が鈴にドラマチックに告白しようZE会議〜開催の運びとなった訳で。 「これで真人、小毬さん、美魚さんに続いてクドの案もダメかぁ」 「うむ。おねーさん的にはそのラインナップを選ぶ理樹少年が一番ダメダメな気がするが」 涼しい顔でサラリと毒を吐く来ヶ谷。 まあ、真人の時は一緒に筋トレしようと誘えばいいとか告白にも取れない事をいい、小毬は一緒におやつを食べれば仲良くなれるよと幼馴染である以上なんの問題もない提案をして、美魚に至っては将を射んとすればまず馬を射よですとか言って恭介に告白すればいいとか言う始末だから仕方がないと言えば仕方がないのかも知れないけれども。 中でもダントツ仕方がないのは全てを真に受けて実行した理樹には違いない。そして告白を聞いて暴走した恭介が一番の貧乏くじに違いない。 それはともかく。 「さて、じゃあ次は誰の案でいく?」 来ヶ谷の言葉に残りの人物を見渡していく理樹。来ヶ谷に葉留佳、佳奈多。謙吾に佐々美。残りはあまり多くない。ちなみに恭介は前々回の暴走が原因で入院中である。 5人を見渡して、理樹は一人に目を止める。 「佐々美さん」 「あら。ようやくわたくしの出番ですの?」 「うん。鈴と仲がいい佐々美さんならいい案を出してくれるかなって思って」 「だ・れ・と・だ・れ・の・仲がいいんですの?」 声に迫力を出して言うが、顔が真っ赤な状態で言ってもきっかりはっきりすっぱり説得力がない。 自分でそれを自覚したのか、コホンとせき払いを一つして間を区切る。 「ここはやはり、プレゼントを用意してというのが一番でしょう。棗鈴にピッタリのプレゼントで喜ばせてから告白! 王道ですが、それはつまり一番成功率が高いという事ですわ!」 「……プレゼント」 佐々美の言葉を何度も反芻して、理解していく理樹。そしてやがて理樹は顔をあげると、輝かんばかりの笑顔で頭を下げる。 「ありがとう、佐々美さん。じゃあちょっとモンペチを買って告白してくる!」 「ええ、頑張りなさい理樹さん。……って、モンペチ!?」 佐々美が驚きの声をあげる間に、既に理樹はサイフを持って部屋から飛び出していた。 「笹瀬川さん、あなたは悪くないわ。悪いのは直枝のセンスだから」 佳奈多のフォローが悲しかった。 「ダメでした」 「ですよねー」 「ですよねーって……」 「今回は100%理樹少年が悪い」 きっぱりと断じる来ヶ谷を止める人間はいない。 ちなみに確かにモンペチは鈴を喜ばせたが、直後にねこ達を集めて保母さんな感じになった鈴に告白する雰囲気になるはずもなく。そのまままったりとした時間を過ごす羽目になった。つまり、いつも通りな位いつも通りにしかならなかった。 「でも、鈴にプレゼントするものなんて他に思い浮かばなかったし……」 「そんな事ないよー。お菓子とか」 「小毬さん、自分の好きなものを適当に言わないで」 「そんな事ないよー。女の子なら甘いお菓子を食べたら幸せな気持ちになれるもん」 「そうですよー。それに自分が好きなものを相手にあげると喜ばれるのですから。私なんかは美味しい緑茶とかを頂けると嬉しいですね」 何故か小毬の案にクドものってきた。それをスルーするという大技をやった理樹は次は誰に相談するかと残りの4人を見渡す。来ヶ谷に葉留佳に佳奈多に謙吾。 「じゃあ謙吾、何かいい案ってない?」 「ふ。ようやく俺の出番がやってきたか。このまま出番なく終わるかと思ったぞ。だが俺に任せた以上万事OKだ。 まずはバッドを用意して、ホームランをうつ。そのボールを鈴に渡しながらこう言うんだ。『今日のホームランは君の為に打った。君の為なら俺は何度でもホームランを打とう。だから鈴、俺と付き合ってくれ!』と!!」 「葉留佳さん、何かいい案ない?」 「理ィー樹ィィィーーーー!!」 「つかよ、それって鈴からホームランを打つって事にならねぇか? ものすげぇ嫌味になると思うんだが」 スルーされて泣きつく謙吾に追い打ちをかける真人。真人に正論で諭されるという屈辱に、ずしゃぁと音を立てて謙吾は地面に沈む。しくしくしくと泣く謙吾はウザイから無視。 「ん〜、そうですネ。相手の気を引くのは有効な手段ですヨ。どんな形であれ自分を相手に認めさせないと話になりませんからネ。 そういった意味でイタズラとかは有効な手段だと思うけど」 「イタズラだね! ありがとう、葉留佳さん!!」 瞬間、部屋から飛び出していく理樹。 「葉留佳、あなた遊んでるでしょ?」 「当然じゃん♪」 「さて。じゃあ第6回会議の横断幕でも用意しておこうかな」 「ダメでした」 「ですよねー」 「ですよねーって……」 「うむ。そろそろこの天丼にも飽きてきたな」 「天丼っ!? カツ丼じゃなくてか!?」 「真人少年、少し黙れ」 理樹が鈴になにをしたのか。その詳細は省くが、結果として鈴の機嫌を大いに損ねる事には成功した。そういった意味で葉留佳が提示した案はクリアしているのだが、これから告白しようとしている人間の機嫌を殺いでどうしようというのか。 終わってからようやく作戦の根本部分に欠陥があった事に気がついて落ち込む理樹だが、後の祭りこの上ない。 残りは来ヶ谷と佳奈多の二択。なんか選択肢が罰ゲーム染みているのは気のせいだろうか? 「じゃあ、佳奈多さん、お願いします」 「うむ、おねーさんはおおとりか。任せておけ」 「来ヶ谷さん、私が失敗する前提で話をしないで下さい」 ため息をついて来ヶ谷の言葉を叩き伏せるとそのまま目を閉じて自分の中に埋没していく佳奈多。 妙な緊張感が巡り、そのまま数分。やがて目を開けた佳奈多はしっかりと理樹の目を捕える。 「何も思い浮かばなかったわ、ごめんなさい」 「失敗以前の問題だったな」 来ヶ谷の言葉にグゥの音もでない佳奈多。そして最後に残ったのは来ヶ谷。理樹は、心底嫌々そうに来ヶ谷の方に目を向けて問いかける。 「それで来ヶ谷さん、何かある?」 「そうあからさまに嫌そうな態度をとるな、理樹少年。おねーさんの硝子のハートは粉みじんだぞ?」 「だって来ヶ谷さん、絶対に引っかきまわして遊ぶでしょ?」 理樹の信用ゼロの言葉に、悲しむでもなく憤るでもなく。真剣な表情をして理樹を見返す来ヶ谷。 「私を馬鹿にするなよ理樹少年。君が真面目に考えているのは理解している。それなのに私がそれを茶化すような事をする訳がないだろ?」 「うわぁ。こんなに説得力のない言葉は久しぶりに聞いた気がする」 「……君が私の事をどう考えているのか、とてもよく分かった」 そこで一拍の間を置き、来ヶ谷に似合わない真剣な表情をしたままで、言葉を続ける。 「そうだな、理樹少年。今までの案は変化球だった訳だ」 「変化球?」 「そうだ。出来る限り告白の直前に自分の株をあげて置きたい、鈴くんの心をこっちに向けたい、格好良く告白をしたい。そういった理樹少年の想いが私たちに相談をもちかける結果となり、そしてことごとく失敗した。 ならば理樹少年の選択肢は一つだろう?」 そう言ってウィンクを一つ。ようやく、ようやく茶目っ気が出てきた来ヶ谷の次の言葉は分かりやす過ぎる位に分かりやすかった。 「直球勝負だ。真正面から好きって言って来い、理樹少年。ここまできたらもうそれしかないだろう?」 「…………」 少しだけ、本当に少しだけ見つめ合った二人。理樹は来ヶ谷の目にふざけた色がない事を確認して、来ヶ谷は段々と理樹の中で迷いの色が消えていくのを見取っていた。 「うん。じゃあ、行ってくるよ。来ヶ谷さん、みんな」 「ああ、頑張って来い」 そう言って立ち上がり、悠然とした歩調で部屋から出ていく理樹。 バタンと扉が閉まった所で残った全員が疲れたため息を吐いた。 「もー、姉御ったら自分が一番美味しい所を持っていっちゃってズルイんだー」 「し、仕方ないだろう。あんな風に見られていたなんて私だってショックだったんだ。最後くらいいい格好したっていいだろう?」 拗ねたような葉留佳の言葉に顔を真っ赤にして顔を伏せる来ヶ谷。もじもじと手を動かしているのがいじらしい。 そんな来ヶ谷を見ながら、寂しそうに辛そうに、何かを期待するように口を開くのはクド。 「でも、告白って成功しますでしょーか?」 「するでしょうね。だからこそ皆さん、あんな案を出したんじゃないですか?」 しれっと言う美魚に女の子全員が全員、視線を逸らす。意識にしろ無意識にしろ、確かにあまり成功しないだろう案を提案していた罪悪感がそうさせていた。 「? 筋トレは普通の案じゃねーか?」 「ホームラン大作戦は成功すると思ったのに……」 ただし、バカ二人は本気だったみたいだったけれど。 ちょっと変な空気を吹き飛ばすように、明るい口調で意外な事を口にしたのは佳奈多。 「まあちょっと気が早いけど、みんなでヤケ酒でも飲まない?」 「おや? 風紀委員の君がそんな事を言うのは意外だな」 「私だって一人の女としてウサを晴らしたい時だってあります」 ちょっとヤバい方向に吹っ切れたように言う佳奈多に、なんとなく全体がヤバい方向に向かっていた為に段々と酒盛りが容認ムードになっていく。 その場を締めくくるように葉留佳が笑顔で宣言する。 「お姉ちゃん、酒癖悪いからヤダ」 そして最後に佳奈多が崩れ落ちた。 [No.670] 2010/02/26(Fri) 12:02:03 |
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