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all 第51回リトバス草SS大会 - 大谷(主催代理) - 2010/02/24(Wed) 21:29:27 [No.666]
棗恭介(27) - 卑未痛@痴酷8012 byte - 2010/02/27(Sat) 15:32:55 [No.679]
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恋は盲目 - 禁則事項です   8126byte - 2010/02/26(Fri) 13:07:57 [No.671]
彼が彼女に告白するまで - お前に名乗る名はない!@9362 byte - 2010/02/26(Fri) 12:02:03 [No.670]
コンセント - ひみつ@6837byte - 2010/02/25(Thu) 21:41:12 [No.669]
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皆がいるから (No.666 への返信) - 秘密@14309 byte

まずい
まずいまずい
まずいまずいまずい
まずいまずいまずいまずいまずいまずい
まずいまずいまずいまずいやばいまずいまずいまずいまずい

部室のドアをバン!と開ける。
皆が驚いた顔になる。
「大変だ!」
「どうしたの?真人」
「勉強教えてくれ!!」
「…え?」
「だーかーら!勉強だよ勉強!!!このままじゃ留年しちまうんだよ!!!」
「はああぁぁあ!?」


昼休みに呼び出されたオレは、今までの成績が悪すぎるのでこのままでは進級できないと言われた。すると理樹や皆と遊ぶ時間が減ることも。
「…そんなに悪いの?」
「らしい…」
「どの教科が不味いの?」
「全部」
「全部!?」
「おわったな」
「いやいや、簡単に諦めないでよ」
「マジで頼む、手伝ってくれ!」
「後何週間だっけ?」
「ちょうど3週間です」
「何とかなるんじゃないですかネ」

「時に真人少年。マジで、と言うがどれ程までに覚悟をしている?」
覚悟?
「この分だと相当点を取らねばなるまい。恐らく真人少年の事だから中学…いや小学校まで遡って勉強しなければならないだろう。3 週間と言えど自分の時間を大きく削ることになるだろう。それでもやるか?」
そういう事か。んなの決まっている。
「ったりめーだ。流石にまずいからな」
「具体的には?」
オレはニヤリと笑いもう一度部室のドアをバン!と開ける。そこにはトレーニング用具が全て置いてある。

「3週間筋トレをしない!!」
「はあぁ!?」
「嘘だ…」
「この人は誰ですか?」
「ちょっ…西園さん…」
「筋肉がなかったら井ノ原さんじゃないのです!」
「これがはくちゅーむか?」
「おいおい。オレは本気―
来ヶ谷がクスクスと笑う。
「解った。認めよう」
「本当か?」
「うむ。まぁ最初から覚悟していた事は解っていたがな」
「解ってたのかよ」
「まあな。それとトレーニング用具、幾つかは持っていていいぞ」
「本当か!?」
「第一に少しは体を動かした方がいい。第二に筋肉が無くなった真人少年は考えたくない。見たくない。第三に、邪魔だ」
はいはい。どうせ筋肉ですよ。
「全員手伝う方向でいいな?」
皆頷いてくれる。
「さて、誰をどの教科に担当させるか…」

「ちょっと待ったああぁあ!」
天井から恭介がぶら下がっていた。
「恭介!?」
「相変わらず奇抜な登場方法だな」
「教科の布陣なら既に考えてある」
降りてきた恭介が紙を広げる。
「なに勝手にきめてんだ馬鹿兄貴」
「俺は『総監』だからな」
「監督じゃなくて?」
「監督は何かと忙しいからパスだ」
…何が違うんだ?

現代文 西園
古典 宮沢 能美
リーディング・文法 神北
数学 来ヶ谷
全教科サポート 直枝
暗記教科全部まとめ 棗
総監 棗

恭介が、はっとなる
「しまった…」
「どうした?」
「恰好つけて苗字にしたら俺と鈴の区別が着かない…」
「知るか。それより暗記教科全部まとめって、このあほに解るようにはむりだ」
「そんなことないよ〜。覚え難い言葉とかも自分の中で簡単にしたら覚え安いんだよ〜」
「そうなのか?ならいい」
あっさり納得してくれた。
「全教科サポートってどういう事?」
「教えるのが一人だけじゃ大変だろ」

「俺は降りる」
「謙吾!?何で!?」

謙吾はオレをビシッっと指差す。
「勝負だ!真人!」
「勝負…点数でか?」
「そうだ。負けたら罰ゲーム有りでな」
謙吾は頭が良い。(最近アホになったが)そんな謙吾が勝負してくるなんてな…。

やってやろうじゃねぇか!!
「っしゃあ!勝負だ!!」
「おお!!」
「そっか、ライバルが居た方が張り合いがあるもんね」
「ところで恭介はなんも教えてくれないのか?」
「…いや、忙しくてな」
「どーせ面接おち…「うわああぁぁぁぁぁ!!」
部室のドアをバン!と開け恭介は逃げ去った。因にドアは思いっきり開けたら反動で大分閉まる。


「それでは、始めるか」
来ヶ谷の数学の時間が始まった。
平日は授業の終わりが3時半。4時から1時間刻みで間に小休止を入れて3教科勉強。それから晩飯で9時から1教科勉強してその後1日の復習と暗記だ。
休日は10時から2教科。昼飯で4時まで自由時間。それから2教科。晩飯で食べ終わってから1週間の振り返りだ。

「思ってたより少ないな。自由時間もあるし」
正直もっとスパルタなのかと思ってた。
「恐らく真人少年は長く集中する事が苦手だろう?だから1時間で区切った。自由時間はやる気を無くされたり襲いかかられたりしたら困るからな」
「襲わねーよ」
「さぁ始めよう」
「ってスルーかよ」
「先ずはこれだ」
来ヶ谷が胸の間から…ってどこ入れてんだ!?…小学生用の問題集を出してきた。
「小学生用かよ!」
「いくらなんでも振り返り過ぎじゃ…」
ため息を着く来ヶ谷。
「どこで躓いているか解らないからな」
「はっ、余裕でクリアしてやんぜ!」
「うむ、その息だ。普通の加減乗除は解るだろうから分数の加減乗除からだな」

一応分数の割り算も出来た。(中学になってやっと解ったのは秘密だ)けどミスが多かった。楽な計算方法を習い、
「良く出来たぞ真人少年。偉い偉い」
「褒めんなよ。照れんだろ」
「…このくらいで照れられても…」
「正直解らないと思っていたがな。しかし1、2点を争う状況だ。くれぐれもミスの無いようにな」
「はーい」
「さて、つぎは―」

あっという間に1時間が過ぎた。
「あれ?もうか?」
「この分なら間に合うかな」
「案外出来るもんだな」
「真人少年の覚悟があっての事さ。金曜日まで小学生の復習。土曜日に確認のテストだ。いいかな?」
「今日は水曜日だから…3日で6年分なんて出来るの?」
「下地はある程度あるし必要な事だけやるからな。試験は積分とベクトルだからそれに対応したもののみをやる」

トントン
「あぁ、美魚君か。長居し過ぎたかな」
「ありがとーございました」

来ヶ谷と西園が入れ替わる。去り際に来ヶ谷が西園のスカートを捲ろうとしたがブロックされていた。
「休憩は要りますか?」
平然としている。日常茶飯事なのか?
「要らね。テンション高いからな」
自分でも不思議だ。あれほど嫌な勉強だったのに。
「皆のお陰だね。皆が居て支えてくれるから」
「…うん。その通りだな」
「では始めましょうか。試験は現代文の読解と俳句です。まずは現代文学の読解の初歩からです」
と言ってバックから取り出した本は―

「だからなんでそうなるんだっつーの!!」
表紙で屈強な男と幼い顔立ちの男が絡み合っていた。
ため息を着く西園。
「元はと言えば直枝さんが悪いんですよ」
「えぇ!?僕!?」
「直枝さんがいつまでたっても恭介さんに手を出さないからです。最近お二人の絡みが無く、ひもじいのでこの際井ノ原さんを洗脳しようかと。屈強な男性に蹂躙される男の娘も悪くはありません」
…ダメだ。着いて行けねぇ。いや、着いてっちゃダメなんだな。うん。
「取りあえず諦めてくれ西園」
「…仕方ありませんね」
案外あっさり諦めた。

「現代文学で大事なのは、誰の発言か、その人はどういう考えで発言したか、です」
「…うー、どうゆー事だ?誰の発言か、ってのは解るけど…」
「要するに、発言した人が、何を考えているのか、と言う事です」
「あー、その人の気持ちになれと?」
「そういう事です」
「んなのわかんねーよ。オレはオレでその人じゃねーんだから」
「いや、そうなんだけどさ、それを汲み取るんだよ」
「大丈夫ですよ」
西園がバックから本を取り出す。今度は普通の本のようだ。
「私が教えます。この本は簡単な本ですから井ノ原さんでも平気だと思います」
「うわああぁぁっ!!本だああぁぁっ!!」
「ほら、しっかり!謙吾に負けたくないでしょ?」
おぉ、そうだった。
「んじゃやるか」
「切り替え早っ」
西園はクスッと笑う。
「では一緒に読みましょうか」
この言葉は誰のか、何を言っているのか、残りの時間を全て使って勉強した。それが解ると段々話が解るようになり、少し面白かった。

コンコン
「ごめんくださ〜い」
小毬の声がする。
「時間ですか。この本はお貸ししておきます。先に読んでも良いですよ」
「はいよ。ありがとーございました」
「お疲れさまです」
西園と小毬が入れ替わる。

「それでは授業を始めま〜す」
「はーい」
「まずは、アルファベット描けるかな?」
「ABCだろ?余裕だな」
「それでは書いてください。どうぞ〜」
えっと、ad…違うbだ。cでdefghIjk1mn0p。えーっとQrStUVwxyZ。
「どうだ?」
「…これ大文字?」
「いや小文字」
「Qはqだよ?」
「…解んなかった」
「ま、まぁしょうがないかな?次は『本』を英語で書いて〜」
b0○K
「もうちょっと綺麗に書けない?真人」
「しょうがねぇだろ。英語難しいんだから」

…あれ?小毬の顔からいつもの笑顔が消える。目が…目が怖い…。
「真人君。筋肉って英語で書いて?」
て?の時点で書き始める。
Muscle うん。我ながら素晴らしい。
「こんな綺麗に書けるなら最初から書こうよ…」
「しょうがねぇだろ。だっt「真人く〜ん?」
小毬の顔に笑顔が戻った。けど怖い!ムチャクチャ怖い!ものすごいオーラと言うか…殺気!
「真面目にやろうね〜真人く〜ん?ぶっ殺…留年したいのかな〜?」
「はいぃっ!ごめんなさいでしたっ!」
謝ると少しオーラが減った。
「それじゃあ文法からやろっか?中学一年生からね〜」
生まれて初めて必死に勉強した。そりゃもう必死だった。そのお陰かどうか、ほとんどが解った。

「そろそろ終わろっか?お腹空いたしね」
「うん。行こっか真人」
「お、おう」
終わった…生きてる。でもあっという間だった。必死になる、ってのがちょっと解ったかもしんない。


食堂に行くと皆居た。あ、恭介がいねぇや。
「小毬ちゃん。こいつらにらんぼーされなかったか?」
「ん〜?平気だよ〜?」
らんぼーされそうになったのはこっちだけどな…。
「聞く分だとなかなかやるらしいじゃないか。真人」
「まぁな、ぜってー負けねーかんな!謙吾!」
「やってることは中学生ですけどね」
「…西園さん。そっとしておいて…」
「はい」
「次の授業はなにー?」
「私の古典ですっ!」
「んじゃーお邪魔しよっかなー」
「や、邪魔だからマジで止めてくれ」
「酷いー!?」
「妥当かと」
「美魚ちんも酷いー!?いーもん!大人しく勉強するもん!」
…っておいおい。マジで来る気かよ。まぁ良いけどよ…。


「では始めましょう!」
「お願いs「お願いしゃーす!!」
「もう邪魔してるよ!?」
「気にしない気にしない」
「…えっと、古文は、日本語と考えない方がいいと思います。外国語だと思って単語を覚えるのが一番なのです!」
「…」
「あ、何ですか!その『お前英語ダメだろ』な目は!」
「…あ、いやいやいや!そんな事ないから!」
「んな事ねぇよ!」
「そんなことありますヨ!」
ものすごく空気の読めてない三枝の発言にその場が凍りつく。
その空気をぶち破ったのは―

「居たっ!葉留花っ!」
ドアをバン!と開けて二木が入ってきた。
「お、お姉ちゃん!?なんでここが!?」
「双子のテレパシーよ!」
そんなもんあんのか?二木は三枝の襟元を掴んでズルズルと引っ張って行った。
「全く!食堂で見失ったと思ったらこんな所で油売って!留年しかねないって自覚あるの!?」
「や、ちょ、ちょっと!助けてー!勉強したくないー!」
「あ、あの…」
「お邪魔してご免なさいきつく叱っておきますから勉強頑張ってねほら行くわよ葉留花時間無いんだから!」
「いーやー!」
とてつもない肺活量を持つ二木に三枝は連れ去られた。…良いのか?
「…まぁ…上手くいってるらしいし…」
「…いっか」
「…あの…よろしいでしょうか?」
おっと、忘れるところだった。
「うし、やろうぜ」
「えっとですね、今度の試験範囲の単語をまず覚えましょう」
意外にサッと切り替えられた。
本文を読みながら解らない単語を覚えていく。クド公は昔の事にやたらと詳しく、話を聞いてて面白かったし自然に覚えていった。

「あ!こんな時間です!」
「もうすぐ門限だから帰った方が良いんじゃない?」
「はい。あ、これを鈴さんからのーとを預かっています」
見ると『生物 まとめ その1 これだけ覚えとけボケ 〜決しておまえのためではない』と書いてある。
「ではしーゆーとぅもろーなのです!」
「おぅ、ありがとーございましたー」
ててててっとクド公が出ていった。

これからは復習+暗記だ。
鈴がくれたノートを見る。するとまずひらがなが50音順で並んでいた。
「ってなめんなー!」
「…明日言っておくよ」
続きのページにはちゃんとノートが書いてあり、なんだかんだ言って分かりやすかった。

暗記と復習をしたあと、軽く筋トレをしてからベッドに入った。
「はぁ、こんな勉強頑張ったのは初めてかもしんねぇ」
「あはは、頑張ってたと思うよ?」
不思議なもんだな。あんなに勉強に集中できなかったのに。やっぱり皆のお陰かなと思う。皆が支えてくれなかったらオレは何も出来なかったはずだ。
「ありがとな」
自然に感謝の言葉が出る。
「絶対進学しようね」
「おぅ」
明日も頑張れそうだ。


それから10日が過ぎた。オレは厳しくても皆に支えられて少しずつ前進している。
数学は小学校のテストをクリアして中学の分野も終わろうとしていた。
英語は必死になってやってた結果、小毬を怒らせる事無く範囲が終わり、リーディングを始めた。
現代文はそいつの気持ちになる、という事が解り始めた。でもまだ間違いだらけだ。西園曰く現代文はセンスが大事で、磨けばいいんだそうだ。
古典は教えてもらうというより一緒に勉強していた。『おかし』がお菓子じゃないことにムチャクチャビビった。たしか恭介に吹き込まれたことだった気がする。
暗記も続けている。もう50音が書いてあったりはしない。そして相変わらずツンッて感じだった。来ヶ谷曰く「ツンデレじゃなくてニャンデレ」らしい。知るか。んなこと。

そんな日の午後。
「今日は午後の授業はお休みだ」
「え?なんで?」
「全員で食べ放題にでも行こうと思ってな」
食べ放題!
「良いのか?本当に」
「最近良く頑張っているからな、ご褒美だ」
「よっしゃあ!」

そして全員で近くの食べ放題に行く。あ、三枝は二木に捕まったらしい。恭介?忘れてた。
「うめぇこれ!」
「なに!?もう3皿目だと!?」
「…上品に食べられないのでしょうか?」
「真人少年。人数は何人だ?」
「ん?8人だろ?」
「料金は?」
「えっと…2500円だっけか?」
「では合計で何円になる?」
えーっと掛け算だよな。00は置いといて、8×25は…160+40で200。200×00で
「20000円!」
「正解だ」
「おぉ〜」
「んなに驚くなよ。つーかまさかこんなとこで数学の勉強するとは思わなかったぜ」
「数学じゃなくて算数では…」
そんなかんじで色んな事を教えてもらった。その食い物の名産地とか、いつ頃伝わって来たとか、なんで食べ放題がいくら食っても潰れないのかとか。今勉強していることに直結している事だった。
「ただ勉強するよりも覚えやすいだろう?」
その通りだ。たぶん一生忘れないと思う。

帰り道。
「…食いすぎた…」
「…気持ち悪ぃ…」
「べんきょーしようがこいつらはアホだな」
「元々そこまでは期待していない」
「順調そうじゃないか」
「まぁな、みんなのお陰だ。負けねーよ」
「ふっ、それは無理な事を今ここで…証明して見せるっ!!」
走り出す謙吾。
「ずりぃぞ!待てこらあ!!」
オレも月明かりの下、全力で走る。
「…私達はゆっくり歩きましょう」
「大丈夫なのでしょうか?」
「お腹痛くならないのかな?」
「吐かないと良いが…」
「平気だとおもうけど…」
「平気だろ。バカだからな」


それからも勉強は続いた。時々気持ちが途切れそうになるけどそれ以上に支えてくれるものが大きかった。
数学も英語も今の内容に追い付き、基本なら自力で解けるようになった。
現代文はだいぶ解るようになり、俳句は西園がスペシャリストだった。
古典も漢文でだいぶ苦戦したがクド公だけでなく来ヶ谷や西園もサポートしてくれたお陰で何とかなった。
暗記も今まで使っていなかった分、吸収が早いようだ。

そして迎えた当日。
「大丈夫?真人」
「おぅ」
「筆箱持った?」
「持った」
「トイレ行った?」
「行った」
「まとめノート持った?」
仕切りに心配する理樹。気持ちはありがたいけど、理樹の方が焦りすぎだ。
「まぁ落ち着けって。そんな焦るこたーねぇよ」
「…そうだね。うん」
「あ、井ノ原さん!頑張ってなのです!」
「だいじょ〜ぶだよ、頑張ろ〜」
「思う存分、溜め込んだモノを吐き出すがいいさ、はっはっは」
「名前書き忘れないでくださいね」
「あかてんとったら蹴り飛ばすぞ」
みんなに励ましと脅しをもらった。
うん。お前らのお陰だよ。ここまでこれたのは。

ずずずずず〜
見ると三枝が二木に引きずられていた。アイツも苦労したんだろうな。灰になってら。

肩を叩かれた。
「久しぶりだな真人」
「恭介。今までどこ行ってたんだ?」
「これをお前にな」
と言ってオレに渡したのは―
「お守りか」
「そうだ。学問の神様のとこだからご利益あるぞ」
「…そっか、サンキュ。頑張ってくらぁ」
「あぁ、幸運を」
そういって背を向け歩いて行った。
…久しぶりにカッコイイ恭介を見た気がする。なんか良い事でもあったかな?


「…後5分だから必要なもの以外鞄にしまって。携帯の電源は切って」
シャーペンと消しゴムを机に残し、筆箱と鈴の暗記ノートをしまう。でも恭介のお守りはポケットに入れておく。

必要な事はやった。持つべきものは持った。

大丈夫だろ。
皆が支えてくれてっからな。

開始のチャイムを待つ。


[No.672] 2010/02/26(Fri) 19:31:25

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