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ポカポカとした日差しが暖かい。 先ほど猫たちに食事をあげ終わったあたしはそんな中をあてどなくずんずんと歩いていた。 用事も済んだし何をしよう。こまりちゃんでも誘って何かしようかな。 「うん?」 そんな取り留めもないことを考えていると、不意に理樹の姿を見かけた。 何かうんうん唸ってて端から見るとちょっと怪しい。 仕方ない、声を掛けてやろう。 なんてあたしは優しい人間なんだ。 「理樹、何してるんだ?」 「うわっ、鈴!?いきなり声を掛けないでよ」 理樹は化け物でも見たかのように驚いた。 失礼なやつめ。 「別に驚かせかったわけじゃない。お前があたしに気付かなかっただけだ。……で、何やってるんだ?端から見ててきしょいぞ」 「き、きしょいは非道いよ」 「むぅ、そう言われても本当に怪しいやつにしか見えなかったんだから仕方ないだろう」 「うっ、そんなに変だった」 あたしの言葉に理樹はあからさまに落ち込んでしまった。 「そうだな。あたしがお前の幼馴染じゃなかったら目を合わせずに逃げてたな」 「そ、そうなんだ」 何だ?事実を言っただけなのに更に落ち込んでしまった。 理樹は深く溜息を吐くと、縋るようにあたしを見上げた。 「ちょっとね、悩み事があってさ。恭介たちにも相談したんだけどハッキリしなくて」 馬鹿兄貴に相談しても相談しても解決しないなんて珍しいな。 「きょーすけも役立たずだな」 「いや、まあ分からなくはないけどね」 言いながら理樹は困ったような笑みを浮かべた。 うーん、そうだ。いつも理樹には助けて貰ってるし偶には助けてやるか。 そしてきょーすけよりあたしの方が頼りになると分からせてやろう。 「だったらあたしに相談してみろ。ズバッと解決してやる」 「え?鈴に?」 「なんだ不満そうだな」 これでもかってくらい不安そうだ。 なんかむかつくぞ。 「いやその……うん、そうだね。鈴も一応女の子だもんね」 「ふかーーーーっ!一応でもなくあたしは女だっ」 なんて失礼なやつだ。 筋肉馬鹿とかと同じくらいじゃないか、このでりかしーのなさは。 そんなやつの悩み事を聞いてやろうだなんてあたしは本当にお人好しだな、うん。 「ご、ごめん、つい……」 申し訳なさそうな表情を理樹は浮かべる。 たく、しょうがないな。 「あたしと理樹の仲だからな、許してやろう」 「あはは、ありがとう。……そうだね、男の意見よりも女の子の意見の方が参考になりそうだしね。改めて聞いてくれる?」 「うみゅ?よく分からんが、きょーすけたちよりはあたしの方が役に立つ。だから何でも言ってみろ」 あたしは胸を張って理樹の次の言葉を待った。 「じゃあさ、ずばり聞くけど」 「ああ、なんでもこい」 あたしが聞くと理樹は少しだけ迷った素振りを見せた後、口を開いた。 「女の子が貰って一番喜ぶものって何かな」 「え?」 理樹が言っている意味が分からなくて、思わず聞き返してしまった。 「だからその……女の子にプレゼントしたら一番喜んで貰えるものって何かなって」 「うみゅ……」 言い直しても理樹が言っている内容は一緒だった。 どういう事だ、それは。 なんで理樹はそう言うことを知りたいと思ったんだ。 「モンペチでいいんじゃないか」 考えが纏まらなくて、ついあたしの口から出たのは自分が貰って嬉しいものだった。 「いや、それは鈴だけだよね」 理樹は呆れたような笑みを浮かべた。 ……そこで頷いてくれなかったのが何故か少しだけ哀しかった。 「いいだろ、別に」 「いやいや、もうちょっと一般的なものがいいんだけど」 そう言われても困る。 あたしはそう言うのは疎いというのは自覚あるから。 それにさっきまでのやる気が萎んでいて、どうでもいいような気になっていた。 「めんどくさいな。何だ、誰かにあげたいのか?」 だからだろう。ついあたしはストレートにそう聞いてしまっていた。 「え、あ、その……」 理樹は照れくさそうに頬を掻いた。 それを見てあたしは知らず知らずに拳を握りしめていた。 「そうか。あたしの知ってるやつか?」 声が少し鋭くなっているのを自覚する。 理樹も気付いたのか少し吃驚したような表情を浮かべるが、すぐに表情を引き締めぽつりと言葉を零した。 「うん、知ってる人だよ」 「そうなのか」 なんだろう、もやもやする。 でもこのまま有耶無耶にすることも出来ず、あたしは改めて聞き直した。 「それは誰なんだ?」 あたしのその言葉に少しだけ躊躇う素振りを見せた後、理樹は意を決して口を開いた。 「えっとね、小毬さんなんだ」 「……え、こまりちゃん?」 頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。 なんでだ?なんで理樹はこまりちゃんの名前を口にするんだ? 「……どうして?別にこまりちゃんの誕生日はずっと先だぞ」 それ以外にもなにかプレゼントを渡すような催しがあった記憶はない。 ぐるぐると思考が定まらない。 けれどそんなあたしに様子に気付かず、理樹はあたしの疑問に答える。 「えっとさ、デートに誘った時に渡そうかなって思って」 「でーと?……ってお前ら付き合ってたのか?」 聞いてない、あたしは聞いてないぞ。 なんだそれ。なんであたしはそれを知らないんだ。 「いやいやいや、まだ付き合ってないよ。えっと、そのなんだ……誘った時に告白しようかなって」 理樹は顔を赤くし、苦笑いしていた。 「そ、そうか……」 いまだにあたしの頭をまともに働かない。 いったいどうしたんだ、あたしは。 なんでこんなに焦ってるんだ。 「それで、その鈴は何を渡せばいいと思う」 「え?ああ、そうだな……」 そうだった。そう言う悩みだったな。 どうすれば、どうすればいい? あたしはどうすればいいか分からず、こまりちゃんの顔を必死に思い浮かべた。 ……そ、そうだ。 「お、お菓子。こまりちゃんが喜ぶのはやっぱりお菓子だと思う」 うん、それしかない。 我ながらいいアイデアだ。 あたしは自分の言葉に何度も頷き、話を打ち切ろうとした。 「え?いや確かに小毬さんはお菓子が大好きだけど、お菓子渡して告白?バレンタインじゃないんだし、なんかおかしくない?」 そう言われると確かにその通りで思わず言葉に詰まった。 けど理樹にそう返されるのは何故かむかついた。 「う、うっさいんじゃぼけーっ。アイデアはアイデアだろうが。なんだったらどこかお菓子を食べに行けばいいだろっ」 だから思わず叫んでいた。 知るか。もう後は自分で考えろ。 「え?ああ、そっか。どこに誘うか具体的に決めてなかったけど、むしろそれをメインにすればいいか」 一人納得したように理樹は何度も頷き、物思いに耽りだした。 なんだ、何を考えついたんだ? 「……どうするつもりなんだ?」 「ん?ああ、普通にデートに誘って、ちゃんとした告白はデート中にすることにしようかなって」 「……そうか」 「ただどこに誘うかはまだ決めてないんだ。普通に喫茶店とかじゃ味気ないし、どこか美味しいデザートを扱ってるレストランにでも誘ってみようかな」 その方が喜んでくれるかな、なんて呟きながら理樹はまた考え始める。 でもデートか。うん、つまりそれは理樹がこまりちゃんを好きって事なのか。 うみゅ、なんだろ。考えているとどんどん落ち着かなくなる。 「でもなー、予算もあるし。いきなり遠出もなあ」 ああ、それにしても理樹は優柔不断だ。 パパッと決めればいいのに。 ……ああ、そうか。きっとこのもやもやはこまりちゃんを理樹に任せるのが不安だからだ。 そうだ、そうに違いない。 理樹はどちらかというとあたしの弟分だからな。 リトルバスターズの仲間になったのも幼馴染の中では一番最後だしきっとどこかで姉のような目で心配してたに違いない。 ならここはもう少しだけ手助けしてやろう。 「……理樹、喫茶店でいいと思う」 「え、なんで?」 理樹が不思議そうに顔を覗き込んでくる。 その不意打ち気味の行動に思わず顔を僅かに逸らし、言葉を続けた。 「今カップルフェアをやってるってこまりちゃんが言ってた。そしてそこのカップル限定メニューを食べてみたいって言ってたのを思い出した」 「そうなの?」 「だから誘えばきっと喜んでくれると思う」 「そっか、ありがとう、鈴」 理樹は本当に嬉しそうにあたしに微笑んだ。 そして計画を詳しく練ってくると言い残し、理樹は男子寮へと帰っていった。 「……たく、世話の焼ける弟分だな」 声に出して一度息を吐くと、あたしもまた寮へと向かった。 何かもう、今日は何もする気が起きなかった。 次の日、いつもように学校に行きいつものように授業を受けていたあたしはお昼休みの後からこまりちゃんの様子がおかしいのに気付いた。 どうしたんだろう。 心配になって次の休み時間に声を掛けようとしたが、その次の授業は移動教室だったので声を掛ける暇がなかった。 仕方ないので放課後まで待つことにした。 そして放課後。 あたしは帰る準備をしてこまりちゃんの席を見ると、そこにはもう誰もいなかった。 「いない。……いつもはこまりちゃん、ゆっくりしてるのに」 たぶん誰よりも早く教室を出て行ったようだ。 あたしは慌ててこまりちゃんを捜しに向かった。 とは言ってもなんとなく行き先は分かった。 あたしは階段を上がり、そして窓にへと手を掛けた。 そこは予想通り開いていた。 あたしは意を決して窓をくぐり、こまりちゃんがいるであろう場所へと足を進めた。 「こまりちゃん」 そして予想通り、こまりちゃんは屋上の給水塔の下に腰掛けていた。 「りんちゃん?ど、どうしたの」 「それはこっちの台詞だ。お昼休みから何か変だ。何かあった?」 「え?ああ、その……」 あたしの言葉にこまりちゃんは困ったような笑顔を浮かべた。 昨日は理樹は今日はこまりちゃんは悩んで表情をするのは。……って、ああそうか。 「理樹か?」 「ふぇぇえええっ!?な、なんで?どうして分かったの?」 こまりちゃんが驚いたように飛び上がった。 けれど驚きすぎたのかバランスを崩してお尻から地面に落ちた。 「うぇーん、お尻イターい」 「だ、大丈夫か、こまりちゃん」 「だいじょーぶ。ちょっと痛いだけですよ。……でもどうして理樹くんが原因だって思ったの」 お尻を擦りながらこまりちゃんは不思議そうに尋ねてきた。 「昨日理樹に会ったからな。それで告白されたのか?」 「ええっ?いや、その…………デートに誘われました」 「そうか」 その割にはあまり嬉しそうじゃない。 なんだ。もしかしてそうなのか? 「こまりちゃんは理樹のこと、あんまり好きじゃないのか?」 「ふ、ふぇぇえ!?ち、違うよ、その理樹くんのことは……好きですよ」 顔を真っ赤に染めて小さくこまりちゃんは呟いた。 「……そうか」 思わず胸のリボンをギュッと握りしめてしまった。 あたしは軽く頭を振り、質問を続けた。 「じゃあなんでそんなに落ち込んでるんだ?こまりちゃんも理樹のことを好きなら喜べばいいじゃないか」 「それは、その、そうだけど……」 言いながらこまりちゃんはあたしの顔をちらちらと見ていた。 「どうかしたのか、こまりちゃん。あたしの顔に何か付いてるか」 なにも付いてないと思うけど。そう思いながらもあたしは制服の袖で何度か顔を擦った。 「ううん、そういうわけじゃなくてね。……その、鈴ちゃんはいいの?」 「ん?なにがだ」 「えと、その……りんちゃんも理樹くんのこと好きでしょ」 「え?」 突拍子もないその言葉にあたしは思わず動きを止めてしまった。 「だからその、鈴ちゃんに悪いなって思って……」 そう言ってこまりちゃんは俯いてしまった。 ……何だ、そんなことで悩んでたのか。 けどそれはこまりちゃんの勘違いだ。 あたしは安心させるように微笑んだ。 「確かにあたしは理樹が好きだ」 「……やっぱり」 あたしの言葉にこまりちゃんは申し訳なさそうな表情を浮かべる。 けれどあたしはそんなこまりちゃんの手をギュッと握る。 「けどそれは友達だからだ。むしろこまりちゃんの方があたしは好きだぞ」 うん、こまりちゃんはあたしの親友だ。いっつも側にいてくれて幸せな気持ちにしてくれる。 そんなこまりちゃんが世界で一番好きだ。 「だから遠慮せずデートしてくればいいと思う」 「……本当?」 「うん、本当だ」 あたしは笑顔で頷いた。 「う、うーん」 それでもこまりちゃんは納得いかないような顔だ。 「理樹はあたしの弟分だ。ただそれだけだ」 「え?理樹くんの方がお兄さんじゃないの?」 「そんなことない。あんな優柔不断なの、嫌だ。ただでさえ馬鹿兄貴一人で苦労してるんだから他のはいらない」 「う、うーん。恭介さんもいいお兄さんだと思うんだけどなあ」 ……こまりちゃんはきっといい人過ぎるんだ。 だからあたしと理樹のことも勘違いしたんだな。 「とりあえず全部こまりちゃんの勘違いだ」 「そ、そう?」 不安そうなこまりちゃんにあたしは自信を持って頷いた。 「……そう言えばここに向かう前理樹を見かけたが、少し不安そうな顔をしてた」 「え、理樹くんが?……あ、そう言えばデートに誘われた時答えをはぐらかしちゃったんだ」 「そうなのか。理樹のことだ、断られたとか思ってるんじゃないか」 あいつはよわっちいからな。 振られたんじゃないかとビクビクしてるんじゃないだろうか。 「ええ?うーん、そのつもりはなかったんだけどなぁ。………その、鈴ちゃん」 「ん?なんだ、こまりちゃん」 「本当にいいんだよね」 問いかけるこまりちゃんの顔はとても真剣な表情だった。 だからあたしはしっかりと頷いた。 「うん、いい」 「そっか。……うん、分かった。じゃあ今から理樹くん探してちゃんとお返事するね」 「そのほうがいいと思う」 「うん、それじゃあ行ってくるね」 こまりちゃんは頷くと、そのまま振り返らず慌てて屋上から去って行ってしまった。 あたしはそんなこまりちゃんの様子についつい笑顔を浮かべてしまう。 「相変わらずだな、こまりちゃんは」 すっと空を見上げる。 「……あれ?」 何故か空が滲んで見える。 「どうしてだ?」 思わず目を擦る。 すると擦った手にいっぱいの水が付いていた。 「……え?」 もう一度擦る。 けれど空は滲んだままだ。 何度も何度も擦る。 でも溢れ出すものは全然止まってくれなくてあたしは必死の両手で目を押さえた。 ギュッとギュッと ずっとずっと、ただひたすら時間が過ぎるのを待った。 空がまたはっきりと見えるまで、ただずっと。 [No.676] 2010/02/27(Sat) 00:31:48 |
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