![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
ある日の朝。窓から射す光が重たい瞼を開ける手助けをしてくれる。 しかし隣で寝ているこの子はそうでもないみたいで、幸せそうにすやすやと眠っている。 どんな夢を見ているのかは知りようがないが、それにしても可愛い寝顔だと思う。 ずっと眺めていたくなる感情を脳内から数分掛けて追い出し、そっと囁く。 「葉留佳、朝よ、起きて」 「ん……おはようお姉ちゃん」 ゆっくりと身体を起こす葉留佳を見てしみじみと思う。私は今とても幸せなんだと。 こうして2人同じ時間を共有出来ることがとても嬉しい。 「こっちへ来なさい、髪梳いてあげるから」 ゆっくりとした動作でこちらへ向かって来る葉留佳を椅子に座らせるように促す。 木製のそれに葉留佳は腰かけるのを見計らって背後に回る。 一呼吸置き、長い髪を櫛を使って梳かし、その後手でさらさらと撫でるように触れる。 「それにしても綺麗な髪ね」 「お姉ちゃんが毎日こうして手入れしてくれるからだよ」 「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいわ……ってお礼を言うのはどっちかといえば葉留佳でしょう?」 「いや、やっぱりそういうのって照れくさいじゃん? ていうかお姉ちゃん、随分と素直になったよね?」 「それは……」 葉留佳には今まで素直に出来なかった分できる限りの愛情をあげたいと思った結果こうなったんだと思う。 でもそれこそ恥ずかしくて、面と向かっていえるわけがない。 しかし今のこの位置なら真後ろを向かれない限り大丈夫。心を落ち着かせ、言う機会を待つ。 「……はる」 「どうしたの? 手止まってるよ?」 声をかけようとした瞬間後ろを向かれ、完全に機会を逃してしまった。 やるせない気持ちを胸に葉留佳の髪をいつもの形にセットする。 「……はい、出来たわよ」 「ありがとお姉ちゃん、じゃあ今度は私がしてあげるね」 「そう? じゃあお願いね」 さっきのこともありつい素っ気無い返事の仕方になってしまったことを後悔しつつ、位置を交代する。 葉留佳は優しい手つきで私の髪を梳いてくれる。その行為が私の気を楽にしてくれた。 「……さっきの質問の答えだけど、私は葉留佳の為だけに全ての愛情を注いであげたいって思ってるから」 「え? 質問って何のこと?」 そうよね、葉留佳だもんね。周りを困らせるトラブルメーカーで、私の頭を悩ませる能天気な子。 「でもありがとうお姉ちゃん、私すっごく嬉しい!」 私の髪をいつの間にかセットし終えた葉留佳は、わざとらしい位の満面の笑みで答える。 「……覚えてるでしょ」 「さあねー」 部屋から出た私たちの髪は朝日に照らされてきらきらと輝いている。 朝日のおかげか、手入れのおかげか。それとも錯覚でそう見えるだけなのか。いずれにせよ朝から気分が良い。 私の右手が葉留佳の左手に触れ、指を絡ませ手をつなぐ。 そしてそのまま食堂へと向かう。 見渡すと、バスターズほぼ全員がそろっていた。 「おはよう、葉留佳さん、佳奈多さん。今日も仲が良いね」 直枝の一言で気がついたが、私たちの手はつながれたままだった。 「おはよー理樹くん」 「おはよう直枝……って違うでしょ! 葉留佳、早く手を離しなさいよ!」 「いや、そんなに強く握られると離せないんだけど……」 「あ……分かってるわよ、もうっ!」 照れくさくて手を離すが、その瞬間がやけに寂しく感じた。 その後私達は2人で朝食をとり、教室へと向かった。 ホームルームも終わり、1時間目が始まって半分が過ぎた頃、後ろの席の葉留佳は私の予想通りうとうとし始めていた。 そのまま放っておくわけにもいけないので、肩をちょんと軽くつついて意識を戻させる。 「んっ……うー、寝てない、寝てないですヨ?」 いや、その解読不能のノートを見ると説得力ゼロなんだけど。 その後の授業でも葉留佳が寝そうになるたびに起こすのを2、3度繰り返して午前中の授業を終えた。 2人で作った(8割以上は私が担当した)お弁当を持って中庭へと足を運ぶ。 「授業中は寝ちゃダメって言ってるでしょう。苦労するのは私なんだから」 「別に起こしてくれなくても良いのに」 「あっそう。じゃあもう勉強分からなくなっても教えてあげないから」 授業以外の定期テストの勉強は復学して以来ずっと私が教えているようなものだ。 葉留佳の成績も以前より上がっているし、このままだと教師になれるんじゃないかと最近では思う。 「ゴメン……でもなんでお姉ちゃんは平気なの? いつも同じ時間まで起きてるのに」 「気合よ、気合」 そんな話をしているうちに中庭についた。 中央の木のそばに腰をかけ、お弁当箱を芝生の上に置き、それを開ける。 「いただきまーす!」 嬉しそうにおにぎりを頬張る葉留佳。その姿を見てると私まで嬉しくなってくる。 ……と思ったら急に口をすぼめて目を閉じた。梅干入りを食べたのね。 それを見かねて葉留佳の側に水筒を置く。ってあれは私の水筒ではないだろうか。 そう思ってみると、葉留佳はすでにコップに口を付けていた。 いわゆる間接キス……それだけなのに意識してしまう。 「ん? どしたのお姉ちゃん。 あ、食べさせてほしいんだね? はい、あーん」 お弁当箱を右手に、卵焼きをつまんだ箸を左手に持ち、前かがみになって私の顔を見上げる姿勢で 私の口へと入れようとする。食べ物と葉留佳のいい香りが鼻をくすぐり、嗅覚が支配される感覚に陥る。 拒否するという選択肢はあるはずもなく、口を開けじっと待つ。 「あ、あーん……」 だが、口に何かが運ばれるといった様子もない。 反射的に閉じた目を開けようとしたその瞬間、唇に甘くて柔らかいものが触れた。 でも食べ物とは何か違う。不思議に思って目を開けると、顔をお弁当の中にあるイチゴのように赤くして恥ずかしそうに笑う葉留佳の顔があった。 え、これってまさか…… 「お姉ちゃんのお茶飲んだんだって気付いたら、なんだか身体が勝手に動いたというかなんというか……ゴメン!」 「べ、別にいいけど。でもその……いきなりは卑怯よ。するならするってちゃんと言って……」 最後の方は恥ずかしさで尻すぼみな言い方になってしまった。私の顔も葉留佳に負けず真っ赤になっていることだろう。 「う……だって不意打ち受けたときのお姉ちゃん、すっごい可愛いんだもん」 「葉留佳、それは『お弁当じゃなくて私を食べて』って言いたいわけ?」 「え、ここで!?」 私が半分冗談で言った一言に反応し、両手で顔を覆い隠し縮こまって照れる葉留佳こそすごく可愛い。 そう言ったらどんな反応をするだろう。そう考えると苛めたくなって堪らない。 「あのね、冗談をまじめに返さないでよね……本気にするわよ?」 「お姉ちゃんの冗談は分かり難いよ、もう」 本気にされたら困る、と言いたげに葉留佳はそっぽを向き、これ以上は話してくれなかった。 葉留佳の赤く染まった首筋を眺めながら、残りのお弁当を片付けた。 放課後はいつも通り葉留佳達に交ざって野球の練習をした。 以前は見ているだけだったのだが、傍で見ている方が安心だし、1秒でも多く葉留佳と一緒にいたかったからというのが理由である。 その後も昨日までと同じく、部屋でくつろいでから食堂へ行き、暫くしてお風呂の時間になった。 が、今日に限って妙に葉留佳がお風呂に入っている姿を想像してしまう。夜が更ければ実像を見られるというのに。 耳に布の擦れる音が聞こえる。しかしいつの間にか心臓の鼓動がその音量をかき消していく。 ドアが動かされ、水が流れ始めたところで正座していたいたはずの足が風呂場へと向かいかけていたので、すぐにその場を離れた。 「ふぃーさっぱりしたー。お姉ちゃん入って良いよー」 湯上りで上気している葉留佳の身体を見て一瞬理性が飛びそうになるが、ぐっと堪える。 「ええ、今行くわ」 お湯を浴びてから湯船に浸かる。が、温度が高いのか身体が火照りすぐに出る羽目になった。 風呂を出たすぐの部屋で、パジャマ姿で牛乳を飲んでいる葉留佳と目が合った瞬間、その原因が分かった。 直後私達は同じベッドに寝転がり、手を握り合う。 「ねえ葉留佳、お昼のことだけど……」 葉留佳を見つめ、話を切り出す。 だが、葉留佳はこの話題が来ることを予想していたかのように、真剣な面持ちでこちらを見た。 「うん……お姉ちゃん、最近普通に恥ずかしい台詞言ってくるから私、気持ち抑えるの大変なんだよ?」 「ふふ、やっぱり我慢してたのね。いつもは直情的なのに、こういうことは奥手なのね」 「あの後人気の少ないところへ連れてってくれると思ったのに……」 「それにしても私にリードされるのを待つなんて、葉留佳は子供ね」 「むー、そんなことないもん!」 そう言うと同時にマウントポジションを取りつつ両手を握り、顔を超至近距離まで詰めて来る。 視界いっぱいに広がる葉留佳の顔に、抑えていた感情が溢れ出す。 「んっ……」 触れ合うような軽いキス。そのやわらかさに身も心もとろけそうになり、自然と声が漏れた。 「お姉ちゃんの方こそずっと我慢してたでしょ。今日一回もキスしてないもんね」 「ばれてたのね……でももう抑えないわよ」 「うん……好きにして」 それ以上の言葉は不要で、何を求めているのかは私を見つめる瞳が物語っていた。 想いを確かめるように、ついばむような口づけを何度も重ねる。 その行為を繰り返すうちに、私の脳内は葉留佳一色へと染まっていく。 「葉留佳、好きよ、大好き。生まれてきてくれて、本当にありがとう」 「私もそう思ってるよ、ありがとうお姉ちゃん。世界で一番愛してる」 愛しさを胸に体中で抱きしめる。 心から染み出た熱が全身に伝わり、触れ合う皮膚に温もりを灯す。 私達は幸せな一夜を、お互いの存在を感じながら過ごしあった。 [No.699] 2010/03/18(Thu) 00:01:18 |
この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 60 日間のみ可能に設定されています。