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明と暗・白と黒  第25話 (No.1045 への返信) - シン

第25話『そして始まる物語』






事件発生3日後

「しかし、本当に大変な事になりましたよね……」
「警察はともかくとして、マスコミが一気に押し寄せてくるもんですから、追い払うのが大変ですよ」

「言うな。俺もこんな事になるとは思っていもいなかったんだ」
「あっちじゃ弟さんが学校をサボってまで姉さんに付き添ってるし、こっちはこっちで親御さんや彼女が付き添ってる」
「……俺達が先に音を上げる訳にはいかないんでな」

間とその助手は通常の診療に戻っていた。
そして今は、昼の休憩時間である。
だが、2人の頭を支配していたのは、他でもない淳平と綾だった。

「まあ何にしろ、俺達の仕事はまだ終わりじゃないって事だ」

「そうですよね……はあ、流石にキツイけどやるしかないのか……」

改めて現実と向き合い、嘆息する助手。
そんな時、診察室の扉がノックされた。

「ん、入ってきてくれ」

「先生、例の患者が……意識を取り戻しました!」

入ってきた看護師がそれを告げる。
『例の患者』という単語だけで、2人には誰の事かが分かった。







数分前に遡る

病室では、淳平の両親とつかさが眠り続ける淳平に付き添っていた。
事件から3日が経った今も、何ら変化は無い。

眠り続ける淳平を見ながら、つかさは自分自身に問いかける。
それは、何度目か分からない問いかけであった。

「(何で……何でこんな事に……? 何で淳平くんがこんな事にならなくちゃいけないの……?)」
「(何で、淳平くんをこんなにした東城さんが生きてるのよ!?)」

自問自答するつかさの表情は、紛れも無く『憎悪』の表情だった。
しかし、その憎悪につかさ自身は全く気付いていない。

そして、自分自身の感情に気付けない者が身の周りの変化に気付けるはずも無かった。

 ……ちゃん、つかさちゃん、見て!」

「……え?」

淳平の母の声が、つかさの意識を再び淳平の方へと向けさせる。
何事かと思ったつかさは椅子から立ち上がり、淳平の顔を覗き込む。

「……淳平くんっ!」

つかさの瞳から涙が零れ落ちる。
人工呼吸器などを付けられたままの淳平は動きにくそうにしていたが、
覗き込んでいる少女がつかさだと分かると少しばかりの微笑を見せた。









重い空気に包み込まれた映研部室
そんな部室に(一応)顧問である栞が現れた。

「お? 教室にいないと思ったらここにいたのか」

「黒川先生……俺達は何だかんだで映研なんですから」
「それに思うんですよ、ここにいたら、真中のヤツがひょっこり現れるんじゃないかって……」

そう話す外村の表情は諦めに近い表情だった。
外村だけでない、さつきも美鈴も同じである。

だが、栞はその諦めを吹き飛ばす事が出来る知らせを受けていた。

「真中か……アイツなら、目を覚ましたそうだ」

「「「………………」」」

それは彼らにとって待ちわびたはずの知らせだった。
しかし、何の反応も示さない事に栞は少し不安になる。

だが、その不安は杞憂であるとすぐに理解する。
皆、予想できない知らせに呆然としているだけだった。



だが、そんな中でも小宮山だけは少しばかり不機嫌そうな表情を見せている。

「(真中……まさか、綾ちゃんから全部聞いたんじゃないだろうな……?)」









目を覚ました時、淳平の視界はもやが掛かったようにハッキリとしないものであった。
そんな時、淳平を呼ぶ聞き覚えのある声が耳に聞こえてくる。

 ……ちゃん、つかさちゃん、見て!」

「……え?」
「……淳平くんっ!」

ようやく長い眠りから覚めた脳は、それがつかさであると理解するのに少しの時間を要した。
だがつかさの存在を知覚すると、淳平はいつものように笑みを向ける。

久々に見るつかさの顔は、大粒の涙に濡れている。
それを見れば、つかさにどれほどの心配をかけたのかを理解するのは、女心に疎い淳平でも簡単な事であろう。









だが、同時に淳平はやるべきことを思い出す。





それは奈落へと落ちる最中、淳平には綾の心に巣食う闇が見えた。
その闇は光を全て吸い込み、自らと同じ漆黒へと塗りつぶしてしまうかのように見える。

それを見た淳平は一つの決心をする。
だが……その決心が固まった瞬間、淳平の意識もまた闇へと運び去られた。





しかし、その決心が揺らいでいる訳ではない。
頭に鈍い痛みを感じ、身体も動かないが、その決心を改めて確認する。

  ― 前のように笑っている綾を取り戻す

ただ、その一点に集約されていた。






続く


[No.1127] 2008/07/27(Sun) 17:53:59

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