A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第1話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:37:29 [No.29] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第2話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:41:34 [No.30] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第3話 - バル - 2006/02/22(Wed) 23:01:13 [No.58] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第4話 - バル - 2006/03/10(Fri) 17:20:42 [No.61] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第5話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:38:36 [No.1160] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第6話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:40:32 [No.1161] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第7話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:43:10 [No.1162] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第8話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:46:01 [No.1163] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第9話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:49:18 [No.1164] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第10話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:54:11 [No.1165] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜 あとがき - バル - 2008/10/26(Sun) 13:57:07 [No.1166] |
「久しぶりだね」 声がでなかった。 「東京に行ってからずいぶん長い間帰ってこなかったよね」 だってその顔はあまりにも唯そっくりで、むしろ唯にしか見えなくて。 「わたし、ずっと待ってたんだよ」 でも、唯はもう死んでしまっているはずだから、この子は唯のはずはないのに。見れば見るほど、そしてこの子が喋れば喋るほど、唯にしか見えない。 「ねぇ、さっきから黙ってるけどちゃんと話聞いてるの? ねぇ!」 「……唯、なの、か?」 俺の声は自分でも情けないくらい震えていた。それでも震えをとめることはできなくて、ただこの子の正体を知りたくて見つめることをやめられない。 唯にそっくりな女の子は俺の言葉を聞くと、くしゃっと顔を綻ばせ、小首を傾げて言った。 「おかえり、じゅんぺー!」 チュンチュンチュン 「淳くん、起きてー。朝だよ!」 耳に梢の声が響くけれど、俺は体を起こすことができなかった。 昨日のお祭の晩に会った、唯そっくりの女の子。あの子のことが俺の頭の中を駆け巡る。 あの子は俺の名前を知っていた。俺は名乗っていないのに。 それはつまり俺の「唯なのか?」という問いに対する答えだろう。あの後、まだ混乱している俺の手をあの子は引いて、走りだした。俺はボーっとする頭で引かれるがままにしていると、いつのまにかさっきのお囃子の音が聞こえていて、半べそをかいた梢が抱きついてきた。俺はハッとして周りを見回したけれど、唯そっくりな子の姿は最初から存在していなかったかのように消えていた。 あの子はやっぱり唯なんだろうか? その考えを頭を大きく振って消し去る。 そんな訳はない。 唯は死んでしまった。それは間違いない。 だって、俺は唯を殺してしまった本人なのだから。 第5話 「唯の死の真実 1」 あれは俺と唯が本当に仲良しで、毎日二人で暗くなるまで、山や川を駆け回って遊んでいた 小学生の頃だった。 「なつ休みになったらさ。どこ行こうか? 山、川、海……どれにしようかまよっちゃうね」 蝉が耳触りなほど鳴き響く、夏休みの1週間前だった。 ガヤガヤとうるさい教室。その中で暑さにやられて、机に突っ伏していたオレに覆い被さりな がら唯は話しかけてきた。 「そうだな……。川に行かないか? オレ、キレーな魚みつけたんだ。なつ休みに入ったら、 ぜったいつかまえるって決めてるんだ。……つーかなんで上級生の教室にいるんだよ、唯」 「川かぁ。最近暑いもんね。水がつめたくて気持ちよさそー」 満面の笑みで答える唯。ちなみに俺の質問はきれいにスルーだ。 「そんで帰りに、カキ氷食べようぜ! おごってやるよ」 「ホント! やったー! 唯ね、唯ね、いちご味がいいの! あまーいいちご味!」 さっきよりももっと嬉しそうに笑う唯。現金なヤツだな、と思ったけれど、唯のその笑顔を見て いると、なんだか自分まで嬉しくなってきて、オレも唯と一緒に笑った。 それからあっという間に夏休みがきた。オレと唯は約束通り町に唯一流れる川にやってきた。 この川は大雨が降るとよく氾濫するので、親たちには決して行ってはいけないと耳が痛くなるほど 言われていたが、オレと唯はもともとそんな言いつけを守るような、素直な子供ではなかったので、ちょくちょくこの川で遊んでいた。 その日も、川は穏やかに流れていて、夏の日差しをキラキラと反射させていた。 唯がわれさきにと、サンダルを脱いで川にザブザブと入っていく。 「んーっ! 冷たいっ!」 きゃあきゃあと大きな声で騒ぎながら、とても楽しそうに唯ははしゃいでいる。 オレはなんだかアホみたいにぽかんと口を開けてそんな唯を見つめていた。薄手の白いワンピース から伸びる健康的な白さをもった手足。水滴がついてキラキラとはねるその様子も手伝っているのか、 なんだか映画のワンシーンを見ているようだ。 「……誰かを好きになるのってこんな時なのかな」 口からぽっと出てしまった。思いがけない自分の言葉に自分自身で恥ずかしくなって、顔が熱を持つ。 「じゅんぺー? だいじょうぶ? 顔まっか。暑い?」 「だ、大丈夫だよ」 こんな時ばかりは人の変化に敏感な唯が、さっきまであんなにはしゃいでいたくせに、いつのまにか 川原のオレのところまで来て人の顔をジッと見つめている。 「だーっもうっ! 大丈夫だからっ!」 「ぶーーっ! なんだよ。こんなにじゅんぺーのこと心配してるのに!」 唯はそれからもなんだかんだと理由をつけて、オレの傍から離れようとしない。こっちは恥ずかしくて、死にそうなのに、なんで気付いてくれないんだろう。 唯をいったん自分の傍から離れさせるには、オレ以外に注意をひかせるために、他のものに興味をもたせなければいけない。 「なぁ唯」 「なに? じゅんぺー?」 話しかけられて、何だか嬉しそうに声を弾ませて聞いてくる。 「オレのこと、好きか?」 「ほえぇ?!」 なんだか人間の声なのか? と疑ってしまうような声を出して 唯は頬を真っ赤に染めて飛びのいた。 「好き?」 「そ、それは、まぁ、わたしは、小さい頃からずっと、じゅんぺーといっしょにいたし、じゅんぺーと いっしょにいるとうれしいし――」 「じゃあ、結婚したい?」 「ほぇえええええええええええ!?!?!?」 もうさっきの声なんて比にならないくらいのもはや悲鳴。 もちろん。本気でそう言っているわけじゃない。なんとかオレ以外のものに夢中になってほしくて、夢中ででっちあげる。 「最近広がってる噂があるんだ」 ひっそりと唯以外には話していないんだぞ。と思わせるように声を殺して話す。 「この川の川底のどこかに、流れに負けずに咲いているコスモスが一輪だけあるらしいんだ。もし、 そのコスモス、見つけることができたら、結婚しよう」 もちろん嘘だった。 でも、唯には効果テキメンだったみたいで……。 「どこどこどこどこどこ〜〜〜〜〜!! 唯の幸せどこにあるの〜〜〜〜!!!」 と喚きながら川にむかって突進していってしまった。 「た、単純なやつ……」 自分で離れて欲しくてやったことなのに、あまりにも上手くいって、逆に拍子抜けしてしまった。 「まぁ、なにはともあれ、向こうに行ってくれて良かった」 ほっと胸をなでおろす。 視線の先では、ワンピースの裾が濡れるのも厭わずに、必死に川底に咲いているはずのコスモスを探していた。 「バカだなぁ。川底に花なんか咲くわけ無いのに」 そんな姿の唯をオレはまたボーっと眺めていた。 [No.1160] 2008/10/26(Sun) 13:38:36 |