A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第1話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:37:29 [No.29] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第2話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:41:34 [No.30] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第3話 - バル - 2006/02/22(Wed) 23:01:13 [No.58] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第4話 - バル - 2006/03/10(Fri) 17:20:42 [No.61] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第5話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:38:36 [No.1160] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第6話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:40:32 [No.1161] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第7話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:43:10 [No.1162] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第8話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:46:01 [No.1163] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第9話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:49:18 [No.1164] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第10話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:54:11 [No.1165] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜 あとがき - バル - 2008/10/26(Sun) 13:57:07 [No.1166] |
カン カン カン カン カン 耳障りな音で目が覚めた。鐘を打ち鳴らしている音みたいだ。 オレの住む街では消防隊が出動する時には未だに半鐘を鳴らす。 時計の針をみると、もう9時をさしていた。 布団からもぞもぞと抜けだしてそっと窓から外を見てみる。 辺りは闇に包まれていて、明るいのは点々と灯されている外灯だけだ。 周りを見回してみても特に真っ赤な火の手があがっている様子はない。 「淳平! 淳平!」 母さんの呼ぶ声がして、部屋のドアが大きく叩かれた。 「ちょっと、大変なのよ淳平!」 母さんは荒々しくドアを開けて、叫んだ。 「あんたが帰ってきてから降り始めた雨が急に強くなって、川が一気に増水してるの!」 背筋に悪寒が走った。 「唯ちゃんが、中州に取り残されてるみたいなのよ!」 ――唯! 「淳平! ぼうっとしてないで! あんたなんで唯ちゃんが川にいたのか知ってるんじゃ ないの!? ねぇっ! 淳平!!」 母さんがオレの肩を凄い力で掴んで揺さぶる。 「……唯。なんで――」 「なんでまだ川にいるんだよ!!」 母さんの手を振り払い、部屋から飛び出した。 「淳平! どこ行くの! 戻りなさい! ――戻ってきて!!」 外に出ると母さんが言っていたように、本格的な雨が降っていた。 5m先は靄がかかって見えにくいほどの豪雨だ。 この雨の中、唯はありもしないコスモスを探し続けていたのか。 「くそっ!」 あらためて自分の嘘に胸が痛んだ。 「なんだってオレはあんな嘘を吐いてしまったんだろう」 何度も何度も心の中で繰り返し悔やむ。 だけど、今さらウジウジと考えていてもしょうがない。 「――唯!」 豪雨の中をオレは傘もささずに飛び出した。 「くそ、くそ、くそ、くそーーーー!」 TALE 第7話 「唯の死の真実3」 「おい! 消防隊はまだ来ないのかよ!」 「さっきから半鐘を鳴らしてるばっかでまったく来ないじゃねえか!」 「どうも、ここに来るまでの道が陥没しちまって、立ち往生してるらしい!」 「ちぃっ! なんだってこんな肝心なときに! こういう時に役に立たなくてどうすんだ!」 川に着くとすでに何十人もの大人や子供たちが集まっていて、まだ来ない消防隊への不満を怒鳴り散らしたり、中洲のほうを心配そうに手を口元にあてながら見ている女性がいたりする。 「じゅんぺーーー!!!」 激しい雨の合間から響く声の元を見る。 「ゆ〜〜〜〜〜〜〜い!!」 川はいつもの穏やかな流れではなく、上流の土砂を含んだ濁流だ。豪雨で一気に増水しているから水位も半端じゃない。唯の立っている中州はまだ飲み込まれてはいないけれど、それも時間の問題だ。 「唯! 大丈夫かぁ!」 「じゅんぺー! 恐いよぉ! 早く助けてよぉ!」 唯はもうずぶ濡れグシャグシャの顔で泣き出している。 「待ってろよ! 今行くからなぁ!」 言ってはみたけれど、大人たちでも手をこまねいて見ていることしかできない、この濁流を子供のオレが渡って中洲まで行くのは到底無理だ。 ――なんとか……。なんとかできないのか! 「……あれは」 周りを見回したオレの目に、一本のロープが見えた。 どうやら、川魚を捕る漁に使っているロープをしまい忘れていたようだ。 手にとって強さを確かめてみる。運動会のときの綱引きの紐と同じくらいの太さがある。長さもざっと見て10m以上はあるだろう。 少し年季が入っているようで、ささくれだってはいるけれど、ピンと張ってもそう簡単には切れそうにはない。 「よし――!」 急いで、端を自分の体に巻きつけてほどけないようにギュッと縛った。 「おじさん! このロープしっかり握っておいてください! 絶対に放さないでくださいよ!」 「は? 坊主いったい何を……? ま、まさかお前この濁流の中をこのロープだけで渡っていく つもりか!?」 「そうです! もう時間がないです! お願いします、おじさん!」 「ちょっ、ちょっと待て! 消防隊が向かってんだ! 下手にまた子供が行ったら犠牲者が増える だけ――――!」 だっぱーーーん。 「きゃあーーーーーーー!」 「ど、どうしたぁ!?」 「子供が! 子供が流されたわ!!」 「な、なんだって!」 「ほら! ほら、あそこに!」 「ほんとだ! 今度は男の子……。いや、ちょっと待て、あの子、ロープに繋がれてる!」 「ほ、本当だ!」 周りの声を気にしている余裕はない! 唯。唯。唯!! 川べりから見ているのとは川の勢いは全然違った。ちょっとでも足の力を緩めたら一気に飲み込まれて流されてしまうだろう。想像しただけで恐怖がにじり寄ってくる。 大きく頭を振ってその考えを消した。 「今は前だけを見ろ! 唯を助けるんだ!」 心の中で大きな大きな声をだして自分を奮い立たせる。ゆっくりとゆっくりと荒れ狂う川を渡る。いつもは足首よりちょっと上にくるぐらいの水位で、深いところでもスネあたり まで浸かる程度の川なのに、いまはオレの腰に容赦なく打ち付けるほど水位が高い。 「うええぇぇぇん! じゅんペー! じゅんぺーーー!」 唯が立っている中州にも若干水が浸りだしてきた。見る限り、足裏にまで水がきてしまっている。 自分の体が水に触れ始めたことから、一気に恐怖心が増してきたのか、唯はさっきよりも激しくオレの名前を呼んでいる。完全に動揺しているんだ。 「大丈夫だ! 唯! 落ち着いて待ってろー! もう中州まであとちょっとだ!」 そう。唯のいる中州まではもう後10歩も歩けば着く。そうしたら唯とオレをロープでしっかり結んでまた川を歩いて帰れば良い。行きと違って、最悪足を滑らせたとしてもロープを掴んでもらっているおじさんに、引っ張りあげてもらえばなんとかなる。 ふと後ろを振り返ってみた。 「え?」 一瞬目を疑った。 オレのつながれているロープの先にいるはずのおじさん。 でもその先にいたのは、おじさん一人じゃなかった。 何十人もの大人たちがいた。みんなが、ロープを掴んでくれている。 「坊主ー! いい根性見せた! 頑張れー! あともう少しだ!」 「落ち着いて! 落ち着いて行くのよー!」 「後もうちょっとよー! 気をつけてーー!」 「俺たちがついてるから大丈夫だー! 死んでもこのロープは放さない! だから安心しろー!」 「早く! 早くしろ! 気を緩めてお前が流されたら許さないからな!」 「ボーっとしてんじゃねぇぞ! さっさと女の子連れて帰って来い! オレの寿命を何年縮める気だ!」 みんなが大声でオレに声をかけてくれている。 なんだか、すごい、嬉しかった。 大丈夫だ。そのときオレは確信した。 オレも唯も助かる。助かって、二人で怖かったねって言って、笑うんだ!! 「じゅっ、じゅんぺーーーーー!」 耳をつんざく唯の悲鳴が響いた。反射的にオレは唯のほうを見る。 唯は上流のほうをまばたきせずに目を見開いて見つめていた。 オレも唯の視線を追う。 「――なっ……」 目に飛び込んできたのは、3階建てほどの高さがある水の壁。 周りの木々など全てを飲み込み、破壊しながら、そいつは迫ってくる。 「て、鉄砲水だと!?」 最後のその言葉が耳に響いたと同時に、オレは波に飲み込まれた。 水が一気に肺に流れ込んでくる。苦しくて、滅茶苦茶に手足を動かす。 それでも圧倒的な勢いでオレはグルグルと回され、もうどっちが上でどっちが下かわからない。 もう、息が、続かない。 ダメだ! そう思ったとき、いきなりオレは地面に投げ出された。 痛む体の節々も気にせずに、思いっきり空気を吸い込む。 「――ッハァハァハァハァッ!」 口から飲んでしまった水も吐き出す。 体中泥だらけだ。どうやら川べりから少し離れた土手の斜面に座りこんでいるみたいだ。 足元には大人十人でも運べないような大きな木がボロボロになって、横たわっている。 あの水で流されてきたんだ。 そんなものに飲み込まれていたと思っただけで、背筋に悪寒が走った。 「坊主ーー! 大丈夫か!」 ロープを持っていてくれと頼んでおいたおじさんが駆け寄ってきた。 「鉄砲水がきたからみんなで急いでロープを持ってこの土手を駆け上ったんだ。 危なかった。あと一瞬でも遅かったら、俺たちも飲み込まれて、今頃全員死んでた」 「よ、よか……」 「は? なんだ坊主? 大丈夫か?」 「良かった。みなさんが、無事、で。もし、オレのせいで、多くの、この町の大人を 巻き込んでしまったら、オレ……オレ…………」 「坊主……。おめぇ、大した奴だよ。よくやった。よくやったよ、おまえは……。 この町の誰も、坊主を責めたりなんか、しねぇよ……」 「おじさん?」 ふと、気付いた。 オレは何をしに川に飛び込んだんだっけ? 誰かを助けるためじゃなかったっけ? 「――唯!!」 唯が立っていた中州を見る。 さっきの鉄砲水のせいなのか、川は先ほどよりも落ち着いていて、中洲は完全にあらわになっていた。 「……いない」 でもいない。 さっきまで確かにオレの名前を呼んで泣いていた。 小さくて。 でもかわいくて。 昔からずっといっしょで。 川で遊ぼうっていったら喜んで。 カキ氷もおごるって言ったらもっと喜んで。 オレの嘘を信じこんで、オレとのために必死になってコスモスを探してくれた。 唯の姿がどこにもなかった。 「誰も、おまえを責めたりなんかしねぇよ。間違ってもねぇよ。だから、おまえも自分を 責めるんじゃねぇぞ」 おじさんがそう言って、服が汚れるのも厭わずにオレのことを力強く抱きすくめてくれた。 いつの間にか周りに立っていた大人たちもみんなさめざめと泣いていた。 オレは、なんだか心にぽっかり穴が開いてしまったみたいだった。 ただ、一筋だけ、右目から涙が流れたんだと思う。 [No.1162] 2008/10/26(Sun) 13:43:10 |