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all A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第1話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:37:29 [No.29]
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A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第8話 (No.1162 への返信) - バル



「もうっ! 淳くんいったいいつまで寝るつもりなの!」
「どぅわっっ!!」
 梢に思いっきり布団がわりにかけていたタオルケットを剥ぎ取られる。
 寒くはないし、このまま寝ろと言われれば寝られるけれど、なんとなく何かが体にかかっていないと眠れないのは俺だけなのか?

「わかったよ。起きる起きる」
「もうっ。きのうもお祭のときどっかにいなくなっちゃうし……」
「はいはい」 
 梢のお小言をさらりと聞き流しながら、ふとちゃぶ台の上に置いてある一冊のノートに目がいった。

(そうだ。日記をつけようと思ってたんだったな)

「だいたい淳くんは昔から――ちょっと! 淳くん聞いてるの!?」
「とうっ!」
 声とともに梢の肩に手をかけた。途端に、

「ぴぎゃっ!?!?!?」
 なんかへんてこな声をあげた。全身も伸び上がっている。
 顔までみるみる真っ赤に染まっていく。

「ほれほれほれ」
 面白くてぺたぺたぺたといろんな所を触ってみる。

「――っっ……!! ――……!!?」
 なんだかもう言葉になっていない。

「いやーーーーーーー!!!!!」
 そして、そのまま発狂して部屋から走り去ってしまった。


「あいつ……まだあれ治ってないのか……」
 梢の男性恐怖症。
 あれはいつになったら治るんだろうか……。

 とりあえず気を取り直して、ちゃぶ台に置いてあるノートを開いて鉛筆を持ち、畳の上にあぐらをかいて日記をつける。

 とにかく、昨日の祭りのときに会った、唯にそっくりな女の子。
あの子のことが頭から離れない。あの子に会ったことで、昔のことも思い出した。
 つらつらと、ノートに文字を埋めていく。
 昨日の出来事を書くだけでも四苦八苦して、結構な時間をかけてなんとか書き上げた。

(東条は自分が体験したことじゃなくて、空想の物語をあんなに面白く、魅力的に書けるなんてやっぱ凄いな……。俺もそんな風に何かを表現してみたいかも)

 なんとなくそんなことを考えながら、ノートを閉じ、鉛筆を投げ出して後ろに倒れこみ畳の上に大の字になった。


「あの子。今日もいるのかな?」

 ふとそう思った。祭りはもうやっていないけれど、あの子は今日もあの場所にいる。なんにもわからないのに、なぜか俺は確信していた。

「今日の夜、またあの場所に行ってみよう」
 そして、もう一回ちゃんと聞くんだ。
「君は本当に唯なのかって」


TALE 第8話 「唯と再び」



 月明かりが辺りを照らす中、俺は梢や梢の家族に見つからないようにそっと家を抜け出して祭りがあった神社にやってきた。
 祭りが終わった後の神社はびっくりするくらい静かだった。
 本当に昨日ここで祭りがあったのかと思ってしまうくらい閑散としている。
 そんななか、俺は森への入り口に立っていた。
 森はただただ鬱蒼としていて、恐怖の対象でしかなかったけれど、今日の森は「もしかしたら唯がいるかもしれない」という考えがあるからかどうかはわからないけれど、怖いだけでは無くて、妙なドキドキ感もある。

 草を踏みしめる感覚が昨日を思い出させる。
 こうして歩いていて、いつの間にか、帰り道がわからなくなってしまって、あの子と出会ったのだ。



「あれ……?」
 なんだかまたもや、木に囲まれている。例の如く、帰り道はわからない。

「おいおい。シャレにならないんですけど……」
 ちょっと冷や汗が垂れる。

「でも、このタイミングであの子が……」

 そう思って、周りを見回してみたけれど、何も見えない。それどころか鳥の鳴き声すら聞こえない。


「……や、やべー。もしかして、本格的に迷った?」
 どうやら今日は本当にあの子は出てきてくれないみたいだ。

(とりあえずどうしよう)
 そう考えていたとき、耳にふと水の音が響いてきた。

(水の流れる音がする……)
 導かれるように、その音のする方へ歩いていく。
 どんどん近くなる音。それとともに周りの風景も若干変わってくる。
 今まで背の高い木が多くて、ただただ鬱蒼としていたけれど、音の方向へ行くに連れて、低い木が多くなり、暗くても存在感を出す色鮮やかな花までが咲いているのを見つけた。


「川だ!」
 音を辿っていったら、川にでた。
 とても細い小川だった。誰にも知られないように、ひっそりと流れる。そんな小川。
水の流れも緩やかで、水深も踝が浸かる程度で浅く、川底の石までしっかりと見える。
でも、まっすぐに流れているわけではなく、右に左にと曲がりくねりながら流れている感じだ。
 ふと、上流のほうへ目を向けた。

「あっ」

 そこにあの子はいた。
 昨日のお祭りの格好のまま。キレイな紅色で染められている浴衣だ。
 川の真ん中にある少し大きな石の上にちょこんと座りながら、指先だけ川につけて川の流れを感じていた。

「あのっ!!」
 思わず大きな声がでる。でも、気付いてくれていないみたいで、そっと手をふり指の水をはじくと、少し浴衣の裾を気にしながら川を渡っていこうとしてしまう。
 このままじゃ本当にもう会えないかもしれない。そんな気持ちがよぎった。


「唯!!!」

 つい名前を呼んでいた。
 するとさっきの声では気付いてくれなかったあの子は、唯の名前を呼んだだけで、びくっとはたから見てもわかるほど体を震わせ、周りを見回し、そして俺を見つけた。

「じゅんぺー!」
 驚くほどの笑顔。思わず声をかけた俺のほうがビックリしてしまう。
 ぴちゃぴちゃと水音を立てながら俺のほうへ小走りに寄ってくる。

「じゅんぺー、また唯に会いに来てくれたの?」
「お、おう……」
 なんだか気恥ずかしい。

 でも、やっぱり会えて嬉しかった。
 どこからどう見ても、唯にしか見えなかった。
 唯にまた会えた。そう思えただけで、俺の心はなんだか、弾んだ。

「何して遊ぼっか?」
「え?」
「だって、唯と遊んでくれるために来てくれたんでしょ?」
「いや……そういうわけでは……」
「え〜〜、遊ぼうよぅ、じゅんぺーー!!」
「いやいやいや、俺いまいちおう、遭難者だし」
「ソウナンシャ?」
「そう迷って帰れなくなってしまった人のこと」
「じゅんぺー迷って帰れなくなっちゃったの?」
「そういうこと。かっこわりーけど……」
「じゃあ――」
 俺のことを仰ぎ見ながら、なにか企み顔をみせる唯らしき子。

「唯と遊んでくれたら、帰り道、教えてあげる」
 にかっと歯を見せて笑ってくる。
 か、
 かわいい。

「ねぇ、いいでしょ? じゅんぺー?」
「お、おう」
 断れなかった。
 そんな唯そっくりな顔で、唯そっくりな笑顔で聞かれたら。


「よーーーし! それじゃあ、まずは魚とりだーーーー!!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「何だよじゅんぺー。早く遊ぼうよー」
 待ちきれなくて地団駄を踏んでいる。
「君はさ、本当に唯なのか?」
「なに? まだ疑ってたの?」
「だって、唯はもう死んでるはずだから……」
「うん。死んでる♪」
「だよな。死んでるよな。――ってえっ! 死んでる!?」
「そうだよ。まずじゅんぺーがそう言ったんじゃん!」
「で、でも、じゃあなんで足があって、こんな風に俺と会って、俺と喋れてんの?」
「幽霊って、足があっちゃいけないの? じゅんぺーと喋っちゃいけないの?」
「い、いや、まぁそういうわけでは……」
 たしかに、必ずしもそう、というわけではない……のか?

「まぁどうでもいいじゃんそんなこと。じつは唯だって、よくわかってないし。
 いつのまにかこういう風になってたんだもん」
「だもん……ってそんな簡単に――」





「コスモス」
「え?」

 急に言われて一瞬わからなかった。

「だから、コスモスだよ。川の底に咲いてるんでしょ? 」
「あ――」
 川の底に咲いているコスモス。結婚の夢を担っている一輪のあるはずもない花。

「そのことを知っているのは私だけでしょ?」
 そう。その嘘を知っているのは俺と唯だけ。ただ、唯は嘘だということは知らないけれど。

「……じゅんぺー」
「なんだ?」

 いままで終始笑っていた唯が、少し、憂いを含んだ表情を見せた。
 こんな唯を俺はいままで見たことがなかった。
 唯は何年間、この町で俺のことを待ち続けていたのだろう。
 誰か唯と遊んであげている子はいたのだろうか。
 いなかっただろう。
 寂しかったんだろうな。
 なのに、俺は、この町を離れた。
 唯を自分の嘘で殺してしまったことを誰にも言えなくて。
 それなのに、町の人は最後まで唯を助けようとした俺のことを
まるで英雄みたいにして誉めまくったし、みんな俺に同情してくれた。唯のお父さんやお母さんまで、そうだった。
 でも、俺はそれに耐えられなかった。
 自分の嘘で唯があの日、川に飲み込まれてしまったこと。
 なのに自分は嘘がばれるのを恐れながらものうのうと生きている。
 耐えられなかった。
 俺は、逃げたんだ――――。





「遊ぼう。じゅんぺー」

 くしゃっと、涙をこらえるような笑顔で唯は俺に手を差し伸べた。
 俺はその手を断る理由が見つからなくて、自分の手をそっと上にのせた。


[No.1163] 2008/10/26(Sun) 13:46:01

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