A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第1話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:37:29 [No.29] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第2話 - バル - 2005/09/04(Sun) 21:41:34 [No.30] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第3話 - バル - 2006/02/22(Wed) 23:01:13 [No.58] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第4話 - バル - 2006/03/10(Fri) 17:20:42 [No.61] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第5話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:38:36 [No.1160] |
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第6話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:40:32 [No.1161] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第7話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:43:10 [No.1162] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第8話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:46:01 [No.1163] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第9話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:49:18 [No.1164] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第10話 - バル - 2008/10/26(Sun) 13:54:11 [No.1165] |
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜 あとがき - バル - 2008/10/26(Sun) 13:57:07 [No.1166] |
神社への道を歩く。途中で梢から言われた言葉がまた頭の中によみがえる。 「あの事故の責任にとりつかれているか……」 それはやっぱりあると思った。俺はあの事故のことを物凄く意識して いる。当然だ。俺が嘘を吐かなければ唯が死ぬことはなかった。 ただ、その責任だけで唯と今いっしょに遊んでいるんじゃない。 唯と遊ぶことは本当に楽しかった。 もし、本当に責任というものだけで遊んでいたのなら、俺はすぐに唯への申し訳なさから心が持たなくなって、毎晩遊ぶことはできなかったと思う。 だから、俺は今晩まで自分がやってきたことが全部間違いだとは思ってない。 ただ、 「淳くんは何をしにこの町に帰ってきたの?」 梢のこの言葉が一番こたえた。 そうなんだ。俺が何のために帰ってきたか。これを忘れて唯と遊んでいたことが一番の問題なんだ。 だから、今晩それをしっかりとさせる。 空を見上げる。今夜はキレイな満月だ。 なぜだろう。月夜にはなんだか心が昂ぶるような、穏やかなような不思議な気持ちになる。 空も飛べそうな……なんかそんな詩の歌もあったな。でも本当にそんな気持ちになる。 よく考えてみれば、幽霊といっしょに遊んでるってすごい不思議な話だよな。 唯っていう幼馴染が相手だったからか、今まで意識していなかったけれど、俺いま物凄い特異な体験しているよな。 でも、なんとなくだけど、こういうふうに唯と話せるのは一生は続かない気がする。 なんで? と言われたら答えられないんだけど……ただ、なんとなく。 TALE 第10話 「そして、泉坂へ――」 唯は初めてあったときと同じように川の流れを確かめるように指をつけて流れを感じているようだった。 「唯!!」 大声で呼ぶと、唯は気付いて俺をみた。 「じゅんぺー」 そう言ってこっちに寄ってこようとする。 「ちょっと待て! そのまま聞いてくれ!」 そんな唯をその言葉で止めた。 唯は不思議そうな顔をしてその場で律儀に立ち止まる。 そんな律儀な姿を見て、やっぱり唯はいつまでたっても唯のままだと思い、少し顔が綻んでしまう。 思えばあの事故だって、唯が俺の嘘に気づけば起こらなかったことだ。もちろん俺が嘘をつかなければよかったのだが、唯の純真さ・素直さもアダになったと思う。 「唯! そのまま聞いてくれ!」 俺と唯の間には少し距離がある。直線距離で5〜6mだろうか。少し高低さもあって俺より一段高いところに唯は立っているから、俺が唯を見上げるようなかたちになっている。そして、唯の後ろには月が輝いていて、唯の姿を後ろから照らし出していた。 「今日は言わなきゃならないことがあるんだ!」 唯は黙って俺の言葉を待っている。表情にいつものような明るさは感じられない。 決心が鈍る。 (ダメだ。怖気づくな!) 心の中で弱気になっている自分を叱咤した。 (俺は唯に伝えなきゃいけないことがあるから帰ってきたんじゃないか! もしここで何も言えずに泉坂へ帰ったら、俺は昔と変らないただの嘘つきだ!) 「唯! 俺、おまえに嘘を吐いていたんだ!」 自分でも声が震えているのがわかる。 でも言わなきゃいけない。 「コスモス……!」 「え?」 「俺がお前に教えた川底に咲いてるっていうコスモス……あれ、嘘なんだ! 俺が恥ずかしくてつい言っちゃった嘘なんだ!」 「――――」 「ごめん! ごめん唯!」 謝ってなんとかなる問題じゃないことは充分わかってる。でも謝らないわけにはいかない。 「――――」 唯は黙ったまま俺をまばたきもせずに見つめている。 そのままお互い何も言葉を発しない時間がいくら続いただろう。 時が無限のように流れる。いままでこんなに時間が過ぎるのが長いと感じたことはなかった。 「なんで?」 沈黙を破ったのは唯だった。 「なんで今頃言うの?」 「…………」 「もう、唯は死んじゃってるんだよ? 今そんなこと言われても、どうしようもないよ……」 「…………」 「もし、唯のことを思うなら、黙っていてくれていても良かったよ……」 「……ごめん」 「でも――。唯はそんなじゅんぺーのことが、大好きだったよ」 笑っていた。月夜の光を背後にしながら、唯は笑っていた。 その笑顔は無理矢理つくっているわけではないけれど、決して本心から楽しくて笑っているようではなくて、その証拠に、唯の目には涙が溢れていた。 「……唯」 さっき唯は「大好きだったよ」と言った。それは、どういう意味なのだろうか――。 「自分が間違ったことをしたら、どんなに恥をかくとしてもちゃんと謝らなきゃと思う。正義感みたいなものなのかな? じゅんぺー変らないね」 「でも、俺は間違いではすまされないようなことを――」 「しかたないよ。だって、間違えない人なんてこの世にはいるはずないんだもん」 「それにね、じゅんぺー。聞いて欲しいの」 自然と唯と目を合わせる。唯も俺の目を涙をためながらしっかりと見つめてくる。 「わたし、コスモスが嘘だってわかってたよ」 「え?」 信じられなかった。 「だって、川底に咲いてる花なんて見たことないもん。じゅんぺー嘘下手だよ」 唯は軽く微笑んでいる。 でも、俺は納得することができない。 「で、でもあの後、唯は一生懸命コスモスを探してたじゃないか!」 そう。もし嘘だとわかっていたなら、その場で言えば良いし、なによりあんなに懸命に探すはずがない。 「唯はね、ちょっとおバカさんなんだよ」 そう言って少しだけ言葉をとぎる。けれど視線は外さない。 「嘘だとしても、頑張って探してれば、じゅんぺーのことだから結局心配になって戻ってきてくれるって、唯のことを気にしてくれるって、そしてじゅんぺーのことが好きっていう気持ちも伝わるって思ってた」 「――そ、そんな……」 「えへへ。バカだよね。そのまま死んじゃうなんてさ」 まるでちょっとしたイタズラがばれた時のような軽さで言う。 「でも……。ううん。だからこそ、じゅんぺーはそんなに唯に縛られなくっていいんだよ」 「唯?」 「事故の責任を感じて、じゅんぺーが唯と毎晩遊んでくれていたのもわかってたんだ。でも、初めてお祭りの日にじゅんぺーを見つけたとき、すっごく嬉しくて、嬉しくて。声をかけたら気持ちがとめられないのわかってたのに。やっぱり我慢できなくて、あの日話しかけちゃった。そしたら、じゅんペーは驚くほど唯の知ってるじゅんぺー通りで凄く懐かしくなって。唯はもう死んじゃってるのに……。じゅんぺーのことが――好き――っていう抑えていた気持ちが、心の中から溢れでてきて……。もし、じゅんぺーが謝るならこのことだよ! 唯が弱みにつけこんでるのをじゅんぺーがもっと早く、怒って、もう会えないって言ってくれてたら、こんなに辛くはなかったのに! こんなにいっぱいいっぱい遊んだら、唯、じゅんぺーのこと忘れたくても忘れられないよ!」 ――唯……。 唯はいっきにまくしたてた後、堪えきれないように声をだして泣きじゃくってしまった。 対する俺は、ただただ圧倒されていた。 まさか、唯が俺の嘘に気づいているなんて思わなかった。そして、それでもコスモスを探し続けていたなんて……。 でも、唯はひとつ、勘違いをしたままだ。 「唯! 聞いてくれ!」 唯はなんとか泣き声を押し殺して、俺の話に耳を傾けようとする。 「俺、唯と遊んでて本当に楽しかったぞ!」 耳だけじゃなく、心にまで届くように大きな声をだす。 「さっき唯は事故の責任だけで、俺が唯と遊んでいたって言ってたけど、それは違うよ! 俺は本当に唯と久々に会えて嬉しかったし、楽しかったんだ! もちろん事故のことも最初は考えてた。だけど、唯と毎晩会うにつれて、どんどん遊ぶこと自体が楽しくなってきちゃって、最近は唯と遊ぶことしか頭になかったんだ」 俺はただ、正直に自分の気持ちを話すことだけに集中する。それが唯に対する精一杯の答えだと思ったから。 「そしたらな、今晩、梢に怒られた」 「『何しに帰ってきたんだ』って。『この町に残してきたいろんなことをきれいに失くすために戻ってきたんじゃないか』って。正直、梢の言葉がなかったら俺はこのままずっと唯と遊んで、そのまま夏休みが終わって、また何もしないまま泉坂へ帰ることになっていたと思う。だから梢には凄い感謝してるんだ。……ってそんなことを唯に言っても仕方ないんだけど――。でも、だから俺はいま唯にしっかり自分のこと伝えられてる。でも、それって俺の自己満足なんだよな、それで唯を傷つけるってこと、本当にごめんって思う……」 そうだ。いままで俺は結局俺のことしか考えていなかったんだ。あらためて自分の浅はかさに嫌気がさす。結局、俺は唯を傷つけただけじゃないか……。 唯は少し落ち着いてきたのか、もう泣き止んで顔をゴシゴシとこすっていた。 「ごめん、じゅんぺー。唯、最後のほうすこし感情的になっちゃって……。誤解させたね」 唯はゆっくりと喋りだした。 「さっきも言ったけどね、そんなじゅんぺーのことが唯は大好きなんだ。ホントだよ? だからね」 また言葉をとぎる。そしてポーンとその場でジャンプしたかと思うと、唯はそのまま空中に浮いていた。 「唯!?」 びっくりして、俺は唯の近くに駆け寄る。 「だからね、じゅんぺーは恋をして」 そう言いながら少しずつ、少しずつ空にむかって浮かんでいってしまう。 「唯!? 唯!!」 「私はもう死んじゃってるから、だからもうじゅんぺーと恋をすることはできないけれど、でもね、じゅんぺーにはこの世界の誰よりも幸せになってほしいよ」 「唯!」 俺はなんなんだ? ただバカみたいに唯の名前を呼ぶことしかできない。 このままじゃ唯がもう会えないところに飛んでいってしまうのに! そう俺の感覚が叫んでいるのに、何も、できない……。 「ね。じゅんぺー、唯の最後のわがまま聞いてくれる?」 「聞く! 聞くよ!」 その言葉を聞くと唯はすがすがしいほどの笑顔をまた、俺に見せてくれた。 あぁ、終わってしまう。 直感でそう感じた。 「唯。ずっとじゅんぺーのそばにいるね。じゅんぺーがこれからどんな道を選んでも、唯だけは、最後までじゅんぺーの味方――」 「ゆ、ゆい……」 堪えきれず、俺の目から涙がブワっと溢れた。なんで、なんでそんなに優しいこと言うんだよ。もう会えないみたいに、言うんだよ! 「それじゃあね、じゅんぺー……」 唯はそう言うとくるりと俺に背を向けた。と同時に唯の体全体が仄かに光を帯びた。 すると足元からキラキラと、光る砂が風にさらわれていくように唯の姿が消えていってしまう。 「待て! 最後にこれだけは聞いてくれ! 唯!」 消えていく唯に俺は大声で呼びかける。 もう唯の体は腰の部分まで消えてしまっている。でも顔を俺のほうにしっかりとむけてくれた。 「俺、頑張るよ! まだ自分の道もわからないような俺だけど……。でも頑張るから! 俺のことちゃんと見ててくれ! そして、俺の一生が終わったら、必ず唯に会いに行くから! そのときにいっしょにコスモスの花、探そう! ずっと、ずっと! 探そう!!」 もっと言いたいことがたくさんあるのに、これしか言えない自分が本当に情けない。 だけど唯はそんな俺を見て、涙を流してくれた。 「ありがとう……。ありがとうね、じゅんぺー――」 そして唯の姿は月夜の中に輝きながら消えていった。 ピリリリリリリイリリリリリイ 列車の発車ベルが鳴り響く。 「淳くん。それじゃあ気をつけて……。また手紙書くね。今度はちゃんと返してよ?」 梢がおみやげの南部せんべいをもう列車の中にいる俺に窓から手渡ししながら言う。 「わかってる。今度からはちゃんと返すし、なるべく長期休みには帰ってくるよ」 唯との別れの後、神社からの帰り道に梢が待っていた。 俺は先ほどの別れがずっと頭の中に残っていて、涙が止まらなくて、ひどい顔だった。 梢はそんな俺をそっとやさしく抱きしめてくれた。 男性恐怖症で、男の人に触れるだけで逃げ出してしまうはずなのに。梢はふるふると震えながらもちゃんと俺を抱きしめてくれていた。 「淳くん。……わたし、淳くんが好きだよ」 梢は、俺の耳元でそっと囁いた。 「だからわかる。淳くんはまだわたしを好きじゃないんだなって」 梢も泣いているんだろうか? 顔が見えないからわからないけど、声が若干震えている気がする。 「だからね、淳くん。泉坂へ帰って、思いっきり悩んできて。わたしはもちろんあきらめないから。わたしを含めて、淳くんが誰と恋をしていきたいのか、悩んで欲しいの……」 梢の言葉が俺の胸をそくそくとうつ。 あぁ、俺はこんなにもいろんな人に愛されているんだ。そう気付いて、俺の涙はいっそう溢れた。 プシューーーーーー ガコン どうやらもう列車が出るらしい。 「それじゃあね、淳くん!」 列車がゆっくりと滑り出す。 梢はちぎれんばかりに手を振ってくれている。 どんどん列車は加速していく。途中まで走って追いかけてくれていた梢も、スピードに追いつけなくなって、今では立ち止まってジャンプしながら手を振っている。 そして、その姿はとても小さくなって。列車がカーブに入ると見えなくなった。 ゆっくりと座席に体をまかせる。 今年の夏はいろいろなことがあった。 忘れることのできない、夏だった。 窓から吹く風が、クーラーのついていない田舎の列車の車内を抜けて、心地よい。 そのとき、窓から風にのってそっと何かが入ってきた。 それは俺の太ももの上にふわりと落ちた。 何かと不思議に思って見てみる。 するとそれはコスモスの花びらだった。 上品な紫色の優しい色のコスモス。 まだ季節的には早いかもしれない。 6月から咲く早生品種もあるらしいから、もしかしたらそれかもしれない。 でも、俺はこのコスモスは、唯が俺にくれたおみやげなんだと、勝手に思い込んだ。 そして、俺は泉坂へと、帰っていく。 ―― To the end of the second curtain;「TALE」, and the following curtain…… ―― [No.1165] 2008/10/26(Sun) 13:54:11 |