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all 笑顔―プロローグ― - ナオ - 2007/01/03(Wed) 21:09:43 [No.262]
笑顔―第2話― - ナオ - 2007/01/05(Fri) 23:50:07 [No.266]
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笑顔―第4話― - ナオ - 2007/01/06(Sat) 16:52:17 [No.269]
笑顔―第5話― - ナオ - 2007/01/07(Sun) 16:55:44 [No.270]
笑顔―第6話― - ナオ - 2007/01/19(Fri) 21:58:24 [No.273]
笑顔―第7話― - ナオ - 2007/01/26(Fri) 19:57:46 [No.283]


笑顔―第5話― (No.269 への返信) - ナオ

それは、真中淳平が小学生になったばかりの頃に遡る










「お父さん、どこに行くの?」


先月、雪華小学校に入学したばかりの淳平は、日曜日に父とお出かけをしていた


父は行き先も告げずに淳平と外に出た


淳平が何度行き先を尋ねても父は


「今にわかるっしょ」    の一言だけだった






二人が来た場所は 『映画館』 だった


2,3年前にできたそこそこ新しい映画館で、外見は立派だった


二人は中に入っていった




中は外見ほど立派ではなかったが、当時の田舎にとっては十分な設備であった


しかし、ここが何をする場所なのかわからない淳平は戸惑っていた


映画館にはじめて来たのである


「お父さん、ここどこ?」


「今にわかるっしょ」


「もう!さっきからそればっかだよ!」


「ほら、あそこのドアを開けてみ」


淳平は父に言われたとおり、目の前のドアを開けた


大きく重いドアだった




「うわぁ……暗っ!!」


部屋の中は暗く、何人かの客が席に座っていた


もうすでに映画のプロローグが始まっているらしく、モニターには画像が映し出されていた


「大きい……」


淳平は始めてみた光景に口を閉じずにはいられなかった


父に引っ張られて空いている席に座った







映画の内容は小学生が見るような子供向きの映画ではなかった


淳平は話の内容が全然わからなかったが、ただ画面を食い入るように見つめていた


飽きることも無く視線を一度もそらさずに






――― 二時間後 ―――



「どうだったか?」


「すっごかった!」


「んだか!よかったな」


「うん!」


映画の内容がわからなかった淳平には 「すごい」 という表現しかできなかった


しかし、確かに凄いと思ったのだ



淳平はそのとき、映画にとても興味を持った


どこで、誰が、どんな風に、どのくらいの時間をかけて作るものなのか


幼い淳平にはわからないことだらけだったが、あえて父には聞かなかった


自分で調べてみたいと思ったのだ





それから淳平は毎週日曜日に、父と映画館に行くようになった


見る映画は全部大人用でもちろん淳平が見ても面白くない


でも、映画を見ているときの淳平の顔はとても輝いていた








――― 二年後 ―――


淳平は3年生になった


前みたいに毎週はいけなくなったが、月に二回は必ず映画を見ていた




そんなある日、淳平に映画に関しての転機が訪れたのだ





近くの高校を舞台に映画の撮影が行われることになったのだ


淳平はその話を父から教えてもらった瞬間、家を飛び出した


一目散にその高校まで走り、すでに何人かいた野次馬にまぎれた


小さい体を活かし、巧みに人の間をすり抜けて最前列に立った


そこで淳平が見たものは驚くべき光景だった


数台のカメラと数十人くらいの出演者、エキストラやスタッフも入れると軽く百人は越していた


「す、すげー」


映画作りがここまで偉大なものとは思っていなかった


せいぜい一台のカメラで数人で作業をするものだとばかり思っていた淳平は、その日の撮影が終わり


野次馬が帰った後もずっとその現場に居た


撮影は一週間近く行われていたが、淳平は毎日足を運び、朝から晩まで見学していた





撮影最終日


「カットッ!はい、終了!!!お疲れさん」


一人の男の声と共に撮影が終了した


淳平は機材の片付けなども見学していたが、暗くなってきたので帰ることにした


するといきなり後ろから肩を叩かれた


ビックリして振り向くと、一人の男が立っていた


「よぉ!坊主毎日来てるよな?」


「あの……おじさんは?」


「俺はこの映画の監督をした角倉周だ」


「映画の監督さん!?」


「なんだ、珍しいか?はっははは」


淳平はとても興奮していた


『角倉周』 という名前こそ知らなかったが、映画監督の存在にはとても興味をいだいていたからだ


「映画に興味があるのか?」


「はい!」


角倉はにこっと笑ってこう言った


「ならば映画監督になればいい」


「え!?」


「映画監督になって映画を作れ。そしてその映画を俺が見てやるぞ」


「いいんですか!!」


「でもな。映画監督といってもそう簡単になれるもんじゃない。たくさん勉強して努力しなきゃ駄目だぞ?」


「僕、頑張ります!そしていつか映画監督になります!」


「そうか!じゃぁ名前を聞いといてやる。いつか有名になったときのためにな」


「ま、真中淳平です!」


「頑張れ、淳平」


角倉はそう言うと淳平の頭をポンと叩いた


「そうだ!淳平。高校生になったらここの高校に入ればいい」


「なんでですか?」


「ここの高校には 『映像部』 っていうのがあるんだが、将来監督になるならけっこう役立つんじゃないか?」


「はい!そうします!!」


「じゃぁな、淳平。いつか映画の世界で会えるのを楽しみにしてるぞ」


角倉はその場を立ち去った



淳平は角倉の背中に深く礼をした


そして高校の校門を見つめた


「…雪華高校か……」


淳平はにかっと笑うと走って家へ帰っていった







淳平はこの日、強い二つの決意をいだいたのだ



そしてこれが真中淳平の映画監督になろうと思ったきっかけなのである






























気が付くと、目的の電停を三つほど越していた


向かい側に座っていた子供もいつのまにかいなくなっていた


「やべっ!次降ります!!」


結局遠回りをして肥料を買いにいく羽目になってしまった


歩きつかれて家に帰った途端に母に遅いと叱られた


淳平はそのまま自分の部屋に直行した



「ふぅ〜疲れたぁ〜!!」


ベッドに寝転び、大の字になってみた


「でもおかげで大事なことが思い出せたし、まぁいいんでねぇの?


    俺は映画監督になるんだ。誰がなんと言おうともな


                そして角倉さんに俺の作った映画を見てもらうんだ」 




そう独り言を呟いた後にゆっくりと目を閉じた


[No.270] 2007/01/07(Sun) 16:55:44

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