渦 - ニア - 2006/01/24(Tue) 22:40:56 [No.51] |
渦〜夢の中・・・。〜 - ニア - 2006/01/29(Sun) 14:26:45 [No.53] |
渦〜夢の続き〜 - ニア - 2006/01/29(Sun) 16:29:19 [No.54] |
渦【最終回】〜膨らむ恋心〜 - ニア - 2006/01/29(Sun) 19:27:07 [No.55] |
渦は肥大化して俺の恋心を擽って行く・・・。 クリスマス。みんなは楽しいはずなのに、俺、真中淳平は違う。大学に落ち、東城にはふられ、西野はパリへ行き、さつきは料亭の女将、唯にまで愛想を尽かされた俺は、今年は寒いクリスマスを過ごしていた。外村も小宮山も自分の進路を決めてその道を歩んでいると言うのに、俺は一人どこへ行けばいいか彷徨っていた。 そして今日もバイトがある。仕方なく、バイトのあるラーメン屋へ行った。同僚の久保も非常に忙しかったのだろう。仕事が終わってからはくたびれた顔をしていた。 店を出たのは午前一時を回っていた。 「淳平ー。俺もうだめ。」 「何言ってんだよ。」 「俺、今年は彼女欲しいのによ、誰も寄り付かないんだぜ?こんな寂しいクリスマスなんて嫌だーっ!」 というと、俺に泣きついてきた。俺のほうがもっと嫌だ。普通の生活もできないで、こうやってバイトをして生計を立てなきゃいけないからだ。久保と別れ、一人で夜道を急いでいると、東城が向こうから歩いてくる。 「東城が何でここに・・・?」 俺は東城に声をかけた。東城の顔は呆然としていた。そして、いつもの白っぽい顔は、まるで蒼白だった。俺は東城を、家に連れて行くと、俺がココアを作った。 「どうしたんだよ・・・。」 俺はタバコに火をつけながら、東城にそう聞いた。 「私・・・小説もうかけない・・・。だからネットの自殺サイトを見つけて・・・それで自殺しようとしたんだけれど・・・。」 声は、震えていた。いつもの、張りのある声ではなかった。 「逃げてきたのか。」 俺はタバコをふかしながらそういった。 「うん・・・」 いつか人間は死ぬ。東城はそのことを早くに理解し、自分はこの世のつまはじきだと自虐し、自殺志願サイトで、集団自殺を試みようとしたわけだ。腕を見た。東城の腕にはリストカットのあとがあった。去年の卒業式の日はなかったのに。俺には、それは非常に生々しく、俺のように、死にたいと思っている奴が身近にいることを、リストカットがさらに俺にとって身近にするのだった。俺は東城を抱きしめたかった。合宿のときのように。でも、タバコを吸って、一気に疲れが出てきた。俺にはもう、東城を抱きしめる力はなかった。だが、力のない声で、東城に 「俺のベッド、使っていいよ。」 と優しく言った。俺は、冷蔵庫にある眠眠打破を飲んで、予備校の宿題をやり始めるために部屋に入った。 「うん・・・。」 東城はボソッと声を出すと、そのまま俺の部屋へとついて行った。クリスマスは、毎年毎年西野も家で過ごすため、一人ぼっちだった。中学生になってからは、まともなパーティーもやっていない。だけど今年は違う。俺の部屋にはもう一人の女の子がいる。東城がいる。・・・今年は二人ぼっちだ。今俺の部屋には東城の寝息と、俺のシャープペンの音しか聞こえない。外は、雪が降っていた。今日一晩で終わるだろうか・・・。それくらいの宿題の量で困ったが、意外と簡単で、結構すいすい進んだ。時計に目をやった。もう午前四時を回っていた。宿題も終わり、アドバンスを出したときだった。 「うーん・・・。」 「起きたか。」 「うん・・・。」 東城は少し眠たそうな顔でそう答えた。その日のうちに、東城は家に帰った。東城の顔は、いつもの笑顔だった。 「ありがとう真中くん。またいい小説が書けそうな気がする。」 きっと東城は、逃げてきたのだろう。逃げて逃げて逃げまくることによって、活路を見出そうとしていたのかもしれない。おまえは吐き出された不要物などと言われようとも、東城は逃げることによって、自分の人生を作ろうとしていたのかもしれない。俺には、人生の作り方なんてわからない。逃げも隠れもせずに、かといって表舞台に堂々と出てきたわけでもない中途半端な俺は、いまだに人生を作り始めようともせずに、あの日から動き出せずにいる。俺には、時間があるから。そう思っていたが、もう時間なんてない。大学受験のこと、将来のこと、全部決めなくては。今なら間に合うかもしれない。 だが、そういう思考とは裏腹に、俺の体は睡眠を欲していた。 「家に帰ったら寝るか・・・。」 俺はそうつぶやくと、家にたどり着き、ベッドに倒れこんだ。かすかに東城のにおいがした。近くで俺のケイタイがメールを受信したのがわかった。俺はケイタイを開く気力などなく、そのまま眠ってしまった。 [No.51] 2006/01/24(Tue) 22:40:56 |