渦 - ニア - 2006/01/24(Tue) 22:40:56 [No.51] |
渦〜夢の中・・・。〜 - ニア - 2006/01/29(Sun) 14:26:45 [No.53] |
渦〜夢の続き〜 - ニア - 2006/01/29(Sun) 16:29:19 [No.54] |
渦【最終回】〜膨らむ恋心〜 - ニア - 2006/01/29(Sun) 19:27:07 [No.55] |
あの時自分の生きている今がどれほど貴重な時間かという事に気づいていれば、もっと別な時を生きられたかもしれないのに。すべては終わってしまった事だ。もう遅すぎる。まるで魔法の解けていったシンデレラのように。だから、その日からもう二度と人を愛するのをやめよう。そう決意したんだ。 ケイタイのメールには「外村ヒロシ」とあった。メールの内容を見ると、 「今度、泉坂の同窓会をやるから、新宿の松岡ビルと言うところに6時集合な。以上」 何だよ、これだけかよとおもって、見ると追伸がついていた。 「P.S。あの時は悪かったよ。許してくれ。」 どうやら、まだみんなあの日を気にしていたのかもしれない。 俺はメールを見ると、バイトに出かけた。外は雨に変わっていた。 昨日と打って変わってあまりにヒマすぎた。開店休業状態だ。同僚の久保はゲームボーイをロッカールームでやっている。天気が悪いと人はどこへも遊びに行きたくなくなるものだ。俺もそうだからよく分かる。今日はさすがに客はこないと思い、俺は仕事を早めに切り上げ、さっさと帰ることにした。外へ出ると、雨はやんでいた。今日は雨が降っているというのに蒸し暑かったが、午前一時になるとだいぶ風は涼しくなっているようだ。この街は眠っている。だと言うのに、夜なのに随分明るいものだと俺は感じていた。夜空には色のないちいさな光が不定期に現れては消えていく。俺は東城に恋心を抱いていた。だが、西野と婚約を結ぶことになっている。そんなときだった。電話が鳴った。番号は、西野の家からだった。 「はい、真中です。」 「淳平くんですか・・・」 西野の親の声。・・・泣いている!? 「どうか、されたんですか?」 「つかさが、昨日フランスの病院で息を引き取ったそうです。自動車事故だったとかで・・・。」 「・・・!」 俺は驚いた。ついに俺はすべてを失ってしまったんだ。 1週間後、西野の遺体は日本に届き、葬式が行われた。外村から、それに来いという電話が来た。 「何で彼氏のお前が、葬式に参加しないんだよ!参加しろよ!」 「いやだ。俺があいつの葬式なんか行ったら、泣いちまうだろう?」 「泣いてやれよ!彼女のために!」 「嫌だね。俺はあいつの前では、弱音は吐いたことはないし、泣いた顔なんて見せたことないからな。男に泣かれるのあいつ、好きじゃなかったから。」 「ちっ。わかったよ。つめてえ彼氏だな。」 外村は逆ギレして、電話を切った。ついに俺はすべてを失ってしまったんだ。その夜だった。俺は予備校の宿題をやっていた。突然俺の部屋の窓に小石が当たる音がした。窓を開けて下を覗き込むと、そこには私服の大草が立っていた。チェックのシャツにジーパンという出で立ちだった。 「真中、今出られるか?」 突然の事で動揺した。 「今すぐ行く」 俺は鍵と財布だけを持って家を出た。空には星が輝いていた。俺らは公園へ歩いていた。15分立っただろうか。公園に着いた。それから俺らは園内を少し歩いて缶ジュースを買い、ベンチに腰掛けた。 「吸うか?」 大草は俺にタバコを差し出した。俺はそれを黙って受け取った。 夜の公園にはスケボーをしている人や花火をしている人たちがいた。俺はしばらく彼らを目で追っていた。 「お前、マジメなフリして結構不良だな」 俺が愉快そうにそんな事を言った。大草は苦笑いをした。 「けっ。真中には言われたくないよ」 「お前だって今タバコ吸っているだろう?まだ未成年のくせに。共犯者だぜ」 「そうか。そうだな」 不思議だった。大草と俺には共通点なんて何もないと思っていたのに、こうしてみると俺らはよく似ていた。大草が話しかけた。 「お前よ、彼女が死んだくらいでいじいじするなよ。」 「いじいじって・・・。」 「まだお前はすべてを失ったわけじゃない。俺という奴がいるだろうが。」 大草は必死に俺のことを慰めてくれた。俺は笑顔になって大草の肩をポン!と叩いた。 「そうだな。」 俺はそう答えた。おれは、まだ一人になったわけじゃないんだ。俺はそう思った。春は、近い。 [No.54] 2006/01/29(Sun) 16:29:19 |