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カランコエ 〜あなたを守る〜 5 (No.759 への返信) - バーツ

上村スクールが先生の所だったなんて‥‥

世の中は案外狭いんだな

「はい。これが楽譜ね」

「どうも」

先生から渡された三枚の紙

曲名の“カランコエ”‥‥

‥‥ってどんな意味だ?

「腕は鈍ったかな?」

「そりゃあ4年も触ってませんからね」

「まっ、君なら大丈夫でしょ」

そう言いながら先生は西野の方に歩いていった

大丈夫って何がだ‥‥?

そして貰った楽譜を眺める

見た感じは‥‥

「なんだこれ‥‥簡単じゃん‥‥」

‥‥と口に出したものの今は弾けるかどうかわからない

とりあえず真剣に楽譜を眺めた

相変わらず五線譜の上に黒と白の丸が沢山並んでいる

でも、その数が多ければ多いほど難しい曲ってわけでもない

要は曲に溶け込むことが出来るかどうかの問題だ

‥‥っていうより演奏を楽しめりゃ曲は何だっていい

そう思うのは俺だけだろうか?

数分後‥‥‥‥

‥‥‥‥よしっ

大体流れは読めた

目を瞑り深呼吸をする

久しぶりだなぁ‥‥この感じ‥‥

演奏前の胸の高鳴り‥‥高揚感‥‥

目を開けると黒と白の二色の鍵盤

そっと指をそえる

前に一度だけ先生に言われたことがある

ピアノを前にすると俺は人が変わると

そんなこと自分じゃわからない

考えたこともない

まぁいいや‥‥

今は‥‥全神経を‥‥この指に‥‥


















‥‥‥‥ふぅ‥‥

弾き終わり、目を瞑って深呼吸をした

いやぁ、久しぶりだから指が上手く動かねぇ

途中で2回も音外したし

ったく、ダメだなこりゃ‥‥

歓迎会までに間に合うかな?

そしてゆっくり目を開けた

いつの間にか演奏前後に目を瞑り深呼吸をするのが昔っから癖になっていた

そうすると気持ちが落ち着くんだ

「先生ー?ここどうやんのー?」

少し躓いた所を尋ねるため先生を呼んだ

‥‥‥‥

‥‥あれ?

返事がない?

振り向くと、クスクス笑う先生と口をあんぐり開けてこっちを凝視する西野の姿が目に入った

こんなこと言っちゃあなんだけど‥‥

今の西野の顔‥‥笑える‥‥

絶対言ったら怒られるから言わないけどね

でもそんな顔も好き

‥‥と思ってしまう俺はおかしいだろうか

俺最近西野にハマってんなー

いや、前からずっとだけど‥‥

やっぱり俺は西野が好きなんだな、うん

そう改めて実感した

「どうか‥‥しました?」

平然を装ってわざと不思議そうに聞くと、先生が笑いながら言った

「さすが黄金の指ねー」

「黄金の‥指‥‥?」

「あぁ、それは私が今勝手に付けただけ」

なんだそりゃ‥‥

そういえば先生って何かしらに名前付けるの好きだったっけ

それよりさっきから西野が身動き一つしてねぇぞ‥‥?

どうしたんだろう?

「で‥‥どうだったかな、つかさちゃん?」

先生は西野に聞いた

「‥‥どうもこうもないですよ‥‥」

‥‥ん?

それはどういう意味だ‥‥?

やっぱ俺の演奏がマズかったのか?

そりゃそうだよな‥‥

4年もやってなかったんだ、下手に思われて当たり前か

しかし次に発した西野の言葉は予想もしないことだった

「淳平くんって何者‥‥?」

‥‥はい?

何者って‥‥‥‥

「普通の男子高校生だけど‥‥?」

西野は何か信じられないといった目で俺を見てくる

俺なんか変なこと言ったか?

「まぁつかさちゃんの反応は当然だねー」

「へっ?」

どういうこと‥‥?

「淳平くんさぁ、何でピアノやめたんだっけ?」

やめた理由?

そりゃあ‥‥

「実力がないからですよ?」

だって一回楽譜見て弾けないんじゃねぇ?

ピアニストって何でも軽々と弾いちゃうしさ?

多分俺にはピアノは向いてないんだよ

「淳平くん‥‥それは嫌味?」

今度は西野に聞かれた

嫌味って‥‥何が?

「淳平くんはねぇ、自分の標準ラインが高すぎるんだよ」

今度は先生に言われた

‥‥そうかぁ?

俺の標準はいつも先生だったけど‥‥

「君は音大のトップレベルの実力だよ」

音大のトップ‥‥?

いやいやいやいや!

そんなことないから!

「自覚がないだけね‥‥。周りに競う相手もいない、対戦相手はいつも私だったでしょ?」

言われてみれば確かに‥‥

「だってあの時は先生に追いつきたくて必死で‥‥」

あの頃はピアノ一筋だったからなぁ‥‥

毎日必ず鍵盤に手を乗せてたからな、うん

「まっ、いいわ。つかさちゃん、練習しなきゃ!」

「あっ‥‥はい‥‥」

よし、やっと西野の歌声が聞ける

そう思うとドキドキが止まらなかった


[No.762] 2008/02/03(Sun) 17:13:07

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