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カランコエ 〜あなたを守る〜 6 (No.762 への返信) - バーツ

〜つかさside〜

淳平くんが深呼吸して目を瞑った

緊張してるのかな?

そう思った直後、あたしの目に飛び込んできたのはまるで別人のような淳平くんだった

そしてこの場所の空気が変わった感じがした

いつもの彼からは考えられないほど研ぎ澄まされた集中力でピアノを弾いている

「どうなってるの‥‥」

そっと呟いたのを先生は聞き逃さなかった

「わかった?これが彼‥‥真中淳平の実力よ」

淳平くんの実力‥‥

「でもピアノはここ最近弾いてないって‥‥」

何年もやってないのにあんな綺麗に弾けるわけないよ

「そうらしいわね。でも淳平くんにとってそれは関係ないんじゃないかな」

関係ない?

不思議そうなあたしに先生は話を続けた

「私も驚いたわよ。もともと素質はある方だったんだけどね。習っていくうちに、楽譜を渡したらいつの間にか次の日には弾けるようになっちゃってて‥‥」

素質あったんだね‥‥

人は見かけによらないなぁ

でも‥‥そしたら何で?

「何でピアノやめたんですか?」

先生は淳平くんを優しく見つめながら言った

「中学への進学で区切りがよかったのと‥‥」

と‥‥?

「‥‥自分には実力がないからですって」

実力がないって‥‥

どう考えてもそれはあり得ないでしょ!?

「そう言われた時は唖然としたわよ。【楽譜一回見て弾けないんじゃプロにはなれない】って言い出して」

何その理由‥‥

普通は誰でもそうじゃない?

みんながみんなプロになりたくてピアノしてるわけじゃないでしょ?

「引き止めなかったんですか?」

「まぁね。本人がやめるって言ってるんだから引き止めても無駄でしょ?」

「そうですけど‥‥」

でも‥‥もったいないよ‥‥

自分からやめちゃうなんて‥‥

黙ったままあたしも淳平くんを見た

その時淳平くんは‥‥笑っていた

あたしはその笑顔にまたドキドキした

「ピアノを弾くときの淳平くんね‥‥今みたいにいつも笑ってたのよ」

そうなんだ‥‥

楽しいのかな?

それとも久しぶりの演奏が嬉しいのかな?

やっぱり君はすごいよ‥‥

物凄くかっこいい‥‥

「でもね、改めて今日彼の演奏を聞いて確信したわ」

「えっ‥‥?」

「彼は天才よ‥‥」

真剣な顔つきで言う先生に圧倒された

開いた口が塞がらなかった

先生がこんなことを言うなんて今までになかったから‥‥

少したって淳平くんは弾き終わった

鍵盤から手を離しまた目を瞑り深呼吸してる

目を開けると今までのあの空気はどこへいったんだと言わんばかりにいつもの彼に戻っていた

目を瞑って深呼吸するのはある意味スイッチの切り替えのためにやってるのかな?

あたしはまだ口が開いたままだ

淳平くんはこっちを見て不思議そうに言った

「どうか‥‥しました?」

どうかしました?って‥‥

淳平くんは何もなかったように聞いてくる

もしかして二重人格?

「で‥‥どうだったかな、つかさちゃん?」

どうだったと聞かれましても‥‥

「‥‥どうもこうもないですよ‥‥」

なんて言ったらいいんだろ‥‥

とりあえず出た言葉がこれだった

「淳平くんって何者‥‥?」

もっとマシな事は言えたはずなのに頭に浮かんでこなかった

それだけ淳平くんの演奏の印象が強かったってことだ

「普通の男子高校生だけど‥‥?」

それはいつものことでしょ?

今はまるっきり別人に見えたよ?

「淳平くんさぁ、何でピアノやめたんだっけ?」

「実力がないからですよ?」

ホントにそれがやめた理由なんだ‥‥

「淳平くん‥‥それは嫌味?」

思ったことをついつい口に出してしまった

「淳平くんはねぇ、自分の標準ラインが高すぎるんだよ」

そうだそうだ

「君は音大のトップレベルの実力だよ」

うん?

先生、それはちょっと言い過ぎじゃないかい?

まぁいいけどさ‥‥

なんかあたしの歌のレベルが低いみたいに聞こえちゃったよ

淳平くんに少し嫉妬しちゃうな‥‥

「自覚がないだけね‥‥。周りに競う相手もいない、対戦相手はいつも私だったでしょ?」

「だってあの時は先生に追いつきたくて必死で‥‥」

先生は音大でトップレベルだったもんね

まぁ自称だけど

だから淳平くんもこんなレベルになっちゃったんだね

素質もあったらしいし

それに比べてあたしは‥‥素質あるのかな?

努力して練習は人一倍やってきたつもりだったけど、なんか不安になってきたよ‥‥

雑誌とかに載って歌唱力抜群とか書かれてもてはやされて

正直いい気になってた

まだ若いけど実力が認められたんだって思ってた

でも‥‥今目の前の淳平くんを見たらあたしの実力なんて‥‥

「まっ、いいわ。つかさちゃん、練習しなきゃ!」

先生に言われて我に返った

「あっ‥‥はい‥‥」

この時あたしの中で2つの気持ちが入り交じっていた

淳平くんのピアノを弾く姿を見て心奪われたこと

もしかしたらあたし‥‥淳平くんのことが‥‥

そして今までには感じなかった不安のこと

それらを胸に秘めたまま、あたしはいつもの練習へと入っていった

〜つかさside 終〜


[No.763] 2008/02/03(Sun) 17:19:53

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