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明と暗・白と黒  第17話 (No.917 への返信) - シン

早朝

綾は、いつものように学校の用意を整えていた。
その時、ふと数冊のノートが目に入る。

「あ、そうだ……これを持って行かなきゃ……」

数冊の内、1冊には名前欄に中学生の頃のクラスが書き込まれていた。
それは、自分と淳平を引き寄せた、思い出のノート……









「あっ、真中くん」

教室へ通じる廊下にて

ノートを抱えた綾は淳平の姿を見つけると、明るい表情になる。
この時は、悪い事や嫌な事も全て忘れる事ができた。

「ん、東城か……」

だが、対する淳平は歯切れの悪い表情で、綾と目を合わせようとはしない。
繋がりを求める綾と、繋がりを断とうとする淳平。
この2人の間に出来た溝は、綾が思っているよりも遥かに深かった。

「ねえ真中くん、放課後にまた屋上で話……

「悪いけど、前に言われてたよな、俺に近づくなって」
「もう、俺たちは何でも無いんだ。部活はもう引退したし、大学だって違う所に行く」
「また会うとしたら……その時は……」

そう言い残すと、淳平は一瞥せずに綾から離れてゆく。
綾は追いすがろうと手を伸ばすが、その手が届くはずも無かった。
2人の間に繋がりは、何一つ残っていなかった。

そして、綾の耳に憎き男の声が聞こえてくる。
その男は、今日も綾を犯すだろう。
今日も、明日も、明後日も、未来永劫……
未来永劫、小宮山の玩具となるしか無いのだ。

綾は目の前がゆっくりと暗くなるのをを感じていた。








順調に愛を育む淳平とつかさ。
一緒にいられるのは春までだと分かっていた2人は、より濃厚な時間を過ごすようになっていた。

春にはつかさがフランスへと旅立ち、夢へ真っ直ぐに向かってゆく。
そして、淳平も向かう先を決めなければならなかった。





そして、孤独であり続ける綾。
誰からも味方されず、たった1人で苦痛に耐え続けるしかなかった。

理不尽な苛めを受け続け、放課後には小宮山の玩具にされる日々。
それどころか、文化祭の2週間後には、小宮山だけでなくその他大勢の男の相手をさせられる日もあった。
拒否権を持たぬ綾は、それを受け入れるしかなかった。








文化祭から1ヶ月が経った。
時は11月の半ば、彼岸が近づいていた。

「アハ……アハハ……今日も汚された……」

綾はうわ言の様に呟く。
その言葉を聞く者は誰もいない。

風呂上りのその身体は、ほんのりと上気して赤くなっている。
その裸身には、明らかに他とは違った赤い跡が付いていた。

それは、綾が男の欲望を満たすためだけの人形であった事の証明。
そして、その穢れを落とそうとした、精一杯の抵抗の跡でもあった。

「どうして……こんな事になっちゃったのかな……真中くん……」
「真中くん……真中くん……真中くん、真中くん、真中くん真中くん真中くん真中くん……」

溢れ出る涙が止まらない。
まるで、壊れた蛇口のように。
いや、綾の心は本当に壊れているのかもしれない。

「真中くん真中くん真中くん真中くん真中くんっ……!?」
「うぐぅっ……ゲェッ……ウゲッ……うぅ……!」

どこか別の世界へと旅立っていた綾の意識は、突然こみ上げてきた吐き気で現実に戻る事となった。
あまりにも苦しくなり、洗面台に続けざまに吐き出す。

しばらくすると吐き気が収まり、少し楽になったのだが、今度はある仮説が浮かび上がってきた。
それは、綾にとっては決して肯定できる物ではない仮説だった。

指折り数え、何度も計算する。
何度も、何度も、何度も、何度も……



だが、何度数えても結果は同じだった。
本来なら2週間前にあるはずの出来事が無かったのだ。

「あ、あはは……あはははは……生理が……来てない……」
「そっか……もう、手遅れなんだ……」

それは、あまりにも残酷すぎる現実だった。
もっとも恐れていた事を目の当たりにし、綾の瞳から輝きが消えてゆく。
その身体には、既に男の子種が根付いていた。







綾は恨み、そして呪った。

自分に理不尽なる責め苦を与え続ける女たちを、
自分を玩具として扱った男たちを、
自分を終わり無き苦しみの中に追い込もうとする運命を、

自分から本来の居場所……淳平の隣を奪ったつかさを、







「そっか……簡単だったんだ……真中くんの隣にいたかったら、隣にいる人を退かせばいいだけなんだ……」
「邪魔になるんだったら、邪魔にならないようにすればいいだけ……」

「西野さんがいなければいいだけなんだ……」



かつてのような輝きを失った瞳は、暗い光を湛えている。
つかさに対する憎悪に満ちたその光は、あまりにも淀みのない綺麗な光だった。
深淵の闇に閉ざされた、絶望の光であるが故に……





「あは……あはは……あははははははははははっ!」

乾いた哄笑が響く。



『東城 綾』という人格は、崩壊した。







第17話『終末へ』



続く



>>今回もちょっとやりすぎたかな……


[No.938] 2008/03/25(Tue) 00:16:36

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