海が見える小さな丘。
その丘に、真剣な表情をした若い男女が2人。
若い女はそっと口を開く…
「覚悟は出来ております…」
「どうか……私を………」
「…抱いてください…!」
その言葉で一気に顔を赤くさせる男。
そして女は反対に、真剣な表情で男を見つめている。
「そ、そんなことを言ってはなりません!だって…だって東城は!」
「………」
「カーーーーーーーット!!!!!」
パカーーーンッ!
大きな声をだし、男に向かって勢いよくメガホンを叩きつける。
「いってっ!!!」
映像研究部、ただいま夏の合宿中…
【A Broken Love Compass】 〜第1話〜
メガホンを握り締めた美鈴が淳平に向かって叫びだす。
「だいたいねぇ、ヒロインの名前間違えすぎなのよ!コレで何回目よ!?」
美鈴の怒りは収まらない。
「あんたには学習能力というものが無いの!?」
「東城先輩がこ〜〜んなに演技が上手いのに、アンタはそれに泥を塗るわけ!?」
「3年生、最後の映画は傑作作るんでしょ!?気合が足りないのよ!!!しっかりしなさい!まったく…!」
「わ、わかったよ。今度は失敗しないから…」
明らかにビビッている様子の淳平。それを見て苦笑いする綾。
今回の撮影は、舞台が昭和初期の映画だ。
物語は、良家に生まれた女性と、その使用人の男性とのラブストーリー。
そのヒロインを演じるのは綾。
そしてヒロインの相手役を演じるのが淳平。
そしていつもの映研メンバーにおまけの天地。
綾の演技力は前作のヒロインを演じたつかさに負けないくらい上手いもので、映研部の皆を驚かせた。
しかしヒロインの相手役を演じる淳平の演技は、悪くは無いのだが、すぐにNGを出してしまう。
だが、そんな淳平に綾がさりげなくフォローを入れ、順調に撮影は進んでいた。
「お〜し!今日の撮影はここまでにして、午後は演技の練習とか使えそうな撮影現場探そうぜ!」
「次のシーンは俺だけが登場しないから…とりあえず美鈴と俺がロケ地探しで、あとの皆はセリフあわせでいいかな?」
淳平の提案に皆はうなづいた。
「真中ぁ、お前美鈴に変なことすんなよ?大事な大事な俺の妹なんだからな!」
ヒロシが淳平の肩に乗りかかってきた。
「アホか。相手は美鈴だよ?んなことありえねーって!」
そう言って笑い飛ばす淳平。
このとき、この後に起こることを全く想像していなかった淳平なのであった…
[No.12] 2005/08/10(Wed) 02:22:39 |