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BEST OF HERO 第1話 (親記事) - hiro

いつものように2人の男女は学校からの帰路についていた。
「そうだ東城。この前読ませてもらった小説の続きなんだけど・・・・」
2人はいつものように映画や小説の話で盛り上がっていた。
ふいに真中は東城の顔の異変に気づいた。
「(いつも顔は白い肌だけど今日の東城は蒼白いな・・・・)」
「どうしたの真中君?」
「いや、なんでもないよ東城」
真中はこのことについてこれ以上考えることもなくまた最近観た映画の話で盛り上がった。
「それじゃあ真中君またね」
「おう東城また明日なー」
いつもの場所で2人は別れた。
東城は一人帰路についていた。
そんなに家が遠いわけでもないが妙に疲れやすく動悸も乱れていった。
「どうしてこんなに息切れするんだろう?」
東城は自分の体の異変に少し気づいていた。
だが本人はそれほど気にしてはいなかった。
しかしこのときすでに一人の少女のからだに恐ろしい病魔が忍び寄っていることを誰一人として知らなかった・・・。


[No.125] 2006/07/31(Mon) 07:27:07
BEST OF HERO 第2話 (No.125への返信 / 1階層) - hiro

真中淳平は映研の部室に顔を出した。
外村、小宮山、さつきといつものメンバーが揃っていたが一人足りないことにすぐに気がついた。
「外村!東城は?文芸部の方に行ってるのか?」
「いや、それが熱が出て学校を休んでいるらしい。そうだ真中、これ帰りにでも東城に渡してきてくれ。」
外村は数枚のプリントを真中の手に渡した。
「それじゃあ今度の作品についてえっと今回の舞台は・・・・・」



真中は東城の家に向かっていた。
「よく考えると東城の家に行くなんて緊張するよな。東城の両親にも初めて会うし・・・」
ちょうど角を曲がりかかったときに一人の少女に声をかけられた
「淳平くーん。」
「あっ西野!」
真中はすごく動揺した。
「久しぶり淳平君。どうしたのこんなところで?淳平君の家って違う方角だよね」
「じっ実は東城が今日学校休んだんでこっこれを渡すように頼まれて・・・」
真中は数枚のプリントを西野に見せた。
「ふーん。なんかあやしーなー」
「ちっ違うよ西野。別にそんなつもりじゃ・・」
西野の鋭い目が淳平を震え上がらせた。
「まっ別にいいけどさ。じゃあね淳平君!」
「あぁまたなー西野」
(なんで西野がこんなとこにいるんだよ。そりゃ久しぶりに会えてうれしいけどさ・・)
そして真中は東城の家の前まで来ていた
何度もインターホンを鳴らそうとするが最後の勇気が出ずじまいだった。
「よく考えたら女の子の家にあがるなんて初めてだよな・・・」
しかし真中はついに決心してインターホンを・・・・・押した
ピンポーン
「はいどちら様ですか」
声からして綾の母親らしき人だと分かった。
「いっ泉坂高校のまっ真中と言うものですが綾さんにお渡ししたいプリントをお持ちしました。」
「まぁあなたがあの真中君?ちょっと待っててくださいね・・・」
「(あのって何?俺どんなやつだと思われてんの・・・?)」
すぐに女の人が出てきた。自分の母親と違いとても綺麗な人だ・・・
「わざわざありがとう。あなたが真中君ね?綾はいつもあなたの話でもちきりで・・」
「えっ!」
真中の顔がすぐに赤くなっていった。
「(そんなに東城は俺のこと・・・・・)」
「お母さん!余計なこといわないでよ!」
後からパジャマ姿の東城が姿をみせた。
「とっ東城!熱は?もう大丈夫なのか?
「大丈夫、平気。昼過ぎから熱は下がったから・・・・」
とはいいつつも東城も顔が赤くなっていた。
「それじゃ俺は帰るから、また明日学校で・・・」
「うん。わざわざありがとう真中君」
「おじゃましました」


真中が帰ったあとふいに綾の母親が言った。
「真中君って案外いい人じゃない。あなたにぴったりかもね・・・・」
「もうやめてってばお母さん!」
綾はそういいつつも自分の母親が真中を気に入ったことをよろこばずにはいられなかった。


[No.126] 2006/07/31(Mon) 08:54:40
BEST OF HERO 第3話 (No.126への返信 / 2階層) - hiro

東城は二日ぶりに登校した。
「東城!もう熱は大丈夫なのか?」
すぐに真中が声をかけた。
「うんもう大丈夫だと思う。映研や文芸部のみんなに迷惑かけたからがんばらないと・・・」
「そうか。なら良かった」
真中は心から安心した。ただあいかわらず顔色が蒼白いことだけが気になっていたが・・・



そして放課後

「東城は文芸部に出てるし久しぶりに西野のケーキ屋にでも行ってみようかな・・・・」
そう考えながら帰ろうとしていると
「真中君!」
声の主は東城だった
「真中君・・あっ明日なんか予定あるかな・・・」
「べっ別にないけど・・・」
「実は映画の前売り券を知り合いから譲ってもらったんだけど良かったら今度の土曜日に観にいかない?」
東城からの突然のデートの誘いだった。
「ちょうど俺も映画観たいと思ってたんだよねー」
「良かった・・・じゃあ10時に待ち合わせでいいかな?」
「分かった。でも東城体調の方は・・・?」
「ちょっと息切れしたするようになったけど大丈夫だよ」
「分かった。じゃあ土曜日に」
「またね真中君」
(東城とデートか〜楽しみだな〜)
真中は浮かれながら西野の働いてるケーキ屋に向かった。


[No.127] 2006/07/31(Mon) 14:49:14
BEST OF HERO 第4話 (No.127への返信 / 3階層) - hiro

(母さんにケーキでも買って帰ろうかな・・)
真中はそんなことを考えながらもうケーキ屋が目の前にみえていた、が・・
「真中〜こんなとこでなにしてるんだー」
「大草こそこんなとこでなにやってんだサッカー部が」
「サッカー部の練習の帰りにこの辺に寄ったんだ。それよりそっちは西野に会いに来たのか?」
「バッ違うよ!久しぶりに母親にケーキでも・・・と」
「照れるなって、皆知ってるんだからよ。それより早く入ろうぜ」
「ああそうだな」
二人は店に入った。
「いらっしゃいませ・・・って淳平君に大草君!」
「やぁ西野」
「どうしたのふたり揃って?」
「いやーたまには親孝行にケーキでもなんて思って・・・なぁ大草」
「まっまーな・・・」
「もうちょっとでバイトが終わるから少し待っててよ」

10分後

「お待たせ〜じゃ帰ろうか」
3人は帰路についた
「そうだ今度の土曜日皆でどこかに遊びに行かない?」
西野が提案した。
「おっ俺はいいよ・・・」
二人を気を遣って大草は辞退した。
「じゃあ淳平君は・・・?」
「ゴメン!西野。実はその日どうしてもはずせない用事があって・・・」
「そう・・・・じゃ仕方ないね・・・・」
「ほっ本当にゴメンな西野・・・そうだ俺用事があったんだ・・・先帰るからじゃあな」
真中はあきらかに動揺しながら帰っていった。
「なんなんだあいつ・・・・」
大草は呆れるように言った。
「俺が教えてあげようか?」
「あなたは確か・・・外村君?」
「正解ー!」
そういいながら外村はしきりにシャッターを切り出した
「どういうことだよ外村!」
大草がたずねた。
「実はあいつ今度の土曜に東城と映画見に行く約束があるんだよね〜」
「まじで・・・」
西野はただ黙っていた・・・・
「なんでも東城の方から誘ったらしいけどさ。」
外村は悪びれることなく言った。
突然西野が声を出した。
「大草君!今度の土曜私たちも映画いこっ!」
「えっ?尾行すんの?」
「そうよ。心配でほっとけないよ!」
西野はライバル心を燃やしていた・・・・
「じゃ大草君土曜日よろしくね!」
「(どうなってもしらないぞ〜)」
大草は不安がっていたが外村は
「(面白くなりそうだな。俺も行ってみるか)」
とむしろ楽しみにしていた。


[No.128] 2006/07/31(Mon) 15:29:42
BEST OF HERO 第5話 (No.128への返信 / 4階層) - hiro

土曜日
いろんな人に尾行されるとも知らずに真中淳平は東城の待ち合わせの場所に15分前にやってきた。
「みてよあのすごく楽しそうな顔!」
「つかさちゃんそういうのを嫉妬っていうんだぜ」
「ほっといてよ・・っていうかなんで大草君以外にあんたが来てんのよ!しかも小宮山君まで連れて」
「俺はつかさちゃんにさえ会えれば真中なんてどうでもいいんっすー」
小宮山はすでに興奮状態に陥っている
「あんまり騒がないほうがいいぜ」
大草が3人に言った。
「東城のお出ましだ・・・」
3人が一斉に振り返った。そこには私服姿の東城が歩いてきた。
「うおーっ!綾ちゃん今日もサイコー」
「バカ!小宮山、声がでけぇよ」



「よお東城!」
「おはよう真中君。ゴメンちょっと遅れちゃって・・・・」
「全然!俺もついさっき来たとこだから」

「(嘘付け!15分前から来てたくせに!)」
西野がするどくいった。しかし大草は東城のいつもとちがう異変を感じていた。
「なぁ外村、東城の顔なんかいつもより蒼白くないか?」
「だよなぁ俺も最近そう思ってたんだよ」

「じゃ行こっか真中君」
「ああところで今日はどんな映画観るの?」
「えっと今回は・・・・・・」
二人は映画館へ向かった。

「私たちも行くわよっ!」
尾行チームも行動を開始した。


[No.129] 2006/07/31(Mon) 15:52:52
BEST OF HERO 第6話 (No.129への返信 / 5階層) - hiro

やっぱり今日の東城はおかしい
その異変は真中にも分かっていた。
待ち合わせ場所から映画館まではそんなに長い距離ではない。
しかし歩いていくにつれて東城が息が切れだしているのを感じることができた。
「大丈夫か東城、少し休もうか?」
「平気、それにもう少しで映画館だから」
「まさかこの前のがまだ治っていないんじゃ?それに顔色も悪いし」
「大丈夫だよそれに映画館見えてきた」
「分かった。でも気分悪くなったらいつでも言ってくれよ」
「うん・・・ありがとう」

「なっ?やっぱ変だろ」
大草が外村に言った。
「たぶん前に体調が悪くて休んだときがあったからそれが治ってないんじゃないの?」
「それよりもチケット早く買わないと二人見失っちゃうよ」
西野がみんなを急かした。




西野達は真中と東城が座っている席からすこしはなれたところを陣取った。
二人は今回見る映画のパンフレットを買い映画についてあれこれ語りあっていた。

「二人はただ単純に映画が好きなんだろうな・・・」
大草がつぶやくように言った
「つかさちゃんそんなに心配しなくてもいいと思うぜ。」
外村も続く
「そう・・・・かもね」
西野は呟いた。
西野は羨ましかった。あの二人は映画をつくるという同じ夢を持っている。しかし淳平とつかさの間にはそんなものはなかった。
ほらっ映画が始まるぜ
照明が暗くなりスクリーンが姿を現した。


[No.130] 2006/07/31(Mon) 16:13:08
BEST OF HERO 第7話 (No.130への返信 / 6階層) - hiro

「どうだった。今回の映画?」
「けっこうよかったんだけど何か物足りないような・・・・」
帰り道二人は今日観た映画について話合っていた。

「なっ、つかさちゃん結局尾行なんて無駄だったんだよ」
「そうそう西野、同じ映研の部員ならいっしょに映画みるなんてよくあることだって」
「そうだよね・・・あ〜あなんで尾行みたいなバカな真似しちゃったんだろ」
「そんじゃあ今からあの二人を誘ってどっか遊びにいこうか?」
しかしその会話は真中の声によって遮られた。
「東城!しっかりしろ東城ー!」
そこには倒れている綾と必死に支えようとしている真中の姿があった。
「なに?なに?どうなってんの?」
「わかんない、けどとにかく救急車だ!西野!頼む」
大草はそういうと一目散に東城に向かって駆け出した。
外村と小宮山もつづく
「真中!いったい何が起きたんだ!」
「それがいきなり東城が倒れだして・・・っていうか何でみんないるんだよっ!」
「理由を話している場合じゃない。とにかく救急車呼んだから東城を安全な場所へ・・・」
5分後救急車が到着した
「真中!お前は東城のそばにいてやれ。東城の親には俺たちが連絡しておくから」
「・・・・わかった。じゃ頼む大草」
そういうと真中も救急車に乗り込んだ


東城は泉坂中央病院に搬送された。

「ただの貧血です」
医者からそう説明されたときに東城の家族と真中は安堵の色を浮かべた。
「ただ・・・念のため2〜3日は入院してもらい、あと血液検査もしておきます」
「先生・・ありがとうございました・・・」
東城の両親が頭を下げた。
「それでは失礼します。」
医者は綾の病室から出て行った。
「真中君も本当にありがとう」
「いえ・・・・別にたいしたことはしていないので・・・・」
「それじゃあ失礼します」
真中も病室をあとにした。
しかし出口付近でさっきの医者に呼び止められた。
「真中君・・・・だったね?ちょっと綾さんのことについて聞きたいことがあるんだけど少しいいかな?」
「ええ・・・いいですよ」
真中は別室への連れて行かれた。
「少し聞きたいことがあるんだ・・・あの子の顔色は見ての通り蒼白かったがそれ以外になんかなかったかな?」
「そういえば最近よく息切れするのが目立ってたような・・・・」
「!」
あきらかに医者の顔色が変わった。
「ひょっとして最近よく熱が出たなんてことはなかったかね・・・?」
「たしかにそういえば熱で何日か休んでたときがありました。」
「そう・・・・・か」
「ありがとう真中君。貴重な時間を割いてしまって」
「いえ・・・・別に・・・。それじゃ失礼します」
真中は帰っていった。
医者は通りかかった看護婦を呼び止めた。
「203号室の東城綾さんの採取した血液を持ってきてくれないか?」
「分かりました」
医者は東城綾の血液検査を行った。
「こっこれは・・・・」
医者はそういうなり看護婦に
「明日東城綾さんのご家族をよんでください。」
神妙な面持ちでそう伝えた。


[No.133] 2006/08/01(Tue) 10:29:27
BEST OF HERO 第8話 (No.133への返信 / 7階層) - hiro

真中が病院をでるとそこには大草、外村、小宮山が立っていた。
「真中!東城は大丈夫なのか?」
外村がたずねた。
「ああ、ただの貧血らしい。それより大草、救急車呼んでくれてありがとな」
「俺が呼んだんじゃない。西野が呼んでくれたんだ」
「えっ!」
すると西野が現れた。
「感謝してよね!私が東城さんの両親にも連絡したんだよっ!」
「ああ、ありがとう西野」
しかし淳平には西野の顔はいつもと違い悲しそうに見えた・・・・
「明日にでもみんなでお見舞い行こうぜ」
外村が場を明るくするかのように言った。



「東城さん!大丈夫なのっ!」
「おいさつき!いくら個室といえども声がでかいって・・」
病室には真中、外村、小宮山、さつき、つかさ、大草が訪れていた。
「みんな・・ありがとう。たいしたことじゃないから・・・・」
「ほんとわざわざありがとうね。お見舞いまで来てくれて」
綾の母親が感謝の気持ちを表した。
「綾さん。調子のほうはどうですか?」
医者が病室に入ってきた。
「大丈夫です・・・」
綾が答えた。
「そうですか・・・それは良かった。ところでご家族のみなさん、別室にきてくれませんか?
東城の母親と父親、弟の正太郎は別室へ案内された。
「お座りください」
医者が全員に座るよう促した。
「今回綾さんの血液を検査させていただきました・・・・」
「これが検査の結果です」
全員に資料が配られた
「血液検査の結果、白血球,血小板の増加、特に白血球は異常なほど増加しています。」
医者は少し間をおいた。
「また今回の貧血と真中君の証言による顔面蒼白、息切れなどの観点からみて・・・・」
医者は全員を見渡した。
「東城綾さんは白血病にかかっている可能性があります・・・・」
少しの沈黙が流れた・・・・・
「そっそんな・・!」
均衡は綾の母親によって破られた。
「なんでよりによってあの娘に・・・」
綾の母親は泣き崩れた
「綾は・・・綾はどうなるんですか!!」
母親を支えながら父親も問い詰めた。
「白血病にも種類がありくわしく検査しないと治療のしようがありません」
「お願いします!早く検査してください!」
「しかし・・・・・」
「白血病を検査する場合は胸骨から針をさし骨髄を吸引する必要があります。」
「あっ綾に!まだ17歳の綾の胸に穴を空けると言うのですか!!」
父親が涙声で言った。母親はすでに泣き崩れて話せる状態ではない。
「つらいのはよく分かります。しかし1番つらいのは綾さんのはずです。ですからまずあなた方にお話したんです」
「一刻も早く検査が必要です。しかし綾さんには事実を伝えなければいけません」
医者は見渡しながら言った。
「30分後に病室行きましょう。それまでに落ち着いてください」


[No.135] 2006/08/02(Wed) 13:31:28
BEST OF HERO 第9話 (No.135への返信 / 8階層) - hiro

「それじゃあそろそろ帰ろうか?」
つかさが切り出した。
「そうだな東城もゆっくりやすんだほうがいいと思うし。」
真中もつかさに同意する。
「うん・・・みんな本当にありがとう。少し入院したらすぐ学校に行くから・・・」
「じゃあな東城ー」
みんなは東城の病室をあとにした。
そのとき廊下で東城の両親と医者にすれ違った。
「みんな今日は本当にありがとう。また来てやってね」
東城の母親がみんなに礼を言った。
「それじゃあさようなら」
西野が代表して挨拶を言う。
しかし真中には東城の母親の目にかすかに涙のあとがあることに気付いた。
病院をでて5分後、真中は東城の病室に忘れ物をしたことに気付いた。
「いっけねー東城の病室にサイフ忘れてきたみたいだ」
「まったくドジだよな〜真中は」
外村がからかった。
「悪い!みんな先に帰っといて」
「分かった、そんじゃーな」
「ああ、じゃーな」
真中は急いで病院に引き返した。
(たしか東城の病室って203号室だよな・・・・)
「あっあそこか」
真中は東城の病室に入ろうとしたが・・・
「分かってくれ!綾、助かるためには一刻もはやく検査が必要なんだ」
東城の父親の声を聞いて真中は入るのをやめ聞き耳を立てた。
(検査?なんのことだ?東城はただの貧血なんじゃ・・・・」
「そうです、はやく種類を断定しないと治療の仕様がないんですよ、白血病は」
その瞬間真中は勢いよくドアを開けた
「白血病ってどういうことですか!東城はただの貧血ではないんですかっ!!」
病室には東城の家族と医者それに泣いている綾の姿があった。
「いま取り込んでいるんだ、出て行ってくれ」
「冗談じゃありませんよ!白血病といったら重病じゃないですか!先生!説明してくださいよ!!」
「出て行けといっているんだ!!」
東城の父が無理やり真中を追い出そうとしていたが
「待って!!」
綾が叫んだ。
「少しでいいから真中君と二人きりにして・・・・」
「しかし・・・・」
真中のむなぐらを掴みながら父は言った。
「お願い・・・・」
「行きましょう・・・・」
東城の母親が言った。
「・・・・分かった」
東城の家族と医者は病室を出て行った。
病室は真中と東城とふたりだけの空間となった。
「・・あのね真中君。あたし白血病にかかっている可能性があるんだって・・・・」
東城は重い口を開いた。
「おかしいと思ってたの・・・・顔色もここ数日悪かったし、息切れもよくしたし・・・・」
「なんでだよ・・・・・」
真中が言った。
「どうして東城が白血病にかかるんだよ・・・・・どうしてだよ!!」
真中は壁に思いっきり拳をぶつけた。
「真中君・・・・・・」
東城も泣いている・・・・
「ただどんな種類の白血病か分からないからもっと検査をしなければいけないんだけど・・・・」
「頼むっ東城!早く検査してくれ!」
真中が言った、しかし東城は何も言わなかった。
そのときドアが開いた
「検査するためには胸骨の骨髄を吸引する必要がある」
医者と東城の両親が入ってきた。
「ちょっと待ってください!胸骨ということは・・・・・」
「胸に・・・・胸に穴を空けるの・・・・」
綾が消えそうになるような声で言った。
「そっそんな・・・・・」
真中はどちらかといえば女性に関しては鈍感な部分がある。ただ胸に穴を空ける
いくら鈍感な真中でもそれが女性にとって、さらに高校生の綾にとってはどれほどつらいことかと良く分かった。
「しかし検査をしなければ治療のしようがないいんですよ・・・死ぬかもしれないんですよ!」
医者もなんとか説得しようと必死だ。
「胸に穴を空けるくらいなら・・・・死んだほうがいい・・・」
綾もこう見えて頑固なところがある
「俺からも頼む!東城、検査をしてくれっ!」
真中はこのことをいうことがどれほど綾にとって酷なことだと承知で言った。
「俺・・・将来映画監督になって東城の小説を映画にするって決めたんだ!」
「ま・・・な・・・か・・・君」
「何年かかるかは分からない。でも東城にもしものことがあったら俺・・・・・」
真中は涙を堪えようと必死になっている。
「それに綾には約束があるんでしょう!・・・・5年前の!」
「五年・・・前・・・?」
綾は母親の言葉から必死で記憶をたどっていた。
が、突然綾の顔色が変わった。
「そうだった・・・・死ぬなんて言ったらいけなかったんだ・・・・」
綾は決心した
「先生・・・よろしくおねがいします・・・・」
「綾!!」
東城の両親が綾の元へ行った。
「わかりました。さっそく明日に検査を始めます。」
「良かった・・・・東城」
真中も安堵の色を隠せなかった。




真中は朝から学校を休み東城のところへ向かった。
昨日の夜、真中はすべてを外村に話した。
「分かった・・・・学校の方は俺がなんとかしてやるからお前は東城のそばについてやれ」
真中は心の底から外村は頼りになる奴だと思った。

東城の病室に入るといまから検査が始まるというところだった。
「真中君・・来てくれたんだ・・・」
東城は落ち着いていた・・・ただやはり胸に穴をあける不安があるようにも見えた。
「東城・・・がんばれよ」
「真中君・・・ただの検査だよ・・・大丈夫」
そのとき医者が入ってきた。
「今回の検査について簡単な説明をしておきます。今回、綾さんに局部麻酔をかけ、胸骨に穿刺針を刺し骨髄を少量抜き取ります。
「さらに検査結果は今日中に分かります。」
「分かりました・・・先生宜しくお願いします。」
綾の母親が頭を下げた。

そして午前10時20分検査が始まった。

真中と綾の母親は手術室のそとのソファーに腰をかけていた。
真中は昨日から思っていた疑問をたずねてみることにした。
「東城が検査を決心したときお母さんは五年前についておっしゃっていましたがあれはどういうことなんですか?」
真中は単刀直入に聞いた。
「綾からは誰にもいわないでっていわれてたんだけど・・・・あなたになら知っておく必要があるかもね・・・」
綾の母親は深呼吸し少し間をあけた。
そう・・・あれは5年前・・・つまり綾が小学校6年生のことなんだけど・・・・」
綾の母親が語りだした。
それと同時に綾も5年前のことを思い出していた・・・・


[No.141] 2006/08/05(Sat) 12:28:34
BEST OF HERO 第10話 (No.141への返信 / 9階層) - hiro

東城の過去・・・・・

それは屋上で真中と出会うまで東城の人生はけっして良いものとは言えなかった・・・

ただ1人の人物との出会い・・・・

それが東城を小説の道へと変えることとなる。


聖新小学校といえば評判が悪く荒れた学校だった。
特に6年3組といえば職員室の先生達でさえ恐れられているクラスだ。
そして今そのクラスに新しく転校しようとしている人物がいた。
「今回、君の転校するクラスは・・・・少々荒れていて・・・・」
「大丈夫です、先生。ボクの前いたクラスもけっこう荒れていたんで」
「ならいいが・・・・でも充分気をつけてほしい・・・特にイジメがひどくて・・・」
廊下で1人の男子と気の弱そうな男の先生が会話をしながら6年3組の教室へ向かっている。
「それじゃあ私は先に入るから君は廊下で少し待機しといてくれ。
「分かりました」
そういうと先生は教室へ入っていった。
「静かにしろ!今日は大切な話がある!」
担任がそういったがいっこうに静かになる気配がない。
(なるほど・・・そうとう荒れてるな)
廊下から様子を伺っていた少年がつぶやいた。
「今日は我がクラスに転校生が来ました」
担任がそういった途端クラスはいっきに静まり返った。
(なんだかんだ言って転校生は気になるんだな)
「では入ってくれ」
ガラッ
ドアを開けて少年は教室へ踏み込んできた。
それと同時に担任は黒板に
「伊 東 隼 人」
の四文字を書いた。
「えー大阪から引越して来た伊東隼人君だ。それじゃあ伊東君、自己紹介を」
「大阪から引越してきた伊東です。よろしくお願いします」
大抵こういう場合、盛大な拍手が沸きあがるはずである。
しかし
パチ パチ パチ パチ
と拍手しているのは1人だけだった。
(すばらしい歓迎だな。まぁ慣れてるから別にいいけど・・・)
「それじゃあ、あの後ろの席へ座ってくれ」
指名された席はさっき唯一拍手してくれた女の子の隣の席だった。
席へ着くと伊東は隣の娘に
「よろしくな」
と軽く挨拶した。
「こちらこそ」
2人は簡単な挨拶を交わした。
だが
「あの転校生、可哀相だよなー転校早々あの東城の席なんて。」
「ブスでガリ勉は最低だよなー」
などという声がいくつか挙がった。
もちろん伊東にもその声は耳に入ったが。
(おまえらに比べたら百倍マシだな・・・・)
「それじゃあ早速授業に入る。1時間目の授業の用意をしてくれ」
用意をしようと思ったときふいにとなりの女の子がノートを落とした。
しかしそのノートはマジックペンなどでグチャグチャにされていたがかろうじて名前だけは分かった。
「ノート落ちたぜ」
伊東はそのノートを拾ってやった。
「あっ・・ありがとう」
だがその娘はすぐに顔をうつむけてしまった。それはイジメられていることについての恥ずかしさから来るものだった。
しかし伊東は
「東城綾か・・・良い名前じゃないか」
「えっ・・?」
綾はとても驚いた。
「おい・・・はやく受け取れよ。授業始まっちまうぜ?」
「うっ・・うん・・・ありがとう」
しかし二人はそれ以上話すことはなかった。


伊東が転校してから3日目
「そういえばまだ校舎についてよく知らねーんだよな、ちょっと見学でもするか」
伊東は昼休みを利用し校舎を見学することにした。
「大体見てまわったな・・・・そういえば屋上があるって担任が言ってたけど・・・・ここか?」
伊東は長い階段の前に立ち止まった。
薄気味悪く、伊東は戸惑ったが
「行ってみるか」
そう言って大きなドアを開けた。
その瞬間眩しいくらいの太陽の光が目に入ってきた。
「へぇ〜ここはけっこう穴場かもしれないな」
辺りを見渡しながら言った。
しかし伊東は1人の人影に気付いた。
「先客かよ・・・まぁいいか見学するだけだし」
近づいていくにつれその人物がはっきり分かってきた。
「たしかあいつは東城綾・・・・だよな。何してるんだこんなところで」
紛れもなく東城の姿だった。
「何してるんだ?こんなところで」
伊東は話しかけた。
「キャッ!」
突然のことに驚いた東城は持っていた本を豪快に落とした。
「伊東・・・くん?」
「へぇ〜こんなところで本読んでたのか?」
東城の落とした本を拾いながら伊東は言った。
「何でわざわざこんなところで本読んでんだよ?教室で読めばいいんじゃねぇのか?」
そういいながら東城に本を返した。
「ここなら誰もこないし・・・その・・イジメられることもないし・・・」
「やっぱ・・・イジメられてんのか・・・・」
3日前の授業で拾ったノートを思い出しながら伊東は呟いた。
「実はな・・・俺も前の学校で一時期イジメられていたことがあったんだ・・・・」
東城は無言だった・・・
「東城なんかまだマシなほうだぜ?俺なんかクラスの連中だけじゃなく上級生、先生まで敵だったからな」
「でも・・・解決はしたんでしょ?」
東城は初めて口を開いた。
「ああ。でもあんまり良い方法じゃなかったからな・・・」
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
「やべぇ、急がないと授業始まるぜ」
そういいながら伊東は急いで立ち上がった。
「まぁイジメなんて気にすんなよ!そのうちなんとかなるって」
そういいながら伊東は走っていった。
「そうか・・・あんな人でもイジメられてたんだ・・・・ありがとう伊東くん気が楽になったよ・・・」
東城は伊東の後姿を見ながらつぶやいた。

次の日、伊東は山のような本を抱えて現れた。
「どうしたの?そんなにたくさん・・・」
「実は実家が本屋をやってるんでね。失敬してきたのさ」
そういいながら本を並べた。
「東城もほしい本があれば持ってっていいぜ」
「でも・・・・」
「気にすんなよ。本ならたくさんあるからさ」
店から勝手に持ち出してきたことに対して悪びれる様子もなく言った。
「じゃあ・・・これ」
そういいながら一冊の小説を取り上げた。
「けっこうそれ有名な人の作品なんだぜ」
伊東は東城の取り上げた本を見ながら言った。
「東城はいったい何の本を読んでるんだ?」
伊東は東城の手の中にある本を覗き込んだ。
かなり古い本だった。
「かなり年季が入ってるな。結構前に発行されてる」
本を鑑定するように見ながら伊東は言った。
「形見なの・・・祖母の」
「そう・・・か」
改めて伊東はじっくり本を見た。
「じゃあ大切にしねーとな」
本を東城に返した。
「それと今日から俺もここで本読むことにするから」
「でも・・・クラスのみんなと遊んだりしなくていいの?」
「あんな連中とつるむくらいならここで東城と本読んだほうがマシだぜ。それに俺は一応本屋の息子だから話も合うかもしんねーし」
そう言いながら一冊の本を読み出した。

それからというものの、伊東は毎日屋上に現れ本を読むようになった。
そして東城も伊東と接するうちに明るくなり元気を取り戻していった。
そしてある日伊東は唐突に東城に言った。
「なぁ東城。小説読むだけじゃなくて・・・書いてみたらどうだ?」
「えっ?」
あまりにも突然言われたので東城は驚いた。
「そんな・・・・無理だよ」
「ぜったい東城ならいけるって。それにこの前の作文コンクールの作品、東城入賞してたじゃないか」
それは「環境に対する作文」で必ず全員が参加することになっていた。
そしてみごと東城の作品は入賞を果たした。
「もっと自信を持てよ東城、この俺が保障する」
伊東は熱弁した。
「そして将来東城は作家になってその本を俺の店で売る・・・・最高じゃねーか」
東城の意思をまったく無視しながら伊東は勝手に話を進めて言った。
「考えさせてもらってもいい?」
東城がきりだした。
「何を考えることがあるんだよ・・・・まぁいいじっくり考えてくれよ!」
そのような会話が毎日繰り返されていった。


[No.143] 2006/08/08(Tue) 11:23:35
BEST OF HERO 第11話 (No.143への返信 / 10階層) - hiro


伊東隼人は朝、学校へ行こうと準備をしていた。



「お兄ちゃん、毎日屋上でいったい何してるの?」

同じ学校に通う1つ下の妹の千里が兄の不自然な行動について尋ねた。

「本・・・読んでんだよ」

「へ〜本屋の息子のくせにまったく本に興味なかったお兄ちゃんにしては珍しいじゃない」

「うるせぇな・・・たかが本読むどこが悪いんだよ!」

「あたしみたいに勉強するなら話は別だけどね・・・・」

千里は兄、隼人と違い塾に通うほどの勉強家だ。

「俺は勉強しなくてもテストの点はとれるんだよ」

事実隼人はまったく勉強していないがなぜかテストの点だけは良かった。

「俺のクラスに東城綾ってやつがいるんだけどそいつといっしょに本読んでるんだ」

「東城綾ってあの?」

「なんだ知ってるのか千里」

「塾で同じなんだけど確か聖新小学校の中では学年トップって聞いたことがある」

「ただ・・・あの地味な見た目と内気な性格、それに学年トップと来てるからけっこうイジメられてるみたいだよ・・・」

「確かに学校でもイジメられているな・・・・」

「やっぱほっとけないんだ・・・・」

「まぁそうだな・・・ってかお前もいっしょになってイジメてんじゃないだろうな?」

「してないよそんなことっ!」

「言っとくけど俺は人を見かけで判断するやつは大嫌いだからな!」

「またお兄ちゃんの口癖が始まった・・・・」

「正義感強いのは分かるけど前の学校のときみたいに・・・・」

「分かってるよ・・・・じゃ行ってくる」




綾本人にはイジメがだいぶなくなったと感じていた。

しかしそれは綾の知らないところで隼人が未然に防いでいただけであってイジメ自体がなくなったわけではなかった・・・・

そしてそれが逆に東城イジメをヒートアップさせる結果となる。



放課後、綾と隼人は同じ帰路についていた。

本来、家が近いわけでもなくどちらかといえば不便なのだがイジメを防ぐだめには東城を1人にしないほうが良いという隼人の考えだった。

「お兄ちゃーん!」

うしろから女の子が走ってきた。

「なんだ・・・千里か」

「なんでそっちの方向に帰ってるの?家とは違うよ」

「まぁいろいろとな・・・」

「えっと・・・伊東くんこの娘は?」

「あぁ・・・こいつの名前は伊東千里・・・・俺の妹だ」

「どうも・・・こんにちは東城さん」

「はじめまして千里ちゃん・・・よろしくね」

「さぁはやく帰ろうぜ・・・っ」

ドンっ・・・

その瞬間隼人はいかにもヤクザ風な男にぶつかった。

「どこ見て歩いとんのや・・・このガキ!」

ヤクザ風な男は隼人のむなぐらを掴んだ

ただ・・・隼人はポケットに手を入れ平然としている。

「正次さん・・・・いったいなにやってるんすか?」

隼人がむなぐらを掴まれながら言った。

「もしかして・・・・隼人?・・・それに千里ちゃん?」」

隼人と千里を見ながらヤクザ風の男が答えた。

「2年ぶりの再会がこれっすか?小学生相手にムキになんなくても・・・」

「いや〜ゴメンゴメン、なんせ二人ともこんなに大きくなってるんだもんな!」

隼人のむなぐらから手を離しながら言った。

「正次さん、久しぶり!」

千里も答えた。ただ綾本人はわけもわからず呆然としている。

「東城、この人は正次さんっていって大阪に住んでいたときの家の本屋の従業員だった人だ」

隼人が綾に紹介する。

「でも何年か前、突然実家のクレープ屋を継ぐとか言ってましたけどどまさか東京まで来てたんすか?」

「そうよ!なんせ東京はあこがれだからな・・・・・・でその娘は?」

東城を見ながら正次は尋ねた。

「あぁこの娘は同じクラス東城綾って言うんだ。」

「東城綾ちゃんか・・・よろしくね。それはそうとクレープ食べていく?」

そう言われしばらく歩くとクレープ屋の車が止まっていた。

綾と千里は正次からクレープを手渡されていた。

「隼人・・・お前は食べないのか?」

「あぁ・・・甘いのダメなんすよ」

そんな会話を見ながら綾はクレープを口に入れた。

「おいしい!」

びっくりして三人とも綾の方を見た。

おもわず声にだしてしまうほど正次のクレープはおいしかった。

「おいしいですね、このクレープ」

「そう?あんまり自信はなかったんだけど・・・」

しかしその瞬間綾は飛んできたサッカーボールが当たり思いっきり顔にクレープを押し付けてしまった。

「すいませ〜ん」

1人の少年が駆けてきた。

「大丈夫ですか?」

「私は平気・・・それよりもボールを」

正次から手渡されたタオルで顔を拭きながら綾は言った。

「気を付けろよな」

そういいながら隼人はボールを少年に返した。

「どうも本当にすみませんでした〜」

そういいながら少年は向こうの少年のところに走っていった。









「大草!もう少し加減して蹴ってくれよ!」

「真中が下手だからだろ〜あんなボールくらい止めろよな〜」

そういいながら二人はまたサッカーを始めた。








「散々だったな・・・東城・・・」

隼人は綾の顔を見て愕然とした。

それは顔を拭くためにメガネを取った東城のすがただった。

「意外だ・・・メガネをとると東城がここまで変わるなんて・・・」

「どうしたの?伊東くん・・・」

「いやなんでもねぇよ東城、それより服も汚れてるから帰ったほうがいいんじゃねぇのか?」

確かに顔だけじゃなく服もクリームで散々だった。

「うん・・・分かった」

そう言うと綾はカバンを掴んだ。

「また・・・食べにきてもいいですか?」

綾が正次に尋ねる。

「もちろん・・・今度はこんな奴と一緒じゃなく1人でおいで」

「こんな奴ってどういう意味っすか!」

「冗談、冗談。またみんなでおいで」

「それじゃ失礼します」

「じゃあね、伊東くんと千里ちゃん!」

そう言うと綾は走って帰っていった。

「あの娘・・・メガネ取るとだいぶカワイイな」

東城の後姿を見ながら正次は言った。

「正次さんも見てたんすか?」

「隼人にはもったいないくらいだぜ」

「別にそんなんじゃないですよ。ただ・・・前の学校の奴と似てるんで・・・」

「前の学校の奴ってまさか隼人が助けた・・・?」

隼人は答えなかったが正解だということが分かった。

「隼人・・・悪いことはいわねぇ、もうあんなことは・・・・・」

「分かってますよ・・・・」

隼人は無表情で答えた。


[No.153] 2006/08/18(Fri) 10:44:08
BEST OF HERO 第12話 (No.153への返信 / 11階層) - hiro


「そうだったんですか…東城が小説を書くきっかけにそんな背景があったなんて…・」

「あのとき、もしも綾と隼人くんが出会ってなかったら今の綾はなかったと思うわ…・」

「確かにそうですよね…・もしその伊東って人がいなかったら俺達も泉坂で映画を作ることもなかった…・」

真中は自分にそういい聞かせたがなにかやるせない部分があった。

「でも確か伊東くんって僕らと同い年でしたよね?同じ泉坂高校なんですか?」

真中は綾の母親に尋ねる。

「妹さんは確か泉坂の一年生のはずよ。」

「じゃあ兄貴のほうはどこか違う高校受験したんですか?」

「それが…・」

綾の母親が言いかけたとき手術中のランプが消えた。

「終わったんだ!」

真中が勢いよく立ち上がる。

しばらくすると先生とストレッチャーに乗せられた綾が出てきた。

「大丈夫か東城?」

綾の元へ二人が駆け寄る。

局部麻酔のため綾には意識があった。

「ま・・・なかくん・・・」

「よくがんばったな東城!」

真中が思わず東城の手を握る

「検査の結果は今日の夕方にでるでしょう。綾さんは今回の手術でかなり体力を消耗しているため安静にする必要があります」

「先生…・ありがとうございます」

綾の母親が礼を言う。

「東城、検査の結果がでるまでゆっくり休んでくれ。」

「うん・・・・」

綾を乗せたストレッチャーは看護婦の手によって綾の病室に運ばれた。



夕方の4時半前

綾の病室には真中と母親に加え、駆けつけた父親と正太郎が集まって検査の結果を待っていた。

「何で家族でもないお前がここにいるんだよ!」

弟の正太郎が真中に言った。

「確かにこれは家族内の問題だ部外者は出ていってほしい。」

正太郎の言葉に父親も続く。

「でも心配でほっとけないんです!」

真中も主張する。

「心配してくれるのはありがたいが事が重大すぎる・・・」

「でもっ・・・・」

「いいのっ!真中くんもここにいて」

全員が綾の方へ振り返る。

「いいのかよ姉ちゃん!」

「真中くんにも知っておいてほしいから・・・・」

「東城・・・・」

「分かった・・・・綾がそこまでいうのなら君もここに残ってくれ・・・」

娘の言葉に父親は納得したが正太郎は満足してない様子だった。

4時半ちょうど

医者は綾の病室に現れた。

「検査の結果が出ました。」

(頼む!少しでも軽い病気に・・・・)

真中は心から願った。

いや、真中だけではない

この場にいる全員がそう願った。

しかし・・・

「東城綾さんの病状は

     ほぼ急性白血病と見て間違いないでしょう・・・・」








一瞬病室内は静寂に包まれた。


急性白血病といえば白血病の中では最も最悪な病気だった。

「まっ…間違いないんですか・・・?」

この場にいる全員の気持ちを綾の父が代弁した。

「残念ながら・・・・しかし幸いなことにまだ初期段階で発見できたことがラッキーでした。」

「綾は助かるんですね!」

「可能性は高いでしょう・・・・」

「今後抗がん剤による治療が重要となってきます。そして白血病細胞を殺し一次的に正常な状態に戻すことが第一の目標です」

「綾さんの場合早期発見ということもあり80%の可能性で完全寛解になります」

「ただ・・再発する可能性があり完全に治癒するためには骨髄移植が必要となってくるでしょう」

「その骨髄移植は今すぐにはできないんですか?」
真中が医者に尋ねた。

「しかしドナーが見つかる可能性は兄弟で4分の1、それ以外なら数百人に1人いるかいないか」

「じゃあ俺の骨髄を使ってください!」

弟の正太郎がすぐさま言った。

「仮に君の骨髄がお姉さんと一致したとしても君はまだ若すぎる・・・とても移植できるような状態ではない」

医者が残念そうに言った。

「それではほかのドナーを待つしかないんですか」

綾の父が言った。

「それしかないでしよう・・・・」

「そして綾さん・・・・」

「これから治るも治らないもあなたしだいです。最後にはあなたの治すという意志が大切になってきます。

「はい・・・・」

綾が返事した。

「そして真中くん」

「あっハイ!」

突然指名され真中は焦った。

「綾さんはこれから長い闘病生活が始まる。君たちはこれから綾さんを支えていく必要がある」

「できる限りのことはするつもりです」

真中は言った。


[No.156] 2006/08/21(Mon) 09:26:51
BEST OF HERO 第13話 (No.156への返信 / 12階層) - hiro

「そうか、やっぱり東城は白血病か・・・・・」

その夜、真中は外村に今日の出来事をすべて伝えるため電話をかけた。

「急性白血病・・・・・一昔前までは不治の病って言われてる病気だな」

「やっぱ・・・・俺のせいだよな・・・・」

「何でだよ?」

「東城の体調が悪かったのは前々から知っていたんだ。それなのに映画なんかに連れてったりして・・・・・やっぱ中止にしておくべきだったな」

外村は電話越しに真中の話を黙って聞いていた。

「・・・・・確かに懸命な考えではないと思うが結果オーライなんじゃないの?現に東城があのとき倒れたから白血病と診断できたんだし」

「それはそうだけど・・・・・・」

「東城の白血病の診断がもし遅かったらやばかったんだろ?不幸中の幸いだと思うしかないな」

「そう・・・・・・か」






「・・・・・なぁ外村、今俺が東城のためにできることって何かないかな?」

「・・・・・・残念ながらないな。」

「俺たちは医者じゃないから東城の治療にかかわることはできない・・・・・・」

「やっぱ・・・・・そうだよな」

「ただ・・・・その医者が言っていたように心の支えってやつにはなれるんじゃねぇの?」

「こころのささえ・・・・?」

「簡単に言えば、東城の気持ちに応えてやる・・・・・とか?」

「東城の・・・・気持ち?」




「・・・・・でも東城が俺のこと好きだって決まってるわけじゃないし、それに・・・・・・」

「それに?」

「東城には他に好きな奴がいるかもしれないだろ?」

「へ?そんなやついるのか?俺はてっきり真中だけかと思ってたんだけどな」

「これは東城のお母さんから聞いた話なんだけど・・・・・・」

真中は昼、東城の母親から聞いた伊東隼人のことについて話した。




「なるほどね・・・・・東城に小説を書くように勧めた人物か・・・・・・」

「真中と出会う以前に親しかった男が東城にもいたんだな・・・・・」

「そうなんだ・・・・・・正直少しショックだけど・・・・」

「なんで?」

「ほらっその・・・・・東城と夢が語れるのは俺だけだと思っていたから・・・・・」

「ふ〜ん・・・・それよりそいつって俺たちと同い年だろ?全然見たことも聞いたこともないよな」

「そうだよな・・・・・確か妹は泉坂の一年にいるらしいんだけど・・・・・」

「分かった、美鈴に聞いてみる。なんならその伊東隼人って言う奴のことも調べとこうか?」

「あぁ・・・・・・それより俺、明日も学校サボって東城のところに行くからみんなに伝えといてくれないか?東城の病気のこと・・・・」

「分かった・・・・・まかせとけ」

「いずれ黒川先生からみんなに伝えられると思うけど、宜しく頼む」





「けど・・・・・・天地のやつはだいぶショックうけるだろうな・・・・・・」

「天地か・・・・・確か実家の用事でここ何日か学校に来てないんだって?」

「あぁ・・・・・明日あたりに帰ってくるらしいけど」

「つらいだろうな・・・・東城の病気のこと知ったら・・・・・・」

「まぁ何とか伝えてみる。じゃあ切るな」

「あぁいろいろありがとう・・・・」



真中は外村との電話を切ったあと1人ベットの上で考え事をしていた。

「もし、東城が伊東隼人のことを想っているとしたら俺が行っても迷惑だよな・・・・・」

寝返りを打ちながらつぶやいた。

「いや・・・・そんなことは関係ない。今は俺が東城にしてあげれることを考えないと・・・・・」


「そういいながら真中は階段を降りていった。
「確かどっかに医学の本があったような・・・・」

そういいいながらリビングに入ると受話器を手にしている母親の姿があった。

「ちょうどよかった淳平!今から呼びに行こうと思ってたのよ」

「何?どうかしたの?」

「今、西野って女の子から電話が来てるの」

「にっ西野!?」

「母さん貸してっ!」

真中は受話器を母親からひったくった。

「もっもしもし・・・・・」

「あっ淳平くん」

「どっどうしたのこんな時間に?」

「実は今ねバイトの帰りで淳平くんの家の近くに来てるんだけど、今から会えないかな?」

「えっ・・・・・でももう9時回ってるし・・・・・・」

「ごめん・・・・少しの時間でいいから・・・・・・・ダメかな?」

「・・・・・・・分かった、じゃ今から行くよ」

真中が家から出るとそこには西野つかさの姿があった。

「ちょっとそこの公園で話しない?」

「いいよ…・別に」

二人は公園のベンチに腰をかけた。

正直、真中にとって今の東城の状況を考えればとても西野に会っている場合ではなかった。




「で・・・・・どうかしたの?」

「うん・・・・・・実は東城さんこないだ倒れたじゃない?それでどうなったか心配で」

「そっか西野も東城のこと心配してくれてたんだ」

「一応救急車呼んだのあたしだからね。それで東城さんの病気ってどうだったの?」





「東城は急性白血病にかかってるんだ・・・・・」



「えっ・・・・・まさか・・・・うそなんでしょ?」

信じられないという表情で西野は真中の顔を見上げた。

「うそじゃないよ・・・・・検査までしたんだ。」

「でも・・・・・・急性白血病なんて重病でしょ?東城さん助かるの・・・・・・?」

「発見が早かったからまだ可能性はあるらしいんだ・・・・・・・。でも最終的には骨髄移植が必要となってくるらしい」


「・・・・・・確かテレビで見たことあるけどドナーが一致する可能性ってかなり低いんでしょ・・・・・・?」

「あぁ、100万人に一人とかそんな確立だ・・・・・」

「そんな・・・・・・」





「大丈夫!ドナーだって必ず見つかるし、東城はきっと治る。」

「・・・・・・そうだよね。あたし達が暗くなっててもしょうがないしね!」


「あとさ西野・・・・・・いつかは伝えとかなきゃってことがあるんだけど・・・・・・」

「なぁに?」

「俺・・・・・今は東城を大切にしていきたいと思ってるんだ・・・・・・・・・」








「俺が泉坂に来れたのも、こうやって映画作ったりできる今の自分があるのも全部東城が居てくれたおかげなんだ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

西野は黙って真中の言葉に耳を傾けている

「俺にとって東城は言葉で言い切れないほどの恩人だ。だから東城の病気が治ることなら、いや東城のためなら何だってしてあげたいと思ってる。」










「たとえそれが・・・・・・・東城の気持ちに応えることであっても・・・・・・・」




真中は今現在の気持ちを包み隠さず西野に話した。

正直これは西野に初めて告白した時以上に緊張したことだった。









[No.168] 2006/09/04(Mon) 16:06:47
BEST OF HERO 第14話 (No.168への返信 / 13階層) - hiro

「・・・・・・・・・別にいいんじゃない?」

「えっ?」

「あたしはもう淳平くんの彼女なわけじゃないし・・・・・淳平くんと東城さんとの間でなにがあろうと咎める権利はないよ」

「西野・・・・・」

「だから今は東城さんのそばについてあげて・・・・・・?」

西野の笑顔は相変わらずとても可愛らしい笑顔だった。

ただ真中の目にはとても悲しい笑顔に感じた。

「ありがとう・・・・・・西野」

「じゃあたしは帰るね。ごめんねこんな時間に呼び出したりして・・・・・・」

「いや、全然」

「それじゃ淳平くん!またねっ!」

西野は走っていった。

「待ってくれ西野っ!家、まで送るよ」

真中はそういったが西野の耳には届かなかった。

「ほんとにゴメン、西野・・・・・・」

走り去る西野つかさの後姿を見ながら真中は何度も何度もつぶやいた。







翌日の午前中、真中は学校を休み町はずれにある図書館へと向かっていた。

「今の俺にできることはまず急性白血病について少しでも多く理解することだ」

そういった自分なりの結論を一晩かけて導き出した真中はただひたすら図書館を目指し自転車をこいでいた。


「急性白血病の症状と治療法」

真中はただその本を狂ったように読んでいた。

その本には実際に急性白血病患者の手記をもとに書かれた本だった。



すべての内容を一通り読んだ真中は言葉がでなかった。

「うっ・・・・・・・嘘だろ・・・・?」

半ば自分に問いかけるつもりでつぶやいた。

その本には8人の人の事例が書かれていたが。

「・・・・・8人中5人が死亡・・・・・・」

今となって真中は白血病の事の重大さについて分かった。

「仮に治ったとしても再発の可能性がある。」

その事実を知り真中は絶望した

「東城は・・・・・本当に助かるんだろうか」

一瞬東城を失った自分を想像してみた。

「ゾクッ」

背筋が凍る思いがした。

「えっと・・・・何とか助かる方法は・・・・」

そういいながらもう一度本のページをめくってみる。

すると、1つだけ興味深い事例を見つけた。

「これだ!」

それは3年前、当時東城とまったく同じ年齢の人の手記だった。

「・・・・・骨髄移植が成功しその後少しずつ回復・・・・・」

真中は本の中のその文字について注目した。

「やっぱ骨髄移植が必要なんだよな・・・・・」

そういいながら本を閉じる

「でもそれは祈るしか・・・・・・」

さすがに骨髄については真中にどうしようもない問題だった。

「大丈夫だ、大丈夫!」

そういいながらその本を棚へもどした。



その後真中は他の本も調べたがやはりどれも同じような内容だった。

時刻を見るともう1時を回っている。

家で軽めの昼食をとった真中は東城の病院へと向かった。

時刻は2時前だった。

「東城さん!お昼ごはん全然食べていないじゃないですか!」

「・・・・すみません食欲がないんです」

真中が203号室に近づくとそのような会話が耳に入った。

しばらくすると食器の膳を持った看護婦が出てきた。

会話の通り東城は昼ごはんにまったく手をつけていないようだった。



「入るぞ東城」

看護婦と入れ違いに真中は病室に入った。

「えっ、真中くん?今日学校のはずなんじゃ」

東城はベット少しからだを起きあがらせた。

「あっ安静にしとかないと!」

そう言って東城をちゃんとベットに寝かせた。

「体の調子のほうはどうだ?」

丸イスに腰をかけながら真中は尋ねた。

「今のところは平気・・・・・白血病っていうくらいだからもっとしんどいかと思ってたんだけど……」

「そうか、それは良かった。でも食欲はなさそうだな・・・・」

「うん・・・・・食べようとしても体が受け付けないの・・・・・」

東城が少しうつむく。

「それより真中くん、学校は?まだ授業中のはずじゃ?」

「しんどかったからサボった。どうせ修学旅行の打ち合わせとかなんかで・・・・・」

真中はふと気がついた。

泉坂高校の修学旅行はあと一週間後と迫っているものの、当然東城がいけるわけもなく・・・・

「そっか・・・・・あたしは行けないんだったね」

「ごっごめん東城・・・・・悪気はなかったんだ」

「いいのっ、別に真中くんが悪いわけじゃないから気にしないで」

そういいながら綾は真中に微笑みかけた。

「・・・・・正直東城のいない修学旅行なんて・・・・・・」

「えっ?真中くん、何か言った?

「べっ別に何も・・・・・」

「それより、あたしが白血病だと知ったらみんなどう思うかな…・・」

笑顔で東城が言った。

「そりゃかなり驚くだろうな。現に西野だってかなり驚いていたし…・」

「えっ・・・・西野さんに会ったの?」

東城の顔から笑顔が消えた。

「あぁ、実は東城が倒れたとき救急車呼んでくれたの西野なんだ。だから西野もすごく気になってたらしくて」

「そうなんだ・・・・・」



「・・・・・でもおかしいよね?」

「何が?」

「あのとき西野さんの他に大草君、外村くん、小宮山くんがいたんでしょ?おかしいと思わない?」

「確かにめずらしい組み合わせだよな」

「外村くんと小宮山くんならともかくそれに大草くんや西野さんが加わるなんて変でしょ?」

「そういえば東城が倒れたとき真っ先に大草が駆けつけてきたよな、ずっと俺達のことを見てたみたいに・・・・・」





「・・・・・・・まぁいいじゃないの?結局はあいつらのおかげでいろいろと助けてもらったんだし・・・・・」

「・・・・・・そうだよね」

なんだかんだ言って話していると時刻はすでに3時を過ぎていた。



「確か今日は6時間授業のはずだからそろそろHRが終わってるころだ・・・・・」

「俺の予想ではもうそろそろでみんながここに駆けつけてくるころだと思う」


「だから俺はそろそろ帰るよ。学校サボったことばれたくないし。」

そういいながら真中はカバンを手に取った。

「今日はありがとう、わざわざ来てくれて」

東城が起き上がろうとしたのを真中が制した。

「俺はきっと東城が治るって信じてる。だから東城、これからもがんばろうぜ!」

「・・・・・うん!」

「じゃあな!」

そういって東城の病室をあとにした。






病院のロビーではすでに映研のメンバーが受付に東城の病室を訪ねているところだった。

「やっぱり俺の予想通りだ」


そこには外村、美鈴、さつき、小宮山、大草の計5人だった。

みんな暗い表情をしている。

「当然だよな、今までいっしょに過ごしてきた東城がいきなり白血病だって言われたらショックを受けるよな・・・・・」

真中は隠れながら映研のみんなを見まわしていた。

「あれ…・?一人足りないぞ」

しばらく考えていたがすぐ答えは導き出された.

「天地だ!」

確かに必ずいるであろうと思っていた天地の姿がなかった。

「おかしい・・・・・天地なら例え学校抜け出してでも東城のところにかけつけるはずなのに」

考えているうちにみんなは東城の病室へ向かったようだ」

「まっ天地のことはあとで外村に電話して聞くか・・・・・それに伊東隼人のことも」

そう言うと病院を出て自転車にまたがった。








「ただいまー」

「あっおかえり淳平!今唯ちゃんが家に来てくれているの」

「えっゆいが!?」

リビングには確かに唯が座っていた。

「久し振りだねじゅんぺい・・・・・・」

「どうしたんだよ?突然?」

一応尋ねてみたが理由は一目瞭然だった。

「今日、西野さんに東城さんのこと聞いたの」

「(やっぱり・・・・)」

「じゅんぺい!何でそんな重要なこと真っ先に唯に教えてくれなかったの!」

「悪い、悪い・・・・・いろいろ忙しくてな唯に伝える余裕が無かったんだ」

そういいながら真中も腰を下ろす。

「もう!西野さんが教えてくれなかったら唯、一生知らずに過ごすところだったじゃん!」

「そういう問題じゃないんだよ!ほんとに東城の病気は治らないかも知れない・・・・・・」

(西野に会った・・・・?)

「おい唯!その話って誰から・・・・?」

「誰って・・・・・西野さんだよ」

  
「西野か・・・・・」

「じゅんぺい!西野さんに何かひどいことしたの?」

「なっ何でだよ!」

あきらかに動揺が顔に走った。

「だって西野さん、いつもより元気がないっていうか・・・・・・悲しそうだった・・・・」

「そう・・・・・か」

「ねぇじゅんぺい、何かしたんでしょ?」

「じっ実はさ・・・・・」

昨日の夜のいきさつをすべて話した。








「・・・・・・そりゃーショックなんじゃないの?」

真中の話を聞いた唯の第一声だった。

「だって”たとえそれが東城の気持ちに答えることであっても・・・・・・”ってほぼ告白同然のセリフじゃん」

「そんなつもりでいったわけじゃないけど・・・・・俺の気持ちに嘘はなかった」

「まっ確かにじゅんぺいは1度に振られてるから西野さんはもうじゅんぺいのこと好きじゃないと思ってたんだけどね」


「でもこの様子じゃまだじゅんぺいに未練があるのは確かだね」

「あのなぁもう終わったことなんだからいいじゃないか!」

「東城は俺にとって本当に恩人で・・・・・・」

「ハイハイ、もう何回も聞いた」

そういいながら唯は立ち上がる。

「じゃ帰る。それと東城さんのところに寄ってみるよ」

「あぁそうしてやってくれ、東城もよろこぶよ」

そう言いながら真中も立ち上がった。

「まっじゅんぺい、そこまで言ったんだから東城さん悲しませるようなマネすんなよ!」

「ちょっ、待て!それどういう・・・・・」

「おばさん!お邪魔しましたー」

「おい!唯〜」

そういいながら真中も玄関に向かった。




[No.171] 2006/09/06(Wed) 21:29:00
BEST OF HERO 第15話 (No.171への返信 / 14階層) - hiro

「どうだった外村?]

「やっぱみんなのショックは相当なものだったな・・・・・」


真中は受話器越しに外村の声を聞いていた。

「あの美鈴でさえ相当ショック受けてたみたいだぜ?」

「そりゃそうだよな。今まで普通に過ごしてきた東城が急に白血病だといわれりゃ」



「・・・・・・・ところで真中、天地のことなんだけど」


外村がなんとも言いにくそうに言った。


「あ…やっぱそうとうショック受けてた?」

「ありゃショックってところじゃなかったぜ……・なんせ叫びながら突然走って出ていったくらいだからな…」

「走って出て行った!?」

「あぁ、たぶん東城のところに向かったと思うんだけど」

「えっ?天地の奴、東城のところに来てないみたいだぜ?」

「えっ…・てっきり東城のところに真っ先に向かったと思ったんだけどな…・」


外村も首をひねる。



「まぁ天地は置いといて・・・・・・頼んでた件どうなった?」

「あぁ!伊東についてか?」

「確かに妹は泉坂にいるらしい。千里って言うんだって?偶然美鈴と同じクラスだったから一応見に行ったんだ…・・」

「へぇ…・」

「それがさ、東城や西野にはやや劣るんだけどなかなか可愛くてさ、思わずカメラで…・」

「へぇ・・・・・っておい!妹の話はどうでもいいんだよ!兄貴のことについて知りたいの!」

「あぁそうそう、それについてなんだけどイマイチ良くわかんなくて……」

「はぁ?」

「多少の探りは入れてみたんだけどあんまり・・・・逆にどこで兄のこと知ったんですかって逆に探り入れられちゃって」

「まさか俺だって言ったんじゃ…・・?」

「大丈夫、ちゃんとそこはごまかしといたから」

「そうか…・なら良かったけど」

「まぁ知りたいんなら東城本人に聞いてみれば?俺が推測するになんか東城の過去にワケありな気がするし」

「あぁ分かった、ありがとな外村」

「それよりも明日はちゃんと学校に来いよな!ただでさえ東城がいなくて空気重いのにお前までいなくなっちゃ…・」

「分かった、じゃまた明日」

そういうと電話を切った。



「東城の過去にワケあり・・・・・か」



「確かに踏み込んではいけないことかもしれない」



「でも、それを知らなきゃ前に進めない気がするんだ…」







翌日の朝

真中は重い足を引きずりながら学校へと向かった。


「みんなおはよう」

そう言いながら教室へ入ったが空気はかなり重かった。

「あっおはよう真中・・・・・」

さつきにもいつものような元気がない。

「あぁおはよう。」

いつものような会話はなく真中は席に座った。






その日の放課後

真中は映研の部室に訪れた。

部室にはすでに外村兄妹がいた。


「おい、聞いたか天地の話!」

「えっ・・・何のこと?」

そういいながらイスにこし掛ける。

「何でも学校に来てないみたいだぜ?そうとうショックで行方不明って噂が流れてて女子連中が嘆いてたみたいだ」

「行方不明・・・・ね」



「あと小宮山は?あいつも来てないの?」

「さぁ・・・・・ただ天地と同じような理由で休んでるのは確かだけど」



 
「しかし・・・・・映研の部室も静かになったよね・・・・・」

美鈴がポツリと言った。

「さつきも帰っちゃったし小宮山も・・・・・・そして東城も」



「やっぱ東城綾って人間の存在は大きかったんだよな・・・・・・」



再び重い空気が包む。


「・・・・・・とりあえずみんなが立ち直るまで休部かな?」



外村の言葉に誰も返事をしなかった。







「やっぱ毎日見舞いに行くのは迷惑だよな・・・・・・・」

泉坂中央病院の前で真中は言った。

「今日は帰るか・・・・」

そう言って帰ろうとした瞬間病院から1人の人物が姿を現した。

「あれは・・・・・・・天地だ!」

それは紛れもなく天地のすがただった。

「お〜い天地〜!」

真中は声をかけながら走りよって行く。


「なんだ・・・・・・きみか」

「どうしたんだよ?学校にも来ないで?」


天地の顔はすでに別人なほど変化していた。

「・・・・・・綾さんに真実を聞きに行った」

そういった天地の目は真っ赤に充血していた。


「どうしても信じることが出来なかった・・・・・・・だから直接」

「なぁ天地、気持ちは分かるけど・・・・・」


そうやって真中は天地の肩に手を置いたが・・・・

「きみなんかに僕の気持ちが分かるかっ!」

激しくその手を振り払った。


「お前の気持ち・・・・・だと?」




「じゃあ逆に聞くけどお前東城が倒れて救急車に運ばれたとき何してた?」




「・・・・・・東城が白血病の検査したときどこにいたんだよ!」


天地は何も答えず黙っている。


「綾さん綾さんって言うわりには肝心なときだけいなかったくせに偉そうに悲しむんじゃねぇよ!!」

そう言うと真中は180度回転してそそくさと立ち去った。

天地は顔面にパンチでも喰らったかのようにただ真中の後姿を見つめていた。








「・・・・・・やっぱ昨日は天地に対して言い過ぎたかな」

廊下を歩きながら自分の教室に向かった。

「おはよう〜」

いつものように教室に入ったが真中の席には天地が座っていた。

(ゲッ!天地だ・・・・・)

天地はただ腕を組み前だけを見ていた。



「よっ・・よう天地」

「・・・・・・・・・・・・」

天地は黙っている。

(やっやっぱ昨日は言い過ぎかな?むっちゃ怒ってそうだし・・・・・)




「・・・・・・真中」

「なっなんだよっ?」

直立不動で真中は返事した。

「昨日はありがとう。」

「えっ?」

「きみの言った通り僕は自分のことしか考えていなくて綾さんのことは何も分かってはいなかった・・・・・」


「綾さんが僕に1番居てほしかったであろう時に居合わせられなくて本当に悪いことをしたと思っている」


(はぁ・・・・?なに言ってんだコイツ?)

「・・・・だから僕は自分の身を捧げてでも綾さんの病気が治るために尽くしていきたいと思っている」


(・・・・・やっぱコイツには立ち直れないくらい責めておくべきだったな)

そう言うと天地は去っていった。


「あそこまで自分を賛美するというか・・・・・幸せな性格してるよな」


真中はきょとんとしていたが

「まぁいっか・・・・・」

そう考えているうちに始業のベルが鳴った。







「ちょっと真中!今日放課後残ってよ!」

「へっ・・・何で?」


いつものように帰ろうとしていたときさつきに呼び止められた。

「あんた5日後に修学旅行って忘れてんじゃないでしょーね?」

「あぁ・・・・・そうだったよな」

「そうだったよな・・・って信じらんない!修学旅行のこと忘れるなんて!」

「しょうがないだろ?けっこう忙しかったんだから・・・・・・」


髪の毛を掻き毟りながら真中が答えた。


「とにかくっ!まだルートについて決まってないのはウチの班だけなんだからちょっとは協力しなさいよ!」

「−ったく、分かったよ」


渋々真中が席に座る。


「ほらっ外村に小宮山!あんたたちも!」


さつきが逃げ出そうとしていた二人を捕まえた。



修学旅行前日

外村の提案によりみんなで東城のお見舞いに行くことになった。


「・・・・・ごめんね、あたしは修学旅行行けなくて」

「別に東城さんが謝ることじゃないんだから!ほらっ!あんた達もなんか言いなさいよ!」


さつきが男子達に話を振る。


「綾さん!お土産期待しておいてください!」

天地が真っ先に話す。

「まぁ俺たちは一度中学で行ったことあるんだけどね・・・・・だから気にしなくていいと思うよ」

大草が言う。


「また東城の病気が治ればみんなで行けばいいじゃん」

「そうそう綾ちゃん。残念がることないぜ」


外村と小宮山も東城に声をかける。


「ありがとうみんな・・・・・・」


東城がみんなにお礼を言う。


しかし真中は何かを考えているようで何も話すことはなかった。







修学旅行当日




生徒はいったん泉坂高校で集合し、点呼をとってから移動ということになっているのだが・・・・・・

「ちょっと!まだ真中が来てないじゃない!」

集合時間になっても真中は一向に来る様子はなかった。


「また遅刻・・・・・・?ほんとどうすんのよ!」

「まぁあいつの遅刻はいつものことだからな・・・・・」


バックにもたれながら外村が言う。


「いや・・・・・・それはないと思うぞ」

「くっ黒川先生!」

「ついさっき真中の母親から連絡があったんだが真中は39度の高熱を出して来れないらしい」


「嘘でしょ!?信じられない!なんで体調管理が出来ないのよ!」


怒るさつきをよそに外村は対照的に冷静だった。


「まっ・・・あいつらしいと言えばそうだけどな」

「そんな悠長なことを・・・!せっせっかくの真中の二人きりの修学旅行が〜」

落胆するさつきへ小宮山がうれしそうに近づいていき


「いいじゃん、俺といっしょに過ごそうよ!」

「ちょ・・・・近づいてこないでよ小宮山〜!」

小宮山を足で蹴っ飛ばす。

「もう帰る〜〜」

さつきは帰ろうと校門へ向かったが

「何やってるんだ北大路!もうバスが来てるんだぞ!」

「いっ嫌だ〜!真中の居ない修学旅行なんて〜〜!」

さつきは黒川先生にバスへと引きずられていった。



時刻は午前10時


東城綾は一人ベットの中で窓から外の景色を眺めていた。

「みんな今ごろ新幹線に乗っているのかな……」

貰った修学旅行のしおりを開く。

「・・・・・・あたしも行きたかったな」

「何言ってるの綾!まずは病気を治すのが先でしょ?」

「うん・・・・・・分かってるお母さん」

綾の母親は東城の身の回りの整理をしていた。


「じゃあ綾、着替え置いとくからね」

そういいながら紙袋を置いた。


「ありがとうお母さん・・・・」

「今回行けなかったのは残念だけど綾の病気が治ったらまたどこでも連れていってあげるわよ」


そういいながら母親は帰っていった。

「・・・・・・でもやっぱり行きたかったな、真中くんと・・・・・」

そう思っているうちに綾は眠りについた。





1時間くらいたっただろうか。

綾は人の気配を感じ意識が戻ってきた。

(お母さん……?)

最初はそう思ったがしだいにその人物がはっきり分かってきた。


「よぉ起きたか、東城?」

それは今修学旅行にいっているはずの真中の姿だった。

「えっ!?あたしは今夢見てるの?だって真中くんは修学旅行のはずなんだし・・・・・・」

綾はだんだん混乱してきた。

「・・・・・・とりあえず夢でも幻覚でもないから」

ギュッ

真中は東城のほほを軽くつねった。

「イタッ!」

「・・・・・・だろ?」

「どっ、どうして?今新幹線のはずじゃ?」

花瓶を持っている真中に問い掛けた。

「あぁ・・・・・ちょっと風邪引いちゃって・・・・・」

わざとらしく咳をしてみる。

しかし東城には真中のうそはバレバレだった

「真中くん・・・・・・・」

綾の頬に涙がつたっていった。

「えっ!?どうしたの?俺何か泣かせちゃうようなことした?」

「ううん・・・・・・何でもないの」

そう言いながら涙を拭う。

「ほら?奈良と京都なんて中学のとき1度行っただろ?だから無理して行きたくないなーなんて思ってさ」

丸イスに腰をかける。



「・・・・・・・しばらくここに居てもいいかな?」

「うん!」

綾は笑顔で答えた。


一方修学旅行では


「なぁ真中のやつ本当についてないよな!修学旅行当日に風邪引くなんてよ」

修学旅行組は現在京都駅へ到着しバスで移動している最中である。


小宮山と外村はバスの最前席を陣どっていた。

「なぁ外村!」

小宮山が笑顔で外村に言う。

ただ外村は一人窓から景色を眺めていた。


(真中のやつ、まさかとは思ってたけどほんとに東城のために休んだんだな・・・・・・・)



「・・・・・・なぁ外村、どうしたんだよ?」

返事の無い外村を不思議に思い小宮山が声をかける。

ただ外村はニャっと笑い。

(ま・・・・・頑張れよ)

次々と通り過ぎる京都の景色を見ながら心の中で思った。





修学旅行二日目


午後1時

「修学旅行のしおり」によれば現在奈良公園で自由時間となっているころである。


この時真中は紙袋を持ちいつものように歩いていた。


「東城に見せたい映画があるんだ」


映画の見に行けない東城を気遣い真中は数枚のDVDを用意していた。


(東城の小説作りに少しでも役に立てば・・・・・)

そう思い、深夜にまで検討したすえ選んできたものだった。



コンコン

「・・・・・・・どうぞ」

いつもの東城の声を聞き真中はドアを開けた。


だが今回は少しばかり状況がいつもと違っていた。


東城のベットのとなりでセーラー服の少女が立っていた。


年は年下だろうか・・・・・・

真中の第1印象はそうだった。


「えっと、こちら文芸部の後輩なの・・・・・・」


東城が説明する。


「こちらが真中淳平くん。映研の部長で・・・・・」

「あぁこの人が東城さんの言っていた人ですね」


その少女は真中は一通り見まわした。


「始めまして、文芸部1年の 伊東千里です!」


(・・・・!伊東千里って確か・・・・・)

「・・・・・どうかしたの真中くん?」

「いっ・・・いや、なんでもないよ」


「はっ始めまして!オレ真中です!」

焦りを押さえながら真中も自己紹介する。


(まさしく、外村の言った通りの人だな)


千里は確かに東城や西野などいわゆる美少女レベルではないのだがそれでも充分なほどであった。


「それじゃ帰りますね、東城さん」

「うん、ありがとう、わざわざ来てくれて」


千里はニャっと笑い。

「・・・・・邪魔したら悪いですしね!」

そう言って出て行った。


「・・・・・ありがとう、今日も来てくれたんだ」

「ほらっ約束してたじゃんDVD]

そう言って紙袋を東城に手渡す。


「ありがとう、ちょうど今書いてる小説が行き詰っていたの」

そう言って嬉しそうに受け取る。



真中は意を決して尋ねることにした。


「あのさぁ東城・・・・・・・東城が小説を書き出したきっかけって伊東隼人って人に出会ったからだろ?」


なるべく平静を装い尋ねたつもりだったがその言葉は東城から笑顔を消した。


「どっ・・・・・・どこでそれ聞いたの?」


紙袋をゆっくりテーブルに置きながら東城は静かに尋ねた。


「・・・・・・・東城のお母さんから聞いたんだ。東城が検査したあのとき・・・・・・」


「へぇ・・・・・・お母さん話ちゃったんだ・・・・・・」


「さっきの文芸部の後輩って伊東隼人の妹なんだろ?だから思い出したんだ」


「どこまで聞いたの?全部??」

「いや・・・・・全部は聞いてない」

「そう・・・・・・・」


「たださぁ、東城に小説書くきっかけをくれたってほどの人だから一度会ってみたいなぁって思って・・・・・」

無理に笑顔を作ってみる。


「・・・・・あの人は今ここにはいないの・・・・・・・・・あたしのせいで」

「えっ?東城のせい・・・・・??どういうこと」


真中の問いに対し東城はすぐには答えようとせず、深く目を閉じた。


[No.173] 2006/09/09(Sat) 20:56:20
BEST OF HERO 第16話 (No.173への返信 / 15階層) - hiro

時代は綾が小学校6年の秋までさかのぼる



隼人の転校後三ヶ月がたったある日の放課後




「あ〜あ、ほんと学校なんてめんどくさいよな」


屋上で寝っ転がりながら隼人が空に向かって言う。



「ほんと伊東くんって千里ちゃんの言ってた通り勉強嫌いなんだね」

東城は三角座りをしながらノートに小説を書いている。


「俺は自慢じゃないけどテストの点数はかなりいいんだぜ?まぁ学年1位の東城様にはかなわねぇけどな」


「・・・・・・でも伊東くんは勉強だけじゃなくスポーツもできるし、あたしなんか・・・・・」

東城がペンを止めうつむく。


「何言ってんだよ、お前には俺にはできないことができるだろ?」




「そんなくだらない心配より早く小説を完成させてほしいね、けっこう進んでるんだろ?」


「うん・・・・でもラストシーンをどうするか・・・・・」


「まぁゆっくりとご検討ください・・・・・」

隼人はあくびをしながら再度横になる。



「じゃあたし今日用事があるから先帰るね・・・・・」

「あぁ、確か塾だろ?妹も今日同じ日だからな」


「うん・・・・」

カバンを手にしながら綾は頷いた。


「じゃまた明日・・・・・」


綾は5時からの塾のため急いで家に帰った


「あら?あいつノート忘れてやがる」

[算数]と書かれたノートが落ちてあった。

「これって小説だよな……」

そのノートを手に取る

「ホントは完成してから読もうと思ってたけど……まぁ少しくらい読んでも大丈夫だよな」

隼人ハパラパラとページを開いた。






「いってきまーす」


綾は身支度をし家を出た。

ちょうど4時50分と塾10分前だった。


綾は自転車に乗ろうとしたが

「よぉ東城・・・・・どこ行くんだ」


男子3人が東城を囲むように塞いでいく。


それは主に東城イジメの主犯格である3人だった。


「暇ならちょっと付き合えよ・・・・・・・」


その中でも特に大きい男子が一歩前に踏み出した。


東城イジメの主犯であり、学校一番の問題児でもある工藤という男だった。


「すみません・・・・・・これから塾なんです・・・・・・・・・」


綾はおずおずと言ったが当然まかり通るわけがなく

「いいから来い!!」


「はっ離して!!」


綾も抵抗したが当然敵うわけがなかった。


強引に手首を掴まれながら東城は連れて行かれた・・・・・・・











午後7時


「いらっしゃいませ〜〜」

隼人は1人家の本屋の店番をしていた。



「・・・・・・・たくっ!こんな時間に客なんか来ないだろ?もう店閉めちまおうぜ!」

隼人が本の整理をしている母親に言う。

「文句言うんじゃない!嫌ならアンタも塾に通う?」

「うっ・・・・・・・分かったよ」


隼人はブツブツと文句をいいながらも店番をする。



「ただいま〜」

妹が帰ってきた。

「ねぇお兄ちゃん、今日東城さん学校来てたよね・・・・・・?」

帰ってきて早々妹が兄に尋ねる。

「来てたけど・・・・・・なんで??」


「今日、塾の帰りいっしょに帰ってこようと思ったんだけど東城さん塾に来てないみたいなのよ・・・・・・」


「へぇ・・・・・・あのマジメそうな東城もサボるときもあるんだな・・・・・・」

「バカ兄貴!なんでそんな風にしか物の捕らえ方できないのよ!!東城さんがサボったりするわけないじゃない!!!」

「冗談、冗談・・・・・・分かってるって」




トルルルルル・・・・・・・トルルルルル・・・・・・・・・・・・


「母さん電話だぜー」

店の奥に居た母親に大声で伝える


「たまには自分も電話にでなさいよ・・・・・」

母親が小言を言いながら電話と取りに行く。


「で・・・・・・なんだって?」


「だから・・・・・東城さんがぁ!!!」

妹がガミガミとことのすべてを一から説明する。




「へぇ・・・・・あのマジメそうな東城でも・・・・・・・」

「だから!!何べん同じ事繰り返すのよ!!!」

妹がまた怒鳴り始める。




「隼人ー!あんたにだって〜」

会話を遮るように母親が言う。

「俺に・・・・・?」


隼人が母親の元へ駆けつける。


「はい・・・もしもし」

隼人が受話器に出る。


「私、東城綾の母親の者ですが・・・・・・・」

「とっ・・・・・東城のお母さん!?」


隼人の声を聞いた千里も兄の元へ近寄る。


「実はうちの綾が家に帰ってきていないんです、塾にも行っていないらしくて・・・・・・そちらに伺っていませんか?」

「いえ・・・・・来ていませんけど・・・・・・・」

「そうですか・・・・・・」

母親が残念がる。


「実をいうと前にも何回かこういうことがあったんです・・・・・・その度に体のどこかがケガしてたり泥だらけになってたりと」

「へぇ・・・・・それはおかしいですね・・・・・」



「分かりました、俺も探してみます・・・・・・はい、それじゃ」

ピッ


「東城を探してくる」

隼人はさっさと外に行く準備をした。

「やっぱり家にもいないの?」

「あぁ・・・・・東城の母さんも10時になって分からなかったら捜索願いを出すらしい」


隼人は自転車に跨った。

「とりあえず周辺を探してくる。連絡が入るかもしれないからお前は家にいろ」

そう言い残すと隼人は暗闇の中へ消えていった。







(冷静に考えてみればあの東城が塾をサボったりしないはずだ・・・・・・・だから何かに巻き込まれた可能性が高い・・・・・)


さっきとはえらい違いの冷静さで状況を分析する。



(確か東城のお母さんは4時50分に家を出たと言っていた、そして塾が始まるのは5時・・・・・・・ということはその10分間の間で何らかのことが起きた・・・・・)


自転車を漕ぎながら隼人は考える



「・・・・・・とにかく手当たりしだいに探していくしかないな、東城だって案外ゲーセンとかで友達と遊んでるかもしんないし」

隼人は泉坂中を探しまくった。


ゲームセンター、コンビニ、本屋

すべてを探したが東城らしき人物を発見することは出来なかった。


「あとはここの公園だけかぁ・・・・・・」

さすがに夜の公園はけっこう不気味だ


「俺ってけっこうこういう系ダメなんだよな・・・・・」

隼人は少し入り口で立ちすくんでいた

「うん・・・・・?何だあれ?」


草むらの奥のほうに目を凝らしてみる


目が慣れてきて隼人はそれが何なのか分かった


「人・・・・・?」

うずくまっている人のように見えた

「まさか・・・・・・」


隼人は近づいてみる。


隼人の最悪な予感は的中した。


それはボロボロになってうずくまっている東城綾の姿だった。


「とっ・・・・・東城ーー!!」


隼人が駆けつけて綾の体を支える。

「大丈夫か東城!しっかりしろ!!」

「うう・・・・・・・」

良く見ると綾は体が傷だらけで血まで流していた。

「いったいどうしたんだ!誰にやられた!!」

隼人が必死になって尋ねる

「べっ・・・・別になんとも・・・・・・」

「その傷でなんともないわけないだろ!!とっとにかく!!東城のお母さんに連絡を・・・・・・」

「やめて!!」

「えっ?」

「そんなことしたらまたイジメられちゃう・・・・・・」


「工藤だな……・」


隼人の問いに綾はただ首を上下させた。


綾の話では時々こういったことを工藤達にやられていたらしい

ただもしこのことを口外すればもっとひどいことをすると脅されていたためこのことが明るみにでることは無かった。


「とにかく家に帰ろう……立てるか?」

そういって隼人は東城の着ずだらけのからだを起きあがらせた。


「東城……・この仇は必ず取ってやるからな」

隼人はつぶやいたが綾には聞き取ることができなかった。




翌日


綾は1人自分の部屋に閉じこもっていた。


「……・今日、学校お休みするって連絡いれとくね」


後にすべての事情を隼人の口から知った母親はただ何も追及することなくドア越しに声をかけた。



綾は落ち込んでいた。


イジメられるということは正直慣れていた。


しかしイジメられたあとの誰にも見られたくないブザマな姿を隼人に見られてしまったことがとても大きなショックであった。

「もうすぐ1時間目か・・・・・・」

時計を見ながら綾は再度フトンにくるまった








隼人は今日怒りを抑えながら登校した。


綾を昨日家まで送り届けた隼人はその足で工藤達に復讐しようとしたのだが

「誰かに告げ口するとあたし以外の人もひどい目に遭うからこのことは知らなかったことにして・・・・・・・」

綾に涙ながらに言われたので隼人も従わざる得なかった。


ただ、いつものように机の上に座り、バカ笑いしながら過ごしているあいつらを見ると隼人は頭に血が上った

「ダメだダメだ・・・・・・東城と約束しれるんだしこれ以上この学校で問題起こしたらもうここには居られないんだったな・・・・・」


隼人はこの学校に転校してきた最初の日校長室でのことを思い出す。








「・・・・・・・もし前のような不祥事を起こしたらすぐに転校してもらいます。それでよろしいのなら我が校に転校を許可しましょう」


隼人は前の学校で起こした暴力事件により近畿中の学校から門前払いされていた。

意を決して関東に出てきたもののなかなか受け入れてくれる学校がなかったのだ

そして遂に転校許可をしてくれたのがこの清新小学校だった。


「分かりました、お約束します!」

隼人は力強く答えた。








「・・・・・・っていうことだからなぁ、もうここで問題起こしたら北海道の親戚を頼るしかないんだよ、だから慎重にいかねぇと」


自分に言い聞かせながら席に着く


1時間目の授業は道徳だった。

「今日はイジメの問題について話合いたいと思う。」

(よっしゃ!暴力が使えないのなら俺得意の知力戦に持ち込んでやる!)

隼人は俄然やる気がでてきた。

「イジメという問題はとても深刻なことであり・・・・・・」

担任がイジメについて説明しだした。





「おい!ちょっと待てよ担任!」

工藤が意見した。

「イジメ、イジメってやるってるほうが100%悪いみたいな言い方してっけどイジメられる奴にも問題があるんじゃねぇのか?」

「・・・・・・例えば?」

「そうだなぁ・・・・・・・少し勉強が出来るからって調子に乗ってて黒ブチメガネで顔も性格もブスのような奴・・・・・・・」

笑みを浮かべながら隼人のとなりの空席に目をやる

「あぁ?それは誰のことだ!!」

隼人は思いっきり机を蹴飛ばして立ち上がる


激しい音を立てながら机が倒れた。

「俺は一言も東城なんて言ってないぜ?それともお前も心当たりがあんのかよ?」

工藤が嫌味ったらしい顔をする。

「何言ってやがる!昨日のように東城を公園でイジメてたことも全部知ってるんだぞ!!」

隼人は工藤の前に立った。

「けっ!偽善者ぶりやがって、俺はオマエが前の学校で起こしたこと知ってるんだぜ?」

「なにぃっ!」



「オマエ・・・・・・・前の学校で同級生を殴って大怪我させたんだって?」

工藤の言葉に教室中がざわつく。

「俺の母親はPTAの会長をしているからな・・・・・・なんでも東城のようなイジメられてた自殺した奴の仇を討ったらしいな?確かそいつの名前は西ー・・・・・・」

「それ以上あいつのことを言うな!!」

隼人が工藤の襟を思いっきり掴む

「おっと、俺を殴るのか?」

その言葉に隼人は殴ろうとしたコブシを引っ込めた。

「知ってんだぜ、校長と約束して今度問題起こしたら北海道に飛ばされるんだったなよな」

工藤は隼人の肩にポンと手を置く。だがすでに隼人の怒りは頂点に達していた。

バキッ!!

鈍い音と共に工藤がぶっ飛ぶ

隼人のコブシは遂に工藤の顔面に直撃した

「きゃあああああ!!」

女生徒が悲鳴をあげる


ドカッ! ドカッ!! ドカッ!!!

しかし隼人は倒れた工藤の顔を容赦なく殴り続けていった


「やめろ!伊東!!」

担任が隼人の両腕を掴む。

「離せっ!!コイツだけは・・・・コイツだけはよぉー!!!」

担任の手を振り解きなおも工藤にコブシをいれる。

すでに顔の形が変わるほど殴られていた



「どうしたんだっ!」

他のクラスの先生が止めに入る

そして男の先生3人に隼人は取り押さえられた。

「やめろッ!!離しやがれ!!」

隼人は教室の外へ連れ出されそうにしていた。

「ちっきしょうーっ!!まだ終わってねぇんだよ!!離せ!!あいつだけはあいつだけはよぉ!・・・・・・・」

引きずられながらも隼人は叫び続けた

そしてその声は廊下を過ぎ去っても聞こえる程のものだった・・・・・・


























どれくらいの時間が経っただろうか・・…


綾はふと壁にかけてある時計を見上げる。

時刻は11時を過ぎていたであった。


「・・・・・・・・・・・もう誰にも会いたくない」


だがそんな思いは一瞬で破られる



「姉ちゃん!!大変だ!!!」

弟の正太郎が勢い良くドアを開けて入ってきた


「正太郎…・!?いま学校でしょ!?」


「それより大変なんだすぐに学校に来てくれ!!」

弟は息を乱しながら言う。


「今はどこにも行きたくない……」

綾はベットに潜り込んだ


「そんなこと言ってる場合じゃねーんだ!隼人って人が……・」

「なっ…・・何かあったの??」

ガバッと起き上がる

「教室で大暴れして工藤に大怪我させたらしいんだ!!」


「ほっホントに…・?」

「とにかく姉ちゃんは早く来てくれ!!」


そして綾はメガネもかけずに家を飛び出した。






「聞いたか6年3組の話!!」

「あぁ聞いた聞いた。確か東城をリンチしてた工藤を伊東がボコボコにしたって話だろ?」

「あぁ・・・・・なんでも工藤は頭を4針も縫ったらしいぜ」

「・・・・・・・でもあの工藤がやられたんだろ?何者なんだその伊東ってやつは?」


そんな会話を繰り広げている中を綾と正太郎は走り抜けていく。


「千里ちゃん!!」

綾が隼人の妹を見つける。

「おっ・・・お兄さんは!」


「今・・・・・・校長先生に呼び出されています・・・・・・・」

校長室の前で千里が立ち尽くしている。

「実は兄は条件つきでこの学校に来たんです」

「じっ条件って?」

綾が尋ねる

「少しでも問題起こしたら北海道の学校に転校させられることになってるんです・・・・・・」

千里は前の学校で隼人が起こした事件について説明しだした。








「・・・・・・・・ここに来たときの条件を覚えていますか・・・・・・・?」

隼人は校長と向かい会う形で座っていた。

「はい・・・・・・・覚えています」

しばらく時間が経ったため隼人はだいぶ落ち着きを取り戻した。

「・・・・・何でこんなことをした?約束を覚えていなかったんですか?」

校長も残念そうな顔で聞いた。

「覚悟の上でやりました・・・・・・どうしてもアイツだけは許せなかったんです・・・・・・・」

隼人も俯きながら話す。

「・・・・・・なら分かっているね?」

校長が念を押す。

「行きますよ・・・・・・・北海道に」

隼人は立ち上がりながら答えた。

「一週間期間をあげるからその間までならこの学校に居ても良い・・・・・・・・」

校長はせめてもの情けとして隼人に提案した。

「・・・・・・・せっかくですが1週間なんて充分です、明後日には出て行きますよ」

隼人は校長室のトビラに手をかけた

「後悔してるのか?」

校長が隼人に尋ねる。

しばらく隼人は考えていたが……

「・・・・・・してるわけないでしょ?」

隼人は笑顔を浮かばせながら校長室をあとにした。




ガラッ

隼人が校長室を出るとすぐ近くの廊下で綾と千里と正太郎が待っていた。

「よぉ東城、それに正太郎」

明るい表情で話しかける

対照的に3人はひどく暗い表情だった。

「全部聞いたの・・・・・そのっ前の学校のことも・・・・・・」

綾が遠慮しがちでいう。

綾はよっぽど慌ててきたのかメガネをかけていなかったためとても可愛らしい顔だった。

「じゃ俺が今後どうなるかも知ってるよな・・・・・・?」

「ホっホントに北海道に行っちゃうの・・・・?」

千里が尋ねる。

「まっ約束だからな…・・しょうがねぇや」



しばらく沈黙が流れる


「おかしいじゃねぇか!なんで姉ちゃんかばった隼人くんが転校しなきゃなんねえんだよ!!」

明らかに校長に聞こえるような声で正太郎が怒鳴る

「あのな正太郎・・・・・・どんな理由があろうと暴力は使っちゃいけないんだ。ましてや約束も守れなかった俺が転校するのは当然だよ・・・・・・」

「でも・・・・・」

正太郎は何か言おうとしたが隼人の顔をみると硬く唇を噛んだ

「……・本当にあたしのせいでごめんなさい!!」

綾が突然深く頭を下げた

「あん?何でお前が謝るんだよ?」

「だってあたしが・・・・・・」

「俺は死んだ親友のことを侮辱されたから怒っただけだ・・・・・・だから東城は一切関係ないし気にする必要もない」

泣いている綾にそう言葉をかけた




二日後


空港には隼人の家族と綾の家族が隼人を見送るために集まった。

(ご案内します。北海道行き352便は15番ゲートから定刻通りに出航します。繰り返します北海道行き・・・・・・)

「本当にありがとう隼人くん・・・・・・」

綾の母親が頭を下げる

「やめてくださいよ、たいしたことしてわけじゃないんですし」

少しだが隼人が照れる

「それで北海道の連絡先は?それに電話番号も……」

綾はいそいでメモしようと紙を取り出したが

「悪いな、電話番号も住所も教えられないんだ・・・・・・」

隼人がボソリと言った。

「なっ何で…・・?」

「一応そんくらいケジメはつけようかなぁなんて思ってさ・・・・・・千里や母さんとも連絡とらないつもりだし」

「そう・・・・・・・分かった」

綾は残念そうな顔をしたが隼人なりのケジメと理解し何も言わなかった。

「隼人くん・・・・・・お気をつけて」

正太郎が紙袋を手渡す。中には泉坂まんじゅうが入っていた。

「めずらしいなぁ・・・・・・・正太郎が誰かになつくことなんてめったにないんですよ」

綾の母親が言う。

「正太郎・・・・・・これからオマエが姉ちゃん守ってやるんだぞ!将来の大物小説家になる人なんだからな!」

両肩に手を置きながら隼人が声をかける

「はい!」

それに応え正太郎も力強く返事をした。

(ご案内します。北海道行き352便はまもなく15番ゲートから・・・・・・・・)

「・・・・・・そろそろ行かないとな」

アナウンスを聞いた隼人が言った。

「元気でな、千里・・・・・・」

「お兄ちゃんも・・・・・・」

兄妹が最後の別れをする。

「それじゃ行くから……」

隼人は皆に背を向け一人ゲートまでの長い道を歩いていく



「ありがとうー!」

驚いて振り向くと大きく手を振っている綾の姿だった。

「いつか連絡くださいよー」

正太郎も姉に続く

それは他の乗客の注意を完全に集めた。


「おう!また会おうぜー!!」

隼人も負けないくらいの声で応えた


そしてまた皆に背を向けた







「オマエなら分かってくれるよな・・・・・・・・・・・・西田」

半年前に死んだ幼馴染を思い出しながら隼人はつぶやいた









綾は家に帰ってはじめてこれが現実なものだと感じた。

隼人は綾にとってはじめての友達と呼べるかもしれない

そんな存在だった隼人がいなくなった原因が自分にあると思うとますます綾は罪悪感を感じた。

「綾ー!あなたに手紙が入ってるわよ」

一通の手紙を綾に手渡す。

差出人はなくただ


東城綾へ

と書かれていた

「あとこのノートも郵便受けに」

それは綾の小説のノートだった


恐る恐る手紙の封を丁寧に開ける

中には1枚の紙切れが入っていた。




悪いけど小説読ませてもらった。

あっ!別に盗み見たわけじゃねぇぞ!

オマエが屋上にノート忘れていくからいけないんだぜ!

まぁそれはさておき感想を言わせてもらう

正直驚いた、まさかここまでのものだったとはな

やっぱり俺の目に狂いは無かった

そのことを直接実感できてとても良かったと思っている。

だから充分自分の作品に胸を張ってもいいと思う。

今はつらいかもしれないけどいつか東城の才能を認めてくれる人が現れるから

きっと現れるハズだから

だから何があってもあきらめるんじゃねぇぞ!

あと今度会うときまでにその小説完成させてくれよな

じゃあな


伊 東 隼 人





綾は手紙を読み終わったとき自分がはじめて泣いていることに気付いた

「ありがとう……本当にありがとう……」

何度も何度も

綾は手紙に向かい頭を下げた





[No.182] 2006/09/16(Sat) 10:32:39
BEST OF HERO 第17話 (No.182への返信 / 16階層) - hiro

「・・・・・・・それ以来その人とは会ってないの?」

真中の質問にただ無言にうなずく

「この間の夏休みにね旅行を兼ねて会いに行こうと思ってたんだけど、結局見つけられなくて・・・・・・・・」


「東城は自分のせいだと思ってるけどそれは間違ってるんじゃないかな?」


「・・・・・・よく分かんないけど俺だって同じ立場だったら殴りかかってたかもしれないし・・・・・・まぁ俺の場合は逆にやられてたと思うけどね」

その言葉に綾が少し笑った。


「・・・・・・そうだ!」

綾は机の引き出しから一冊の古びたノートを取り出す。

「DVDのお礼にはならないかもしれないけどこれ良かったら読んでくれないかな?」

綾は真中にノートを手渡す。


6年3組  東城綾  と書かれていた[算数]のノートだった。

「あたしの初めて書いた小説だから下手かもしれないけど良かったら読んでみて」

「これが・・・・・・東城の初めての小説・・・・・・・?」

真中は何故だか感動した。

「ありがとう東城!」

真中はパラパラとページをめくってみた。


「感謝しなくちゃな」

「えっ?」

「・・・・だって俺たちの今があるのもその伊東隼人って人が東城の小説の道へと薦めてくれたお陰だろ?}

「うん・・・・・そうだよね!」

綾の表情が一気に明るくなっていった。

「いつか会ってみたいな、その人に!」

真中は心からそう思った。











ちょうど同じ時刻

北海道のとある牧場


世間ではまだ秋なのだがもうここ北海道には雪がちらつき始めている。

ここはそれほど大きな牧場ではないのだが牛や馬、羊などの家畜がいるうえ、経営しているのが夫婦と高校生の少年だけなので大忙しであった。


馬小屋では小屋の掃除が行われている真っ最中だ。


「ふう……あとはこれだけか…・・」

高校生の少年がなれた手つきで藁を回収していく。

「隼人ー、そこが終わったら牛小屋のほうも頼む」

事実上ここに経営者である叔父に話しかけられた。

「分かったよ叔父さん!・・・・・・・・ったく相変わらず人使い荒いよな」

少年は藁を片手に答えた。

服装はとても汚れていて黒いゴム長靴をはいていると言うお世辞でもカッコイイ格好ではなかったが少年は特に気にする様子もなく次々と作業をこなしていく。


「よいしょ」

馬小屋の掃除が完了した隼人は牛小屋の掃除に取り掛かった。



すると隼人の掃除している牛小屋に一人の男性が現れた。

「久し振り、隼人くん」

「外村さんじゃないですか!お久しぶりです」


隼人は作業を止め挨拶する。


「確か今日は富良野で仕事があったんじゃ…・」

「あぁ、そうだったんだが親戚の子が面白いものを送ってくれたんで隼人くんもどうかなと思って…・・」

「そうですか…・・じゃすぐに掃除終わらせるんで部屋のほうで待ってもらえますか?」


10分後隼人は着替えて外村さんのいる部屋を尋ねた。


「遅くなってすみません。それで何ですか?その面白い物って?」

「きみは私の親戚をしっているだろう?」

「たしか俺と同い年の男の子と1つ下の女の子でしたよね?」

「あぁヒロシと美鈴って言ってね、その二人が高校の映像研究部に入ってるんだ」

「へぇ…・・」


そういうと机にお茶を出し同じようにイスに座る




「その高校の文化祭で上映した映画っていうのがけっこう評判が良いらしくてふたりが見てほしいって送ってきてくれたんだ」

DVDROMを隼人に手渡す。

それは「夏に歌う者」というタイトルだった。


「あいにくこういうのには慣れてなくて再生方法がわからないんだよ・・・・・・」


「分かりました再生させます」

そういうとプレイヤーを起動させた。




40分後




「僕達が再び出会うことはないだろう・・・・・・」

「だからこそ忘れない、君の声、君の瞳、君と見たすべての風景」

「そして君と過ごしたあのまぶしい夏を━━・・・・・・・・・・・」




「くぅー・・・・・感動するなあ隼人!!」

「って叔父さん・・・・・いつからそこにいたんすか・・・・・」


隼人が呆れ顔で泣いている叔父に声をかける。


「隼人くん・・・・・どう思う」

「すごいですよね・・・・・高校生でここまで作れるなんて・・・・・」


ディスクを取り出しながら隼人が言う。

ふとケースを見ると製作者の名前が書かれていた。


「監督兼主役 真中淳平・・・・・助監督 外村美鈴・・・・・・って助監督じゃないですか!!すごいですねぇ・・・・」

「そうだろっ?でもやっぱり脚本が良いと思うんだよね・・・・」

「そうですよね・・・・・・えーっとたしか脚本は・・・・・」


ディスクで脚本者の名前を探してみる」


「とっ・・・・・・東城綾!?」


「あぁすごいだろ?確か小説の賞を受賞したりとすごい娘なんだよね・・・・・」


(東城・・・・・・・)

隼人はケースに書かれた 東城綾の3文字をじっと見つめていた。


(そっか・・・・・あいつも頑張ってんだ・・・・・・)


「・・・・・・・・隼人くん、君には映画監督に知り合いがいるそうじゃないか?」

「えぇまぁ、この前映画のロケがこの牧場であったんですよ・・・・・・そんな経緯で知り合いになって」

「じゃあその人にこの映画を見せてくれないか?そうすればヒロシも美鈴も喜ぶだろうし…・・」


子供のいない外村さんにとってその二人は自分の子供同然に接しているのだ。


「えぇいいですよ、今度また会う約束があったんで・・・・・」

「ありがとう!これで叔父の面子も保てるってワケだ!」


外村は興奮気味に話した。







「・・・・・・・・そろそろ俺も帰ろうかな・・・・・・・・・・・・・・・・」

隼人は誰にも聞かれないような声でつぶやいた。









「はい!東城さんこれお土産〜!」

真中を除く修学旅行から帰ってきたメンバーは翌日東城の病室に集まった。


「みんな疲れてるのに・・・・・・わざわざありがとう」

「いいのよ別に!どっかで風邪引いたバカと違ってね!」

「バカとはなんだよさつき!俺だってなぁ39度も熱だして大変だったんだぞ!!」


真中とさつきが言い争いをはじめる

「綾さん!!僕からのお土産も受け取ってください!!」

天地が大量のお土産を東城のベットの上に散乱させる

「あっありがとう天地くん・・・・・」

さすがに綾も困った様子を見せた。

「ほい真中、オマエ風邪大変だったんだってな・・・・・・これお土産」

小宮山が真中に声をかける

「さっすがぁ!小宮山!!オマエだけだよ俺のこと心配してくれてんのは…・!」

小宮山から渡された小包みをあける

すると中には円盤の形をしたものが何枚を入っていた

「小宮山・・・・・・・これって?」

真中が恐る恐る尋ねる


「あぁ奈良といえば鹿だろ?だからオマエにも奈良気分を味わってもらおうと思って」

「……っていうか鹿せんべいだろうがぁぁぁ!どんな土産だよ鹿のエサを普通土産にするか普通!!」

「けっこう素朴な味がしたぜ…・・奈良って感じで」


悪びれる様子もなく小宮山が言う。

「まぁいいんじゃないの?1度奈良には行ってるんだしさ……・・それに……・まぁ詳しいことはあとで聞いてやるとするか」

外村が笑みを浮かべながら言う。

「それで東城先輩・・・・・・・病気の方は?」

美鈴が会話をさえぎるように尋ねた。

「うん・・・・・・なんとか白血病の細胞がかなり減っているみたいだから今のところは順調だって先生が・・・・・」

「そうですか・・・・・・・それは良かったです」

美鈴が安堵の色を浮かべる

「あれっ・・・真中帰っちゃうの?」

帰り支度をしている真中に北大路さつきが声をかけた

「あぁ悪いな・・・・・・・ちょっと唯の奴と約束が・・・・・・」





真中は病院を出ると自転車にまたがった

「・・・・・・・・ったく唯の奴、いったい何なんだよ家に帰ってこいなんて!」

ブツブツ言いながら家に帰っていく

しかし家の前でまっているのは唯ではなく

「にっ・・・・・・西野!?」

あきらかに私服姿の西野つかさだった。

「そういやこの前から少し気まずくなってるんだった・・・・・・・どうする?」

西野はまだ真中の姿に気付いていなかった

ただ何度も何度も腕時計を見ている姿をみると誰かを待っているのは確実だった

「・・・・・・・やっぱ俺を待ってるんだよな」

路地に身を潜めながら真中がつぶやく

「でも・・・・・いかなきゃな」

意を決して真中は飛び出した

「あっ淳平くん・・・・・?」

西野も真中の姿に気付く

「あれぇ〜どうしたの?」

わざとらしく装う

「ほらっこの前桜海学園も修学旅行だったから・・・・・・・お土産を」

紙袋を真中に手渡す

「淳平くんは?修学旅行どうだった?」

「ごめん・・・・・・俺、熱出していけなかったんだよね・・・・・」

「そう・・・・・・けっこう期待してたのに・・・・・・・・お土産」


「ほっ・・・・本当にゴメン!あれだけ土産楽しみにしといてって調子乗ったこと言ったくせに・・・・・・・」

真中が必死に頭を下げて謝る








「・・・・・・・・・映画行こ」

「えっ・・・・・?」

頭を下げている真中が少しずつ顔を上げる

「今度の日曜日・・・・・・ね?」

「本当に映画なんかでいいの・・・・・?」

「そのかわり全部淳平くんのおごりね!」

「え・・・・・・・俺今こづかい2000円くらいしか・・・・・・」

「それじゃあ決定!楽しみにしてるねっ!!」

真中が何か言おうとしたが西野は帰っていった




「あ〜あ・・・・・・またややこしいことに・・・・・・・・・」

真中はふとみると電柱に身を隠している唯の姿を見つけた

「てっめぇ〜図りやがったな〜!!」

真中が唯を問い詰める

「だっだって・・・・・・・西野さんに頼まれたんだもん!!」

「西野が・・・・・?」

(西野が・・・・・・俺を??)







今度の日曜日

真中は何かが起こりそうな予感がした・・・・・・


[No.184] 2006/09/18(Mon) 11:21:28
BEST OF HERO 第18話 (No.184への返信 / 17階層) - hiro




「今日は西野と映画か・・・・・」









日曜日

真中は重い足を引きずりながら西野との待ち合わせ場所へと向かった


いつもの真中なら喜んで行くのだが病気の東城のことを考えると悪い気がしてきたし、西野とは険悪な関係がすすんでいるため余計に気が重くなっていった。








「・・・・・でもなんで俺を映画に誘ったんだろ?西野はもう俺なんか好きなわけでもないし・・・・・・そりゃ一度はいいムードになった時もあったけど・・・・・」

待ち合わせの映画館に真中は10分前に到着した。




「淳平く〜ん!!」

その二分後に西野が現れた


対照的に西野はとても元気だった。


「・・・・・・でなんの映画にする?見たい映画なんかある?」

「映画に関しては淳平くんの方がプロだからまかせるよ」

「分かった・・・・・・じゃあ・・・・・・・・これにするか!」


それは去年東城と観たソードオブザキングの続編だった。


「うっわ〜この映画観たかったんだよね!さすが淳平くん、良いセンスしてる!!」

「そっそうか?」

(去年東城と観た映画の続編なんて・・・・・口が裂けてもいえないよな・・・・・・)




「淳平くんっ!いこいこ!!」


半ば引きずれれる感じで真中は映画館の中へ入った









しかし

どうも今日の西野はいつもと違う・・・・・・


たまに真中が横目で西野を見ると西野自身は楽しんでいるどころかむしろ思いつめたような顔をしていた。


面白いシーンも・・・・・・悲しいシーンも・・・・・・




西野はただスクリーンを見ているだけだった・・・・・

















「楽しかったね!今日の映画」

喫茶店でジュースを飲みながら西野が言った


しかし真中にはどう見ても西野が楽しんでいたようには思えなかった。




「なぁ・・・・・そろそろ教えてくれないか?」

「えっ!?」

真中が急に真剣な態度で尋ねたので西野は驚いた



「どうして今日俺を映画に誘ったんだ?」

「それは・・・・・淳平くんがお土産買ってきてくれなかったお詫びとして・・・・・でしょ?」

「そうじゃなくて、なんでわざわざ映画にした理由が聞きたいんだ・・・・・・そんなに今日は楽しんでいなかったみたいだし・・・・・」


西野は明るい態度が一変した



「覚えてる・・・・・?はじめてのデートが映画だったこと」

「あぁ忘れるはずがないよ・・・・・・」


まだ二人が付き合っていたころはじめてデートしたのが映画だった

西野が飲み物を一口運ぶ



「こうやって淳平くんと二人きりで遊びに行けるのも今日で最後かな・・・・・・って思って」


「えっ…?それってどういう・・・・・・」


真中が思わずコップから手を離す










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・告白されたんだ




                         ・・・・・・・・・・大草くんに」




「おっ・・・・・大草がぁ!!?」



あまりにも唐突なことに真中は唖然とした。


「うっ嘘だろ?」


真中が尋ねたが西野は何も言わなかった


「いっいつに?」


「この前修学旅行から帰った次の日に・・・・・・・」



お互い顔を直視できずにいた。


重たい空気がこの場を包む



「・・・・・・返事は・・・したの?」


「ううん・・・・・・・・まだしてない」


真中は少し安心した。


「ねぇ……淳平くんはどう思う?……付き合うべきなのかな……?」

西野が真中に尋ねた。


(本当は西野は付き合ってほしくないというのが本音だけど・・・・・・その資格も俺にはないし)


真中は何も言えなかった。




「今日、淳平くんに会ってから決めようと思ってた……・・」


何も喋らない真中に続けて西野が言った。


(今、俺が付き合うなと言ってしまえばそれで終わるかもしれない……・ただ俺はどちらかといえば東城の方に気持ちが傾いているのも事実……・)



「ごめん淳平くん・・・・・・・変なこと聞いたりして」



真中の尋常でない姿を見て西野が言った。




「・・・・・・やっぱりあたし断るよ。確かに大草くんはかっこいいけどー」

「良いやつだよ!大草は・・・・・・」

真中が遂に口を開いた。


「大草はカッコイイし、サッカーだってトップクラスだし、勉強だってできるし・・・・・・・それに大草が自分から告白するってことはよっぽど西野のことが好きなんだよ……」


「淳平……くん」

「似たもの同士のお似合いカップルだと思うぜ・・・・・・西野と大草は・・・・・・」





大嘘だった


出来れば付き合うなと言いたかった


でもこのままだと西野を傷つけて苦しめるだけだと分かっていた。



「少なくとも俺なんかよりは……・」



それ以上真中の口からは言えなかった


「ありがとう淳平くん・・・・・・・参考にするね」


そういうと真中を1人残し西野は帰っていった


真中はただその西野の姿を引きとめることもできずただ見守ることしか出来なかった。











「お疲れさまで〜す!失礼します!!」


サッカーの猛練習を終えた大草はサッカー部の友人達と帰路についた。


「もう8時回ってるよ〜どうする?どっか寄っていく??」

サッカー部の一人が提案する。

「悪い!俺用事があって早く帰んなきゃいけないんだよね・・・・・・」

大草が残念そうに言った。

「そうか残念だな・・・・・まぁまた今度にでもいこうぜ」

「あぁ本当に悪いな、それじゃ!!」


大草は1人横道にそれて行った


大草はどんどん先に進んでいく


そして公園に差し掛かると急に立ち止まった


「・・・・・・・・もうここには誰もいない、そろそろ姿を現したらどうだ?」


誰もいない暗闇に大草が話しかける


「大草・・・・・・・・」


しばらくすると真中淳平が姿を現した


「俺に用があるっていうことは西野から聞いたんだな…・・?」

かまわず真中に大草が話しかける

「あぁ・・・・・・今日映画を観に言った後聞いた」


真中がベンチに座り込む

「俺がさ、真中に会えって薦めたんだ・・・・・・」

大草も同じようにベンチに腰をかける

「で?お前はなんて言ったんだよ・・・・・・・・・まぁ聞かなくてもわかるよ、付き合うなって言ったんだろ??」

大草は笑っていたが真中は無言だった

「・・・・・・・・大草は


ちゃんと良い奴だって言っといたぜ・・・・・・・」


「えっ?」

予想以外の展開に大草が驚く



「俺は大草になら西野のこと任せられる・・・・・・・・大草なら西野を幸せにできると思った。」

「真中・・・・・・・・」

大草はただ真中の顔を見つめていた



「正直俺は東城を大切にしていきたいという気持ちは今も変わらない・・・・・・・でもそれでずっと西野を傷つけてばかりいた…・・」

突然真中が立ち上がる

「悔しいけど今の俺じゃ西野を悲しませることしかできない・・・・・・・でも大草、お前ならきっと西野を幸せに出来る・・・・・・・」

真中は精一杯頭を下げた

「これが・・・・・・・元恋人として俺にできる最後の仕事なんだ・・・・・・・・だから約束してくれ!!」




「・・・・・・・・・頭を上げてくれ、真中」

真中の顔はもう涙でぐちゃぐちゃだった。

「言われなくても分かってる・・・・・・・・だから真中、安心して東城のそばについてやれ」

大草は真中の肩に手を置いた


真中は何故だか涙が止まらなかった


それは西野に対する想いの強さの現われなのであろうか・・・・・・?





ただ・・・・・1つだけ言えることは


真中淳平は西野つかさとの恋に


自分からピリオドを打ったということだった・・・・・・・・
















それからまもなく


西野と大草が付き合ってくるという噂が真中の耳に入るのに

それほどの時間はかからなかった











[No.186] 2006/09/20(Wed) 17:56:35
BEST OF HERO 第19話 (No.186への返信 / 18階層) - hiro

大草と西野の関係を知っているのは極少数である


理由としては大草、西野はあまりにも人気がありすぎるためこの事実が広まると西野はともかく大草の安全が保障されないことがあるからである

「かわいそうに・・・・・・あいつらは公衆で会うこともできないんだな・・・・・」


外村がつぶやく






「・・・・・・・そろそろ元気だしたら?」


部室でうな垂れている真中に美鈴が声をかけた


「まぁあたしから言わせりゃ西野さんはあんたにとって高嶺の花だったんだよ!最初から無理だったんだから・・・・・・」


あの辛口の美鈴が精一杯の気持ちで励まそうとした


「まぁな・・・・・所詮懸垂しながら告った男に比べたらはるかにましだよな」


真中がつぶやいた。


「ねぇ聞いた聞いた??西野さんと大草が付き合ってるんだって〜!!」



今回のことで一番喜んでいる北大路さつきが現れた


「そっか・・・・北大路にとっては願ってもいないチャンスってわけか」


外村がつぶやく


「さぁて、ちょっと大草でもからかってこようかな!」




「ちょっと待てよ!くれぐれも二人のこと他のやつには広めるんじゃねぇぞ!」

「分かってる分かってる!」


上機嫌でさつきは出ていった


「まぁ良かったんじゃないの?これで真中も気兼ね無く東城だけを想ってやれるんだし」


「そう・・・・・だけど……」


「・・・・・・・ったくアンタまだ西野さんに未練があるわけ!!」


浮かない顔をしている真中に美鈴が怒鳴る


「別に、そういうわけじゃないよ」


「まっ、西野と大草が付き合ったこと話してみれば?もしオマエが好かれてるんなら多少は反応するはずだろ?」



「まぁ・・・・かもしんないけど・・・・・」


「今日も東城のところには寄るんだろ?だったら伝えといてやれよ、きっとよろこぶぜ〜東城」










(・・・・・・でもひょっとしたら本当にチャンスなのかも)


この仮定が真中の頭の中に浮かんだが東城の病室に近づくにつれどんどんそれが確信へと変わっていくのを感じた







コンコン



「どうぞ〜」


病室ではちょうど東城が小説をノートに書いているところだった


「3日ぶりだね・・・・・・久しぶり」


「ごっ・・ごめんなーいろいろといそがしくってさー見舞いに行けなかったんだよね」


多少緊張しながら丸イスに座る


(さて……いつ西野の話題を切り出すか……)


「あっ…・このDVD全部見させてもらったよ」


DVDの入った紙袋を手渡す


「どうだった?感想は?」


「本当に良かったよ。おかげで新しい小説のキャラクター思いついちゃった・・・・・」



「そうかぁ!それは良かったよ」


だいぶ空気が和んできた


(よし・・・・・・このタイミングでなら・・・・・)


「あのさ・・・・・・西ー」

「昨日ね・・・・・・西野さんが来てくれたんだ・・・・・・・・」



真中の会話を遮る感じで東城が言った


「にっ西野が!?」

予想外の展開に真中は焦る


「それで・・・・・・なんて?」


真中もつい身を乗り出して尋ねる

「その・・・・・・・西野さんと大草くんが付き合ってること・・・・・・」


東城は少し遠慮しがちに話した。


「ほらっ…真中くんが付き合うように薦めたんでしょ?おかげで西野さん決心がついたって言ってたよ」


「あぁ・・・・・薦めたってほどのものでもないんだけど、くやしいけど大草のほうが西野には似合ってるとおもっちゃってさ・・・・・」


真中がイスに座り直す



「・・・・・・・・・・正直ね、うれしかったんだ」

「へ?」

東城が少し恥らいながら話しだした


「西野さんがついでに教えてくれたんだけど・・・・・・真中くん、あたしの病気が治るのならなんだってしたいって言ってくれたんでしょ・・・・・?」

話しながら東城は顔がすでに真っ赤になっていた




「えーーーっ!!!???」


真中の顔が一瞬にして真っ赤に染まる

(確かにそんなこと言った記憶もあるけど・・・・・・なんでよりによって東城に話しちまうんだよ! 西野のやつ〜〜!!)







「・・・・・・・・嘘でもうれしい」


寂しそうな表彰で東城が唐突に言った


その言葉に動揺していた真中も冷静になった


「あのさ・・・・・・・俺、本気で東城のためならなんでもしたいって思ってるから・・・・・」

真中はそっと東城の手を握る


「俺・・・・・・・東城にすっごく感謝してるんだ。こうやって泉坂にいれるのも映画作ったりできるのも全部東城がいてくれたおかげだと思ってる・・・・」


「だからさ、東城には恩返しがしたいんだよ!俺は確かに医者じゃないから直接病気を治したりすることはできない・・・・・でもなにかの役に立ちたい。少しでも東城の病気を治す力になりたい・・・・・・・そう思ってるんだ」


「真中くん……」


お互い顔を見つめ合う



「東城・・・・・・・・・・・・俺・・・・・・・・・・・・・」



真中は何かを言いかけようとしたが




コンコン


突然のノックの音によりそれが中断された


「東城さ〜ん、お薬の時間ですよ〜」


看護婦が入ってきた


「・・・・・・ごめんね真中くん・・・・・・・これから点滴したりいろいろしなきゃいけないの・・・・・・」


残念そうに東城が言う


「そっか東城・・・・・こちらこそごめんな忙しいときに・・・・・」


それ以上に残念そうに真中が言った





「はぁ〜せっかく良い雰囲気だったのに・・・・・・・」


家までの帰り道真中が1人つぶやいた


[No.187] 2006/09/23(Sat) 09:46:33
BEST OF HERO 第20話 (No.187への返信 / 19階層) - hiro




「・・・・・・・・あたしっていつごろ退院できそうですか?」

検診に来ていた先生に綾が唐突に尋ねた

「・・・・・・今のところはかなり順調に回復してきている。でも最低あと3ヶ月は入院しなきゃいけないだろうね・・・・・」

「3ヶ月・・・・・かぁ」

綾はカレンダーを見た

3ヶ月後はちょうど4月14日であった

「ただそれは子供からお年寄りまで平均的に予測したことであって高校生のきみにはひょっとしたら早く退院できるかもしれませんよ?まぁ通院治療はしてもらわなければいけませんけどね」


「それと今日誕生日なんだってね?おめでとう。ささやかだけど病院からもプレゼントを用意しています」

看護婦さんが花束を手に持って病室に入ってきた

「うわぁ!きれいなお花・・・・・・ありがとうございます!!」

看護婦の手から綾に花束が手渡された

「わざわざありがとうございます!」

綾の母親も礼を言う

「充分に治る可能性はあるんですからこれからもがんばりましょうね」

そういうと医者と看護婦さんは綾の病室を出て行った

「せっかくだからこのお花、飾らせてもらわなきゃ」

花瓶を片手に綾の母親が病室を出て行った


「今日であたしも17歳か・・・・・・・」

1人残された綾はベットに横になる


「・・・・・・・来年も誕生日をむかえられるかな・・・・・・・・」

綾にはまだ多少の不安も残っていた






今日

綾はいろんな人から17回目の誕生日を祝ってもらった


「良かったわね〜綾。いろんな人からプレゼントをもらって」

たくさんのプレゼントを抱えている綾に向かって母親が言う


「えっとこれは外村くんからと美鈴ちゃんからでしょ?これは北大路さんからで、この大きいのは天地くん、それにこのぬいぐるみが唯ちゃんからであと小宮山くん・・・・・・」

届けられたプレゼントを分けていく

「あと西野さんと大草くんからと千里ちゃん・・・・・・・・・・あれ?真中くんのは??」

綾はもう一度もらったプレゼントを数えてみる


しかし真中淳平からのプレゼントは何回探しても見つからなかった

「あたしの誕生日忘れちゃったのかな・・・・・・・真中くん」




その日の夜

「あと30分で誕生日も終わりかぁ・・・・・」

綾はその日なぜか寝付けずにいた


「・・・・・真中くんは今までいろいろ迷惑かけてきたんだもん・・・・・・・その上プレゼントまで期待しちゃうなんて・・・・・・・贅沢だよねあたし」

暗闇の中綾はつぶやいた



コンコン


突然のノックの音が綾の病室の窓から聞こえた


「なに・・・・?気のせいかな・・・・・」

綾は最初そう思っていたが


コンコン

窓のほうからまた聞こえたので綾は気のせいでないと思った


「どっどうしよう・・・・・・」

恐る恐る窓の方に近づいてみた




「・・・・・・・・・・・・・・・東城!あけてくれ!!」

良く見ると真中淳平が窓にしがみついていた。

「まっ真中くん!?ここ2階だよ!!」

そういいながら窓の鍵を開ける


「よいっしょ!あぁ〜疲れたぁ〜」

真中はそういいながら窓から東城の病室から現れた

「どっどうしてこんなところから!?」

「どうしてって・・・・・・夜になると正面玄関開いてないじゃんだから窓からしかないかな〜って思って」

真中はペタリと床に座った

「遅れてゴメンゴメン・・・・・・ほら今日誕生日だろ?」

小奇麗に包装された箱を東城に手渡す

「誕生日・・・・・・覚えててくれたんだ・・・・・・」


「まぁたいしたものじゃないんだけどな・・・・・・」

少し照れながら真中が言う


東城は真中からのプレゼントを手にしながらうつむいてしまった


「東城・・・?どうしたの??」

真中が東城の顔を覗き込む

東城は涙を必死でこらえているところだった


「・・・・・・泣かなくてもいいだろ?」

「だってぇ・・・・・・・今まで迷惑ばっかりかけてきたのに・・・・・・・誕生日プレゼントまでもらっちゃって・・・・・・・」

ついに綾はわぁーっと泣き崩れてしまった

「なんだよそんなこと気にしてたのかよ・・・・・・」

声をあげて泣いている綾に真中が声をかける


「・・・・・・なんで?」

「ん?」

「・・・・・なんでここまで良くしてくれるの?・・・・・・お見舞いだって毎日のように来てくれてるし・・・・・本当に申し訳なくて・・・・・・」

涙声で東城が尋ねる


真中はしばらく何かを考えていたが

ついに口を開いた






「・・・・・・・・・・好きだからに決まってるだろ?」


「えっ・・・・・今なんて?」

あまりにも真中が小声だったため綾は聞き取ることができなかった


「だからぁ!好きだからに決まってるだろ・・・・・・東城綾のことが・・・・・・・」


真中ははじめて東城にたいして自分の気持ちをはっきりさせた


「・・・・・・・俺、東城綾の恋人になりたい・・・・・・・


友達としてではなく東城綾の恋人としてこれから東城を支えて行きたい・・・・・・そう思ってる」




真中は精一杯の気持ちを伝えた




「ありがとう・・・・・・・・あたしも真中くんのことがずっと好きだった・・・・・・・・」


綾も涙声だが自分の気持ちを伝えた

「じゃあこれからは恋人としてー」

「待って!でも恋人にはなれない・・・・・・・」


予想外の展開に真中は驚いた

「・・・・・・・・・どうして?」


真中が綾に尋ねる


「確かに真中くんのことは好きだよ・・・・・・でもあたしは来年誕生日を迎えられないかもしれないんだよ・・・・・・・・」


綾が続けて言う

「もし今恋人になったとしても、あたしが死んだら真中くんをとても悲しませてしまうかもしれない・・・・・・・でも友達という関係なら・・・・・」

「友達という関係だったら俺がそんなに悲しまない・・・・・・ってか?」

真中が綾の言葉を遮った

「そんな弱気でどうするんだよ東城・・・・・・」


「東城の病気はかならず治るに決まってる!でも東城自身がそんな気持ちでいるのなら治る病気も治るわけがないぜ?」


「・・・・・・・・・・・・・」


綾はただ無言でうつむいていた


「俺じゃだめかな?やっぱり東城の恋人になんかふさわしくないのかな・・・・・・」


「そんなことないっ!・・・・・・・・・でも・・・・・・・」





「なぁ東城・・・・・信じてみないか?一度でもいいから必ず治るって」



「・・・・・・・・でも」


綾は躊躇していたが・・・・・



「・・・・・・・分かった、信じてみる」


半ば強引な形だが何はともあれ東城は決心した。



「よし・・・・・これで問題は解決・・・・・・だな」


満足そうに真中が言った




「・・・・・・改めて聞きます。


東城綾さん・・・・・・・俺と付き合ってくれませんか・・・・・?」









「・・・・・・・・・・・はい。

こちらこそよろしくお願いします・・・・・・・」







「や・・・・・・・ヤッター!!」


真中はおもわず大声で叫んでしまった。



「真中くんっ!!ここ病院でしかも夜中なんだよっ!!」

綾がすかさず注意したが子供のように喜んでいる真中の姿をみると自然に笑いがでてきた。


(ありがとう・・・・・・どんなプレゼントよりも1番嬉しかったよ・・・・・)



時刻はすでに12時を過ぎていて日付も変わっている


1月15日


今日は記念すべき東城綾と真中淳平の交際記念日となった・・・・・・










時刻は同じくして北海道某所



北川映画事務所では二人の人間が部屋でただ無言でテレビをみていた


「信じらないな・・・・・・・・隼人、本当にこの作品を高校生が?」


「確か泉坂高校の映像研究部の人たちが作ったみたいですよ?」

ケースを見ながら隼人が答えた

「高校生か・・・・・・・・・会ってみたいな特に監督の子には・・・・・」

「じゃあ外村さんに頼んでみましょうか?映画監督に認められたと言えばよろこんでくるでしょ?」

「あぁ頼む。移動費はこちらが持つって伝えといてくれ」

「おっ?えらく太っ腹ですね?よっぽど気に入ったんですか?」

「まぁな・・・・・・それより隼人、この前の話考えてくれたか?」

「今度の映画に出演するって話ですか?」

隼人はだまってDVDをケースにしまいながら尋ねた

「おまえの演技力ならぜったいー」

「やっぱお断りします。俺はもともと俳優志望じゃないし・・・・・・この前の映画には出ましたけどあれはウチの牧場が撮影に使われたって縁なだけですから・・・・」


「そうか・・・・・・」

「まぁ外村さんには明日にでも連絡しておきます。それじゃ」

隼人は夜道を1人歩いていった


[No.188] 2006/09/23(Sat) 17:33:38
BEST OF HERO 第21話 (No.188への返信 / 20階層) - hiro

真中淳平と東城綾は極秘に付き合いだした。


そしてその事実を知っているのは外村兄妹だけである




「良かったですね!東城先輩」

美鈴が自分のことのように喜ぶ


「なぁ真中・・・・・・・このことは俺ら以外には話さないほうがいいと思うぜ?とくに北大路と天地には・・・・・・・」

「あぁ分かってる・・・・・・・けどいずれはばれると思ってるけど」


「まぁそのときはそのときだ!」

外村が笑いながら言った

何だかんだ言って外村本人もうれしそうだった




「あと真中には話すことがあるんだ・・・・・・」

外村兄妹が改まった感じで言った



「北川監督って知ってます?ほらっ映画監督の」


「あぁ確か北海道を拠点にして映画を撮っている監督だろ?多少はあの人の作品を観たことあるけど・・・・・・・・」

真中は必死に記憶の糸を探り寄せる


「実は北海道の親戚がその監督と知り合いで、なんでも去年の文化祭の俺達の映画みてくれたそうなんだ」

「きっ北川監督が俺達の映画を!?」

真中と東城は驚いて身を乗り出した


「あぁ・・・・・・・それでその人は監督の真中と脚本の東城に会いたいって言ってるんだけど・・・・・・・」

少し外村が言いにくそうに言った


「それって北海道に行く・・・・・・ってことか?」

「まぁそう言うことになるかな・・・・・・・2週間後の連休に」




「北海道……・・」

綾は1人でつぶやいた




「おっ俺は大丈夫なんだけど・・・・・・・・東城は・・・・・・・」

チラリと真中は東城の顔をみつめる


「・・・・・・・・ごめんね、あたしは行けそうにないや・・・・・・・」

残念そうに東城が言った




「・・・・・・・・じゃあ俺もやめとくよ。」

真中が外村に言った

「真中くんは行って!!こんなチャンス滅多にないことだし」

「でもっ・・・・・・東城1人にするわけには……・」


「あたしは大丈夫だよ!だから真中くん北海道に行って映画の勉強してきてよ。今年の文化祭の為にも…・・」


真剣なまなざしで東城は真中をみつめた

「わっ分かったよ、そこまで言うのなら・・・・・・」






「お〜いお二人さん、話しはもうよろしいですかい?」


二人のやりとりを遠まわしに見ていた外村が言った。


「じゃ行くのは真中1人って叔父さんに伝えとく。まぁくわしいことが決まったらまた教えるから」

「分かったありがとな・・・・・・・・・・それにしても本物の映画監督かぁ楽しみだなぁ!」

真中は興奮しながら言った


「良かったね。でも会いたいって言ってくれるほどなんだからきっと私達の映画を良い評価してくれてるんだよ・・・・・・・」

東城もうれしそうに話した



「楽しみだなぁ2週間後が…・・早く来ないかなぁ!!」


2週間後のことを思い浮かべながら真中は言った






ただこのとき

真中と東城の関係を揺るがす人物と出会うことになるとは

真中は夢にも思っていなかった





「そうですか。来ることになったんですか・・・・・・・・」

「あぁヒロシと美鈴、それと監督の真中くんが2週間後の連休に来るそうだ」

「計3人ですね?分かりました監督に伝えておきます」


受話器越しに隼人が答えた


「それと隼人くん・・・・・・・ひとつお願いがあるんだが・・・・・・・」

「なんですか?お願いって?」

「恥ずかしながら私は北川監督と面識がないんで・・・・・・・・隼人くん、君にも当日はいっしょにきてほしいんだ」

「あっ、そうですよね!そういえばまだ外村さんは監督と会ったことないんでしたっけ??」


「そうなんだ・・・・・・・だから当日はなんとか頼むよ」


「分かりました。では後日飛行機が到着する時間を教えてください。それに会わせて千歳に僕も行きますよ」

「あぁありがとう隼人くん・・・・・・・重ね重ねで悪いね」

「何言ってるんですかぁ!今までいろいろお世話になっているんですから、これくらいのことくらい協力しますよ!」

「そう言ってもらえるとうれしいよ。じゃまた詳しいことは連絡するから」

「分かりました・・・・・・はいそれじゃ」


隼人は静かに受話器をおいた。




(東城・・・・・・・・ささやかだけど俺もちっとは協力できた・・・・・・・かな?)









「東城・・・・・・・明日行って来るな」





北海道に行く前日

真中は東城の病室に寄った


「気をつけてね。北海道ってけっこう寒いよ?」

「あぁそれなら大丈夫!!カイロいっぱい持っていくから」


どこからか真中はたくさんのカイロを取り出した

「アハハハハ」

その光景を見ておもわず東城が笑い出す




「・・・・・・・・それと一つだけワガママ聞いてもらってもいいかな?」

「なに?ワガママって?」




「この前渡したあたしが始めて書いた小説・・・・・・あれもいっしょに持っていってほしいの・・・・・・」

「小説ってあの東城の小学校のやつ・・・・・・だよな?」

真中の問いに綾が無言にうなずく

「分かった・・・・・・ひょっとしたら出会えるかもしれないし・・・・・・・一応持っていくよ・・・・・」

事情を察して真中が答えた


「それじゃあ明日もはやいから、そろそろ帰るな・・・・・」

「うんありがとう真中くん・・・・・気をつけてね」

「あぁ東城!お土産楽しみにしといてくれよな!!」

真中は足早に帰っていった






「・・・・・・・無事に帰ってきてね・・・・・」

窓から真中の姿を眺めながら綾が言った・・・・・














午前7時50分


約束の時間から20分送れて真中淳平は成田にやってきた

「おっそ〜い!こんな大事な日に限ってまた遅刻かよ!!」

美鈴が真中に罵声を浴びせる

「まぁ飛行機は8時50分発だからな・・・・・・・・まだ余裕はあるんだけどね」

対照的に外村が冷静に言う


「ところで外村・・・・・・・このカメラは?」

外村の首から下げているデジカメを指差しながら真中が言う

「あぁこれね?いや〜北海道にはまだ出会ったことのない美女が」

「何言ってんのよ、バカ兄貴!!とにかく二人とも荷物預けに行くわよ!!」

美鈴が先々進んでいった




その後真中は手荷物検査に引っかかったり、迷ったりしながらも外村一行は一時間後千歳行きの飛行機に乗ることが出来た。







ゴォォォォォ




「すげー!見ろよ本当に空に飛んでるぜ!!俺たちの家も見えるんじゃねぇの!?」


飛行機に初めて乗る真中は興奮気味に話した

「はぁ〜・・・・・・こんなんじゃ先が思いやられる・・・・・・」

美鈴は1人頭を抱えながら言った


(でも・・・・・・東城先輩のためにも私がしっかりしないと!!)


そうこうしている間にも飛行機は千歳に向けて着々と上昇していった














「そろそろ北海道についたかなぁ?」



綾が時計を見ながらつぶやく


「もうそろそろなんじゃないですか?」


伊東千里も花の水を変えながら言う



「・・・・・・それにしても奇遇ですね・・・・・・・真中さんたちが兄のいる北海道に行くなんて・・・・・・・」

「うん・・・・・・一応真中くんに小説のノートもって行くように頼んだんだけど・・・・・・・」


「まぁ渡すのは無理だと思いますよ?・・・・・・なんでも兄は釧路の牧場に住んでいるらしいんですから・・・・・・・」

「えっ?お兄さんから連絡が会ったの?」

「いえ、直接兄とは話してないんですけど・・・・・・親戚の叔父さんが教えてくれたんです・・・・・・」

「そう・・・・・・」


綾は少しがっかりした


「・・・・・・でも兄のことを心配するより真中さんのこと心配したらどうなんですかぁ?」

意地悪そうな笑顔で千里が言う


「聞きましたよ東城さん・・・・・・・真中さんと付き合ってるんですよねっ??」

「えっ・・・・・それってどこで!?」


「昨日美鈴ちゃんから教えてもらいましたぁ!!」




「もぉ〜美鈴ちゃんもおしゃべりなんだから・・・・・・・」


そういったものの悪い気はしなかった




「・・・・・・・それより本当にどうしちゃったんだろ・・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・」




千里が今も北海道のどこかで生きているはずの兄の姿を思い浮かべながら言った













「あぁ〜着いた着いた・・・・・・・・すげぇみろよこの雪!!」


外の景色を見ながら真中が言った


「おい真中、これから叔父さんと待ち合わせしてるから・・・・・・行くぞ!!」

外村が真中に声をかける




一行は少し歩いて待ち合わせ場所に言った




「あれ・・・・・?来てないな叔父さん・・・・・・・」

外村が周りを見渡すがそれらしき人間はいない


「なぁ外村・・・・・俺少しトイレに行って来てもいいかな?」

「あぁ・・・・・・でも場所わかるのか??」

「まぁなんとか探しながら行くから、荷物だけお願いな!」

そういうと真中は走っていった










「さぁてとそろそろ行くかな」

手を洗い終えた真中がそう言ったが


「あれ・・・・・・どっちだったっけ・・・・・?」


トイレに行くことだけ夢中で走ってきたため帰り道を忘れてしまった


「どっどうしよう・・・・・・下手に動くと余計に迷うだけだし・・・・・・・」

必死で辺りを見渡す

「しょうがない・・・・・だれかに聞くか・・・・・・」

真中は誰に聞こうかと人を探した


するとちょうど真中の立っている隣の公衆電話に向かってくる一人の少年の姿を見つけた

「すみませ〜ん・・・・・・ちょっとここへの行き方を教えてほしいんですけど・・・・・・」

ポケットに手を入れて歩いていた少年は足を止めた


「あぁいいよ・・・・・・ここへはこういってこうで・・・・・・・」


少年は手際よく真中に説明した


「ありがとうございます・・・・・・助かりました!」

真中はその少年の顔をよく見てみた

たぶん同い年・・・・・・もしくはその1つ上くらいかな・・・・・・と思った


「・・・・・・いけね!道忘れないうちに行くか!!」

真中は電話をかけている少年に背を向け走り出した




「ごめんごめん!ちょっと道迷っちゃて・・・・・・」

真中が外村の姿を見つけて走ってきた


「・・・・・・・・この人が監督の真中くんかい?」

すでに外村叔父はもう待ち合わせ場所に来ていた

「始めまして・・・・・・・真中淳平です!今日はご招待していただいてありがとうございます!!」

礼儀正しく真中が頭を下げる

「始めまして・・・・・・・ヒロシと美鈴の叔父です。よろしく!」

外村叔父もあいさつする

「それにしても叔父さん・・・・・よく北川監督とお知り合いでしたね?」

美鈴が叔父に尋ねる

「いや・・・・・・実は私は北川監督とは面識がないんだよ・・・・・・」

「えっ?それじゃあどうやって・・・・・?」

「うん・・・・・・実は私の知り合いで君たちと同年代の子が今回の仲立ちをしてくれたんだ・・・・・・」


すると外村叔父の後ろからさっき真中に道を教えた少年が姿を現した

「すみません・・・・・・ちょっとヤボ用ができて電話をかけていたんです・・・・・」

ポケットに手を突っ込んでいる少年が外村おじに言った

「あれ・・・・・あなたはさっきの・・・・・?」

真中が少年を見ながら言う

「えっ?知ってるのか真中・・・・・?」

「まぁちょっとな・・・・・・」

外村の問いに真中が答える


「じゃあ自己紹介でもしてくれないか・・・・・?」

外村叔父が少年に言う


「どうも・・・・・・俺が外村さんの知り合いの伊東隼人です・・・・」



真・外・美   (えーっ!!?)


真中と外村兄妹はその名前を聞いて戸惑いを隠せなかった




この瞬間

真中にとって忘れることの出来ない伊東隼人との始めての出会いとなる・・・・・


[No.189] 2006/09/24(Sun) 17:53:48
BEST OF HERO 第22話 (No.189への返信 / 21階層) - hiro



美鈴 (この人が・・・・・・・・)


外村 (とっ東城の言っていた・・・・・・・・・・・)


真中 (あの伊東隼人・・・・・…?)



三人は凍りつきながら伊東隼人と称した少年を見つめた


背がスラッと高く、美少年・・・・・・・とまではいかないがそれでも充分カッコイイ人物だと真中は思った


「ん・・・・・・?どうかした?」

その3人の光景を見た隼人は尋ねた


「いえ・・・・・・なんでもありません」


「そっか・・・・・・じゃそろそろ行きましょうか?」

隼人が外村叔父に提案する






北川映画事務所までは車で2時間とそこそこ遠い場所にあった


外村叔父の運転する車の助手席に隼人が、後部座席に美鈴、真中、外村という順番で座った




「・・・・・・なぁ?なんか俺らの思ってたイメージとは違う人だな・・・・?」

真中が小声で隣の外村に話しかける


「まぁ暴力沙汰起こした人間には見えねーけど?」

外村も伊東隼人という人物を観察する


「まぁ真中先輩よりかはかっこいいことだけは確かですけどね・・・・」

美鈴も以外そうに言った




「あっ・・・・そこ左で・・・・・」

隼人が外村叔父に道を教える




(この人が・・・・・・5年前自らが転校してでも東城を守った人・・・・・・?)

そう考えながら隼人の後姿を呆然と見ていた






「・・・・・・・あと20分もしたら着くんでそのつもりで」


隼人が後部座席の三人に声をかける


「あと君が監督の真中くん・・・・・・か?」

「はい・・・・・そうですけど・・・・・」


「確か今日は撮影も兼ねているからゆっくり見学していけばいい・・・・・・・ちなみに俺も君たちの映画見せてもらったけどなかなかの物だったと思うぜ?」



「はぁ・・・・・・ありがとうございます・・・・・・」


笑顔で隼人が真中に言ったが真中本人は本物の映画監督に会うという緊張感で余裕をなくしていた






雪がつもる北海道を真中達を乗せた車がどんどん進んで行く


そして約20分後

少し大きな建物へと到着した

入り口には

     [北川映画事務所]

と書かれていた


「それじゃあ行くからついてきてほしい」

隼人に続いて4人は建物の中に入っていった




「よぉ隼人くん!この人たちが今日のお客さんかい?」


隼人の案内で北川映画事務所に入った瞬間一人の男の人が声をかけた


「そうです・・・・・・・あと今監督は?」

「あぁ確か部屋にいるんじゃないかな?」

男が隼人に答える


「えっとこの人がディレクターさん・・・・・」

隼人が3人に紹介する


「はじめまして!今日はご迷惑おかけします」

美鈴が代表して挨拶した



「はい、よろしく。今日は楽しんでいってください」

笑顔でディレクターが言った


「それより隼人くん・・・・・今度の映画にはやっぱ出演しないのかい?」

「ええ。やっぱオレには向いてないんですよ、役者なんて・・・・・」






「・・・・・ねぇ。出演ってどういうことですか?」

美鈴が小声で叔父に尋ねる


「あぁ、実は隼人くんは前の北川監督の映画にも出演しているんだ・・・・・・・まぁ出番の少ない役といえばそうなんだが」


「それってすごいことじゃないんですか?」

真中が驚く

「確か映画の撮影に隼人くんの牧場を撮影場所として提供したんだ。そんな縁で隼人くんも出演することになってね・・・・・・・」




「・・・・・・・それじゃあ監督のところに案内するからついてきて」

隼人のあとに従い3人は北川監督のいる部屋へ案内される


「緊張するなぁ……」


真中が二人に声をかける

「くれぐれも失礼のないようにお願いしますよ!」

美鈴が小声で促す




「監督・・・・・・・みなさんをお連れしました」

「あぁ入ってくれ・・・・・・」


部屋の中からは男の人の声が聞こえた

「失礼します・・・・・・」

一行は部屋の中に入った


部屋では1人の男の人がソファーに座っていた


「はじめまして映研部のみなさん・・・・・・・私が映画監督の北川です」


北川監督がそういいながら立ち上がる


「きっ今日は・・・ご招待していただいて・・ありがとうございます・・・・・監督のまっ真中です!」

真中が緊張気味に挨拶する


「・・・・・助監督の外村美鈴です」

「外村ヒロシです・・・・・」

3人がそれぞれ挨拶していく


「今日はわざわざこんな北海道のところまでご苦労だったね・・・・・・・まぁ座ってください」

北川監督が3人に座るように促した

恐る恐るだが3人はソファーに腰をかける






「・・・・・・・じゃ俺は帰りますわ」

3人が座るのを見届けた隼人は監督にそう告げる

「おぉ隼人!今日はご苦労だったな。・・・・・・・ゆっくりしていかないのか?」


「あいにく牛や馬の世話で精一杯なんですよ・・・・・・・」

隼人がめんどくさそうな顔で言った

「それじゃ!」

隼人はバタンとドアを閉め部屋から出て行った




「さて・・・・・・確か君たちは泉坂高校の映研部・・・・・・だよね?」

「はい、そうです!」

「・・・・・・・・ということは角倉の後輩か」


「えっ?ご存知なんですか?」

美鈴が尋ねた


「ご存知も何も・・・・・アイツをこの世界に誘ったのは私だからな・・・・・」

「誘ったといいますと・・・・?」

「ほんの数年まえまで角倉は北川映画事務所にいたんだ・・・・・・・ところがこの前独立してね・・・・・・・今や私より大物の映画監督だよ・・・・・」

寂しそうな表情で北川監督が言う


「まぁこの世界で若手がどんどん活躍していくことは嬉しい限りなんだけどね・・・・・・」



「そんなことないですよ!俺、北川監督映画すごっくいいと思ってますよ!」

真中がつい大声で言ってしまった

「ハハッ・・・ありがとう・・・・・・そうそう君たちが文化祭で上映しコンクールにも出典した[夏に歌う者]・・・・・・だっけ?隼人から見せてもらったよ・・・・・・」


「そっそれで・・・・・・・・どう思いますか・・・・・・?」

真中が恐る恐る尋ねる


「私個人の意見ではとても良かったと思っている。文化祭で発表するには充分な作品でしょう・…ただ1人の映画監督として言わせてもらえば・・・…まだまだ未熟な点が多いと思うね…・・」


北川監督が3人を見渡す


「脚本はとても良いんだが・・・・・・やっぱり役者の演技に問題があるだろうね・・・・」

美鈴は静かに監督の話しをメモしている。

「確か主役は真中くん・・・・…君だったね?」

「はい・・・・…そうです」

「例えば、あのシーンでは……」

北川監督は真中に気付いたシーンを一つ一つ丁寧に説明した





「まぁ・・・・…こんな感じかな?高校生にここまで求めるのは少し酷かもしれないけど・・・・…だいぶ違ってくると思うよ…・」


「すみません!わざわざ教えていただいて……」


「まぁ今日は撮影もあるから君達も見学していけばいい。本物の役者の動きも見ていたら参考になると思うよ…・・」


「はいっ!ありがとうございました!!」

3人はそれぞれ礼を言った











真中にとって北海道で過ごした期間はとても充実したものだった


セットや本物の映画の撮影風景・・・・・・すべてが真中にとって新鮮だった

そして時間は飛ぶように過ぎていった・・・・・・




そして二日目の夜

明日の昼、真中たちは飛行機で泉坂に帰ることになっている


「いやぁ良い人だよな。北川監督って・・・・・・・」

二日間みっちり本物の映画の世界を体験した真中は大満足だった


「やっぱりプロは違いますよね・・・・・・・私達でも気付かなかったことを指摘してくれたんだから」

美鈴も同意する


「まぁ感動はおいといて、真中はやるべきことがあるんじゃないのか?」

外村が真中に問い掛ける





「・・・・・・・・もう一度伊東隼人に会うべきじゃないのか?」

無言の真中に外村が話しつづけた

「あぁ・・・・・・・・東城とも約束してるし、このノートを渡してほしいって・・・・…」

真中が東城から預かったノートをとりだす


「・・・・・・・伝えなきゃいけないんだ。東城の病気のことも、東城がどれだけ心配していることも・・・・・・」





「・・・・・・・その割にはあんまり乗り気ではなさそうだな?」





「なぁ、オマエ本当は東城のこと伊東隼人に伝えたくないんだろ?もし伊東隼人が東城の病気のこと知ったらそれこそ泉坂に帰ってくる・・・・・・それが嫌なんだろ?」


外村の問いに真中は表情を曇らせる


「真中・・・・・・・・・そりゃ確かにオマエと伊東隼人とどっちがかっこいいかと聞かれたらオレは伊東隼人を選ぶぜ。普通自分を犠牲にしてまで誰かを守るなんてそうそうできるもんじゃない・・・・・・現にオマエならそこまで出来ないだろう?」


「ちょっとお兄ちゃん!真中先輩の気持ちも考えてやんなよ!!」


美鈴が怒鳴ったが外村は妹の言葉を無視し話しを続ける


「ただな、東城綾は自分にとっての恩人の伊東隼人よりも同じ夢を語れる同志・・・・・・・・・つまり真中淳平を選んだんだ!そして現にオマエは東城綾の恋人としてここに来ている。だからオマエは東城綾の恋人として胸を張らなきゃいけないんじゃないのか?」



真中は何も言わずにただ話しを聞いていた


「仮に今、東城の元に伊東隼人が帰ってきたとしても本当に東城がオマエを裏切るなんて思ってるのか?少なくともオレは東城が真中をのことを想っている気持ちはそんな半端なものじゃないと信じている・・・・・・・」




真中はここまで真剣な外村の姿を見たことがなかった




「だからオマエも信じてやんなきゃいけないんじゃねえのか?東城のこと・・・・・・・・・・・まぁそこまで信用できないんならいっそのこと別れた方がいいかもしんないな・・・・・・」








「・・・・・・・・すまなかった外村。やっぱオレが間違ってた・・・・・・・」

真中が遂に口を開いた


「オレ・・・本当は怖かったんだ。ひょっとしたら東城が伊東隼人に奪われちまうかもしれないって」




「でも今は違う・・・・・・・胸張って東城のところへ帰ってやってほしい。そう言える」


笑顔で真中が言った




「・・・・・・・分かった。叔父さんからにはオレから伝えとく。だから、胸張っていって来い!」


外村も笑顔で真中に声をかけた










その日の朝一番

真中を乗せた車は隼人のいる牧場へと向かっていた


「真中くん・・・・・・飛行機の時間もあるからそんなに長居はできないよ・・・・・」

車の中で外村さんが確認する

「いいんです・・・・・・少しの時間でいいので・・・・・」

牧場につくと隼人はちょうど馬の手入れをしている最中だった


「あれ?今日帰るんじゃなかったっけ?」


「ちょっと話したいことがあって・・・・・・」

「分かった・・・・・・じゃ少し待っててくれよ。すぐ終わらせるから」

隼人は真中に部屋で待つように伝えた




「・・・・・・・・お待たせ。どうだった北川映画事務所は?なかなか勉強になっただろう?」

10分後隼人は二人分のコーヒーを手にやってきた。


「えぇまぁ。けっこう勉強にはなったよ・・・・・・」

真中は隼人から渡されたコーヒーを一杯口に運ぶ


「それで・・・・・わざわざなんの用だい?」

真中の向かい側に隼人が座る


「・・・・・・・・・覚えてますか?東城綾のこと・・・・・・・?」

意を決して真中が話しかけた


「あぁ確か今回の映画の脚本やってるんだろ?ケースにそう書いてあったぜ?」

隼人があまり表情を変えずに答えた


「まぁ小学校のときいっしょだったんだけどいろいろゴタゴタがあってね・・・・・・・もう5年は会ってないな・・・・・」

隼人が懐かしみながら答えた


「確か東城に小説を勧めたんだよな・・・・・・?」

「あれ、そうだったっけ?・・・・・・・・あぁそう言えばそんなこともあったかな?まぁ大したことでもないんだけど」


隼人が記憶の糸を手繰り寄せる


「・・・・・・・・・聞いちゃったんだ。その・・・君ががここに来なければならなかった理由も・・・・・・」

気を悪くさせるのを覚悟で真中は尋ねたが

「えっマジで!?うっわーアイツそんなことまで言いふらしてやがるのかっ!!」

隼人は以外と気にしていない様子で答えた


「あとこれを渡してほしいって、東城が・・・・・・」

小説のノートを隼人に手渡す

「・・・・・・・懐かしいな。これ小説のノートだ!あいつ完成させてくてたのか・・・・・・・」


パラパラとノートをめくる



「1つ聞いていいか?」

唐突に真中に尋ねた


「・・・・・・・・ひょっとしてオマエと東城付き合ってんの・・・・・・?」



隼人の問いに真中は答えるかどうか迷ったが・・・・・・



「あぁ・・・・・・一応付き合ってる・・・・・」

隼人の顔を伺う感じで真中が恐る恐る答える

だが隼人の顔は笑っていた


「そうか!そうか!あの東城がねぇ・・・・・・」

隼人がコーヒーを飲み干す


「いや〜てっきり東城今も暗い調子で友達なんかいないんじゃないかと心配してたんだけど安心したぜ。彼氏もいるんだったら相当良い生活送ってんだろうな……」

隼人はまるで自分のことのように喜んでいる


その姿を見て真中は少し安心した




「そろそろ帰ってもいいんじゃないかなぁ?東城も喜ぶだろうし・・・・・・」


その問いに隼人の表情が曇る




「・・・・・・・悪いけどそいつは無理だ」


「どうしてだよ??東城だって妹の千里ちゃんだってアンタに会いたがってるのに!」

予想外の隼人の対応に真中がつい熱くなる


「・・・・・・・俺はまだケジメがついたとは思ってない・・・・せめて高校卒業するくらいまでは帰らないって決めているんだ・・・・・・・」


「でも・・・・・・もう5年も経つんだろ?確かにアンタがやったことは決して良かったことではないと思う。けどもう充分だろ?」


「・・・・・・まぁそれもあるけど実はいうとここでの生活もけっこう気に入ってるんだよ・・・・・・・まぁ東城にはもうオマエみたいな恋人だっているんだし俺が帰る必要もないだろ・・・・・・」


「でもっ・・・・・・・」


真中はここで東城の病気について隼人に伝えようとしたが・・・・・


「隼人くん!!そろそろ行かないと飛行機に間に合わないんだ・・・・・雪の影響で渋滞してるらしいから・・・・・・」

外村さんが突然二人のいる部屋に入ってきた


「・・・・・・・だそうだ。行けよ真中・・・・・・・」

「でもっ・・・・・・・」

真中はどうしようもなく突っ立っていたが


「真中くんっ!!急がないと!!」

「・・・・・・・はいっ!分かりました!!」


ついに真中は何も言えずに車へと乗り込んだ


真中は助手席の窓をあける


「・・・・・・・・東城や妹によろしくな・・・・・・」

隼人が真中へと近づいていく

「・・・・・・・オマエとはもう少し前に会いたかったぜ・・・・・・できれば小学校のころにな・・・・・・」


その瞬間真中を乗せた車は発車した




(・・・・・・・やっぱ俺って・・・・・最低だよな・・・・・・)


手を振っている隼人をサイドミラーで見ながら真中は後悔した・・


[No.191] 2006/09/27(Wed) 19:54:47
BEST OF HERO 第23話 (No.191への返信 / 22階層) - hiro

その日の夕方


真中達は泉坂へと帰ったきた



「そうだったの・・・・・伊東君元気にしてるんだ・・・・・・」

真中はすべてを東城に伝えた

「ごめんな。一応ノートを渡したんだけど・・・・・・・東城の病気のこと伝えることできなかった」

真中はそのことばかりをずっと気にしていた

「いいの。教えても心配かけるだけだし・・・・・・そっちのほうが良かったよ」




(どこかで彼が生きていてあたしの小説を読んでくれてる・・・・・・・それだけでいい)
















真中は1人家へと帰っていた


「あれはひょっとして・・・・・・・・淳平く〜ん!!」


西野に呼びとめられるまで真中は呆然としていた

「やぁ西野・・・・・久し振り!」

いつもの真中なら緊張するのだが真中は落ち着いて対応した




「その様子を見ると東城さんの病院からの帰り・・・・・・かな?」

「うん・・・・・まあね・・・・・・・あっそうだ!西野、これお土産!」


北海道土産を西野に手渡した





「淳平くん!北海道に行って来たの!?」

「まぁちょっとね・・・・・・」


北海道に行ったいきさつを西野に説明する












「へぇ、すごいんだね映研も・・・・・・・プロの人に招待されたなんて」

西野が感心する

「西野の演技もうまかったって褒めてくれてたぜ!」






「それと・・・・・・・大草とはうまくいってんの?」


「うっうん・・・・・・・うん。まぁね」

一瞬西野の表情が変わったが真中は気付かなかった







「一応・・・・・・オレも東城と付き合ってるんだよね・・・・・」

少し照れくさそうに真中が言う









(・・・・・・・・えっ?)

その言葉に西野は唖然としてしまった






「・・・・・・あれ?どうかした西野?」

西野の異変に気付き真中が尋ねる


「ううん何でも無い・・・・・・・そっそれより良かったじゃん!おめでとう!!」

西野は笑顔を装ったが明らかにぎこちない笑顔だった






「・・・・・・・ごめん淳平くん!私、用事あるから」


「あぁ分かった。あとみんなには内緒にしておいてくれよな!特にさつきと天地には」


「分かってる分かってる・・・・あとお土産ありがとう!!」

西野は走って帰っていった









(・・・・・・・本当は別れたなんて・・・・・やっぱ言えないよね・・・・・・)




走りながら西野はそうつぶやいた















トルルルルルル・・・・・・・トルルルルルル・・・・・・


その日の午後九時

東城家の電話のベルがなった




「うーっす!東城ですが・・・・・・」

正太郎が受話器に出る





「・・・・・・・・東城綾は居るか?」

男の声が単刀直入に尋ねた



「あん?だれだよあんた?」



「・・・・・・・・・・・・・・」




正太郎が尋ねたが電話の相手はただ無言だった




「分かった!おまえさてはストーカー野郎か!ちっくしょーかかってこいよオラァ!」

正太郎が怒鳴る


「・・・・・・・・・五年ぶりの再会なのにストーカー扱いかぁ・・・悲しい世の中になったもんだな」


「ごっ五年ぶりって・・・・・・」

5年前といえば正太郎は11歳で・・・・・




「ひょっとして・・・・隼人さん・・・・?」


「あったりー!そうだよ隼人だよ、隼人!」


「おっお久しぶりですっ!元気にしてましたか!!」

態度を一変させ正太郎が言った


「あぁなんとかな・・・・・・ていうかオマエ、毎回あんな電話の出方してんのか?」

「いや〜すみません・・・・ちょっとむしゃくしゃしてたもので・・・・・」


実は毎回同じなのだが正太郎は嘘をついた

「まぁいい・・・・・・それより姉貴いるか?ちょっと代わってほしいんだけど?」



「すみません・・・・・・実はねェちゃんは入院してて・・・・・・・・」


正太郎は隼人に白血病のことをすべて話した











「とっ東城が……白血病だと!!」

隼人は正太郎の言葉が信じられなかった


「はい・・・・・・・幸い真中のやつのおかげで発見が早かったからまだマシなんですけどね・・・・・」






「それで?東城本人は大丈夫なのか!!」


「はい。順調に回復してるみたいなんで・・・・・・3月の終わりごろには退院できるそうです」


「そっかぁ・・・・・・そいつは良かった・・・・・」

隼人もほっと胸を撫で下ろす







「・・・・・・・・・隼人さん。帰ってきてくださいよ。姉ちゃんも口には出さないけど心配してるんすよ・・・・・・」


「あぁ分かってる・・・・・・・でもオレの居る牧場は人手が足りなくてな。オレが今抜けるわけにはいかねぇんだ・・・・・・」


「そんなぁ頼みますよぉ!姉ちゃんが真中のやつと付き合ってるみたいだし・・・・・・・俺は絶対反対なのに・・・・・・」


「そのことなら知ってるぜ。真中のやつに昨日会ったからな。」


「えっ会ったんですか!?」


「あぁ。確かにかっこわるくてどんくさそうな奴だけど・・・・・・・・直接話してみてアイツは良い奴だと思ったぜ」


「確かに・・・・・・姉ちゃんのこと一番心配してくれてんのは分かってるんですけど・・・・・・・なんか気に入らなくて・・・・・」







「・・・・・・・・・・・オレいままで姉ちゃんにふさわしい男はずっと隼人さんだけだと思ってましたから・・・・・」


「なに言ってんだよ・・・・・俺は東城を友人以外に一度も意識したことはないしな・・・・・・・それに真中って恋人もいるんだしアイツが幸せならそれでいいんじゃねぇの?」




「そうですか・・・・・・・・・それよりなんか姉ちゃんに用でもあったんすか?なんなら伝えときますけど?」


「あぁ本当は小説の感想でも・・・・・・・・と思ったんだけどな。まぁいつか直接アイツに会って伝えるよ」






ガチャ


静かに受話器を隼人は置いた



「すまねぇな東城・・・・・・・・本当はすぐにでも飛んでいきたいんだけど、今オレがここを離れるわけにはいかねぇんだ・・・・・・」


東城の小説を片手に隼人はそうつぶやいた























時は過ぎ

3月下旬


泉坂中央病院




「今日はみなさんにお集まりいただいてありがとうございます」


東城と両親、それに正太郎は医者にとある一室に呼び出された


「この資料をみてください」

二つの資料をボードに張りつける


これは綾さんの入院直後と現在の白血球の数値を表しています

医者が説明する





「・・・・よくがんばりましたね!完全寛解になりました・・・・・・もう明後日には退院できるでしょう。」


「せっ先生…・・本当ですか?」


綾の父が尋ねる

「はい・・・・・通院して治療はしなければいけませんが大丈夫でしょう」


「ヤッター!!姉ちゃん!!良かったな!!」

正太郎が姉に声をかける






「先生・・・・・・本当にありがとうございます」

すでに綾の目から涙が流れていた


「私だけではありません真中くんやいろんな人たちの応援もあったからですよ!」

医者が笑顔で言った


「綾・・・・・・・本当に良かった…・・」


母親も綾に声をかける





「た・だ・し!」

医者が急に真剣な表情になった


「無理はぜったいしてはいけません・・・・・・あと完全に治っていないということも忘れないでください!」

厳しい声で言う


その言葉に綾の家族は言葉を失った






「・・・・・・・まぁ普通にしていたら大丈夫ですよ!それよりみんなに退院できることを伝えてあげたらどうですか?」


「はい!そうします。本当にありがとうございました・・・・・・」


綾は深く頭を下げた
















「そっそれは本当に・・・・・?」


真中の問いに綾はただにっこりと頷く


「や・・・・・・ヤッター!!」

真中は飛び上がって喜んだ


「東城さん、おめでとう・・・・・」

「北大路さん・・・・・・・ありがとう・・・・」

さつきも喜んでいる


「じゃあ来週の始業式からこれるんだな!?」

外村も尋ねる


「うん・・・・・・・行けるよ!」

「やりましたね!東城先輩・・・・・」

「美鈴ちゃんもいままで心配かけてごめんね・・・・・・・もう大丈夫だから・・・・」

美鈴は少し涙ぐんでいた




「・・・・・・よし!これで映研のメンバーも全員揃ったことだしやっと本格的できる!!」


「うん・・・・・・最後にふさわしい最高の映画作ろうね!!」

綾も笑顔でそう言った


「・・・・・・それと新メンバーも楽しみだよな・・・・・・・どんなやつが来るんだろ?」

外村がふとつぶやく

「けっこう評判が高いから入部希望者は増えると思う・・・・・・・・でも役に立つやつが来ればいいんだけど・・・・・・」

美鈴が不安そうにつぶやいた


[No.193] 2006/10/02(Mon) 17:55:29
BEST OF HERO 第24話 (No.193への返信 / 23階層) - hiro

美鈴の予想通り


泉坂映研部には多数の入部希望者で溢れ返った


しかしどれもこれも使えそうなやつではなく真中と美鈴は頭を抱えていた



「どうします?監督?」

美鈴も頭を抱える

「まさかここまで使えそうな奴がいないなんてな・・・・・・・ほとんど冷やかしだよ」

真中もがっくりと肩を落とす


真中達は面接と演技の実技試験で入部者をしぼろうと考えていたが実技をするまでもなく結局無駄に終わってしまった






「真中ー!どうだった?入部希望者は??」

さつきが勢い良く部室に入ってきた


「あぁ全然だよ・・・・・・・まったくなんでこう使えない奴らばっか集まるんだよ!!」


「ほんとに!!ろくに映画の名前もいえないような連中が集まるなんて・・・・」

真中と美鈴が愚痴る


「まぁいいんじゃない?また今までのメンバーでやれば?」」

さつきは気にする様子もなく言う




「・・・・・・・それよりなんか1組が騒がしいけどなんかあったのか?」


真中は放課後まっすぐに部室に向かったのだがなにやら1組が騒がしかったことを知っていた




「あぁ、なんか北海道から転校生が来たみたいよ?それがけっこう見た目はカッコイイから女子が群がっているわけ・・・・」


「へぇ〜天地が転校したときみたいだな・・・・・」


「・・・・で?その転校生の名前は何て言うの?」




「えっとねー・・・・・・・あれ?なんだったっけ?」

さつきが必死に考える


「いっ・・・・いっ・・・・・・・・いとう・・・・・そうそう伊東だ!確か伊東隼人って名前だったよ!」


「いっ伊東が!?」

その瞬間真中と美鈴が顔を見合わせる

「ほっ本当なのかそれは??」

「うん!1組の友達に聞いたからまちがいない!」



  ガラッ


その瞬間真中は部室を飛び出していった












「東城先輩〜!」

文芸部の部室で伊東千里が綾に声をかけた

「どうしたの千里ちゃん?」

笑顔な千里を見て綾が不思議そうに尋ねる


「実は・・・・・東城先輩に会わせたい人がいるんです」

「会わせたい人・・・・・・って?」


「まぁ会えば分かりますよ!屋上にいるはずですから行ってみてくださいよ!」

「でっでも・・・・・・」


「いいからいいから!ぜったい喜ぶと思いますよ!!」

「そう・・・・・・・じゃあ行ってみる・・・・・」


綾は迷っていたがついに千里の押しに負けてしまった













「外村〜!!」

一組の教室の前に立っている外村に真中が声をかけた


「どうしたんだよ!?そんなにあわてて・・・・・」

「いっ・・・・・1組の転校生は??」

息を途切れ途切れに言う

「さぁ?俺は姿を見れなかったけど女子連中を振り切ってどっかに消えたらしい・・・・・」

すでに1組はほとんど人がいなかった


「そっそれより!その転校生が伊東隼人なんだよ!!」


「いっ伊東隼人って・・・・・・あの北海道のとき世話になった・・・・・?」

「あぁ帰ってきたんだよ!北海道から!!」

真中が少し興奮気味に言う



「・・・・・でも確か前あったときは帰れないっていってたんだろ?なんで帰ってきたんだろ?」

外村が頭を傾げる

「それより東城は!?あいつにも伝えてやらないと!」

真中は忙しく廊下を走っていった









コッ・・コッ・・コッ・・コッ・・


綾は屋上へ続く階段を一段一段ゆっくりと上がっていく


(千里ちゃんの会わせたい人ってどんな人だろ・・・・・?)


そんな不安な思いを頭に浮かべながらついに屋上へのドアの前に立ち止まった




ガチャ・・・・・


ゆっくりとドアを開ける






そこには人ではなく一冊の古びたノートがポツンと置かれていた



「こっこれって・・・・・・あたしの小説のノートだ!!」


そこには紛れもなく

             [算数] 6年3組 東城 綾

と書かれていた




「でっでもどうしてこれが・・・・・・・?確かこのノートは・・・・・・・」


綾がノートを拾い上げる




「・・・・・・・・・・そして戦い疲れた兵士は王国の王女よりも羊飼いの少女の元へ帰っていきました・・・・・・とさ」


男の声がどこからか聞こえた


「だっ誰!?」

綾は辺りを見渡したが誰も居ない




「まぁ、まあまあなラストだな・・・・・・・どちらかといえば俺は王女を選ぶけどね・・・・・・」




綾がその声を聞きうしろに振り返る・・・・・・・・



すると泉坂高校の制服を着ている男がポケットに手を入れながら立っていた




「あのっ・・・・・・・・どちらさまですか?」


綾が恐る恐る尋ねる




「そうだな・・・・・・・東城綾の小説のファン・・・・・とでも言っておくかな」


男はただ笑ってそう答えた


[No.194] 2006/10/04(Wed) 16:50:48
BEST OF HERO 第25話 (No.194への返信 / 24階層) - hiro


「私の小説の・・・・・ファン?」

綾は不思議そうにその人物の顔をよく見た

不思議とどこかで見覚えがある顔だった


対照的に男は綾が悩んでいる様子を楽しそうに見ていた


「・・・・・・5年ぶりだよな?久しぶり!」


5年ぶりという言葉に綾はやっと確信した



「ひょっとして・・・・・・伊東隼人くん?」


綾の問いに対して男はただ笑ってコクンと首を上下させた



「嘘?本当に!?本当に伊東隼人くんなの!?」


「あぁ正真正銘の伊東隼人だ」


隼人は照れくさそうに答えた



「良かった・・・・・・やっと会えた・・・・・・・」


綾はペタンと座り込んでしまった



「驚きすぎて腰が抜けた・・・・てか?」

隼人も同じように地べたに座った





「帰って来れたんだね・・・・・・やっと」





「あぁ・・・・・・長かったけどな」



綾の目からは涙が流れていた

その涙は5年間綾が背負ってきた隼人に対する自己嫌悪をさらっていく感じがした









真中は廊下を走っていた

「どこいったんだ?東城」

真中は校舎中探したがついに見つけることが出来なかった




「あとは屋上だけか・・・・・」


真中は屋上までの階段を1段飛ばしで駆け上がってく


バンッ!




真中が扉を開けると


東城

それに伊東隼人の姿が会った



「おっ真中のお出ましか」

隼人は真中の姿を見てそうつぶやいた




「帰ってきてくれたんだな・・・・・」


「別に好きで帰ってきたんじゃねぇよ。牧場が潰れてお役御免になったから仕方がなく・・・・だよ」

照れくさそうに言う

「東城も・・・・・良かったな!」


へたり込んでいる東城に真中が声をかける

「うん!」

東城も笑顔で言った




「来いよ隼人!映研のみんなに紹介したいから来てくれよ!」

「いいけどよ、さっきみたいな騒ぎは御免だぜ?ここの女子連中はなんでこう群がってくるんだよ?」

隼人が真中の後姿に愚痴った











「あらためて紹介するよ。今日1組に転校してきた伊東隼人だ」


部室には映研メンバーに加え黒川先生が集まっていた


「北海道から来た伊東隼人です、ヨロシク。あと呼び方は隼人でも隼人くんでもお好きな方で」

とは言ったものの小宮山と北大路そして黒川先生以外はすでに面識があったため挨拶は余り意味は無かった



「コイツだな真中。去年の映研の作品をお偉い映画監督に紹介してくれた人物というのは」

隼人を指指しながら黒川先生が真中に言った


「紹介したというかなんというか・・・・・・結局外村の叔父さんに教えてもらわなかったら実現しなかったんで感謝するなら外村にしてください」

隼人が外村の顔を見ながら言う









「・・・・・・・なぁ。俺たちといっしょに映画撮らないか?それに今映研には女優は多いけど俳優がいないんだ。だから頼むよ」


真中が隼人に頼む

それは東城も、外村兄妹も望んでいることだった








「・・・・・・悪いけどパスするわ。話はありがたいけどやっぱ俺には出来ないよ」


真中たちを1人ずつ顔を見渡しながら隼人が言った

「どうしてだよ?北川監督だってオマエの演技力を認めてるんだぜ?出来ないってことじゃないだろ?」



「まぁ実家の手伝いもしなきゃなんないし・・・・・・・悪いけど勘弁してくれ」

隼人が真面目な表情で言う


「そっか・・・・・」


その言葉を聞いて真中は引き止めるのをやめた


「まぁ、協力できる範囲ではするからさ。また声をかけてくれよ」

そう言うと隼人は部室から出て行った






「惜しいことしたな真中・・・・・」

外村が隼人の後ろ姿を見ながら真中に言う

「確かに、有力な新入部員がいない中で隼人は良い戦力になったんだけどな・・・・・・なぁ美鈴!」


「まぁ私はまだ諦めてないけどね。やっぱ真中先輩と小宮山先輩だけじゃ不安だし」


美鈴が真中と小宮山を交互に見ながら言う

「まぁあたしは真中さえいてくれたらいいんだけどねー!」

さつきが真中の腕を無理やり組む

「やっやめろよさつき!」

真中がさつきを腕から離す



(そういやさつきにもいつか言わなきゃな・・・・・・東城のこと・・・・・・)


嬉しそうにしている北大路さつきを見るたびに真中は罪悪感で胸が痛んだ


そしてその気持ちは東城も同じだった



























(ちゃんと伝えなきゃな・・・・・・さつきに)


帰り道、真中は夜空を見上げながらつぶやいた


「ん?あれは・・・・・」


暗くてよく見えなかったが近づいていくに連れてその人物がだれか分かった


「大草〜!」

真中は大草と分かると声をかけた

「よう。真中」


大草も振り向いて返事をする


「大草、部活帰りか?」

「あぁ、今終わったところ、もう引退近いから忙しいんだよ」

大草も猛練習で少し疲れてるようだった

「西野とはうまくいってるのか?このごろ会ってないみたいだけど・・・・・・」


その問いにあきらかに大草は表情を変えた






「・・・・・ごめん真中、俺・・・・・・西野と別れたんだ・・・・・・」




「は?うっ嘘だろ??」


真中はそうであってほしいと大草を見た


だが大草の顔はとても悲しそうだった


「ちょっ待ってくれよ!俺、大草なら西野を安心して任せられるって信じてたのに・・・・・・・どうしてだよ!」


「ごめん真中・・・・・・・実はあのとき西野に断られてたんだ・・・・・・・・」


「でっでも俺は西野の口から直接・・・・・・」


「西野は俺のプライドを気にして嘘をついたんだろ・・・・・・・・」

「そっそんなこと・・・・・・」


真中はドサリとその場に座り込んだ



「・・・・・・西野はまだ真中のことが好きなんだろうな・・・・・・・・・」


「もう・・・・・・もう遅いよ・・・・・・・俺はもう東城と・・・・・・・」


真中は言葉を失ってしまった





あのとき・・・・・・・・



あのとき西野に[東城と付き合っている]といっとき




西野はどんな気持ちになったのだろうか・・・・・・




真中はそう思うと胸が張り裂けそうになった






































「泉坂ってけっこう遠いんだな・・・・・・・・」


隼人は時計の針を見ながらつぶやく


そして学校の校門近くで隼人は北大路さつきと偶然鉢合せとなった


「あっアンタは昨日の転校生!」

「そういうオマエは・・・・・・・・・北・・・北・・・・・・なんだっけ?」

「北大路です!!」

「そうそう北大路だったな・・・・・」

隼人は昨日のことを思い出す


「それよりアンタ、泉坂の映研の誘いを断るなんてけっこうやるじゃん!入部希望者はけっこう多かったのに・・・・・・」


「・・・・の割りには新入部員らしき人は昨日の部室には居なかったぜ?」

「あぁ、真中と美鈴が全員クビにしたの。使えないやつらだったから」


「へぇ・・・・・・じゃ俺はけっこう良い話を蹴ったわけだ・・・・・・・」


いつの間にか靴箱まで来ていた


「・・・・・・・・それにしてもアンタはいつも1人で来てるのか?」


「まぁ本当は真中といっしょに行きたかったんだけどねぇ・・・・・・・真中、東城さんに付きっきりだし・・・・・・」




「そりゃそうだろ?あいつら付き合ってんだから・・・・・・・・・・」


隼人は何気なく言ったつもりだった


だが・・・・・・・・



「うっ嘘でしょ?真中と東城さんが付き合ってるわけが・・・・・」




「なんだしらねーのか?本当だよ!なんでオマエに嘘をつかなきゃならないんだ?」


その言葉にさつきは一直線にどこかへと走っていった



「何なんだ?アイツ・・・・・・・・」


その姿を見て半ば呆れながらつぶやく





しかしこれが隼人の運命を狂わせる形となる


[No.196] 2006/10/10(Tue) 21:11:14
BEST OF HERO 第26話 (No.196への返信 / 25階層) - hiro

隼人の人気は女子からも多かったが男子からもあった

多くの部が彼を勧誘したが映研同様の対応で次々と断っていった




「せっかくだしどんな活動してるか覗いてやるか」

廊下を突き進み映研の部室へと向かう






「真中と東城なんて最低!!もうわたしやめる!」


隼人が部室へと近づいたとき北大路さつきがそう叫んで出て行くところであった


「あれって今朝会った女だよな・・・・・・・」

さつきの後ろ姿を見ながら隼人がつぶやく

そして少し空いたドアの隙間から中をそっとのぞいてみた





部室ではうな垂れている真中、手に顔をうずめて泣いている東城、それに腕を組んで立ち尽くしている美鈴、そして外村の姿があった


「あれほど北大路には言うなって言っといたのに・・・・・・・」

半ば責める感じで外村が二人に言う

「俺たちは何も言ってない・・・・・・・そりゃいつかは言わなけりゃいけないと思ってたけど・・・・・・」


「・・・・・・でもどうするんですか・・・・・・・・今北大路先輩に映研を辞められたらやってはいけませんよ」

美鈴も困った様子で二人をみつめる


「ごめん・・・・・あたしのせいだ。あたしのせいで北大路さんが・・・・・・」

「とっ東城のせいじゃないから・・・・・・やっぱ俺のせいだよ」






(・・・・・まずいことになっちまったなぁ・・・・・・・整理すると北大路には「真中と東城の関係」は秘密で、俺はそれを今朝ばらしちまったわけか)

聞き耳を立てながら隼人がつぶやく




「とりあえず今日は解散な。北大路だって明日になったらコロっと変わってるだろ」

外村の言葉に全員が従い部室を出て行った



隼人は物陰に隠れていたが外村美鈴だけが部室に残っているのを見ると部室へと入っていった


「何しに来たんですか?アンタ・・・・・・・」

隼人の姿を見ると不機嫌そうに美鈴が言った


「北大路・・・・・・・なんかあったのか?」

「まぁいろいろありましてね・・・・・・・・どうせ真中先輩が無神経に傷つけたんだと思いますけど!」


ため息をつきながら美鈴がつぶやく



「そっその・・・・・・北大路に関して、ひょっとしたら俺が原因かもしれないんだよね・・・・・」


「えっそれってどういうことですか?」


隼人は今朝の出来事をすべて白状した










「あっアンタだったのかー!!今回の黒幕は!!」

「くっ黒幕って言い方は人聞きが悪いだろ!知らなかったんだよまさかあいつらが秘密にしていたなんて!」

半ば開き直る感じで隼人が反論した



「なんてことをしてくれたんですか!北大路先輩は映研の大切な女優なんですよ!」


「でっでもよぉ・・・・・・・・・・・・分かりました!謝ればいいんでしょ謝れば!・・・・・・・どうもすみませんでした!」


「ぜ・ん・ぜ・ん気持ちが入っていませんね・・・・・アンタ小学生ですか?」


「じゃあどうやったら許してくれんだよ?」




「そうですねぇ・・・・・・・・・・・じゃ北大路先輩のかわりにアンタに入部してもらいます!」


「なっ・・・ちょっと待て!勝手に決めー」

「えっと・・・伊東隼人入部・・・・・っと」

サラサラと入部届けに書いてしまった







「ん?どうかしたのか」

黒川先生がちょうど部室へ入ってきた

「黒川先生!ちょうど良かった入部者が決まりました!これ入部届けです!」

美鈴が入部届けを先生に手渡す


「まっ待て!まだ誰も・・・・グフッ!」

ドカッ!


美鈴の鉄拳が隼人の腹を直撃し隼人はぶっ倒れてしまった



「分かった。受理しておこう・・・・・・それより外村も早く帰宅するんだぞ」

そう言うとズカズカと部室から出て行った






「これで入部決定ですね!」

腹を押さえてのたうち回っている隼人に勝ち誇ったように美鈴が言う



「ひっ卑怯だぞ!汚い手ばっか使いやがって!」

「アンタのせいでこうなったんでしょ?自業自得よ!」


「カンベンしてくれよー!なんでオレが映研なんかに入らなきゃならないんだよ!」


「・・・・・・・じゃあアンタが北大路先輩を説得してくれるのなら別にいいですよ」

「本当か?」

「えぇ、北大路先輩さえ戻ってくれば問題はないですから」

「分かった・・・・・・・じゃ案内してくれ」
























隼人と美鈴は北大路さつきの家へと向かった


「そういえば北大路先輩以外の家族は実家に帰っているみたいですよ」

「・・・・ってことは家にいるのはあいつ1人か・・・・・」

しばらくすると北大路さつきの住んでいるアパートにたどり着いた




「えっと・・・・・・・204号室か」

下のポストの北大路と書かれたのを見つける


ピンポーン


インターホンを鳴らしたがまったく出てくる気配がない







ピンポーン

もう一回鳴らしたが無駄だった


「いないんでしょうか、北大路先輩」


「いや・・・・・居留守だな」


「えっどうして居留守だと分かるんです?どこかに出かけているかもしれないし」


「さっきポスト見たときに他のポストには夕刊が入っていたけど北大路のところには無かった。だからアイツは帰宅している可能性が高い」

「でも、新聞を取っていない可能性だって・・・・・」

「まぁほとんどの家庭が新聞をとっているからその可能性は低いだろうな」


「それじゃあもう帰るしかないですね・・・・・・」

美鈴はそう言ったが隼人は帰るどころかドカっと座り込んでしまった


「俺は待つぜ。出てくるまで」

「はぁ?朝まででてこないんかもしれないんですよ!正気ですか!?」

「だってアイツを説得しなきゃやばいんだろ?それに明日から土日だし」


「でもそこまでしなくてもいいじゃないですか!・・・・・・・・・そこまで嫌なんですか?映研が」


美鈴の問いに隼人はしばらく考えていたが


「・・・・それもあるけどやっぱ今回の原因は俺だからな。結果真中も東城も北大路も映研のみんなも傷つける形になっちまった。だから責任をとらなきゃいけないんだよ」


「隼人先輩・・・・・・・」


美鈴はこの人はこの人なりに責任を感じているんだなと思った

「まぁアイツと俺の持久戦だな!アイツだって一生家の中にいるわけにはいかないだろ?我慢比べだ!」

わざと家の中にいる北大路に聞こえるような大声で言った






















隼人はチラッと腕時計を覗く


時刻は8時を過ぎでいた

さすがに四月の夜は寒い

隼人は身をブルッと震わせた


「はい。コーヒー買ってきましたよ」

あったかい缶コーヒーを美鈴が一本隼人に手渡す


「サンキュー。悪いな」

プシュとコーヒーを開け一口飲んだ

「なんかこういうのって映画やドラマの世界だけだと思ってたのにまさか現実ですることになるなんて」

美鈴も隼人に習いコーヒーを口に運ぶ

「・・・・・オマエまで付き合う必要はないんだぜ?もう遅いし家に帰れ!」

「嫌です!わたしだって北大路先輩のことが心配で・・・・・」

「オマエは良くても親とか兄貴が心配するだろうが」

「あっそれなら大丈夫です。さっきコーヒー買うついでに友達の家に泊まるって電話しときましたから」


(おいおいおいおい・・・・・・そういう問題じゃないだろ!)

ケロッという美鈴に呆れてしまった

「・・・・しらねぇぞ風邪引いても!」


隼人も美鈴の頑固さに負けてあきらめてしまった




















それから3時間経った11時


「おい、オマエいい加減にかえ・・・」

隼人が美鈴を見たがすでに美鈴は壁に寄りかかって眠ってしまっていた




「・・・・・たく偉そうなこといっときながらやっぱまだまだガキだな」

自分の上着を美鈴にかけながら隼人が言う

余計に寒くなってしまった


「なぁ北大路!聞こえてるんだろ?意地張ってないでさ。そろそろ出てきてくれよ!」

隼人がドア越しに呼びかけたがさつきは無言だった


「なぁ寒くてたまらねぇんだよ!なぁホント頼む!!」

またさつきは無言だったが


カチャリ


と北大路がドアを開けた


「アンタ馬鹿じゃないの!?わたしが出てこなかったら一生待ってるつもり!?」

「まぁこっちも事情があるんだよ・・・・・・・・それよりコイツ運ぶの手伝ってくれよ!ほらそっちの足持ってさ」

二人して寝ている美鈴を起こさないように気をつけながら部屋の中へと運んだ






「悪いことはいわねぇよ・・・・・・・映研の戻れ」


「ぜったい嫌!真中と東城さんに裏切られたわたしのどこに居場所があるっていうの?」

「裏切られたっていうのはアンタの被害妄想だぜ?そりゃ付き合っていることを秘密にしていたあいつらもあいつらだけどな」


「でも真中だってわたしのこと気があるみたいな対応たくさんしといて・・・・・・気が無いなら気が無いってハッキリ言えば良かったじゃない!!」


「まぁあいつは根は良い奴だからな・・・・・・アンタが傷つくような振る舞いは出来なかったんじゃないか?それにアンタは真中のそんなところに惚れてんだろ?」


隼人の言葉にさつきが無言になる



「それによ。今ここで逃げ出したら東城に負けて、あの二人の関係を認めたってことになるんだぜ?いいのかよただの負け犬女に成り下がっても」

「そっそれは・・・・・・」

「どうしてもう一度真中を振り向かせようと思わないんだよ?どうして東城1人蹴落とそうとは考えないんだよ?」




「・・・・・どれだけ想っても想っても二度と叶わない恋だってあるんだ・・・・・・・・恋できる相手が生きているだけアンタは幸せだぜ?」


「・・・・・・・まぁどっちのほうが利口かよく考えるんだな、このまま逃げ出すかもう一度戦うか・・・・・・・・」


隼人はそういうと上着を羽織って玄関に向かった

「あっそうだ!コイツ一晩泊めてやってくれないか?コイツだってアンタのことずっと心配してたんだしな」


そういうと隼人は帰っていった


「伊東隼人・・・・・・か」


さつきはそれだけつぶやいた













「本当に・・・・・・アイツは幸せだよ」


夜空に向かってただそれだけ隼人がつぶやいた







































「今日はこないのかな・・・・・・・さつきのやつ」


部室で真中は心配そうにつぶやいた


「もしこのまま北大路さんやめちゃったらどうしよう・・・・・・」

東城も心配そうな声で言う


ガラッ


「なにしけた顔してるんですか。二人とも」

美鈴が入ってきた

「だって・・・・・俺のせいでさつきが・・・・・」


「だそうですよ!北大路先輩!」

美鈴が後に振り返ると北大路さつきの姿があった


「さっさつき!?」

「北大路さん!」

真中と東城が同時に叫ぶ

だがさつきは無言で部室へとはいってきた


「さっさつき・・・・・・・俺たち謝らなきゃいけないことが・・・・・」

真中が言いにくそうに言ったが

「いいの!別に真中が誰と付き合おうとも」

「へ?」

「今のわたしは東城さんには敵わない・・・・・・・・でもいつか真中を取り戻してみせるから覚悟しといてね!」


「北大路さん・・・・・・・」

「さつき・・・・・・ありがとう・・・・・」





ガラッ


「ハッピーエンドかぁ・・・・・・面白くねぇな」


声の主は隼人だった


「はっ隼人!?・・・・・・どうして!?」

「どうしてって・・・・・部員が部室に顔を出すどこがおかしいんだよ、なぁ外村妹!」


全員が一斉に美鈴に顔を向ける

「この人にはこの前入部してもらっていました!」

笑顔で美鈴が言う

「ほっ本当に・・・・・・隼人くん・・・・・・」



「っというわけだ。あらためてよろしくな!」


「・・・・・・大歓迎だよ!これからがんばっていこうぜ!」

真中が隼人に握手を求めた


新入部員を加え映研は本格的に始動した


[No.198] 2006/10/14(Sat) 12:12:19
BEST OF HERO 第27話 (No.198への返信 / 26階層) - hiro


「お〜い!隼人ー」


翌日の放課後、さっさと帰ろうとしている隼人に真中が声をかけた


「あんだよ?今日は部活なしだろ?」


めんどくさそうに髪の毛を掻き毟りながら隼人が答える


「違うんだ・・・・・そうじゃなくて・・・・」


「あん?」


「美鈴から聞いた・・・・・・・さつきのこと説得してくれたんだってな」


「まぁそんなにたいしたことはしてないけどな」


「ありがとう・・・・・・礼を言うよ」


そういいながら真中が頭を下げる


「感謝される筋合いはない・・・・・・・・あれは俺の責任だから・・・・・・」


そう,冷たく言って改めて帰ろうとした


すると前方から東城の走ってくる姿が見えた


「隼人くん!今日の約束覚えてる?」


「あぁ・・・・・6時に行けばいいんだろ?分かってるよ」


それだけ言うとポケットに手を突っ込んで無愛想に帰っていった




「どうしたんだ東城・・・・・・なんか約束でもあるのか?」


「うん・・・・・・・今日隼人くんを食事に招待するの・・・・あたしの家族も隼人くんには会いたがっているし」


「そうか・・・・・・・・まぁ6年ぶりだもんな・・・・・・」


真中は少し羨ましい感じがしたが何も言わずに納得した







































「隼人さん!お久しぶりです!」


6時ごろ隼人が東城家を訪れると正太郎が出迎えた


「正太郎・・・・・・大きくなったな。6年前はまだ小5だもんなぁ」


そういいながら玄関にあがる


「隼人くん。今日はわざわざ来てくれてありがとう」


東城の母親も出迎える

「お久しぶりです・・・・・・・いいんですか?わざわざ招待してもらっちゃって・・・・・」


「いいのよ。6年ぶりに帰ってきてくれたんだし」


「はっはぁ・・・・・・」


半ば遠慮しながらリビングへと案内された

















「隼人さん!北海道の牧場で住んでいたんですよね?」


食事中、正太郎が隼人に質問攻めを繰り返した


「あぁ、馬や牛とか世話がけっこう大変だったな・・・・・・・・まぁ今は牧場は潰れてっからもうそんな心配はないんだけどな」


「確か映画にも出演したんでしょ?北川監督の」


「ほとんどエキストラに近いんだけどな・・・・・・セリフも二つしかなかったし・・・・・・」


隼人も正太郎の質問に飽きずに答えている


しかし東城だけはただ無言で箸を運んでいた



「・・・・・・・どうしたんだよ姉ちゃん!さっきから元気ないぜ?」


姉の異変に気付き正太郎が声をかける



東城は少し俯いていたがやがて口を開いた




「ごめんね・・・・・・・・あたしのせいで6年間も北海道に行かせちゃって・・・・・・・・」


北海道の話題をする度に東城はそのことばかりで自己嫌悪に陥っていたのだ




「・・・・・・あのな東城・・・・・・俺は今まで一度も北海道に行ったことを後悔したことはない。そりゃ寒いのは苦手だし朝から晩まで牧場で働いたりめんどくさかったけど今泉坂に帰ってきて始めて貴重な体験ができたんだなってすごく満足してる」



「隼人くん・・・・・・・・」


「それに俺が帰ってきたからいいじゃねぇか!気にしなくてもさ」


そういいながら隼人は東城母の手料理を口へと運んでいった
















30分後

デザートを食べ終えた隼人と東城はリビングで雑談していた


なんせ6年ぶりの再会なのだから話題はいくらでも尽きることがなかった





「そういえば隼人くんのお父さんってみたことないんだけど・・・・・・」


東城はさりげなく聞いたつもりだった。


しかし明らかに隼人の表情が一瞬変わったことを綾は見逃さなかった

























「・・・・・・・・・・死んだ」


ぶっきらぼうにそれだけ言った


「ごめんなさい・・・・・・・・嫌なこと思い出させちゃって・・・・・・・」


東城が慌てて謝る


そしてしばらく気まずい雰囲気が場を包んだ


























「・・・・・・・・俺の親父はな。刑事だった・・・・・・」


隼人がおもむろに口を開いた


「俺が10歳のときだ・・・・・・・・・殺人犯を取り押さえようとして逆に撃たれちまってな・・・・・・・・・殉職ってやつだよ」


隼人の言葉を綾はただ無言に聞いていた




「・・・・・・・・俺は刑事だった親父の姿に憧れてた・・・・・・・・だから将来親父のような刑事になりたい、それが俺の夢だ・・・・・・オマエが小説家になることや真中が映画監督になりたいのと同じくらいにな」







「夢・・・・・・・・叶うといいね」


「おっ?将来小説家の道がほぼ保障されているオマエにとっては余裕の発言だな」


隼人が皮肉った。ただ言葉とは裏腹に顔は笑っていた




「じゃそろそろ帰るわ。ありがとなわざわざご馳走になって」


そう言うと隼人は立ち上がった


「おばさん、ご馳走様でした。」


「隼人くん、またいつでもいらっしゃい」


「はい・・・・・・・ありがとうございました」




「あっそうそう明日部活だから」


靴を履いている隼人に綾が声をかける


「あぁ・・・・・・分かってる。放課後行けばいいんだろ?」


そういうと隼人は玄関のドアを開け帰っていった




































「あー・・・・・・・食いすぎちまったな」


そういいながら電柱に手をついた






「ぐっ!」


隼人は突然、喉の奥から何か熱いものが込み上げてくるのを感じた






しばらくその込み上げてくる熱いものを我慢して耐えていたが


(ぐっ・・・・・・・もうガマンできない)


ガハッ!!


ついに隼人は激しく咳き込んだ


そしてその熱い塊も一気に吐き出した




ゴホッ!ゴホッ!!ゴホッ!!!


隼人は激しく咳き込んで目を開けられなかった


そして咳も治まり恐る恐る目を開けてみる



すると恐ろしい光景を目の当たりにした






隼人のぶっかけた電柱の部分が真っ赤に染まっている


















隼人は吐血したのだ




「おっ俺が・・・・・・・血を吐いた・・・・?」


そう言って口元を拭ってみる




すると確かに袖の部分が真っ赤に染まっていた



「嘘だろ・・・・・・・俺が吐血なんか・・・・・」


しかし口の中に広がる血の独特的な味がこれが現実のものであると証明していた。






「ちくしょう・・・・・・・・・・ふざけるなよ」


隼人はただ呆然と血で染まっている電柱を見つめていた


















































この日


東城は通院治療のため泉坂中央病院に訪れていた


「ごめんなさい・・・・・・またせちゃって」


ロビーのイスに座っている真中、美鈴、外村に東城が声をかけた


「わざわざついて来てくれてありがとう」


「遠慮するなよ東城・・・・・・・・それに一応だけど俺たち付き合ってるんだし」


照れくさそうに真中が言うと東城も嬉しそうに笑顔になった


「それより今日塾だよ?真中くんちゃんと覚えてる?」


「明日から中間テスト1週間前だろ?いやだよなー本当に」


「まぁ受験に関わってくるからなー、ちょっとは真中も勉強しろよ」


「いいよな〜外村も東城も成績優秀でさっ!」


真中が羨ましそうな目で二人をみる









「あれって・・・・・・・・隼人先輩・・・・・・ですよね?」


美鈴が病院の入り口のほうを指差す


それは確かに伊東隼人の姿だった


「隼人ー!」


真中が大声で声をかける





「おっおう・・・・・・・」


声をかけられたことに少し動揺しながらも隼人は近づいてきた


「どうしたの?」


「いっいやぁ・・・・・・風邪引いちまったらしくて」


ゴホゴホと咳をしながら隼人が言う


「でもまぁいいや・・・・・・医者にみてもらうほどでもないしな」


そういうと隼人も加わり全員で帰ることにした




「そうだ、あなたも塾へ来ない?明日からテスト1週間前だし」


東城が提案した


「へっ!塾なんてまっぴら御免だよ!」


東城の提案をきっぱり断った


「へぇ〜たいした自信ですね!」


美鈴が嫌味ったらしく言う


「まぁ見てろよ今度のテストの結果をな!」


自信満面に隼人が豪語した




「それより東城、経過のほうはどうなんだよ?」


外村が東城に尋ねる


「うん・・・・・・今のところは大丈夫なんだけど無理はいけないんだって・・・・・・」


そういいながらぞろぞろ帰っていった
















「なぁ真中・・・・・・・」


おもむろに隼人が真中に話しかけた


「向こうにいるショートカットの女・・・・・・・・・確かおまえらの映画に出ていた女・・・・・・・・・だよな」


(西野!!)


隼人に言われ真中が目を向ける


それは確かに西野つかさの姿だった


見知らぬ女の子を1人連れていたが・・・・・・




「あっちゃ〜・・・・・・・修羅場だな」


「えっ?修羅場ってどういう意味だよ?」


外村がなにやら楽しそうに言っているのを隼人に尋ねる


「実は西野さんと真中先輩は・・・・・・・・・」


美鈴が真中と西野のこれまでの経緯を細かく説明した












「じ・・淳平・・・・・・・・・くん」




「西・・・・・・野」



真中と西野はただお互いの顔を見つめ合って棒のように固まっていた。


[No.209] 2006/10/20(Fri) 15:11:35
BEST OF HERO 第28話 (No.209への返信 / 27階層) - hiro






「・・・・・・つまりあの女と真中、それに東城は三角関係ってわけだな?」


「あぁ・・・・・・それもけっこう深刻な」

ヒソヒソ声で外村と隼人が会話をする




真中と西野はあいかわらず無言で立ち尽くしているだけだった・・・・・・が




「見慣れない人がいるけど・・・・・・・・あの人が噂の転校生?」


最初に口を開いたのは西野からだった、西野は平然を装い隼人を指差しながら尋ねた




「あっあぁ・・・・・映研に新しく入ったんだ・・・・・・オーイ!紹介するからこっちこいよ!」


真中が隼人に向かって声をかける






「おい!・・・・・・呼ばれてんぜ?」

外村がヒジでつつきながら隼人に言う


「嫌だよ!どう見ても俺、巻き込まれたくねぇよ三角関係のゴタゴタなんかに!」

「いいから行く!!」


隼人は躊躇したが美鈴に思いっきり背中を押され嫌々歩いていった






「どっどうも・・・・・・・・」

西野の顔を恐る恐る覗く


「始めまして西野つかさです!」


ビクついている隼人とは裏腹に西野は笑顔で自己紹介した。






「・・・・・・西野も見慣れない人を連れてるようだね・・・・・・・・」


「あぁ同じ桜海学園の小西友美、同じケーキ屋でバイトしてるんだ」

西野がみんなに紹介する







「小西ってひょっとして・・・・・・・・・」


ずっと黙っていた東城がいきなり身を乗り出した


「あたしのこと覚えてる??清新小学校の東城綾・・・・・・」


「うっ嘘!?東城さん!?久しぶり元気してた!!」


「ひょっとして5年ぶり!?小学校卒業して以来だっけ!?」


東城と小西は5年ぶりの再会にとても盛り上がっていた




「知り合いなの?・・・・・・東城さん」


「うん・・・・・・小学校からの友達なの!」


西野に説明する






「ねぇねぇ!この人だれだか分かる?」

東城が隼人を指差しながら尋ねる




「伊東隼人くんよ!」


東城のその言葉に小西は固まった


「ほっ・・・・・・本当に・・・・・・」


小西はふらつきながら隼人の前に立ち止まった


「わたしのこと覚えてますか?小学校のときいっしょだった・・・・・・」


小西が隼人に尋ねる










「・・・・・・・悪いな、覚えてない」


隼人の言葉に小西はガクっと肩を下げた




「小学校のときいっしょだったじゃない?あなたの席の後に座っていた・・・・・」

東城が必死にフォローする


「あぁそういえばいたなぁ・・・・・・・あんまし覚えてないけど」











「・・・・・わたしあなたにすごく感謝しているんです、あなたのお陰で勇気をもらいました。今のわたしがあるのもあなたのお陰です!」


「そうすか・・・・・・・まぁそのかわりに俺は5年間北海道に島流しされたんだけどな」


隼人が冷たく言い放った







「・・・・・・・・それに勘違いしてるみたいだから言うけど俺はおまえらのイジメを解決するためにやったんじゃない、死んだ幼馴染まで侮辱されたからああしたまでだ、だから俺に感謝する必要はないぜ」





「ちょっと酷いんじゃない!友美はあんたに会えるのをずっと楽しみにしてたんだよ!」


冷たい態度に西野が怒りながら隼人に詰め寄る



「俺は事実を言っただけだから・・・・・・・」


それだけ言い放つと隼人はくるりと背を向けて帰っていった







「・・・・・・まぁこれがあいつなりの優しさだから・・・・・・・・気にするなっていいたかったんじゃねぇの?」


外村が隼人の背中を見ながら小西にフォローした


しかし小西はあまりのショックに涙を堪えている感じだった






















「・・・・・・・・しかしなんだかんだ言って助かったよな、アイツのお陰で」


真中が隣に歩いている東城に声をかける


その後は小西をなぐさめたりといろいろ大変だったのだがそのお陰で西野とギクシャクすることもなくこうして無事に帰路につくことができたのだった。






「・・・・・・・・東城どうかした?俺の顔になんかついてる?」


東城はただ笑顔で真中の顔を見つめていたのでたまりかねて真中が尋ねた





「ううん・・・・・・・なんでもない」


東城は笑顔で真中の顔から目線をそらした。


「なんだよ!気になるから教えろよ!」




「いやなんというか・・・・・・・・・・・この人があたしの彼氏なんだなぁと思うと笑いが止まらなくて・・・・・」


「笑いがとまらないってどういう意味だよ!」


真中が尋ねたがただ笑っているだけだった


















「・・・・・・・・真中くん、どんなことがあっても別れないでね・・・・・」


「何言ってるんだよ!あたりまえだろ?」


そういうと真中は東城の右手を無理やり自分の左手とつないだ

































しかしこのとき





「別れないでね」と言った東城から別れを告げられることとなるとは真中は夢にも思ってはいなかった


[No.211] 2006/10/22(Sun) 18:05:34
BEST OF HERO 第29話 (No.211への返信 / 28階層) - hiro





「ただいま〜」


「シィーーッ!」


綾が帰宅するとすぐ母親に静かにするように促された


「お客さん?」


「お父さんの会社の人で・・・・・・天地くんのお父さん・・・・・」


「天地くんのお父さんって確か会社の社長・・・・・・・・だよね」


居間では自分の父親と天地の父親がなにやら深刻に話しているみたいだったが綾はあえて何もいわずに自室へと引き上げた













「なるほど・・・・・・・・・それで我が社に融資がほしい・・・・と」


ソファーに座りながら天地の父親がゆっくりと紅茶を口に運ぶ




「お願いします、このままだと我が社が倒産し社員が路頭に迷うことになりかねないんです、なんとかお願いできないでしょうか・・・・」


深刻な顔つきで綾の父親が頭を下げる


「そうは言われましてもねぇ・・・・・・・・・」


嫌味ったらしく天地の父親が言う


「そこをなんとかお願いできないでしょうか・・・・・・・」


再度綾の父親が頭をさげる



「まぁできないってわけでもないんですが・・・・・・・・・1つだけ条件が・・・・」







「確か娘さんをお持ちですよね・・・・・・・・小説の賞を次々と獲得している」


「はぁ・・・・・・・そうですが・・・・・・」




「私の息子がえらくあなたの娘さんをとても気に入っているんですよ・・・・・・」



「勉強も出来て、顔だっていい、性格も悪くないし小説家としての才能もある・・・・・・・・・それを聞いて私まで気に入ってしまいましてね」


その言葉を聞いて綾の父親はすごく嫌な予感がした。









「もうすぐ息子も卒業でしょう?ゆくゆくは私の会社もついでもらうことになります・・・・・・・・・・・ですから卒業後私の息子とあなたの娘を結婚させていただきたい・・・・・・そうすれば融資をしましょう・・・・・」



「結婚・・・・・・・・ですか・・・・・・」


嫌な予感は完璧に的中した




「しっしかし、私の娘はまだ白血病が完治していません卒業後すぐに結婚というわけには・・・・・・・」


「では婚約という形でも結構です・・・・・・・・・・まぁどっちが会社のため、あなたの社員のためになるか良く考えるんですな」


そう言うと天地の父親は帰って言った



















「あなた・・・・・・・・・」


すべての話を聞いていた母親が心配そうに声をかける



綾の父はしばらく黙り込んでいたが














「綾を・・・・・・・呼んでくれないか・・・・・・」



それだけ言うと深いため息をついた。













































「ん?・・・・・・・アイツどこに行くんだ?」


休み時間に廊下を歩いているとたまたま校長室に入っていく隼人の姿をみかけた


「校長室なんかに・・・・・・・なんで?」


そういいながら扉に耳をあてた











「・・・・・・・・・・・・どうでしたか?北海道は・・・・・・?」


「えぇ・・・・・・充分良い経験ができましたよ。お陰様で」






「しかし驚いたぜ・・・・・・清新小の校長だったあなたがまさかここの校長だったなんて・・・・・・」


「まぁいろいろとあってね・・・・・・・・・・」


「まっそのおかげで泉坂に来れたんですけどね・・・・・・・・まぁあなたのお陰で人間的にも成長できたと思っています」


「そうか・・・・・・・なんでも映像研究部に入ったそうじゃないですか?・・・・・・・・なんで野球をしなかったんだ?私の情報では大阪のリトルリーグでー」


「やめたんです、野球をやると思い出すんですよ・・・・・・・・いろんなことを・・・・・」


隼人は少しうつむきながら言った




「それに映研ならこんな俺でも必要としてくれます・・・・・・・・それにここが俺の居場所なんだと思いますしね」


隼人が笑顔で言った。















「ここが俺の居場所・・・・・・・か」


扉から耳を離した真中はただそうつぶやいた




「そうだな・・・・・・・俺たちの居場所だよ・・・・・・映研は」


そう言うと真中は教室に戻るために廊下を歩いていった




「それよりも東城どうしたんだろうな・・・・・・・・無断欠席なんて・・・・・・」





その瞬間、真中は廊下で天地とすれ違った


ニヤッ


真中は天地とすれ違う瞬間天地がかすかに笑ったかのように見えた







「なんだ・・・・・・・・この胸騒ぎ・・・・・」


通りすぎる天地の姿を見ながら微かに真中は嫌な予感がした・・・・・・


































トルルルルル・・・・・トルルルルルル・・・・・・・・




「・・・・・はい。真中ですが・・・・・・」




「・・・・・・・・・・真中くん?」


声の主は東城だった・・・・・・・・・もっとも、消えそうなほどの小さい声だったのだが




「とっ東城!?どうしたんだよ、いきなり無断欠席なんて!」















「ごめん真中くん・・・・・・・・・・・別れてほしいの・・・・・・・あたしと・・・・・・・・」



「・・・・・わっ別れるって・・・・・・・・・・・どういうことだよ?」




「ごめんなさい・・・・・・・・・・・・・・とにかく別れてほしいの・・・・・・・・・それだけ・・・・・・」



「それだけっておい!説明くらいしろよ!なぁ!!」




ツーツーツー・・・・・・・・




真中は東城から一方的に電話を切られてしまった














「おっ俺って・・・・・・・・・・・・・・振られ・・・・・・・・・たのか・・・・・・・・?」



あまりにも突然訪れたことに真中は一瞬信じられなかった・・・・・・・・






しかし手に持っている受話器がそれが事実だと証明していた。








「・・・・・・・なんでだよ・・・・・・・・・どういうことなんだよ・・・・・・・・・・・」



真中はワケが分からなかった・・・・・・・・







































「いきなりか・・・・・・・・・・・・・それにしては変だよな」


昼休み屋上で真中は昨日のことを外村にすべてを打ち明けた





「俺・・・・・・・・・本当に何が何だかわからなくて・・・・・・・・」



真中は相当落ち込んでいたようだった。




「まぁ仮にだ、オマエが嫌われたとして振られたとしても学校くらいは来るだろ?でも実際は休んでる・・・・・・・・おかしいよなそれって・・・・・・」



外村も頭をひねる














「よぉ・・・・・・・・探したぜ、ここにいたのか?」



パンを片手に隼人がやってきた







「興味深い話を耳にした・・・・・・・・・・・天地のことなんだが」



隼人はドカっと座りながら言った



「悪い・・・・・・今それどころじゃないんだ・・・・・・・・・真中が昨日突然東城に振られたらしいんだよ・・・・・・・」



「・・・・・・・・その東城に関連している」


「えっ!?」


その言葉に真中が過敏に反応してみせた



「東城に・・・・・・・・何かあったのか!」


真中が問い詰めたが隼人は間を空けるかのゴホゴホと咳をした






「天地が”綾さんはもうすぐ僕のものになる”とか言っているのを聞いた」



「天地がぁ・・・・?それはないと思うぜ?東城が真中を振ってまでして天地と付き合う人間だと思うか?」


「俺だって最初は嘘だと思った・・・・・・・だけど現にオマエは振られたんだろ?それに東城が二日も連続で無断欠勤している・・・・・・・・おかしいと思わないか?」





「そういえば・・・・・・・・・」


真中が口を挟んだ


「天地とすれ違った時・・・・・・・・アイツ、俺の顔見て笑ったんだよ・・・・・・・・・そしてその日の夜に東城から振られたんだ・・・・・・・」




「なるほど・・・・・・・・・・どうやら何か裏があるな・・・・・」


外村が考え深げに言った





















ピンポーン



「真中です!東城と話がしたいんです!開けてくれませんか!」


真中と隼人、外村に小宮山、美鈴が東城の家へと集まった







「・・・・・・・・開けるな。今会えば綾が苦しむことになる・・・・・・・」



綾の父親がそう命じた



「どうしてなんだよ!理由があるのなら教えてくれよ!なぁ!」



真中の声は当然部屋の東城にも届いていた











ガチャリ





すると綾の父親が姿を現した






「東城のお父さん!・・・・・・・東城に会わせてください!納得いかないんですこんなー・・・・・・・」






バキッ!




綾の父親の拳が真中の顔面を深くえぐった




「真中!」


小宮山が倒れた真中の体を受け止める



「どうしてきみは綾を苦しめるんだ!綾が別れたいっていっているからそれでいいじゃないか!!」




右の頬を押さえながら俯いている真中に罵声を浴びせた




「このクソ親父・・・・・・・・・ぶっ飛ばしてやる!」


血の気の多い隼人が綾の父親に飛びかかろうとしたが小宮山、外村が必死でそれを止めた




「もうやめて!!」



全員がその言葉に振り返る



綾だった・・・・・・・



「東城・・・・・・・・・」



「お父さん・・・・・・・・この人たちにも教えなきゃいけないと思ってた・・・・・・」



「でも綾!・・・・・・・・・」


父親は何かを言おうとしたが



「分かった・・・・・・・説明しよう・・・・・・上がってくれ」



全員は綾の家の応接室に案内された



ソファーには綾と父親が


こちら側には真中と外村、美鈴が座っている


小宮山と隼人は立っていたが隼人は腕を組んで綾の父親を睨みつけていた






「・・・・・・・・・私は小さい会社だが社長をしている」


綾の父親は語りだした



「不況続きだったのだがそれでも社員一同力を合わせて頑張ってきた・・・・・・・だがどうしても切り抜けられない状況になってしまったんだ」



「そんなとき天地建設の社長さん、つまり天地くんとお父さんが融資をしてくださると申し出てくださった」



皆は静かに話しを聞いていた




真中がチラッと綾の顔を見る



とても悲しそうな顔だった・・・・・



「こんな小さな会社だ・・・・・・・融資してくれるなんて天からの恵みのようなものだ・・・・・・・・・・・・だが1つだけ条件を突きつけられた」



そういうと父親は綾を横目で見た




「綾を・・・・・・・・・・綾と天地社長の息子を高校卒業後結婚させろと言ってきた・・・・・・・そうすれば融資をすると・・・・・・」





「なるほど・・・・・・・・・政略結婚ってやつですか・・・・・・・・」



外村がそう言った



「・・・・・で?当然断ったんでしょうね?そんな理不尽な話・・・・・・・・・」


隼人が半ば脅すような形で東城の父親に尋ねた



「私だって本意ではない・・・・・・・・しかし社員を路頭に迷わすわけにはいけない・・・・・・・・・・融資さえしてもらえば会社も倒産しなくて済む・・・・・・・・・」



真中はただ黙って話しを聞いていた




「それに天地建設の社長の息子と結婚したら綾も不自由なく暮らしていける・・・・・・・・・・綾にとっても将来のためには悪い話ではないんだ・・・・・・・」




綾の父親が言い訳するかのようにそう言った。









「東城・・・・・・・・・」



真中が不意に東城の名前を呼んだ




「東城は・・・・・・・・・・・これでいいのか・・・・・・?」





その言葉を聞いた綾は






ただ首を上下に動かしただけだった・・・・・・・・・















「けっ!やってられないぜ!」


隼人がおもむろに綾の父親の前に立った



「あんた・・・・・・・・・・自分の娘は大切じゃないのか?そんな政略結婚みたいな真似させやがって・・・・・」



「綾には悪いと思っている、ただ真中くんには悪いが私は天地くんのほうが将来綾が幸せになると思っている」


「・・・・・・確かに、真中と天地をくらべりゃ天地のほうが金持ちだ。だから経済的に豊かになるかもしんない・・・・・でも娘の気持ちを考えてみろ!無理やり結婚させて本当にコイツが幸せにでもなれると思ってんのか!!」



「ただ・・・・・・・・私だけでなく社員の生活もー・・・・・・」


「俺は社長のアンタに聞いてるんじゃない!東城綾の父親としてアンタに聞いているんだ!!」



隼人の怒鳴り声は場が静かなためによりいっそう響いた・・・・・・・













「・・・・・・・・帰ろう」



真中がこう言った。



「真中・・・・・・・・・」


「これ以上何を言っても仕方ないよ・・・・・・・それに東城がそれを望んでいるんなら・・・・・・・・」






真中は東城を安心させるかのようにやさしい口調で言った・・・・・・
























「・・・・・・・・・おい、おまえ本当にこのままでいいのかよ?」


帰り道隼人がおもむろに真中に尋ねた


「しょうがないよ・・・・・・・・・本当に社員の人たちの生活だってあるんだし・・・・・・・」






ガシャン!


隼人は真中の胸倉を掴みおもいっきりフェンスにたたきつけた


小宮山が必死で隼人の体を抑える




「しょうがない・・・・だと?ふざけるな!おまえの東城に対する想いはそんな軽いもんだったのかよ!見損なったぜ!」


「うるさい!!おまえなんかに俺の気持ちが分かるか!!!」


真中が始めて怒鳴った





「偉そうに言いやがって・・・・・・じゃあ聞くけどどうすればいいんだよ!?このことはもう俺たちの入り込める次元の話じゃないんだ!会社や人の生活がかかってるんだぞ!どうすればいいんだよ!!」


真中の言葉に隼人はスルリと胸倉から手を離した




「・・・・・・・・真中の気持ちも察してやってくれ・・・・・・・アイツだってつらいんだ・・・・・・」



外村が隼人の肩に手を置きながらいった



「そうですよ・・・・・・私達がここで争っても意味がないですよ」










「オレ・・・・・・・・・・・・正直言って話しが良く分からない・・・・・・」



小宮山だった







「オレ、頭が悪いから難しい話は分からない・・・・・・・・でも綾ちゃん、とても悲しそうだった・・・・・・・・1番つらいのは綾ちゃん自身なんだと思う・・・・・・・」




「小宮山・・・・・・・・・・・」




小宮山の言葉が全員の核心をついた




「そうだな・・・・・・・・やっぱ1番つらいのは東城本人だよな・・・・・・」


外村が全員の気持ちを代弁するかのごとくつぶやいた



「小宮山・・・・・・・・・見直したよ・・・・・・」


真中も小宮山に声をかける








「・・・・・・・・オレはぜったい許さない・・・・・・・東城の父親もその弱味につけ込む天地も・・・・・・・」





「とりあえず、この理不尽なことをやめさせるしかない!・・・・・・・・ぜったいに・・・・・・」





「でも真中先輩の言うとおり私達にどうにかできるレベルじゃないんでしょ?何か手はあるのお兄ちゃん!」


「う〜ん・・・・・・・・・・」



さすがに外村もそこまでは考えられないみたいだった







「・・・・・・オレ、天地に直接話してみる!・・・・・・・アイツだってこんな形で東城といっしょになったとしても喜ばないはずだ・・・・・・・・」


真中が決意新たにそういった




(・・・・・でも天地のことだからなぁ・・・・・・・・交渉は難しいだろうな・・・・・・)



外村はそう思ったが敢えて口には出さなかった・・・・・・・


[No.212] 2006/10/23(Mon) 21:24:25
BEST OF HERO 第30話 (No.212への返信 / 29階層) - hiro







「おい!天地ィー!!」


翌朝真中は1組の天地のいる教室に乗り込んできた




「話は分かっている・・・・・・・・・綾さんのことだろう・・・?」


「あぁそうだ東城のことだ!」




真中と天地のやり取りを隼人は遠まわしながら眺めていた


もっとも不機嫌そうな顔で腕を組んでいたが・・・・・



「今日の放課後、君にもくわしいことを説明する・・・・・・・・・3丁目の公園で待っている」


それだけ告げると天地はどこかへと消えてしまった

















約束の時間・・・・・・・



真中が来ると天地がベンチに座って待っていた。



すでに日が暮れかかっており夕日が天地を照らしていた






「大丈夫かぁ・・・・・・・・真中のやつ・・・・・・・」

外村が心配そうに言った

真中には内緒なのだが他のメンバーもこっそり見守っていた









「教えてくれ・・・・・・・・どういうことなんだよ!」



真中がきつい口調で天地を問い詰める


「君も知っての通りさ」


天地が余裕着々で言った






「こんな汚いやり方で東城を手に入れたとしても東城もおまえも幸せになるなんてありえないだろう!」



「・・・・・・・確かに汚いやり方だということは自覚している・・・・・・でも僕はそれでも満足だ」



「そりゃお前にとっては満足かもしれない・・・・・・でも東城は違うだろう?東城の気持ちは考えたことでもあるのか!」



「じゃあ逆に聞くが、綾さんがお前といっしょになったところで本当に幸せになるとでも思ってるのか?僕だってゆくゆくは天地建設の社長だ・・・・・・・綾さんだって僕といっしょになればいつかこれが正しいことに気付くはずだ」


天地はポケットに手を突っ込みながら冷静に言った。





「そりゃ確かにオレは将来が社長と決まっているお前に比べたらかなり劣ることは分かってる・・・・でも少なくとも東城がオレを望んでいる・・・・・・それは事実だ!!」


「しかしこれは天地建設にとっても綾さんのお父さんにとっても良い話のはずだ!それに綾さんのお父さんだって君よりかは僕のほうがふさわしいと思っている・・・・・・・それは君だって薄々は感じているはずだ!!」




「ぐ・・・・・・・・」



真中は何も言い返すことが出来なかった




ただ悔しさだけが真中の体に溢れていた






「分かっただろう・・・・・・・・・君には綾さんを救うことが出来ない・・・・・・・・・・だから二度と綾さんの前に姿を現すな!!」










「天地のやつ・・・・・・・・もう許せない!!」


小宮山が天地に飛びかかろうと草むらから這い出した




ただ天地の言葉が真中の中の何かをプツンと切れさした・・・・・・











バキィッ!!



小宮山が飛び掛る寸前に真中の拳が天地の顔を深々とえぐっていた・・・・・・



ぶっとぶ天地・・・・・・・・






「キャアアアア!!」






「やめろ!真中!!」


外村が叫んだ



しかし我を失っている真中には外村の声も美鈴の悲鳴も届かなかった








ドカ!ボコ!!ドカ!!



倒れてうずくまっている天地に真中が無我夢中で殴っている



「小宮山!!とめてくれ!!!」



しかし小宮山も既に頭に血が上っており外村の声を聞くどころか真中といっしょに天地に殴りつけていった・・・・・・・






「やめろ!!止めるんだ二人とも!!」


外村が必死に仲裁をしようとしている


すでに天地は気を失っていた












「お前たち!!!何をやっているんだ!!」



騒ぎを聞きつけた警察官が二人走りこんできた










取り押さえられる真中と小宮山・・・・・・・・







必死に抵抗したがとうてい警察官には叶うわけがなかった








ガシャン・・・・・・・・・・






二人の腕には夕日を反射して光っている銀色の手錠がはめ込まれた・・・・・・・・・






















「・・・・ハァ・・ハァハァ・・・・・・・・・・」




外村から連絡をうけた西野つかさが必死に走っていた








「そっ外村くん!!」



泉坂東署の前で呆然と立ち尽くしている外村らを見つけ西野が話しかけた










「じゅ・・・・・淳平くんは・・・・・・・・・・・」



心配そうな口調で西野が尋ねる




「大丈夫・・・・・・・・・・さっき、真中のお母さんが警察署に入って行った・・・・・・・・・・・・・もうすぐ釈放されるよ・・・・・・」



外村は大丈夫といったもののすごく不安そうな顔で言っていた







「・・・・・・・あいつは殴った相手が悪かった・・・・・・・」



外村が話しを続ける



「さっき天地のお父さんも来て・・・・・・・・・ホラ!天地の親ってPTAの会長をしてるだろう・・・・・・・・だからただでは済まされないはずだ・・・・・・・・・」




「ただでは済まないって・・・・・・・・・」



「最悪・・・・・・・・・最悪退学もありうるだろう・・・・・・・・・・・」





「たっ退学・・・・・・・・・・・」




その言葉を聞いて西野はがっくりと膝をついた・・・・・・・・















「・・・・・・・・・・・東城さんは?」





顔を俯けたまま西野が尋ねた




「淳平くんがこうなったのも東城さんのためなんでしょう!・・・・・・・・何してるのよ東城さんは!!」



泣きながら全員に問いかけた





「東城には・・・・・・・・・・唯ちゃんや北大路に頼んであるけど・・・・・・・・・」



外村がゆっくりとした口調でいった





「どうして・・・・・・・?どうしてこんなことに・・・・・・・・」



西野は泣きながらそうつぶやいた・・・・・・・









1時間後・・・・・・


真中と小宮山が親に連れられて警察署から出てきた





「淳平くん!!」

「小宮山!!」


つかさと外村がそう言うと一気に駆け寄った






「・・・・・・・ごめん。やりすぎちまった・・・・・・・・」




つかさの涙ぐんでいる顔から少し目をそらしながら真中がそう言った






































「たっ退学・・・・・・・ですか?」


「当然です!私の息子に大怪我を負わせてなおかつ警察にも世話になるなんてもってのほかです!退学しかありません!」






校長室には天地の父親、それに教頭が校長先生を囲むような形で座っていた



「しっしかし・・・・・・・言い分くらい聞いてあげてもいいんじゃないでしょうか・・・・・・・・それに退学は厳しすぎる・・・・・・」


校長も困った様子で反論する





「いえ、言い分なんて関係ありません!私の息子が大怪我を負って負わせた二人は無傷・・・・・・・・これだけでどれだけ悪質かお分かりでしょう?退学にするべきです!!」


天地の父親がさらに強い口調で問い詰めた



「校長・・・・・・・・・・」


教頭が心配そうな目で校長を見つめる








「・・・・・・・・・・分かりました・・・・・・・・では真中淳平、それに小宮山力也を今日限りで退学という形にしましょう・・・・・・・」


校長が力なく言った












「ちょっと待ってくれ!!!」




隼人と美鈴が校長室になだれ込んできた





「なんだね?君たちは!」


天地の父親が怒鳴った






「お願いです!二人の退学だけは勘弁していただけませんか!」


隼人が校長に頭を下げた






「・・・・・あいつらにだって理由があるんです!東城が政略結婚させられるのを止めるために仕方なく暴力を振るってしまったんです!・・・・・確かに大怪我させたことは悪いことだとは認めます!しかし退学だけは・・・・・・」




「政略結婚だと?言いがかりだ!帰れ帰れ!!もう二人の退学はたったいま決定した。もう無駄だ!」


「アンタに聞いてるんじゃない!校長に聞いてるんだ!!・・・・・・校長・・・・・・どうか勘弁してやってくれませんか?お願いします!!」


隼人が土下座して校長に頼んだ






「隼人先輩・・・・・・・・」



美鈴は隼人が始めて頭を下げる姿を見た・・・・・・・・




しかし校長は何も言わずに黙っていた





「オレを拾ってくれたアンタなら分かるだろ?お願いします!!」



隼人が改めて頼んだが校長は何も言わず半ば顔を避ける感じで座っていた






「校長!!」










「・・・・・・・・すまない・・・・・・・わたしには力不足だ・・・・・・・」




残念そうに校長が告げた



その言葉を聞いて隼人はガックリと肩を落とした










「やれやれ・・・・・・・やっと終わりましたか・・・・・・」



天地の父親がうな垂れたいる隼人を尻目に通り過ぎた





「しかし校長も物好きですな・・・・・・・・こんな過去を持つ男までも入学を許可するなんて・・・・・・・



その言葉に隼人は敏感に反応した



「所詮土下座をしたところで無力な君には同級生すら助けられないんだよ・・・・・・・」



天地の父親がはき捨てるように言った






「へぇ・・・・・・・アンタ・・・・・オレの過去を知ってるのか・・・・・・」


隼人がゆっくりと立ち上がりながらそう言った




「だったらこういうことも予測してるはずだろうなぁ!!」


クルリと振り返ると隼人は思いっきり天地の父親に飛び掛った・・・・・・


















































        真中 淳平
       



  




       小宮山 力也






     




       伊東 隼人











上記の三名を暴力事件により2006年5月28日付けで退学処分とする







    泉坂高校 校長

























翌日の掲示板に通告としてこれが貼り出されていた・・・・・・


[No.215] 2006/10/24(Tue) 14:15:20
BEST OF HERO 第31話 (No.215への返信 / 30階層) - hiro






真中の天地への説得は映研3名の退学という最悪な結果に終わった














泉坂高校映研部の部室・・・・・・・・・







あの賑やかさはどこへ行ってしまったのかとても静まり返っていた。











「なぁなぁ見たか掲示板の張り紙!」


「確か映研のやつらが3人退学になったんだろ?なんでも天地やその父親に怪我負わせたとかで・・・・・・」



「これでもう映研は終わりだな・・・・・・・・」



二人の男子生徒が映研の部室を通りすぎながら囁いた










部室では外村、北大路、美鈴が力なく座っていた・・・・・・・























もう監督の真中淳平はここにはいない・・・・・・・











常にみんなを笑わせていたムードメーカーともいえる小宮山もいない・・・・・・・・











そして東城も・・・・・・・・






映研はもう崩壊寸前だった・・・・・・・・・




























綾はみんながざわついている掲示板の前に立ち止まった



その瞬間群がっていた生徒達がサァーッと場所を空ける




表沙汰にはなっていないが全校生徒が今回の事件の真相を知っていた




ヒソヒソ話の中で東城は張り紙を見つめ立ち止まる・・・・・・・・・














しばらくすると東城はゆっくりと歩いていった・・・・・・・・・




























「・・・・・・・・真中が言ってた・・・・・・・・監督はお前にやってほしい・・・・・・って」




外村が落ち込んでいる妹へ声をかける





だが美鈴は返事をしなかった・・・・・・・












「・・・・・・・・ねぇ外村、あたしたちこれからどうなるの・・・・?」




さつきが外村に尋ねた




「オレにだって分からない・・・・・・・・・・・本当にバカだよ・・・・・・・3人とも・・・・・・」



外村も悔しがって拳を握った













ガラガラ・・・・




全員が扉のほうへ振り返る







東城がゆっくりと部室に入ってきた















「・・・・・・・よく来てくれたな・・・・・東城・・・・・・・・・」




外村が少しでも笑顔をつくろうと努力して東城に声をかけた










「・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・あたしー・・・」



「もういい・・・・・・・・何も言わなくてもいい・・・・・・・・・つらかったな東城も・・・・・・・・」



外村が綾がすべてを言うのを阻止した








東城がそっと上を見上げる






そこには前回のコンクールとともに全員の集合写真が飾られていた・・・・・・・・









「真中くん・・・・・・・・・・・」




写真の中の真中は笑っていた






しかし東城にとってはその真中の笑顔が1番胸を痛めつけた












「もう・・・・・・・いや・・あたしはどうすればいいの・・・・・・・・・」




東城の精神はすでに崩壊寸前だった・・・・・・・・















「真中先輩もいない、小宮山先輩だって隼人先輩も・・・・・・・・・・あの3人に今抜けられていったい残された私達はどうしろっていうの!」


美鈴が強い口調で言った




「あげくの果てにわたしに監督を任せたって?冗談言ってんじゃないわよ!」



美鈴の声はこの静かな教室に良く響いた













「・・・・・・・・・・・・・・・真中・・・・・・・・・・オレたちはいったいどうすればいいんだ・・・・・・?」




外村が涙を堪えながらつぶやいた
























































「なぁ・・・・・・・・・みんな困ってるだろうな・・・・・・・俺たちがいなくなって・・・・・・・」


小宮山が空を見上げながらつぶやいた



3人はただ目的もなく気がついたらこの廃ビルの屋上に上がっていた








「・・・・・・・・・・・東城を救うことが出来なかった・・・・・・・結局何も変わらなかった・・・・・・・」



真中が景色を眺めながら言う
















「・・・・・・・・・・・ありがとうな隼人。」




真中が突然隼人に声をかけた





「俺たちのために天地の親父や校長先生の前で土下座してくれたんだってな・・・・・・・・」




隼人は無言だった










「天地に殴りかかったときにおまえらが似てたのさ・・・・・・・・・・・・・・昔のオレにさ」
















「どうしてもオレと同じ運命だけは辿らせたくはなかった・・・・・・・・・・・・結局無駄に終わったけどな」




「悪かったな・・・・・・・・隼人まで退学にさせちまって・・・・・・・」




「やっぱ6年経っても性格は変わらなかったな・・・・・・・・・・また殴っちまったぜ」



隼人が笑いながら言った
















「これで俺たちも浪人1年生・・・・・・・か」












「うぅ・・・・・・・」





小宮山がついに泣き出してしまった












「泣くな小宮山・・・・・・・・・俺たちの高校生活は終わっちまったけどまだあいつらのために真中と小宮山にはできることがあるんじゃないか?」




「そうだな!せめて最後の文化祭のために部員ではないけど最大限協力してやろうぜ!」


真中が力強く言った










「でもこれから隼人はどうするつもりなんだよ?」



真中の問いに隼人は少し黙っていたが



「・・・・・・・・オレはどうしても天地親子を許すことはできない・・・・・・・・・・・・しかも今回理不尽にお前らまで退学にさせられちまった・・・・・・・・・・・これで同情することなくあいつらを潰すことができる・・・・・・・」



隼人は意味深にそれだけ言った























その3日後




天地は顔に包帯をぐるぐる巻きにしながらも登校してきた




「天地くん・・・・・・・・大丈夫?」


心配した女生徒たちが天地を取り囲む






「大丈夫大丈夫・・・・・・・たいしたことはないよ」



天地が笑顔で言った




外村はその様子を遠巻きに見ていた





「しっかしこうもうまく行くなんて真中のやつは本当にバカだな!」



天地が豪語した








「わざと挑発したのさ、そしたらまんまと乗せられてね、おまけに殴ってくれたおかげであいつを退学にさせる口実が出来てよかった・・・・・・・それに伊東のやつも気に入らなかったんだよね・・・・・・・・しかもあいつ二人の退学を止めさせてほしいって土下座して頼んだらしいじゃないか!」


天地が笑うながら自慢げにそのことを話している




外村は悔しさと怒りで唇を思いっきりかみ締めていた




「おまけに僕の父にまで危害を加えるなんて・・・・・・・まぁ当然退学なんだけどね!」




外村が聞いているとも知らずに天地はすべてを白状していく





唇を噛み過ぎた外村の口からは血が流れていた




















「そんな!すべてが罠だったなんて!」



部室で兄の報告を聞いた美鈴は怒りをあらわにした。




「東城さん!本気であんなやつと・・・・・・・・」



さつきが東城に言ったが



「しかたないもの・・・・・・・・でないと他の社員さんの生活が・・・・・・・」



東城が力なく言った



「オレは天地を許せない!人の心を次々と踏みにじるアイツがオレは大嫌いだ!」


外村まで怒りを表に出していた。






















「みんな・・・・・・・久しぶり・・・・」



その声に全員が振り返る



真中と小宮山の姿だった



もっとももう制服は着ておらず私服だったが・・・・・・








「みんな本当に迷惑かけてごめん・・・・・・・・・・」



真中が頭を下げる



「もういい・・・・・・・・お前等が悪いんじゃないんだ・・・・・・・全部天地に仕組まれていたんだよ!!」




外村が昼間のことをすべて説明する・・・・・・・・

















「・・・・・・・・・・そうか・・・・そうだったのか・・・・・・・」



真中は力なくつぶやいた








「・・・・・・・・・・バカだよな・・・・・・・・まんまと天地の策略に乗せられるなんて・・・・・・・・」








「・・・・・・・・・でもわたしは真中先輩たちのしたこと・・・・・・・人間として正しかったと思います・・・・・」



「美鈴・・・・・・・・」



「本当に天地は許すことはできません!なんとかする方法を考えるべきです!」










「・・・・でもなぁ・・・・・やっぱり俺たちにも限界が・・・・・・・・」



外村の言葉に盛り上がりかけていた全員の士気が下がってしまった





















「そういえば・・・・・隼人くんは・・・・?」




「あいつとはここ3日連絡を取っていない・・・・・・・なんでも天地建設を潰すって言ってたけど・・・・・」



「天地建設を潰す・・・・・・!?」



外村がその言葉に反応した



「会社なんて・・・・・そう簡単につぶせるわけではないだろう・・・・・・・・・どうするつもりなんだよアイツは・・・・・・」











ピリリリリリリ・・・・・・・ピリリリリリリ・・・・・・・・





「あっ私の携帯です!」



美鈴が急いで携帯を取り出す




「はっ隼人先輩!?」



その言葉に全員が美鈴の携帯を覗き込む




ディスプレイには確かに”伊東隼人着信”と書いてあった









「貸してくれ!」


美鈴から外村が携帯を取る




「もしもし隼人か!?今どこにいて何やってるんだよ!」




「とにかくこの声を全員に聞こえるように設定してくれ!」


隼人に言われ外村が音量を最大にする。









「久しぶりだな、みんな・・・・・・・・・たった今面白い証言をとることが出来た・・・・・」



「おっ面白い証言って・・・・・?」




「小西友美を覚えてるか?この間西野つかさといっしょにいた女・・・・・・」




「あぁ覚えてるよ!それがどうかしたのか?」



外村が代表して答える










「そいつの親父は天地建設の元社員だった・・・・・・・・・・・その父親から天地建設を潰せるくらいの情報を手に入れた」



隼人が息を弾ませながら言う









「去年新しく駅前に出来たマンションを知ってるか?」





「あぁあの巨大マンションだろ?」



「あぁそうだ。そこは天地建設が建てたマンションなんだがそのマンションには実は重要な欠陥があるらしい・・・・・・」



「じゅ重大な欠陥って・・・・・?」






















「耐震偽造だ!」



「たっ耐震偽造!?」




全員が驚きの声をあげる



「そうだ!今すぐ倒壊するほどの危険ではない・・・・・・・しかし売り文句の大地震に耐えるほどの強度はないらしいんだ・・・・・・」








「それって・・・・・・・・詐欺なんじゃ?」




真中が静かに言う








「そうだ詐欺だ!小西の親父さんはコスト削減のための工事に反対したため会社を辞めさせられた・・・・・・・・・」



「それじゃあすぐに警察に・・・・・・」






「それが・・・・・・・証拠がない・・・・・・」




「証拠・・・・・・かぁ」



外村が腕を組みながら言った






「そこで外村、お前に頼みがある!」



「なんだよ・・・・・・・頼みって?」








「そのマンションの設計図が天地建設のコンピュータにあるらしいんだがうまく侵入してそのデータを入手してほしいんだ・・・・・・・」



「ハッハッキングしろってことか!」






「そうだ、設計図さえ手に入れられればマンションの耐震偽造も暴くことが出来て告発することが出来る・・・・・・・」




「・・・・・・・・確かにそれがあれば不可能ではないな・・・・・・・・・しかしハッキングとなるとなぁ・・・・・・・」




「頼む外村!お前の腕なら出来ないわけではないだろう?それに天地建設さえ潰れたら東城のこの理不尽な婚約さえなくすことが出来るんだ!」





隼人が電話越しにだが強い口調で言った










「東城のため・・・・・・・・か」










「分かった試してみる・・・・・・・・・ただし期待はするな、それに犯罪じゃないのかそれは?」




「あぁ確かに犯罪になるのかも知れない・・・・・・でもお前等には迷惑をかけるつもりはないし最悪オレ1人の考えにさえすれば大丈夫だ・・・・・・・もうオレは高校生のお前等と違って失うものはない・・・・・・・覚悟はできてるさ・・・・・・」













「隼人・・・・・・・・・・・・・」








「なに言ってるんだよ!オレも小宮山も退学になったんだ・・・・・・・・・・だから俺たちにも協力させてくれ・・・・・・・・」




「そうだ!お前だけかっこいい立場にさせわけにはいかねぇからな!」



真中も小宮山も言った














「隼人くん・・・・・・・・・・本当にあたしのせいでこんなことになっちゃって御免なさい・・・・・・・・・」





「礼はいらねぇよ。これはオレのプライドをかけてるんだ・・・・・・・誰に為でもない!」




隼人が言った








「それに・・・・・・このことは西野って女の協力がなかったらここまで出来なかった・・・・・・」



「にっ西野が!?」



「あぁ・・・・・あいつにとってはこのまま東城が天地といっしょになったほうがいいに決まってるだろう・・・・・・でもあいつも天地のことが許せない・・・・・・・何か力になりたい・・・・・・・・・そう言ってたぜ・・・・・・・」




「西野さん・・・・・・・・」








「だからおまえらが感謝するんなら西野にしろ!そしてあいつの協力を無駄にしないためにも頑張っていこうぜ!」



そう言うとプツンと電話を切った













「みんな・・・・・・・・・・・・・隼人と西野の気持ち・・・・・・・・裏切らないように頑張っていこうぜ・・・・・・・・・・そして東城を救うんだ!」




真中が力強く言った
























[No.219] 2006/10/25(Wed) 16:54:52
BEST OF HERO 第32話 (No.219への返信 / 31階層) - hiro














カタ・・カタカタ・・・・・・カタカタカタ・・・・








「あ〜ダメだー!!」


外村が必死にキーを打ち込んでいたが突然大声を発した






「やっぱり無理そうか・・・・・・・外村」


真中が心配そうに駆け寄る






「あぁ・・・・・・・やっぱインターネット経由のハッキングは無理だな・・・・・・・・たぶん独自のネットワークが存在してるしか・・・・・」




「ちょっと!どうするのよ!隼人からそう言われて2日も経ってんのよ!?」


「そんなこと分かってるよ北大路!」


外村もかなりのストレスを溜め込んでいた









「あの・・・・・ちょっといい・・・・・・」



東城が遠慮しながら言った








「ひょっとしたら天地くんの家のコンピュータならアクセスできるんじゃない?」



「そっかー!自宅のコンピュータならなんとかなるかもしれませんよ!さすがですね東城先輩!!」



美鈴が東城を褒める






「・・・・・でも天地の家のパソコンなんて簡単に使わせてもらえるのかなぁ・・・・・・」



「そっか・・・・・・そこまで考えてなかった・・・・・・・・・」




東城が残念そうな声をあげる






























「いや・・・・・・良いアイディアだぜ、東城・・・・・・・」









全員がその声で振り返る




伊東隼人がポケットに手を突っ込ませながら扉にもたれ掛っていた




「隼人!?」




「お邪魔してるぜ・・・・・連絡がないと思ってもしやと思いここに来たんだ・・・・・」



そういいながら勝手にイスに腰掛ける







「やっぱ・・・・・無理そうか?」



そういいながらパソコンの画面を覗き込む




「何してたんだよ隼人!連絡もなしで・・・・・・」



真中が隼人に声をかける








「あのマンションの住人に話しを聞きまわってた・・・・・・どうやら設計図の偽造だけではなく手抜き工事までしているらしいぜ・・・・・・」



「手抜き工事ですって!?やっぱり最低ねあの会社は!!」


美鈴が怒りをあらわにする






「・・・・で何か良いアイディアあるのかよ隼人・・・・・・」




「あぁ、要するに天地の親父のパソコンさえ使えりゃいいんだろ・・・・・・・・」



そういいながらめんどくさそうに髪の毛を掻き毟る











「全員・・・・・説明するから耳貸せ!」



その言葉に全員が集まった

































「ほっ本当にそんなことするのか!?」



真中が驚きの声をあげた



「しょうがないだろ・・・・・それしか方法はねぇ!」








「でも・・・・・・・犯罪でしょ?バレたら捕まるかもしれないんですよ!!」











「外村妹・・・・・・俺たちは退学になってるんだ・・・・・・・失うものなんて何もない・・・・・・」



「そうだ・・・・・俺たちは問題ない!そうだよな真中!!」


「あぁ・・・・オレも覚悟は出来てるよ・・・・・・」







「問題は東城しだいだが・・・・・・・・どうだ?気が乗らないのならやめるか・・・・?」



隼人が東城に尋ねる







「ううん・・・・・・やらせて・・・・やらせてほしい!!」



東城も覚悟を決めた










「よし!じゃ作戦結構は明日だ!みんな気合入れていくぜ!!」



真中が大声で言った





























































「大丈夫でしょうか・・・・・・・・・・みんな」


美鈴が北大路に話しかける






「信じるしかないでしょ?それに私達を巻き込まないために置いてって行ったんだから・・・・・・」



「そうですよね・・・・・・・信じましょうか・・・・・」



美鈴が時計を見上げながらそう言った

























ピンポーン











「綾さんお待たせ!!いやぁ綾さんから突然映画のお誘いがあるなんて幸せだなぁ!」


天地はそういいながら嬉しそうに家から出てきた



「こっちこそごめんね・・・・・・・急に誘っちゃって・・・・・・」



「いえいえ!綾さんからの誘いならば例えどんなことがあろうとも行きますよ!」



そういいながら天地は家の鍵を閉め東城と嬉しそうに歩いていった


















「・・・・・・行ったか?」


「あぁ完全に行った・・・・・もう戻ってくることはないだろ?」




しばらくすると黒い乗用車から真中、外村、小宮山そして隼人が車から降りてきた






「しかし隼人いいよなー・・・車持ってるなんて!」


真中が羨ましそうに言う



「お前も買えばいいじゃんかよ!もう18なんだし」


「そんな金がどこにあるんだよ?無理に決まってるだろ?」




「おい・・・・・・どうでもいいから早くしろよ・・・・・・怪しまれるぜ・・・・・」



外村が心配そうに隼人に促す



「まぁ見てろって・・・・・・・こんくらいの鍵なら1,2分で・・・・・・」



そういいながらポケットから何やら工具のようなものを取り出した




手馴れた手つきでピッキングを開始する






「すげぇな・・・・・・お前、良いドロボウになれるぜ・・・・」


小宮山が感心したように言った













ガチャン







3分後天地の家の鍵が開いた





「ほっ本当に開いたよ・・・・・・・すげー!」



「だから言っただろ?まかせとけって」


そういって扉から部屋の中へ入っていった








「じゃ小宮山は見張りしといてくれよな」



そう言うと外村も隼人に続いて家の中へと入っていった





























カタカタ・・・カタ・カタ・・・カタ・・




「どうだ外村!」



「ちょっと待ってくれ・・・・・・もうすぐいける・・・・・・」




外村がキーを必死に打ちながら言った







「ダメだ!パスワードを入力しなきゃ開かない!」


外村の言葉に隼人と真中が駆け寄る



確かにパスワードの入力画面がスクリーンに映し出されていた












「こういうときは・・・・・・・」




真中が書斎の引き出しをすべて開ける







「やっぱり・・・・・・・」



そういうと一枚の紙切れを取り出した







「ほら・・・・・オレの父さんもパスワードとか覚えられなくてこうやってメモしてたからもしやと思って・・・・・・」






「でかしたぜ!真中・・・・」



そう言って外村にメモを手渡した




「えっとパスワードは[wx1266]か・・・・・」



そういいながらキーを打ち込む








「よし!出たぜ!」



外村は侵入に成功した



「あのマンションの設計図を探してくれないか?」


「あぁ待ってくれ・・・・・・えーっと・・・あった!これだ!!」



外村はすぐにあのマンションの設計図を見つけだした



「よし・・・・・あとはこれをこのFDにコピーすれば・・・・・・・」



持参したFDをパソコンに突っ込んだ














「しっかし広い書斎だよな・・・・・・・・・・」



「まぁな・・・・・でも今まで汚いことをして稼いできたんだろ?やっぱ許すことは出来ないぜ・・・・・・・」





















「よし!コピー完了!」



外村がFDを取り出した









ピリリリリリ・・・・ピリリリリリ・・・・・




「どうした小宮山!」



「大変だ・・・・・あの社長が帰ってきたぞ!!」



「なっ何だって!!」



全員が窓の外を覗く





あの憎たらしい顔の天地社長がまさに帰ってこようとしている瞬間だった・・・・・・


[No.224] 2006/10/26(Thu) 20:39:58
BEST OF HERO 第33話 (No.224への返信 / 32階層) - hiro





「今日はわざわざありがとう・・・・・・・・映画に付き合ってくれて・・・・・」



「いえいえとんでもない!綾さんの頼みならなんだって・・・・・・」



映画を見終わったあとの別れ際東城がそう言った





「じゃあね天地くん・・・・・・・また今度・・・・・・」



そう告げると東城は帰ろうとした









「綾さん・・・・・・・」



東城がその声を聞き振り返る







「綾さん・・・・・・・本当に・・・すまない・・・・・」



悲しそうな顔で天地がそう言った







「僕だって・・・・・僕だってこのような形で無理やりしたくはなかったんだ・・・・・真中だって小宮山も退学にさせるつもりは・・・・・・・・」



天地は立ち尽くしていた









「・・・・・・・・・・分かってるよ天地くん・・・・・・・・・」











東城はただそれだけしか言うことが出来なかった・・・・・・






























一台の黒い車乗用車が駅前に向けて走っていた






「しかしあぶなかったよな・・・・・・・・」


真中が興奮気味に話す







「あぁ・・・・・・もし天地社長の書斎から屋根伝いに降りてなかったら今頃俺たちブタ箱行きだったよな・・・・・・」



隼人が運転しながら答えた





「それより・・・・・・・せっかくこの設計図手に入れても俺たちには読むことができない・・・・・・・どうするつもりだ?」






「大丈夫、策はある・・・・・・・・・まずは駅前にいる東城と”西野”を迎えに行くのが先だな・・・・」



「にっ西野も!?」


「どうした?不服か真中?」


「いや・・・・・・そうじゃないけど」









「・・・・・・アイツも今回のことで協力してくれた・・・・・・・・だからこれからオレが何をするか知る権利はあると思う・・・・・・だからオレが呼んどいた」







隼人が駅前に車を路駐させる





東城綾と西野つかさ、北大路さつきと南戸唯、外村美鈴が待ち構えていた












「それより・・・・・・・こんな大人数乗れるのか・・・・・?」




「あっ・・・・・・・・・」



外村の質問にただ隼人は何も答えることが出来なかった


























結局、隼人が二回に分けて全員を東城の家まで運送するハメになった






「まったく!ちゃんと計画してくださいよ!」


「うるせー!他のことで頭いっぱいだったんだよ!!」


美鈴の文句に隼人が答える



「それよりあたしの家に来てどうするつもりなの?話し合いなら部室でもどこでもできるんじゃない?」



「そうだよ!わざわざ東城の家でしなくても・・・・・・・」


東城と真中が抗議する







「・・・・・・今回の話し合いには東城社長にも参加してもらおうと思ってね」




隼人がこう言った瞬間、東城の父親が家から出てきた








「君たち・・・・・・君たちがしたことは立派な犯罪なんだぞ!?・・・・・・・・頼むからもう余計なことはしないでくれないか!!」



なぜか真中を睨みつけながら東城父が言った






「でもこうでもしないとあなたの娘さんは天地の息子と結婚させられるんですよ!!」


西野が反論する








「少なくとも天地くんなら綾だって幸せになれるだろう?そこの男よりかはな!!」



真中を指さしながらきつい口調で言った



真中は悔しくてただ唇を強く噛むことしか出来なかった











「・・・・・・・・・あいかわらず幸せな脳みそをお持ちですね・・・・・・東城社長・・・・・・」



静かな口調で隼人が東城父の前に立った



隼人の威圧的な態度の少しひるむ


「いいから黙ってこのFDに入ってある設計図を読んでくれりゃあそれでいいんだよ!」


FDを東城父の前に突きつけながら言った









「なぜあんたの会社の仕事が来なくなったか分かるか?」


「それは・・・・・・不況で仕方なく・・・・・」




「違うな・・・・・・・ただ単に不況なわけじゃない・・・・・・」


隼人がいったん全員を見渡しながら間を空ける






「アンタのような中小企業は大企業からの注文がきて始めて仕事ができる・・・・・・」








「オレは天地建設を調べるついでにアンタの会社も調べた・・・・・・・・アンタの会社は評判も良く、注文だって悪くはなかった・・・・・・・・しかし、ここ半年で一気に少なくなっている・・・・・・・・なぜだか分かるか?」








「確かにここ半年で仕事は少なくなった。それは認めよう・・・・・でもそれはただ単に不況なだけで・・・・・・」





「違う!!アンタの会社は不況なんかじゃない!!天地建設の圧力によってあえて注文を来なくさせたんだ!!」



「うッ嘘だ!!そんなはずは・・・・・・・・」










「天地社長の目的は最初から東城だけだったんだ・・・・・・・・・だからアンタが融資を頼んだとき条件として東城の結婚を持ち出したんだ!!」




隼人の話は東城社長だけでなく全員がとても驚かされた









「・・・・・・なんてやつだ!!最初から仕組まれていたなんて!!」


真中も怒りをあらわす。







「そっそんなばかな・・・・・・・・・」



東城父はがっくりと膝をついた




「なぁ東城社長・・・・・・・・・・・そういう世界なんだよ・・・・・・世の中は・・・・・・」





「いったい・・・・・・いったい私は・・どうすれば・・・・・・・・」



その言葉に隼人はFDを東城社長に渡した






「アンタはこの設計図の間違いさえ見つけてくれりゃいいんだよ・・・・・・・・そうすればあとはオレがなんとかする・・・・・」



隼人の言葉に東城父はただ黙って家に帰っていった・・・・・・






















「すげぇな隼人・・・・・・・よくここまで調べたよな・・・・・・」



真中が感心したように言う









「西野のおかげさ。」


隼人が西野を見ながら言う






「あいつが天地建設だけではなく東城の会社も調べて方が良いって助言したくれなかったらオレもここまで気付けなかった・・・・・・・・」




「西野・・・・・・・・本当にありがとう・・・・・・」




真中は西野に感謝の気持ちを表しながら頭を下げた









「それより設計図も手に入れたんだしどうするつもりなんだ?」


外村が尋ねる



「証拠も揃った・・・・・あとは天地社長との直接対決しかないな・・・・・・・」





「でも・・・・・・これだけあれば告発できるんでしょ?わざわざ直接行かなくても・・・・・・・」


美鈴がもっともらしい意見を言う




「それじゃ意味がない・・・・・・仮に天地建設を潰せたりしたとしてもそれじゃ東城の会社は1200万の借金を抱えたままだ・・・・・・・・」



「なるほど・・・・・・・・」



東城を除く全員が感心した










「ん?どうかしたの東城さん・・・・・?」



唯がうつむいて何も言わない東城を不審に訪ねた













「あの・・・・・・・・・・・・わざわざ天地くんの会社潰さなくてもいいのかなって思って・・・・・・・」



「はぁ?どういう意味だよ?」




「今日天地くんと会ったとき・・・・・・・・とても反省してるみたいだったの・・・・・・・みんなも退学させるつもりはなかったって言ってたし・・・・・・・・」





「じゃあやめろってか!?冗談じゃないぜ!!・・・・・いままでオレたちが東城のために頑張ってきたのにすべてパーかよ!!」


隼人がきつい口調で言う






「あなたは何も分かってない!!あたしのためなんかじゃなく、あなたはただ自分の意地のためにやってるのよ!!」



東城も隼人に負けないような大きな声で言い返した



これは真中にとって東城が怒鳴るのを2度見たこととなった














「分かった・・・・・・・分かったよ!!あぁそうですか!?じゃあとっとと天地の嫁にでもなんでもなりやがれ!!」



隼人は自分のいままで集めてきた資料をバンッと激しく叩きつけるとくるりと反転して車のほうに歩いていった




「まっ、待ってくださいよ!!隼人先輩・・・・・・」


美鈴が隼人のあとを追っかけて言った











バシィッ!











西野は東城の顔を思いっきり叩いていた








「何も分かってないのは・・・・・・何も分かってないのはアンタの方よ!!」







バシッ!




そういいながら西野はもう一発東城の頬にビンタした






「やめろよ西野!!」


真中が必死に西野をとめる






「あの人が・・・・・・あの人が今までアンタのためにどれだけ尽くしてきたと思ってるの!?3時間も資料を調べたり、元社員の人に話しを聞いたり、新聞記者になりすましてマンションの住民に聞き込みもした・・・・・アンタにそれが出来る??アンタはそのとき何をしてたって言うの!?」



西野の声は東城の心に深く突き刺さっていた

















ガフッ!!グハァッ・・・・・・




「隼人先輩・・・・・・隼人先輩!?しっかりしてください!!」


その声に全員が振り返る



そこには血を吐いて倒れている隼人、そして必死に隼人の頭を抱え込んでいる美鈴の姿があった






「どっどうした!?なにがあった!?」


真中が一目散に駆け寄った





「分からない・・・・・・・突然苦しそうになって血を吐いて・・・・・・・・」



道路には鮮やかな血が滴っていた







「とっとにかく!!救急車だ!!」



外村が西野に声をかけた


「うっうん!!」


西野は携帯を取り出し救急車を呼ぼうとした



「まっ待て!!」



隼人が西野の手首を掴む



「救急車だけは・・・・・・・救急車だけはやめてくれ・・・・・・・・」



「でも血を吐いているんだよ!!」






「頼む・・・・・・・お願いだっ・・・・・・・」



隼人はそう言うと気を失った


[No.227] 2006/10/29(Sun) 10:28:41
BEST OF HERO 第34話 (No.227への返信 / 33階層) - hiro





隼人は東城の家の客間で寝かされていた






そして寝ている隼人の周りには美鈴と東城が看病していた









「・・・・・・・・・・・隼人くん、本当にごめんなさい・・・・・・あなたの気持ちも何も考えずにあんなこと言って・・・・・・・」



隼人は東城の言葉をただ目をつぶって聞いていた
























「・・・・・・・東城」








突然隼人が小さな声で言った






「確かにお前の言うとおり俺はただ意地になってただけかもしれないな・・・・・・・・・」




「隼人先輩・・・・・・・・」



美鈴も心配そうに言う





「ただ東城、これはもう東城だけの問題じゃないんだ。マンションの住人だって命の危険に晒されてる・・・・・・・・だからオレは天地建設を潰さなきゃならない・・・・・・・・・これは義務だ!」



「・・・・・・・・うん」




東城は小さく頷きながら答えた





















「気分はどうかね?」



東城父親が隼人のところへやって来た



「まぁまぁですよ・・・・・・・・・それよりどうでしたか・・・・・・・・設計図は?」




隼人がそういうと東城父が設計図を広げた



「やはり君の言うとおりだよ・・・・・・・」



東城の父親はそういいながら隼人に設計図の間違いを指摘した















「しかし分からないな・・・・・・・・なぜ君はここの耐震値が低いと分かったんだね?」



不思議そうに東城父が尋ねる




「・・・・・・・企業秘密」



そういうと隼人は立ち上がった

































「なぁ外村・・・・・・・どうだった隼人の様子は?」






「美鈴と東城で看病してる」


外村がそれだけ答えた








「やっぱ疲れたまってたのかな・・・・・・・・けっこう大変そうだったし・・・・・・・・」



「でも血を吐いたんだよ!単なる疲れだけの問題じゃないでしょ?」



北大路が西野の疑問に答えた








「なぁ、どう思う外村・・・・・・・・」





「オレも病気に関して知識はないけど・・・・・・・血を吐くってことは肺か胃が悪いんだろうな・・・・・・・・」





「じゃあすぐにでも病院に行かないと・・・・・・・・」




「ったく!てめぇらなに物騒な話してんだよ!」



隼人が東城家の玄関から出てきたところだった






「大丈夫なのか!起きてても・・・・・・・」





「大丈夫、どうせ疲れでもたまってたんだろ・・・・・・」


隼人は強がったがしんどそうなのは目に見えていた







「なぁ隼人、本当にすまない・・・・・・・・本来ならオレがすべてしなきゃいけないのに・・・・・・・・」



真中が申し訳なさそうに言う






「じゃ聞くけどこれだけのことお前1人で出来たと思うか?」





「そりゃ確かにお前はオレの想像もつかないようなことをしてきた・・・・・・・いや、これからしようとしていることは分かっている・・・・・・・」







「じゃ黙って待ってるんだな・・・・・・・・」




隼人はそれだけ言うと車のほうへスタスタと歩いていこうとした




「まっ待ってくれ隼人!!」



「・・・・ったく!今度は何だよ?」



「お願いだ!オレにも何か手伝わしてくれよ!!」




「・・・・・・・・話聞いてなかったのかよ?待っとけって言ってるの分かんねぇのか?」



「でも待ってるなんてできないんだ!頼む、俺にもなにか協力させてくれ!!」






「私も・・・・・・・私も何か手伝わせて!!」


「オレからも頼む、何か協力させてくれ!!」



西野や外村達も隼人に強く訴えた









隼人は最初呆れたように真中達の顔を見ていたが無言で携帯電話を取り出してどこかに電話をかけ始めた








「・・・・・・・あっもしもし、オレだよ・・・・・・・・頼んでいた例のもの、用意できた?」




東城と美鈴もその様子を見て集まってきた







「そう、分かった・・・・・・・それじゃ」











「じゃ、真中。西野といっしょに今から小西悟のところへ行ってほしい。頼んどいたものがあっから・・・・・・・・」





「・・・・・・よし分かった・・・・・・まかせてくれ!」


真中は西野といっしょに勢い良く走り出して行った












「そんで小宮山と北大路、外村妹と南戸はこれをマンションの住民全戸に配ってほしい」


車のトランクから膨大な量の紙の束を取り出した






「こっ・・・・これは?」







「怪文書だよ・・・・・・・・これをマンションの住人全員に渡れば面白いことになるからな・・・・・・・」




「分かった・・・・・・・・任せといて!」




北大路が心強く言った































「・・・・・・・・・・なぁ隼人・・・・・・少し聞きたいころがあるんだけど?」



全員が出払ったのを見て外村が隼人に尋ねた








「血を吐いたのは何回目だ?」



「なんだよ改まって・・・・・・・別にたいしたわけじゃ・・・・」



「いいから答えろ・・・・・・・・始めてではないはずだよな?」
















「あぁ・・・・・・・今回で2回目だ・・・・・・・」





「・・・で?なんで病院に行かないんだ?血を吐くなんて重症だろうが!」










「・・・・・・さあね、良くわかんないけどなんかオレの病気が何か分かればきっとこの生活が崩れちまうんじゃないかと思ってね・・・・・・・・」









「・・・・・・・まぁそれは置いといて外村、お前にはこれを渡しとく」


隼人は何やら膨大な機械を外村に手渡した
















「隼人ー!もって来たぜこの書類」


二時間後、真中と西野が小西悟から託された書類を隼人に手渡した





「・・・どうも」


受け取るとパラパラとめくって確認する






「何に使うんだ?それ・・・・・・」


外村が不思議そうに尋ねた







「保険だよ・・・・・・・・・」



自分の車にもたれながらぶっきらぼうにそれだけ言った








「おっ!小宮山たちも帰って来たみたいだな・・・・・」



真中が指さすほうから4人がゆっくりと歩いてきていた





「あー疲れた!!・・・・・・・・ったく本当にこんなの意味あんのぉ!」


北大路が地べたに座り込みながら文句を言った





「一応だけど全部配っときましたよ」








「お疲れさん・・・・・」







美鈴の報告を書類から目も離さずに隼人が答えた













「よし・・・・・・・・とりあえずこんなもんで大丈夫だな・・・・・・」




書類を確認し終えた隼人がそう言った









「なぁ、本当に俺たちは行かなくてもいいのか?」



「邪魔なだけだな・・・・・・・・でも渡した例のやつがあれば充分だろ?」




「外村・・・・・・・例のやつってなんだよ?」




「まぁそれは明日来れば分かるよ・・・・・・・・・・」



外村が隼人から預かった謎の機械を大事そうに抱えながら言った












「明日になれば住人たちも騒ぎ出すだろ・・・・・・・・・・・面白くなってくるぜぇ」



隼人が満足そうに言った



[No.230] 2006/10/31(Tue) 19:27:41
BEST OF HERO 第35話 (No.230への返信 / 34階層) - hiro




「外村・・・・・・オレ達をここに呼んでいったい何なんだよ?」






決戦当日


外村の家に全員が呼び出された







「もう少し待ってくれ・・・・・・・・」



外村がなにやら機械を必死に操作している






「よし・・・・・・・・繋がった!」



「何なのよこれ??」



歓喜をあげる兄に呆れながらも妹が尋ねた







「盗聴器だ・・・・・・・・これを隼人の上着に仕込んである」





「とっ盗聴器!?」



全員が驚きの声をあげた







「隼人の案でな・・・・・・・・これなら隼人が天地建設に乗り込んだ状況がリアルタイムで分かる」






「まったく・・・・・・・隼人って何者なんだ?」



真中が感心したような呆れたような感じでつぶやいた










「おい・・・・・・・聞こえてるか外村?」



隼人の声が機械越しに響いた





「あぁ、バッチリ聞こえてる」



外村がマイクに向かって話した






「今オレは天地建設本社の前にいる。そしてこれから乗り込もうと思ってる・・・・・」



「そうか・・・・・・・分かった」







「隼人くん・・・・・・・・気をつけてね・・・・・・」



東城がマイクを借りて隼人に伝える



「まかせてろって・・・・・・・必ず成功させてやるよ」











「・・・・・・・もしオレの身になんかあったら・・・・・・・・分かってるよな?」



隼人が少し真剣な声で言った







「・・・・・・・分かった。そのときは責任持ってオレが告発する!」




外村が力強く言った











「じゃ行って来るぜ・・・・・・・・」



隼人は泉坂新聞の記者の名刺を握り締めながら会社へと入っていった









































「くそっ!!なぜあのことが漏れたんだ・・・・・・・」



天地社長がデスクを拳で叩きながら言う







「なんでもこのような文書がマンションの住人すべてに送りつけられていたらしくて・・・・・・」


天地社長に一枚の紙を手渡した



「住民の中には警察に被害届けを出したものもいるのか・・・・・・警察だけはなんとかしないと!!」


怪文書を叩きつけながら天地社長が言った







「・・・・・・しかしあの設計図さえ隠せれば証拠はありません、シラをきり通すしかありませんね!」


「あぁ・・・・・・・それにもし設計図が流出しても策はある・・・・・・・大丈夫だ・・・・・・」









「しかしいったい誰がこんなことを・・・・・・・・・弁護士でしょうか?」


「いや、弁護士ならもっと法的に正面からくるだろう・・・・・・・・・・・いったい何者なんだ・・・・・・?」










「社長、ちょっとよろしいでしょうか?」


秘書らしき人物が天地社長に声をかけた








「泉坂新聞の新城という記者がお見えです」



「新聞屋か!くそっ!!もう嗅ぎ付けてきたな・・・・・・」



「どうします?追い返しますか?」




「いや・・・・ここで追い返すといっそう怪しまれる・・・・・・・別室にでも通しとけ!」


天地社長は秘書にキツイ口調で言った





















コンコン



「失礼します」



天地社長はドアをノックし部屋へと入ってきた





「・・・・どうも、泉坂新聞の新城彰と申します」



しかし天地社長は新聞記者と名乗る人物の顔をみると呆れたような顔をした







「何のマネだ・・・・?これは・・・・・・・」




天地社長が隼人を睨みつけながら言った






「へぇ〜オレの顔、覚えてくれてたんですか!?」



わざとらしく感心したような口調で隼人が言った







「何をしに来たんだ?」



「・・・・・・・まずはアンタに謝ろうと思って・・・・・・」








「お顔の具合はどうですか?」







「あぁ、もうとっくに治っているよ・・・・・それより私も忙しいんだ、帰ってくれ!」



天地社長はそれだけ言うとドアノブに手をかけて出て行こうとした














「・・・・・・そりゃそうだ。マンションの欠陥がバレそうになれば忙しくもなるだろうね・・・・・・」




隼人の言葉に天地社長がピタリと動きを止めた









「まさか・・・・・・・・・・貴様がか・・・・・?」








「ご名答・・・・・・・」




隼人はニヤリと笑いながら得意げにポケットに手を突っ込みながら言った










「実はこんなものを手に入れましてね・・・・・・・」




隼人は設計図をきれいに広げながら天地社長に見せ付けた


「これは泉坂駅前のマンション、つまりあんたの会社が建てたマンションの設計図だ」





「・・・・・・・・・」



設計図を見せ付けられた天地社長は少しひるんでいた


「アンタの元社員の人が全部吐いてくれたよ・・・・・・・・さぁ?どうします?」
















「隼人って・・・・・・・・やっぱりすげぇ!」



盗聴器越しですべての会話を聞いていた真中が驚きの声をあげた





「完全に隼人のペースになってきてる・・・・・・このままならいける・・・・・いけるぞ!」



外村も興奮したように言った







「でも・・・・・・・このままうまく行くのかしら?・・・・・・何か裏がありそうな・・・・・・」



東城が不安そうに言う








そして東城の予感は的中した



















「確かにそれはあのマンションの設計図だ・・・・・だが果たしてそれが証拠になるのかね?」



天地社長が落ち着いた感じで言った





「しらばっくれるんじゃねぇ!ネタは挙がってるんだ、ここの耐震基準が間違ってるだろうが!」



東城父から指摘された箇所を指差しながら隼人が言った







「確かにこの設計図は間違っている・・・・・・・しかし良く見たところそれはコピーされたものだね?果たしてそれが本当の証拠と言えるのかな?」




「どういう意味だ?」




「誰かが偽装したかもしれないだろう?我が天地建設を陥れるために・・・・・・・」





確かに天地社長の言うとおりだった







「・・・・・それに、この設計図をどういう経緯で知ったかとても気になりますね・・・・・・・・なんなら警察でも呼んで話し合いましょうか?なぜならこの設計図は私の書斎のコンピュータか金庫にしかないんでね!」





(ぐっ・・・・・・・・!)




隼人は追う側から完全に追い詰められる側になってしまった





























「ちょ・・まずい状況になってるぜ!!」



「まさかその手があったとは・・・・・・それに追求されちまえばオレ達が天地の家に侵入したこともバレちまう!どうするんだよ!!」



真中も焦りながら言った












ザァーー・・・・・・・・・・・・・





そして突然盗聴器からはノイズが流れ何も聞こえなくなった





「どうするの!このままだと隼人先輩が!!」



美鈴も必死に言う




しかし今の真中達にはどうする術もなかった













(隼人くん・・・・・・・・・どうか・・・・・・どうか無事に帰ってきて!!)



東城は心の中でそう思いながら必死に手を合わせた


[No.237] 2006/11/06(Mon) 17:09:25
BEST OF HERO 第36話 (No.237への返信 / 35階層) - hiro

バキィッ!!







「さぁ言え!!だれに雇われた、黒幕は誰だ!!」




天地社長は隼人の顔面をおもいっきり殴りつけた








ドスッ!!


天地社長は間髪いれずに今度は蹴りをいれた










「・・・・・・黒幕なんていねぇ・・・・・オレ1人だ・・・・」



隼人が口元を拭いながら吐き捨てた







ふと床をみてみる



天地社長に蹴られて壊れてしまった盗聴器の残骸が転がっていた




「ククッ・・・・・・盗聴器までしかけてくるとは・・・・・是非黒幕が知りたくなったぜ・・・・・」



盗聴器の残骸を見ながら天地社長は不適な笑みを浮かべる










「なぁ・・・・・もう痛い思いはしたくないだろ・・・・・・勘弁してほしかったらおとなしく白状しろよ・・・・」




天地社長は隼人の前髪を掴みながら脅した







しかし



隼人は余裕ある表情を浮かべていた








「・・・・・・・離せ!」



突然そう言うと隼人は天地社長の手を振り払った






「・・・・・・さて、そろそろ茶番は終わりにしようか」







「茶番だと・・・・・・・?どういうことだ」






「お遊びはここまでってことさ!」





そう言って隼人は床に唾を吐き飛ばす




殴られたことにより唾は血で真っ赤だった




















「さすがは天地社長・・・・・・・・・設計図がバレたときの言い訳まで考えてるとはやっぱ一筋縄ではいかねぇなぁ・・」





隼人は関心しながらもうひとつの書類を取り出す





それは隼人が以前「保険」と言っていた物だった












「どうした?やけに強気じゃないか・・・・・・追い詰められている割には」






「別に追い詰められちゃいねぇよ・・・・・・・・もしオレが設計図しか持っていなかったら話は別だけど・・・・・・」




そういいながら隼人は書類をパラパラめくった










「確かにアンタの会社は一流だ・・・・・それはオレも調べている上でそう思ったよ」





「フン!そんなこと・・・言われなくとも分かっている」















「と・こ・ろ・が。一流の天地建設さんでも取引先の相手を間違えたようだぜ?」







「・・・・・・どういう意味だ?」







隼人は答えの代わりに持っていた書類を渡した





「!!」




天地社長はその書類を見ると態度を一変した








「それはあのマンションを建てるときに使った鋼材のリストだ・・・・・・・・・・どうだ?忘れたとは言わせねぇぜ?」




確かにそれはマンション建設に使った鋼材の細かいリストだった






「アンタ・・・・・・この設計図が偽装された・・・・・・そう言ったな?」




天地社長はただ何も言わずそのリストを見ていた








「おかしいよなぁ・・・・・・・アンタの会社を陥れるために偽装された設計図なのにその設計図通りに耐震基準を満たしていない鋼材の注文を実際に天地建設がしてるなんてなぁ」




ワザとらしく意気揚々と隼人が言った




天地社長は冷や汗が目に見えるほど流していた







「ということはそれによって生じた差額を得る為に天地建設の人間が敢えて偽造した・・・・・・そう考えるのが筋じゃないのかい?」



隼人がバンと設計図を机に叩きつけながら言った





「差額金ざっと10億・・・・・・・まんまと手に入れたってわけだ・・・・・・・」





「これは明らかに詐欺だ・・・・・さらに手抜き工事までしているみたいじゃねぇか・・・・・・もう終わりだね」
















「どうしよっかなぁ・・・・・・・・このまま警察に行ってもいいし新聞社に売りつけるのも悪くないよなぁ・・・・・・・」













「・・・・・・・・貴様は強請ろうとしているのか・・・・・目的は金か!?」




「おっ!?さすが天地社長、話の分かるお方だねぇ・・・・・・」



隼人は待ってましたといわんばかりに言った










「1500万・・・・・・・・それで勘弁してやるよ」



「1500万だと!?ふざけるな!!」



天地社長が鋼材のリストを床に叩きつけながら激しく言った





「10億も手に入れたんだろ?1500万くらい安いだろうがぁ・・・・・・それに今これを公にされたほうがまずいんじゃないのかい?・・・・ブタ箱行きだぜ?」





「ぐっ!・・・・・・・・しかし・・」





天地社長は必死に物事を考えているようだった











(さぁ、せいぜいよく考えろ・・・・・・・オレかアンタかどっちが有利か・・・・・・・・・・)






天地社長を見下ろしながら隼人は勝ち誇ったかのようにそう思った

























「社長!!いいんですかあんなガキに1500万も渡しても!!」



隼人が立ち去ったあと、幹部らしき男が社長に問い詰めた




「アイツはただのガキなんかじゃない・・・・・・・・完全に弱みを握られてしまった・・・・・そうするしかないだろう・・・・・・」





「しっしかし・・・・・・・」






「1500万・・・・・確かに痛い出費だが東城の会社も娘も手に入るんだ・・・・・・・犬に噛まれたとでも思うしかないだろう・・・・・・」




天地社長は憎らしげに車に乗ってでていく隼人の姿を窓から見ながらそうつぶやいた





















「さすがは天地建設・・・・・・すんなり1500万だしてきやがった・・・・・・」




助手席に置いたアタッシュケースを見ながらつぶやく





「まぁ後ろめたい会社は強請ればすぐ払うよな・・・・・まぁたいしたことないんだろうな。1500万くらい・・・・・・」



隼人は車を走らせた




もちろん目的地は東城の家である










「しかしあのオッサン・・・・すごい力だったよな・・・・」



殴られた右頬をさすりながらつぶやいた



「おっと!忘れてた・・・・・連絡でもしてやんねぇとな。心配させちまったし」




隼人は車を路肩に停めると携帯電話を取り出し




[東城綾]



を選んだ





























                        次回 最終話














































































[No.246] 2006/11/12(Sun) 12:44:20
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