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   笑顔―プロローグ― - ナオ - 2007/01/03(Wed) 21:09:43 [No.262]
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笑顔―プロローグ― (親記事) - ナオ

ザ―――


その日の東京はとても冷たく、暗い夜だった


12月の雲は静かな雨を降らせていた


そう、静かでつめたい雨を……




時刻はすでに12時を過ぎ、日付が変わる


東京といっても町外れにある小さい田舎でほとんどの家の明かりは消えていた


ただ一つの家を除いては―――――





「イヤッ!!こんなのイヤァァ!!」


家の中では少女が一人泣いていた


いや、泣き叫んでいた


少女は立つ力さえ失いひざまずいていた


その横で少女の肩にそっと手を添えるのは母親らしき女性


彼女の顔にも涙が溢れていた


少女の後ろで立ち尽くしている男はおそらく父親だろう


その男の顔もまた涙でいっぱいだった





少女の目の前には一人の老婆が横たわっていた


しかしその老婆から生気は出ていなかった


どうやらこの老婆は少女の祖母らしい




時計の長針が一回りした時、ようやく少女は泣き止んだ


少女は祖母の頬をそおっと撫でてみた


頬は冷たく皺がたくさんあった


しかし祖母の顔は優しく、とても暖かそうだった


まるで祖母が少女に微笑んでいるかのように


「ぐすん……おばあちゃん……」


その夜少女の家の明かりが消えることはなかった


家の明かりが外に漏れ、すこしぼやけた表札が確認できた





「西野」





ザ―――


その日はとても冷たく、暗い夜だった


12月の雲は静かな雨を降らせていた


そう、静かでつめたい雨を……


[No.262] 2007/01/03(Wed) 21:09:43
笑顔―第2話― (No.265への返信 / 3階層) - ナオ

――― 一週間後 ―――


入学を祝ってのレクや先輩たちへのあいさつも終わり、淳平たちも少しずつ学校に慣れてきていた




6時限目も終了し、外村が帰ろうとするのを淳平が呼び止めた


「待ってくれ、外村」


「ん?」


「実は……映像部に入らないかなぁ〜っとおもってよ」


「映像部?」


「おぉ。俺が雪華高校に入ったのも映像部に入りたいからなんだ

   
         外村も映像とか好きだろ?一緒に入らないか?」






そのとき開いていた窓から桜の花びらが一枚入ってきた


その花びらは外村の持っていたデジカメの上にそっと落ちた




外村はその花びらをじっと見つめ、言った


「あぁ、面白そうだしな。入るわ」


「まじで!?よっしゃぁ!」


「じゃぁさっそく行こうぜ、入部手続きしに」


「え?今ぁ??」


「何言ってんだよ、ほれ、さっさと行く!」


「……へいへい」


淳平と外村は教室をあとにした


外村のデジカメから零れ落ちた花びらはまた窓から出て、天高く昇っていった


まるで 『頑張れ』 と応援しているかのように―――





階段を一つ上がり右に曲がった突き当りが部室だ


隣の部屋の使っていない部屋を素通りし、二人は部室の前まで来た


が、入ることができなかった


【映像部】 だと思っていた部室の扉には 【CG部】 と書かれていたのである


淳平は言葉を失った


「ここ……確かに映像部の場所だよな?」


外村の問いに淳平は答えることができなかった


映像部のためだけに雪華高校に受験したというのに肝心の部活が無かったのだ





すると、扉が開いた


扉の先には一人の男がいて、淳平と外村を不思議そうに見つめていた


男はすらっとした体系で、髪型も制服もすべてが完璧に調えられていた


顔もなかなかのイケメンで、きっともててることだろう


「なんだ、お前ら。もしかして入部希望者か?」


「え、あの―――」


「まぁ入れ!歓迎するぞ〜」


そう言ってその男は淳平と外村を無理やり部室へと入れた






『カタカタ……』


部室ではキーボードを叩く音がせわしなく聞こえていた


あとは何かの機械音


部屋は薄暗くパソコンのモニターが不気味に光っていた


部屋にはパソコンが数十台あり、数台を除いては部員とみられる男女が何かの作業をしていた


2人が入ってきても誰一人目線を上に向けようとしなかった


ただひたすら画面をみつめているだけで


「今、みんな作業に集中してるからぶっきら棒に見えるけど
 
   
       普段は面白くて良い奴ばっかなんだ。気にすんな!」


男がソファを指差したので二人はそこに座った


「CG部へようこそ!俺の名前は須藤翔太。部長だからよろしくな。どう?さっそくだけど入部するか?」


そう言うと、翔太も向かい側のソファに腰を下ろした


「あ、あの!ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」


淳平が言った


「ん?どうした?」


「CG部ってどんなことをやるんですか?」


翔太は突拍子のない質問に驚いていたが、噴出したように笑い出した


「ははは!!なんだ、お前ら。CGに憧れてここへ来たんじゃないのか?」


二人は黙って下を向いた


そんな二人を見ながら翔太は続けた


「CG――コンピューター・グラフィックスの略だな。

    
     俺らはパソコンを使って映画や漫画、ゲームなどを作ってるんだ

  
  今は映画を作ってるんだがな。ほら、丁度あそこ」


翔太が指差した方向には一台のパソコンを数人の男女が囲み、なにやら難しそうな作業をしていた


「あいつらがやっているのがまさにCG処理」


二人はその様子をじーっと見つめていた






「で、どう?入部するの?」


「ちょっと待ってて下さ〜い♪」


外村はそう言うと立ち上がり、淳平を引っ張り上げ部屋の外に出た


「おい、どうすんだよ、入んのか?」


外村の問いに淳平は黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた


「俺は…俺は、CGじゃなくて、実際の映像で映画を作りたいんだ!」


「そう熱くなるなって!わかってるよ、そんくらい。

  
         だから入んのかどうか今聞いてんだろっ?」


「……」


「おい、だまんなよ」


「……」


「……はぁ〜」










「入ってみるか……」


「ん?」


淳平がようやく話し出した



「CG部。入ってみようぜ」


「お前はそれでいいのか?」


「映像部ないんじゃしょうがねぇし。とりあえずCGに触れてみようぜ」


「はぁ〜……まぁ言うと思ったけどよ」


「じゃぁ、入部届けもらいに行こうぜ!」



二人は部屋へと戻った




「「須藤先輩!僕たちCG部へ入部します!!」」


[No.266] 2007/01/05(Fri) 23:50:07
笑顔―第3話― (No.266への返信 / 4階層) - ナオ

CG部に入ってからの淳平と外村は―――――暇だった


大事な仕事はすべて先輩がやってしまっている


大事な仕事といってもCG処理すべてで、二人には何もやらせてくれなかった


二人の唯一の仕事といえば、そんな先輩達の仕事振りを観察したり、次回CG映画の元となるキャラクター考案


あとは部屋の掃除だけであった


外村はたまに先輩たちに隠れ、自信の製作しているHP『めろん100%』の更新などをやっていたのでまだ暇を潰せていた


しかし淳平はHPなど持っていなかったし、本当に何もすることがなかった





――― 一ヵ月後 ―――



5月


二人がCG部に入部してから早くも一ヶ月が過ぎた


淳平はもう我慢の限界だった




放課後、いつもは外村と一緒に部活に行くのだが、この日は一人で行った


「須藤先輩!」


「……」


「…あり?」


部屋に翔太はいなかった 多分、どこかへ出かけたのだろう


他の部員たちも、淳平を見ようとはせずに黙々と作業をしていた


「あの……」


「……」


誰一人として返事するものはいない


淳平は少し切れ、大声で叫んだ


「あのっ!!」


「…なんだ」


一人の男が淳平に近づいてきた


この人は、CG部の副部長、田辺和彦先輩だ


無口でその表情は見るたびに変わらない


大らかな翔太に比べて、和彦は淳平にとって恐い存在だった


「用が無いなら俺は戻るぞ」


和彦が向きを変えたので淳平は慌てて言った


「あの!僕たちにもCG処理をやらせて下さい!」


この言葉には部員のほとんが驚いたらしく、何人かが淳平に視線を向けた


淳平はそんな視線などかまわず話を続けた


「僕たちも、もう入部して一ヶ月経つんです。簡単なアニメでもいいんでやらせて下さい!」


「今は映画を作ってるんだ。アニメを作る必要はない」


和彦は背を向けながら言った


「で、でも!それじゃいつやらせてもらえるんですか?」


「知らん。部長にでも聞いたらどうだ?」


和彦は淳平と話すのが面どくさいらしく、早く話を終わらせようとしていた







「こんなことなら……映像部に入ればよかった」


「なに?」


淳平の呟きに対し、和彦は敏感に反応した


淳平はそのまま続けた


「僕は映像部に入りたかったんです。でも、ないからCG部に入ったんです」


「……映像部はあったさ」


「え!?」


「お前らが入学してくる一年前までな」


和彦は向きをまた変え、近くのソファに腰を下ろした


「映像部は今の時代には無意味なんだ。これからはパソコンの時代だ。

        だから俺たちはCG部を作った。あいつらには悪いことをしたがな」


「あいつらって……?」


「映像部のやつらだよ。ここは昔、映像部の部室だった」


『どうりで』


淳平はそう思った


そしてだんだんと腹が立ってきて、気が付いたらこう怒鳴っていた


「CGは実写の映像を超えられない!CGで映画なんて作れない!」


和彦は少し驚いていたようだがすぐに余裕をかました


「フン…お前に映画の何がわかる?」





「俺は映画監督になる男だ!!」




言葉遣いが悪くなったことに反省したが、それ以前に周りの視線が不思議だった


今まで作業を続けていた部員も、最初からこっちを見ていた部員も皆淳平の方を見てクスクスと笑い出したのだ


和彦も笑っていた


「映画監督だって〜馬鹿みたい」


「夢見ることはいいことだべ!だはは」


「いまどきあんなこという奴がいるんだな」


周囲からはいろんな声が聞こえてきた


淳平はそいつら全員を殴りたかったが、拳を強く握り必死で堪えた


「実写はCGに負ける!これが現実だ」


和彦の言葉は痛かった


淳平は黙って部屋を出て走り出した


廊下で外村とすれ違った


「お前なんで先に行くんだよ!…って!おい、どこに行く?」


外村の問いを無視し、淳平は走り抜けた


校門から出て、拳に力を入れながらあの場所へ向かった


[No.268] 2007/01/06(Sat) 08:12:15
笑顔―第4話― (No.268への返信 / 5階層) - ナオ


淳平は全力で走っていた


目には涙が溢れていて走る方向と逆に横に流れていった








「ハァハァ……」


淳平はあの場所に立っていた


自分だけの秘密の場所




もう5月なので桜の花びらは散っていた


淳平は木に腰かけ、話しかけた


「なぁ、夢ってかなわねぇんだべか……?


           俺の夢って無謀(むぼう)なんだべか?」



すると風が吹き、木が左右に揺れた


『そんなことないよ』と励ましてるように見えた


「励ましてくれてありがとな……」


淳平は立ち上がり家に向かって山を降りていった


その背中はとても小さかった







家に帰ると、玄関で母と鉢合わせした


手には買い物籠を下げている


「どっか行くの?」


「ちょっと隣町まで畑の肥料を買いにね」


「俺が行くよ」


「あらっ!どういう風の吹き回しかしら?」


母の皮肉も反応せず、お金だけもらって外に出た


どこか外に出てぼーっとしたい気分だったのだ








隣町まで行くのに電車を使った


淳平は適当に空いている席に座った


向かい側には小さな男の子と女の子が並んで座っていた


せいぜい5才くらいの子供で、両脇には母親と見られる女性が座っていた


「僕ね、大きくなったら警察官になるんだ!」


「えぇ〜『だいき君』には似合わないよ〜


               『だいき君』弱虫だもん」


淳平はその会話を聞いていて、男の子は今の自分と同じだなんて思っていた


それと同時に自分の幼少時代のことが頭に浮かんできた




電車の男の子のように強い意志を持っっていた頃の自分のことを


[No.269] 2007/01/06(Sat) 16:52:17
笑顔―第5話― (No.269への返信 / 6階層) - ナオ

それは、真中淳平が小学生になったばかりの頃に遡る










「お父さん、どこに行くの?」


先月、雪華小学校に入学したばかりの淳平は、日曜日に父とお出かけをしていた


父は行き先も告げずに淳平と外に出た


淳平が何度行き先を尋ねても父は


「今にわかるっしょ」    の一言だけだった






二人が来た場所は 『映画館』 だった


2,3年前にできたそこそこ新しい映画館で、外見は立派だった


二人は中に入っていった




中は外見ほど立派ではなかったが、当時の田舎にとっては十分な設備であった


しかし、ここが何をする場所なのかわからない淳平は戸惑っていた


映画館にはじめて来たのである


「お父さん、ここどこ?」


「今にわかるっしょ」


「もう!さっきからそればっかだよ!」


「ほら、あそこのドアを開けてみ」


淳平は父に言われたとおり、目の前のドアを開けた


大きく重いドアだった




「うわぁ……暗っ!!」


部屋の中は暗く、何人かの客が席に座っていた


もうすでに映画のプロローグが始まっているらしく、モニターには画像が映し出されていた


「大きい……」


淳平は始めてみた光景に口を閉じずにはいられなかった


父に引っ張られて空いている席に座った







映画の内容は小学生が見るような子供向きの映画ではなかった


淳平は話の内容が全然わからなかったが、ただ画面を食い入るように見つめていた


飽きることも無く視線を一度もそらさずに






――― 二時間後 ―――



「どうだったか?」


「すっごかった!」


「んだか!よかったな」


「うん!」


映画の内容がわからなかった淳平には 「すごい」 という表現しかできなかった


しかし、確かに凄いと思ったのだ



淳平はそのとき、映画にとても興味を持った


どこで、誰が、どんな風に、どのくらいの時間をかけて作るものなのか


幼い淳平にはわからないことだらけだったが、あえて父には聞かなかった


自分で調べてみたいと思ったのだ





それから淳平は毎週日曜日に、父と映画館に行くようになった


見る映画は全部大人用でもちろん淳平が見ても面白くない


でも、映画を見ているときの淳平の顔はとても輝いていた








――― 二年後 ―――


淳平は3年生になった


前みたいに毎週はいけなくなったが、月に二回は必ず映画を見ていた




そんなある日、淳平に映画に関しての転機が訪れたのだ





近くの高校を舞台に映画の撮影が行われることになったのだ


淳平はその話を父から教えてもらった瞬間、家を飛び出した


一目散にその高校まで走り、すでに何人かいた野次馬にまぎれた


小さい体を活かし、巧みに人の間をすり抜けて最前列に立った


そこで淳平が見たものは驚くべき光景だった


数台のカメラと数十人くらいの出演者、エキストラやスタッフも入れると軽く百人は越していた


「す、すげー」


映画作りがここまで偉大なものとは思っていなかった


せいぜい一台のカメラで数人で作業をするものだとばかり思っていた淳平は、その日の撮影が終わり


野次馬が帰った後もずっとその現場に居た


撮影は一週間近く行われていたが、淳平は毎日足を運び、朝から晩まで見学していた





撮影最終日


「カットッ!はい、終了!!!お疲れさん」


一人の男の声と共に撮影が終了した


淳平は機材の片付けなども見学していたが、暗くなってきたので帰ることにした


するといきなり後ろから肩を叩かれた


ビックリして振り向くと、一人の男が立っていた


「よぉ!坊主毎日来てるよな?」


「あの……おじさんは?」


「俺はこの映画の監督をした角倉周だ」


「映画の監督さん!?」


「なんだ、珍しいか?はっははは」


淳平はとても興奮していた


『角倉周』 という名前こそ知らなかったが、映画監督の存在にはとても興味をいだいていたからだ


「映画に興味があるのか?」


「はい!」


角倉はにこっと笑ってこう言った


「ならば映画監督になればいい」


「え!?」


「映画監督になって映画を作れ。そしてその映画を俺が見てやるぞ」


「いいんですか!!」


「でもな。映画監督といってもそう簡単になれるもんじゃない。たくさん勉強して努力しなきゃ駄目だぞ?」


「僕、頑張ります!そしていつか映画監督になります!」


「そうか!じゃぁ名前を聞いといてやる。いつか有名になったときのためにな」


「ま、真中淳平です!」


「頑張れ、淳平」


角倉はそう言うと淳平の頭をポンと叩いた


「そうだ!淳平。高校生になったらここの高校に入ればいい」


「なんでですか?」


「ここの高校には 『映像部』 っていうのがあるんだが、将来監督になるならけっこう役立つんじゃないか?」


「はい!そうします!!」


「じゃぁな、淳平。いつか映画の世界で会えるのを楽しみにしてるぞ」


角倉はその場を立ち去った



淳平は角倉の背中に深く礼をした


そして高校の校門を見つめた


「…雪華高校か……」


淳平はにかっと笑うと走って家へ帰っていった







淳平はこの日、強い二つの決意をいだいたのだ



そしてこれが真中淳平の映画監督になろうと思ったきっかけなのである






























気が付くと、目的の電停を三つほど越していた


向かい側に座っていた子供もいつのまにかいなくなっていた


「やべっ!次降ります!!」


結局遠回りをして肥料を買いにいく羽目になってしまった


歩きつかれて家に帰った途端に母に遅いと叱られた


淳平はそのまま自分の部屋に直行した



「ふぅ〜疲れたぁ〜!!」


ベッドに寝転び、大の字になってみた


「でもおかげで大事なことが思い出せたし、まぁいいんでねぇの?


    俺は映画監督になるんだ。誰がなんと言おうともな


                そして角倉さんに俺の作った映画を見てもらうんだ」 




そう独り言を呟いた後にゆっくりと目を閉じた


[No.270] 2007/01/07(Sun) 16:55:44
笑顔―第6話― (No.270への返信 / 7階層) - ナオ

――― 次の日 ―――



「行ってきます!!」


淳平は勢いよく玄関のドアを開け家を飛び出した


いつもの細い一本道をすり抜け、裏山を登りだした




桜の木はいつものようにユラユラと風に身を任せていた


淳平は桜に話しかけた


「なぁ、俺さ。頑張るよ。俺は絶対に映画監督になる!


   誰に笑われようと関係ない!


            俺は立派な映画監督になって角倉さんに認めてもらうんだ!!」


淳平は立ち上がると坂道を一気に下っていった



『頑張れ』



桜の木がざわざわと揺れた


















――― 放課後 ―――


「なぁんてはりきってみたけど……」


淳平は何をしたらいいのかわからず、へこんでいた


「外村にも話しづらいしなぁ〜」


昨日外村をおいて、部室を飛び出したのを気にしていた


無論、外村はそんなこと気にしていなかったが


「はぁ〜〜どうすっかなぁ」


淳平が顔を机に埋めていると誰かが声をかけてくれた


「真中くん……どうしたの?」


淳平はばっと顔を上げた


見上げた先に立っていたのは―――綾だった


「と、東城……」


「なんか元気ないみたいだけど。具合でも悪いの?」


「まさか!ほっほら!こんなに元気だぜ〜」


淳平は立ち上がって腕を振り回した


しかし綾には無理してることくらいお見通しだった


「もしよかったら話くらい聞くけど」


「……」


淳平は静かに席についた


「実は…さ……」



淳平は昨日のできごとをすべて話した


CG部の先輩と口論になったこと


そのとき口を滑らした自分の夢を笑われたこと


くやしくて飛び出して外村を無視したこと


電車に乗って幼い頃を思い出し、もう一度頑張ってみようかなと思ったこと


でもどうしたらいいかわからないこと


「――ってことで悩んでたんだ」


綾はまっすぐ淳平を見ていた


淳平はなんだか恥ずかしくなって目をそらした


綾も少し照れながらこう聞いた


「ま、真中くんの夢ってなに?」


「え??」


「あ!嫌だったらいいの!ごめんなさい」


淳平は少し黙り込んでいたが、やがてゆっくりと口を開いた


「俺は映画監督になりたいんだ。有名になって世界中の人たちに俺の映画を見てもらう!」


「……」


綾は黙り込んでいた


「…やっぱ俺には無理かな?」


「…っえ!っあっと……か、かっこいいよ」


「まじ?」


「うん!私は応援するね」


「ありがとう」


二人は笑顔になり、これからどうすればいいか考えていた





30分くらいが経った時、綾が一つの考えを思いついたらしい


「そうだ!映像部……映像研究部をつくろうよ」


「え……映像研究部?」


「うん!CG部に真中くんが求めてるものがないなら、自分で作るの!」


「いや…でも簡単には作れないよ」


「大丈夫だよ」


綾の自信に満ちた笑みをみながら淳平は何が大丈夫なのか考えた





この綾の思いつきで、淳平たちの運命は大きく……


とても大きく変わることになる


[No.273] 2007/01/19(Fri) 21:58:24
笑顔―第7話― (No.273への返信 / 8階層) - ナオ

淳平は職員室の前にいた


ふぅっ、と一息ついた後ドアに手をかけた



『ガラガラ』


「失礼します!1−Aの真中淳平です。黒川先生はおりますか?」


「ちょっと待て!」


奥の方から黒川先生の声が聞こえてきた


数分後、先生が淳平の元へやってきた


「すまんな。奥の方で資料を印刷していたんだ。で、わたしに話とはなんだ?」


「あ、あの……映像研究部の顧問になって下さい!」


「はぁ!?いきなり何を言い出すんだ?」


「あの…新しく部を立ち上げたいんですが……」


「―――わかった、ちょっと待て。大事な話のようだから仕事が終わってから聞くとしよう


          となりの応接室で待ってろ」


「はい」

















「待たせたな」


「いえ」


応接室で淳平が待つこと30分。黒川先生が入ってきた


応接室は教室の一回りくらい小さな部屋で中央にテーブルがあり、ソファが2つそれぞれ向かい合っておいてあった


淳平はドアから見て右側に座っていた


黒川先生は淳平の向かい側に座った


「さて…さっきの話だが」






「俺、CG部に入ってました。でも自分のやりたいこととは違うことに気づいたんです


       CG部では俺の目的が果たせないって


  だから映像研究部を立ち上げたいんです!」




「お前の目的とは何だ?」




淳平は一瞬ためらったが、黒川先生なら神経に聞いてくれると判断し話し出した



「俺の将来の夢は映画監督になることなんです」




「……ほう、いまどき珍しいな」




「映画の中でもCGは欠かせません。でも、実写の勉強ができないのならCG部に入る必要がないんです」




「だが、今はその映画に欠かせないCGを学ぶことも必要なんじゃないのか?」




「最初はそう思いました。でも……俺たち1年生には雑用以外の仕事をさせてくれないんです」



「……」




「先生、いいでしょう?部の顧問になってください!」




「思えの気持ちはわかった。それにわたしは一応映画もわかってるつもりだ




     知り合いに映画監督がいるしな」




「じゃぁ……!」




「部を立ち上げるということは難しいことだ。まず人数が必要だ。それに費用も色々かかるだろう」



「部員はすでに7人集まっています。カメラもあります」




「7人?」



「はい!」




「メンバーを言ってみろ」




「えっと―――――――」





―――――――――――――――――――――――――












































――― 1−A ―――



「みんな、やったぞ!!」


淳平は教室に入るや否や叫んだ


教室には外村以外のメンバーが集まっていた


「ほんとに!?」


「やったな!」


「フン、お前にしては結果を出したようだな」


みんなも口々に感想を漏らした


淳平と綾は先日のできごとをみんなに話したのだ


一緒に映研部に入らないか……とも相談した


するとみんなは淳平が想像していた以上に快く引き受けてくれたのだ


「さっそく明日から部活開始だぜ〜」


みんなとても嬉しそうだ


「入部届けもって来たぜ!」


淳平はポケットから入部届けを出した


そこに一人づつ名前を書き始めた





 
     映像研究  部

           部員  7人

 
 部長    真中俊平
 副部長 
 メンバー  東城綾  
       北大路さつき
       中村トモコ
       大草直人
       天地勇人
       小宮山力也








「ん?副部長は誰やるの?」


さつきが淳平に質問した


「えっ……べ、別にいらねぇべ!代表は俺だけで十分っしょ!」


「お前なんかにまかせれるかっつーの」


小宮山がつっかかる


そんな小宮山を無視して淳平は続けた


「え〜っと、部室は―――CG部の隣だから……」


「じゃぁ今からさっそく行こうぜ!」


「おい!俺の話を聞けって!」


小宮山が急に走り出して教室を出て行った


みんなもあとから続いた


結局教室に残ったのは淳平と綾だけになった


「……ったく。話くらい聞けっての!」


淳平が不機嫌そうに適当な席に腰を下ろした


「ねぇ、真中くん?」


「ん?」


綾は窓に近づき外を眺めながら呟いた


「その…おせっかいかもしれないけど、外村君はいいの?」


「―――!!」


「多分、外村君は何も怒ってないはずだよ」


「そんなわけあるかよ!俺はあの日、あいつをおいて部室を出てったんだ


         そして勝手に止めちまった」


「外村君は気にしてないよ。それに真中くんだって―――」


「東城!俺たちも行こうぜ、新しい部室!」


「……うん……」


淳平と綾は教室を後にした


机の上にはどこか物足りない入部届けが置かれていた
       


[No.283] 2007/01/26(Fri) 19:57:46
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