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   SS【花火】 - Lily - 2005/08/31(Wed) 13:13:03 [No.28]



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SS【花火】 (親記事) - Lily

自転車で上り坂を一生懸命走りぬける。


前かごにはバケツと花火セットがはいっている。


後ろには彼女が座っていて、僕の背中と彼女の背中は触れ合う。






SS 【花火】








「もっと速く走って!」


彼女は僕に言う。


僕は彼女の要望に応えるべく、ペダルを思いきり踏み込む。


まだまだ寒い3月の夜なのに、僕は汗だくになっていた。


そんな僕とは反対に彼女は寒そうに身を縮めていた。





坂道を上りきるときると今度は下り坂へとなる。


ブレーキを少し握り締め、下っていく。


心地よい風が僕と彼女に当たる。


彼女の髪はきれいにサラサラとなびいていた。






下り坂を終えると目的の川原についた。




「はい、お疲れ!」


彼女は笑って汗だくの僕に言う。


「いえいえ、お嬢さん。」


僕も彼女と同じように、笑顔で答える。


前かごにつんでいた花火セットとバケツを取り出し、僕達は季節はずれの花火をした。



スパーク花火や打ち上げ花火などいろんな種類の花火をしたけど、最後は線香花火をした。




「きれいだね…」


彼女が静かに僕に言った。


「そうだね…」


「あっ…」


彼女の線香花火が落ちてしまった。


僕はクスッっと笑って線香花火に火をつけた。


「これにはコツがいるんだよ。」


彼女は僕の線香花火を見ていた。


僕の花火は彼女の花火とは違い、長く光り続けていた。




「よ〜し、私も負けないぞ!」



そういって花火に火をつけた。


今度はさっきのとは違い長くつづいていた。


そして僕の花火は最後まで光り続けて終わってしまった。


僕は彼女の花火を見た。


するとポトッと落ちてしまった。


「終わっちゃった…」


彼女がさみしそうに言った。


僕はそんな彼女を見ていた。


すると彼女は僕の肩にもたれかかってきた。


彼女はゆっくりと目を閉じた。





「楽しかったね…」


彼女は静かに僕に言った。


「うん」


僕も同じように静かに答えた。


「これからはお互い、夢に向かって頑張っていこうよ…」


僕は彼女に言う。


「うん」


彼女は小さくうなずいた。


僕は映画監督になるため、彼女はパティシエになるために僕達は少しの間、お別れする。


お互いが成長するために…




僕は左手で彼女の右手を握った。


彼女も僕の手を握り返した。


そして僕達は唇を合わした。


彼女の目は、涙でいっぱいに見えた。


僕は涙を流さないように、反対側の右手を強く握った。






そして僕達は来た道を戻っていく。


行きと同じ様に、僕が自転車をこぐ。


彼女も後ろ向きに座り、僕の背中と彼女の背中はまた触れ合った。


途中、後ろ向きに座っていた彼女が前に向き、僕の体に手をまわした。


そして僕の背中に頭をポンと当てる。


僕達は何も話さないでいたが、なぜか心が通じ合っているような気がした。


そして今、彼女は泣いているんだろうと思った。


僕も自然と涙があふれてきた。


僕は彼女にばれないように静かに涙を流した。


すると彼女はさっきよりも強い力で僕に抱きついてきた。





僕は行きと違い、ゆっくりとペダルをふんだ。


彼女とちょっとでも長く一緒にいたい。


僕はぐらつかないよう、ゆっくりとペダルをふむ。






何年後かはわからないけれど、お互い立派に成長したとき…


笑って再会しようよ…


僕はずっとキミを思い続けるから…


だから、


少しだけの辛抱だ。


再会したら、また花火でもしようね…






僕は心の中で彼女に言った…


彼女はまた、キュッっと僕に抱きついてきた。


彼女の行動は、僕の言葉に返事をしているように思えた。


やっぱり心が通じ合ってるのかな?


そう思うとまた涙があふれてきた。







2人を乗せた自転車が、ゆっくりゆっくり進んでいく…


[No.28] 2005/08/31(Wed) 13:13:03
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