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A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第1話 (親記事) - バル



第1話「帰郷」









――なつ休みになったらさ。どこ行こうか? 山、川、海……どれにしようかまよっちゃうね――

――へへ、淳平のおよめさんになるんだ――

――淳平……。もう会えないの? ……そばにいてくれなきゃ、いやだよぉ――




 けだるそうに開いたバスのドアから出ると、夏独特のまとわり着くような暑さにすぐに捕まった。
乗ってきたバスは俺だけを降ろすと次のバス停へと砂煙を好き放題巻き上げて走っていった。

 見上げれば掴み取って道に投げ捨てたくなるような太陽。セミの声がジージーとやかましい。
「雲がソフトクリームに見える……」
 真中淳平。生まれ故郷に戻ってきての第一声だった。

 学校はあれよあれよと言う間に夏休みへ突入していた。
 外村は長期の休みを利用してHPのネタ探しに沖縄に単身旅行。さつきはバイト。
西野は大草に会いにアメリカへ。小宮山は……ひたすら寝るらしい。

 そして、俺はというと。いまの所に来る前まで住んでいた町に帰郷していた。
こっちの幼馴染にずっと手紙で誘われていたし、西野と大草の騒動で正直すこし疲れていたからだ。
 ……なんていうのは嘘だ。

 本当は、はっきりさせなきゃいけないと、そう思ったから俺はかつて逃げ出したこの町へ帰ってきたんだ。 






* 幼馴染 *


 「いってきまーす」
 勢いよくドアをあける。いつもなら大嫌いな夏の暑さも今日は勘弁してあげよう。
私の心は生まれてこのかたないというほど寛大だった。

 なんでって? そんなの淳くんがこの町に帰ってくるからに決まってるじゃない!
 
 私の家に手紙が届いたのは3日前。ずっと音信普通だったのに不意に思い出したように
届いた。
 そこには、東京での学校生活や、友達、部活とかの話が書いてあって。最後にちょっとだけ、
「夏休みを利用してそっちに帰るから出迎えヨロシク!」
 と淳くんらしいちょっと斜めになった文字で書かれていた。
 その時の私の喜びようといったら。家族に見せびらかすは、一日に何度も読み返すは、
しまいにはずっと傍にあるように紐を通して首からかけた……なんてそこまではさすがにしなかったけど。
 とにかく私は嬉しかった。
 
 だって、淳くんが好きだから。


 家からバス停までは歩いて20分、走って15分程度。待ち合わせの時間に余裕があるのに私は
馬鹿みたいに走った。
 あとこの角を曲がればバス停が見える。胸がドキドキする。呼吸も早くなる。走っているからだけじゃなくて。
 F1のマシンのように華麗にコーナリングを決めると、バス停のすぐ横で暑さにへばって道端にだらしなく座っている
見覚えのある姿が飛び込んできた。
「あはは」
 思わず顔がほころぶ。何年待ったかな? 手紙は何通出しただろう? 電話だって何回かけたかわからない。
それでも何も返してくれなかった淳くん。そんな彼がいま、私を待ってるんだ! そう思うと、なんだか心の中がむずむず
してきて、私は急いでいた足をゆっくりとした歩きに切り替えた。

―― こんなに待ったんだから、少しくらい待ってくれるよね? なんて、私って意地悪だね。でも、許してね。
お願いだから、あとちょっとだけこの気持ちを感じさせて ――

 そんなことを考えながら、私はゆっくりと淳くんのもとへと歩いていった。













[No.29] 2005/09/04(Sun) 21:37:29
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第2話 (No.29への返信 / 1階層) - バル

「唯ちゃん。ほら、淳くんが来てくれたよ……」
 そう言って梢は鈴をチーンと鳴らし、手を合わせ目を閉じた。
 今でも慣れないこの場所。別に仏前がダメってわけではないけれど、やっぱり信じたくないから。


 
 『唯が死んでしまったなんて』



第2話「決心」 


*友*

 

 「ほら、淳くんもお線香、あげてあげて。唯ちゃんも待ってたと思うから、長い間……」
 「……わかってるよ……」
 俺はなるべく梢とは目を合わせないようにしていつもより重い足を仏前の座布団に下ろそうとする。その時、

 リリリリリィィリリリリリィィ

 田舎独特の耳をつんざくようなベルの音。
 「誰だろ?」
 そう言って梢は小走りで電話を取りに行った。
 それを見送り俺はやっと座布団に正座する。
 改めてみる観音開きの大きな箱。それはまるで絶壁の崖を前にするかのような威圧感を感じさせた。
 中においてある唯の遺影。小学生の頃の幼い顔つき、それにしてもあまりに幼い。幼稚園生だと言っても通じそうだ。
 だからこその無垢な笑顔。それはまったくこの静謐な空気に合っていない。それがますます俺から現実味を奪っていった。
「唯…………」
 堪えきれず呟く。もっと言いたいことがあるけど、全然言葉にできない。
 

 やっぱり、まだ早かったか……?

 いや、

 今しかないんだ。だって、

 『伝えなきゃいけないことがあるから』


 すぅっ、と大きく息を吸い長く吐き出す。唇を噛み締め、唾をごくりと飲む。


「唯、あのな、俺……」
「淳く〜ん! なんか変な人が電話して来たよぉ! なんか、『いいね、君の声! HPにアップしたいから1回会おう。大丈夫、怪しいもんじゃない。いま君の所にいるだろう真中淳平という男の友達じゃ!』とか言ってるんだけどぉ」

 開けた口の行き場の無い俺はそのまま固まる。

 何だって?

 HP? アップ? 俺の友達?

 たったこれだけの情報で誰かわかるわけ…………。


 「あいつかよ……」
 普通にわかってしまった。俺の友達、誰かまともな人いないのかなぁ。



『お〜〜っす、真中! なぁ、今の娘だれだ? ぜひ俺のHPにアップさせてくれい!』
 あぁ、この声。やっぱり外村か。
『用件は何だ、用件は!』
『なんだよぉ〜、そんな怒るなよぉ』
「うるせぇ! まったくせっかく後もう少しだったのに……」
『はっ? なに? まさか貴様、さっきの娘ともうそんなとこまで…………』
「違う違う違う!」
『わかってるよ。ちょっとからかっただけだって」
 そう言って豪快に笑う。はぁ、もう助けてくれ。
『んで? 用件は』
『あぁ』
 さも、忘れてました。と言わんばかりの返答。この野郎。
『沖縄のさ、お前なんかお土産とかほしいかな? って思って』
『あぁ。……じゃあ俺ちんすこうがいいな。あれ旨いし』
『おう。わかった。んじゃ…………』
『おう』

『『………………』』

『なんで切らないんだよ?』
 会話は終わったのに一向に受話器を置こうとしない外村に俺は言った。
『いや、なんか気になってさ……』
 は? 何を? まさかあいつまだ梢と俺のことを勘ぐってるのか?
『だからな外村。俺と梢は……』
『いや、そっちじゃなくてな』
 今までの会話とは打って変わってピシャリと俺の言葉を打ち消す。
『じゃあ、なんだよ?』
 何を言うわれるのかわからないのが少し怖い。
『お前。前に俺が「夏休み帰郷とかしねぇの?」って聞いたとき。「ちょっと行きにくくてさ」とか言って
 たじゃねぇか。それなのに夏休みに入るなりさっさと行くなんてどういう風の吹き回しかな? と思ってさ』
 ……あぁ。そういえば。夏休み前、俺がまだ帰郷を決めてない頃にそんなことあったな。
『ま、いいんだけどさ。どうでも』
『え?』
『言えるようになったらさ、いつでも言えよ。聞き役のポジションはキープしといってやっから! んじゃ!』
 そう言うと外村はまた豪快に笑って今度こそ電話を切った。

 宙ぶらりんのまま残された俺はツーツーとやかましい受話器を耳にあてたまま立ち尽くしていた。
 あの野郎。
 いい奴だよな、やっぱり。

 もちろん外村がどれだけ理由を聞きたいと思っているかは解っているつもりだ。だから、敢えて待ってくれる
 優しさにうたれた。


「言えるように、がんばるしかしかないよな」

 電話を切りながら、俺はこの帰郷のことを外村に少しも欠けることなく伝えてやろうと、日記をつける事を決心した。




 その時、これがどれだけ大きな事を生むかなんて、考えもしなかったのだけれど。


[No.30] 2005/09/04(Sun) 21:41:34
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第3話 (No.30への返信 / 2階層) - バル

「暑い! 暑すぎる!」
一枚だけかかっていたタオルケットを蹴飛ばして布団から逃げ出した。そのまま縁側へ出る障子をスラッと開けて部屋をでる。外はもう真っ暗で月は新月なのか出てはいなかったが、かわりに数多もの星がきれいにまたたいていた。


第3話 「理由」


 この帰省中は梢の家に寝泊りする予定だった。それなら宿代はかからないし、昔何度も泊まった家だから気兼ねもしなくてよい。
「でも、この暑さは予想外だったよなぁ……」
そうなんだ。この田舎の大きな家には、使ってない部屋と布団はやまほどあるくせに、クーラーという必需品がないんだ。当時の自分の家にはちゃんとあったから失念してた。
「ああぁ!」
暑さやら何やらで俺は大きな声を出した。ゴロンとその場に寝転がる。背中に木の廊下のひんやりとしたやさしい感触が伝わってくる。これなら暑さもすこしは和らぐだろう。
「……明日からどうしようかな」
恥ずかしい話、勢いで帰省したものの、1つの目標以外はまったくなんの予定もたてていなかった。しかも、その目標の前で足踏みをしてしまっている今。俺はただの邪魔な客だった。
 どうしよう。いっそこのまま帰ったほうがいいかな……。と思って寝返りをうつと、その先に暗闇の中ボウっとたたずむ人影があった。

「……眠れないの?」
「梢か」
「やっぱり暑かったよね。扇風機持ってこようか?」
「マジで! この家にそんなハイテクマシーンあんの!」
「……淳くん。一体わたしの家を何だと思ってたの?」
一瞬あきれ顔。だけどすぐににっこりと笑い、寝ている俺の頭のそばに腰をおろした。
「きれいな星空だね」
「あぁ。東京じゃ、絶対見れないよ」
「……唯ちゃんもどこかでみてるかな? この星空」
「…………」
「淳くん。わたし、わかってるんだよ」
急にまじめな顔になった。そんな梢に俺も寝転んでいた体を起こし、向かい合って座った。
「わかってるって、何を?」
「淳くんが帰ってきた理由、だよ」
ふいに心の奥でなにかがピクッと音をたてた。
「はっきりさせたいんだよね」
「……唯のことをか?」
「もちろんそれが一番だろうけど、それにつながってる色んなことを解きたいと思ったから、何年も手紙さえ返してくれなかった子がいるところなんかに戻ってきたんでしょう?」
梢の声はかすかだけれど、たしかに震えていた。しかも、太ももの上においてある手はどちらも堅く握りこまれていて、見ているだけで何か弁解しなくてはと思わせた。そして、こころもち声を大きくして言う。
「手紙は毎回ちゃんと読んでたよ!」
「でも、一度だってわたしに返ってきたことはなかったよ?」
「それは……」
興奮して血の気が集まっていた頭から一気に血がひいていく。

 それはなんでなんだろう? 自分でもよくわからない。手紙を読んだなら、返してやればいいじゃないか。それでどれだけ梢が喜ぶかなんて、わかってたはずだろ? じゃあなんで……。

「だ・か・ら、淳くんはここに戻ってきたんだよ」
「え?」
「この帰省で、そんなモヤモヤなんてぜ〜んぶ吹っ飛ばして……」
そう言いながら立ち上がる。
「梢……?」


「ずうっと、ずうっと一緒にいようね!」


それじゃあおやすみ! というとひらりと身を翻してぺたぺたと音をたてて走り去ってしまった。

 その後、残された俺はまたさっきのように廊下に寝そべっていた。
――梢もわかっていたんだな。今回の帰省の理由。こりゃもう後には引けないな。やってやる……絶対に――
梢が座っていて温かくなった廊下の上に寝そべりながら、俺は、たぶんこないだろう扇風機への期待を胸に、誓ったのだった。


[No.58] 2006/02/22(Wed) 23:01:13
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第4話 (No.58への返信 / 3階層) - バル

 
 第4話 「始まり」


  
 
 ピーヒャラドンドン、スチャラカドンドン
聞いているだけで陽気な気分になるお囃子が鳴り響く。
「賑やかだなぁ」
「うん、でも去年はもうちょっと多く屋台出てたんだけど……」
「いや、これだけ出てれば十分じゃね?」
 俺たちはこのまち唯一の祭りに来ていた。山の高台にある神社で行われるのだ。普段は閑散としきった神社の境内も、今日は多くの屋台と人で埋め尽くされている。
「あっ、淳くんこっち! こっちに金魚すくいがあるよ!」
「きゃあっ! こっちには綿あめだ!」
「あああっ、射的までぇ!」
正直うるさい。
屋台に興奮しまくる梢もだが、今日は町全体が熱気で満ちていた。
「ひょわわあわわわっ!」
「今度は何だ! そんな地球外生命体みたいな声出して! あれか、ついにETが本性をあらわして地球攻略のために軍隊をひきつれて侵略しに来たのか!」
俺の華麗なツッコミをあっさり無視して、
「幻と言われていた、ドネルケバブがあるぅ!」
そう言うやいなや梢はものすごいスピードで屋台小屋が乱列する通りに吸い込まれていった。
「ありがとう。そしてさようなら、梢。君の事は一生忘れない……」
ぽつんとその場に残される。
「はぁ」
ため息が出た。
 久しぶりの町の祭りは昔とがらりと変わっていた。昔はもっとすべてが大きい気がした。いや、もしかしたら、自分が成長したことで、慣れずに違和感を感じているだけなのかもしれない。
「すこし歩いてみるか……」
それでも変わらないのは祭りを楽しみにしていた子供の顔で、その子達の笑顔をみているといやおうなく唯や梢と遊んでいた幼いころの記憶が蘇ってきた。
 

――唯。それは俺にとって特別な名前だった。とても幼い頃に朝から晩までいっしょに遊んだ幼馴染、たかがおやつの量でもめて一週間も口を利かなかった頑固者、まるで空気のように隣にいることが当たり前だった存在、俺の初恋の相手、そして……もう二度と会えない俺の最高の友達。

 
 カサッ。
 履いていた草履から、草を踏んだ感触が伝わってきた。でも、屋台が並んでいる道は砂交じりの道だったはず。ふと顔を上げてみると目の前には漆黒の闇の中に鬱蒼と茂っている森の入り口が、ぽっかりと口をあけて待っていた。振り返ると遠くに提灯の明かりがぼやけて見える。考え事をしながら歩いていたら、こんなところまできてしまったようだった。
「やばい、俺ちょっと病んでるな……」
またため息をつく。そして、前に広がる森を見据えた。
 
 夜の森は異様な雰囲気で俺を待っていた。まるでそれは、この世の暗さを集約しきったような本当の暗闇で、じっと見ているとその雰囲気に身震いした。
 そのとき、視線の先で何かが動いたような気がした。
 ジッと目をこらす。
 ガサガガサガサガサ。
 いる。暗くて見えないが確実に何かがいる。俺は好奇心を掻き立てられその正体を知るために森の奥に入っていった。

 森の中は入り口で中をのぞきこんだよりもさらに真っ暗だった。頭上の木から化け物でも飛び降りてきそうなほどの恐怖が俺を襲う。同時に激しい後悔の念が心によぎった。
「だめだ。帰ろう……」
踵を返す。
「……え?」
思わず声をあげる。そこには明るい屋台の提灯の明かりなんてちらりとも見えなかった。ただ闇のなか、俺に覆いかぶさるように多くの木があった。
「……嘘だろ? 俺そんなに奥まできてないはずだったのに……」
人は光を失うとこんなにも絶望するものだったのか。いっきに足の力がぬけ、地べたにひざをつきそうになるのを必死に堪える。
 
やばい。
 
そう思った。こんな森に、しかも祭りの日に近づくやつなんているわけがない。
 俺の人生もここまでか……。そう思ったときだった。
 
トントン。
 
背中をたたかれる。
「……邪魔しないでくれ。いま絶望に打ちひしがれているんだ」
ちょっと間を空けてまた背中をたたかれる。

トントン。

「えぇいうるさい! 俺はいまこんな人にも会えそうにない森をどうやって脱出するかを真剣に考えているんだ。邪魔するな!」
 
 ……ん?

 肩をたたかれる? 
やっと気づく。人がいたんじゃないか!
 くるりと振り向く。
 しかし、その先には闇に飲み込まれている森しかなかった。
 気のせいだったか?
 肩を落として前に向き直る。

「どうわっ!」
おもわず大きな声をだす。
 目の前にとても小さな、小学校3年生くらいの女の子が俺のことを覗き込むようにして立っていた。
「さっきから背中を叩いてたのはお前か……?」
「…………」
質問しているのに女の子は何もしゃべらない上に、暗くて顔も見えないので俺は途方にくれてしまった。
 残念ながらこの子といても森を脱出することはできなそうだった。
「はぁ」
今日三度目のため息をつく。
 そんな俺を、その女の子はまるで品定めをするようにまだジッと見ていた。
 なんだろう? 俺の顔に何かついているのだろうか? そう聞こうとおもって口を開きかけたとき、今まで雲に隠れていたのか、暗かった森に、月の光が差し込んだ。
 その顔を見た瞬間、俺の心臓は大きく跳ねた。夢を見ているのかと疑う。呼吸もはげしくなる。唇がものすごい勢いで乾いていく。そんな口をかすかに開け、俺はつぶやいた。
「……唯?」
女の子(唯)は月明かりを受けながら、にかっと、昔のままの笑顔を俺に向けた。

 


[No.61] 2006/03/10(Fri) 17:20:42
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第5話 (No.61への返信 / 4階層) - バル




「久しぶりだね」
 声がでなかった。
「東京に行ってからずいぶん長い間帰ってこなかったよね」
 だってその顔はあまりにも唯そっくりで、むしろ唯にしか見えなくて。
「わたし、ずっと待ってたんだよ」
 でも、唯はもう死んでしまっているはずだから、この子は唯のはずはないのに。見れば見るほど、そしてこの子が喋れば喋るほど、唯にしか見えない。
「ねぇ、さっきから黙ってるけどちゃんと話聞いてるの? ねぇ!」
「……唯、なの、か?」
 俺の声は自分でも情けないくらい震えていた。それでも震えをとめることはできなくて、ただこの子の正体を知りたくて見つめることをやめられない。
 唯にそっくりな女の子は俺の言葉を聞くと、くしゃっと顔を綻ばせ、小首を傾げて言った。

「おかえり、じゅんぺー!」


チュンチュンチュン


「淳くん、起きてー。朝だよ!」
 耳に梢の声が響くけれど、俺は体を起こすことができなかった。
 昨日のお祭の晩に会った、唯そっくりの女の子。あの子のことが俺の頭の中を駆け巡る。
 あの子は俺の名前を知っていた。俺は名乗っていないのに。
 それはつまり俺の「唯なのか?」という問いに対する答えだろう。あの後、まだ混乱している俺の手をあの子は引いて、走りだした。俺はボーっとする頭で引かれるがままにしていると、いつのまにかさっきのお囃子の音が聞こえていて、半べそをかいた梢が抱きついてきた。俺はハッとして周りを見回したけれど、唯そっくりな子の姿は最初から存在していなかったかのように消えていた。

あの子はやっぱり唯なんだろうか?

その考えを頭を大きく振って消し去る。
そんな訳はない。
唯は死んでしまった。それは間違いない。
だって、俺は唯を殺してしまった本人なのだから。



第5話 「唯の死の真実 1」


 
あれは俺と唯が本当に仲良しで、毎日二人で暗くなるまで、山や川を駆け回って遊んでいた
小学生の頃だった。
 
 「なつ休みになったらさ。どこ行こうか? 山、川、海……どれにしようかまよっちゃうね」
 蝉が耳触りなほど鳴き響く、夏休みの1週間前だった。
 ガヤガヤとうるさい教室。その中で暑さにやられて、机に突っ伏していたオレに覆い被さりな
がら唯は話しかけてきた。
「そうだな……。川に行かないか? オレ、キレーな魚みつけたんだ。なつ休みに入ったら、
ぜったいつかまえるって決めてるんだ。……つーかなんで上級生の教室にいるんだよ、唯」
「川かぁ。最近暑いもんね。水がつめたくて気持ちよさそー」
 満面の笑みで答える唯。ちなみに俺の質問はきれいにスルーだ。
「そんで帰りに、カキ氷食べようぜ! おごってやるよ」
「ホント! やったー! 唯ね、唯ね、いちご味がいいの! あまーいいちご味!」
 さっきよりももっと嬉しそうに笑う唯。現金なヤツだな、と思ったけれど、唯のその笑顔を見て
いると、なんだか自分まで嬉しくなってきて、オレも唯と一緒に笑った。

 それからあっという間に夏休みがきた。オレと唯は約束通り町に唯一流れる川にやってきた。
この川は大雨が降るとよく氾濫するので、親たちには決して行ってはいけないと耳が痛くなるほど
言われていたが、オレと唯はもともとそんな言いつけを守るような、素直な子供ではなかったので、ちょくちょくこの川で遊んでいた。
 その日も、川は穏やかに流れていて、夏の日差しをキラキラと反射させていた。
 唯がわれさきにと、サンダルを脱いで川にザブザブと入っていく。
「んーっ! 冷たいっ!」
 きゃあきゃあと大きな声で騒ぎながら、とても楽しそうに唯ははしゃいでいる。
 オレはなんだかアホみたいにぽかんと口を開けてそんな唯を見つめていた。薄手の白いワンピース
から伸びる健康的な白さをもった手足。水滴がついてキラキラとはねるその様子も手伝っているのか、
なんだか映画のワンシーンを見ているようだ。

「……誰かを好きになるのってこんな時なのかな」

 口からぽっと出てしまった。思いがけない自分の言葉に自分自身で恥ずかしくなって、顔が熱を持つ。
「じゅんぺー? だいじょうぶ? 顔まっか。暑い?」
「だ、大丈夫だよ」
 こんな時ばかりは人の変化に敏感な唯が、さっきまであんなにはしゃいでいたくせに、いつのまにか
川原のオレのところまで来て人の顔をジッと見つめている。

「だーっもうっ! 大丈夫だからっ!」
「ぶーーっ! なんだよ。こんなにじゅんぺーのこと心配してるのに!」
 唯はそれからもなんだかんだと理由をつけて、オレの傍から離れようとしない。こっちは恥ずかしくて、死にそうなのに、なんで気付いてくれないんだろう。
 唯をいったん自分の傍から離れさせるには、オレ以外に注意をひかせるために、他のものに興味をもたせなければいけない。

「なぁ唯」
「なに? じゅんぺー?」
 話しかけられて、何だか嬉しそうに声を弾ませて聞いてくる。
「オレのこと、好きか?」
「ほえぇ?!」
 なんだか人間の声なのか? と疑ってしまうような声を出して
唯は頬を真っ赤に染めて飛びのいた。
「好き?」
「そ、それは、まぁ、わたしは、小さい頃からずっと、じゅんぺーといっしょにいたし、じゅんぺーと
いっしょにいるとうれしいし――」
「じゃあ、結婚したい?」
「ほぇえええええええええええ!?!?!?」
 もうさっきの声なんて比にならないくらいのもはや悲鳴。
 
 もちろん。本気でそう言っているわけじゃない。なんとかオレ以外のものに夢中になってほしくて、夢中ででっちあげる。

「最近広がってる噂があるんだ」
 ひっそりと唯以外には話していないんだぞ。と思わせるように声を殺して話す。
「この川の川底のどこかに、流れに負けずに咲いているコスモスが一輪だけあるらしいんだ。もし、
そのコスモス、見つけることができたら、結婚しよう」
 
 もちろん嘘だった。
 でも、唯には効果テキメンだったみたいで……。
「どこどこどこどこどこ〜〜〜〜〜!! 唯の幸せどこにあるの〜〜〜〜!!!」
 と喚きながら川にむかって突進していってしまった。


「た、単純なやつ……」
 自分で離れて欲しくてやったことなのに、あまりにも上手くいって、逆に拍子抜けしてしまった。


「まぁ、なにはともあれ、向こうに行ってくれて良かった」
 ほっと胸をなでおろす。

 視線の先では、ワンピースの裾が濡れるのも厭わずに、必死に川底に咲いているはずのコスモスを探していた。

「バカだなぁ。川底に花なんか咲くわけ無いのに」

 そんな姿の唯をオレはまたボーっと眺めていた。


[No.1160] 2008/10/26(Sun) 13:38:36
Re: A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第6話 (No.1160への返信 / 5階層) - バル



「おーーい! もうそろそろ帰ろうぜ、唯〜〜!」
 来たときは太陽が真上からサンサンと照っていたのに、もうとっぷりと日は落ちていて、そろそろ闇がせまってこようとしていた。
「唯〜〜〜〜!」
 さっきから何度も大声で川に入っている唯に帰ろうと呼びかけているのに、全く聞く耳を持ってくれない。ただザブザブと流れを掻き分けながら中腰で川底に目を落としている。
「もう帰ろうぜ〜〜〜〜! コスモスなんてまた今度探せばいいだろ〜〜!」
 そもそもコスモスなんて咲いているわけがないんだ。だってオレが言った嘘なんだから。
でも、唯にはそんなことわかるはずもないから必死に探している。
 
 あんな嘘なんて吐かなければ良かったと思う反面、あんな言葉に簡単にひっかかる唯にな
んだか腹が立ってきた。
「おい、唯! オレもう帰っちまうぞーー!」
 幾分かの憤りをこめた叫びでやっと唯の心にも届いたのか、ゆっくりと背をのばして、オレのことをしっかりと見据えた。その立ち姿はなんだか凛としていた。
「もう、暗くなってきたから、川底も見えにくいだろ? もう帰ろう!」
「ヤダ! ヤダヤダヤダヤダ!!」
「な……」
 なんで。と口にしようとする前に唯がまた口を開く。
「だって、絶対見つけるんだもん! もし、帰った後に誰か他の人に見つけられちゃうとか、絶対ヤダもん!」

 唯はその小さな体から、振り絞るように叫んだ。その声は、オレたちの他に誰もいない川原に大きく響いた。


第6話「唯の死の真実 2」



「な……」
 体がカッカッと熱くなっていくのがわかる。全身の血液が全部熱湯になってしまったみたいだ。
「なんだよ……」
 うまく口が開かない。
 すごく、恥ずかしかった。唯の言葉が、オレの心の奥までソクソクと伝わってきて、体がむずむずして、なんだかもう、自分がこの場にいるのが凄く間違っていることみたいで、

「オレ、もう帰る!」

 一目散にその場から駆け出す。背中のほうから唯の呼び止める声が聞こえるけれど、足が止まらない。
 唯とはたしかに昔からいっしょにいたし、唯がいない毎日なんて考えられなかった。
 でも、いきなりあんなことを言われても、どうしていいかわからない。「なんて言えばいいんだ?」
「どういったら唯は喜ぶ?」「でもそれはオレの本当の言葉?」「そもそもオレは唯のことを?」
そんな考えが頭の中をぐるぐると巡って、気付いたらそこに立っているのがこの世界で一番恥ずかしいことみたいに思えてきて、思わず走り出していた。
 もうさっきまでいた川原は遠くに小さくなっている。
 全力で走っているせいか、息はもうとっくにあがっていて、右のわき腹がシクシクと痛む。
それでも途中でとまったら、なにか得体の知れないものに飲み込まれてしまいそうで、必死に足を動かし続けて、家の中に転がり込んだ。そのまま自分の部屋に走りこんで、布団を頭からかぶる。

 息も動悸も止まらない。



「唯はオレのことが好きなんだ」

 真っ暗で息苦しい布団のなかで、呟いた。
 じつはなんとなくだけど、わかっていた。唯はどんな男友達よりもオレと一番楽しそうに話してくれたし、なるべくオレの近くにいようとしてくれていた。
 自意識過剰だと思って、自分の考えをいつもはぐらかしていたけれど、


「だって、絶対見つけるんだもん! もし、帰った後に誰か他の人に見つけられちゃうとか、
絶対ヤダもん!」

 さっきの唯の言葉がまた頭の中でポウっと響く。と同時に、体に軽い痺れが走った。

「唯はオレのことが好きなんだ」

 アホみたいに同じ言葉を繰り返した。


 夕方の5時を告げる、時報の音楽が布団の中にいるオレにもくぐもりながら届いた。
 もう唯は帰っただろうか? 
 帰っていてほしいような、まだ探し続けていて欲しいよな……。
 
 悶々とした気持ちのままでそのまま眠りについてしまった。

本格的な眠りにつく少し前に、ぽつりぽつりと小刻みに心地よい雨が降る音が聞こえた。


[No.1161] 2008/10/26(Sun) 13:40:32
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第7話 (No.1161への返信 / 6階層) - バル

 

 カン  カン  カン  カン  カン     


 耳障りな音で目が覚めた。鐘を打ち鳴らしている音みたいだ。
 オレの住む街では消防隊が出動する時には未だに半鐘を鳴らす。
 時計の針をみると、もう9時をさしていた。
 布団からもぞもぞと抜けだしてそっと窓から外を見てみる。

 辺りは闇に包まれていて、明るいのは点々と灯されている外灯だけだ。
 周りを見回してみても特に真っ赤な火の手があがっている様子はない。

「淳平! 淳平!」
 
 母さんの呼ぶ声がして、部屋のドアが大きく叩かれた。
「ちょっと、大変なのよ淳平!」
 母さんは荒々しくドアを開けて、叫んだ。
「あんたが帰ってきてから降り始めた雨が急に強くなって、川が一気に増水してるの!」

 背筋に悪寒が走った。

「唯ちゃんが、中州に取り残されてるみたいなのよ!」

 ――唯!

「淳平! ぼうっとしてないで! あんたなんで唯ちゃんが川にいたのか知ってるんじゃ
ないの!? ねぇっ! 淳平!!」

 母さんがオレの肩を凄い力で掴んで揺さぶる。
 
「……唯。なんで――」

「なんでまだ川にいるんだよ!!」
 母さんの手を振り払い、部屋から飛び出した。
「淳平! どこ行くの! 戻りなさい! ――戻ってきて!!」

 
 外に出ると母さんが言っていたように、本格的な雨が降っていた。
 5m先は靄がかかって見えにくいほどの豪雨だ。
 この雨の中、唯はありもしないコスモスを探し続けていたのか。

「くそっ!」

 あらためて自分の嘘に胸が痛んだ。 
「なんだってオレはあんな嘘を吐いてしまったんだろう」
 何度も何度も心の中で繰り返し悔やむ。

 だけど、今さらウジウジと考えていてもしょうがない。

「――唯!」
 
 豪雨の中をオレは傘もささずに飛び出した。

「くそ、くそ、くそ、くそーーーー!」



TALE 第7話 「唯の死の真実3」



「おい! 消防隊はまだ来ないのかよ!」
「さっきから半鐘を鳴らしてるばっかでまったく来ないじゃねえか!」
「どうも、ここに来るまでの道が陥没しちまって、立ち往生してるらしい!」
「ちぃっ! なんだってこんな肝心なときに! こういう時に役に立たなくてどうすんだ!」

 川に着くとすでに何十人もの大人や子供たちが集まっていて、まだ来ない消防隊への不満を怒鳴り散らしたり、中洲のほうを心配そうに手を口元にあてながら見ている女性がいたりする。

「じゅんぺーーー!!!」

 激しい雨の合間から響く声の元を見る。
「ゆ〜〜〜〜〜〜〜い!!」

 川はいつもの穏やかな流れではなく、上流の土砂を含んだ濁流だ。豪雨で一気に増水しているから水位も半端じゃない。唯の立っている中州はまだ飲み込まれてはいないけれど、それも時間の問題だ。

「唯! 大丈夫かぁ!」
「じゅんぺー! 恐いよぉ! 早く助けてよぉ!」
 唯はもうずぶ濡れグシャグシャの顔で泣き出している。

「待ってろよ! 今行くからなぁ!」
 言ってはみたけれど、大人たちでも手をこまねいて見ていることしかできない、この濁流を子供のオレが渡って中洲まで行くのは到底無理だ。

――なんとか……。なんとかできないのか!

「……あれは」

 周りを見回したオレの目に、一本のロープが見えた。
 どうやら、川魚を捕る漁に使っているロープをしまい忘れていたようだ。
 手にとって強さを確かめてみる。運動会のときの綱引きの紐と同じくらいの太さがある。長さもざっと見て10m以上はあるだろう。
 少し年季が入っているようで、ささくれだってはいるけれど、ピンと張ってもそう簡単には切れそうにはない。

「よし――!」
 急いで、端を自分の体に巻きつけてほどけないようにギュッと縛った。

「おじさん! このロープしっかり握っておいてください! 絶対に放さないでくださいよ!」
「は? 坊主いったい何を……? ま、まさかお前この濁流の中をこのロープだけで渡っていく
つもりか!?」
「そうです! もう時間がないです! お願いします、おじさん!」
「ちょっ、ちょっと待て! 消防隊が向かってんだ! 下手にまた子供が行ったら犠牲者が増える
だけ――――!」


 だっぱーーーん。


「きゃあーーーーーーー!」
「ど、どうしたぁ!?」
「子供が! 子供が流されたわ!!」
「な、なんだって!」
「ほら! ほら、あそこに!」
「ほんとだ! 今度は男の子……。いや、ちょっと待て、あの子、ロープに繋がれてる!」
「ほ、本当だ!」


 周りの声を気にしている余裕はない!
 


 唯。唯。唯!!

 
 川べりから見ているのとは川の勢いは全然違った。ちょっとでも足の力を緩めたら一気に飲み込まれて流されてしまうだろう。想像しただけで恐怖がにじり寄ってくる。
 大きく頭を振ってその考えを消した。

「今は前だけを見ろ! 唯を助けるんだ!」
 心の中で大きな大きな声をだして自分を奮い立たせる。ゆっくりとゆっくりと荒れ狂う川を渡る。いつもは足首よりちょっと上にくるぐらいの水位で、深いところでもスネあたり
まで浸かる程度の川なのに、いまはオレの腰に容赦なく打ち付けるほど水位が高い。

「うええぇぇぇん! じゅんペー! じゅんぺーーー!」
 唯が立っている中州にも若干水が浸りだしてきた。見る限り、足裏にまで水がきてしまっている。
 自分の体が水に触れ始めたことから、一気に恐怖心が増してきたのか、唯はさっきよりも激しくオレの名前を呼んでいる。完全に動揺しているんだ。



「大丈夫だ! 唯! 落ち着いて待ってろー! もう中州まであとちょっとだ!」

 そう。唯のいる中州まではもう後10歩も歩けば着く。そうしたら唯とオレをロープでしっかり結んでまた川を歩いて帰れば良い。行きと違って、最悪足を滑らせたとしてもロープを掴んでもらっているおじさんに、引っ張りあげてもらえばなんとかなる。

 ふと後ろを振り返ってみた。



「え?」

 一瞬目を疑った。

 オレのつながれているロープの先にいるはずのおじさん。




 



 


 でもその先にいたのは、おじさん一人じゃなかった。
 何十人もの大人たちがいた。みんなが、ロープを掴んでくれている。

「坊主ー! いい根性見せた! 頑張れー! あともう少しだ!」
「落ち着いて! 落ち着いて行くのよー!」
「後もうちょっとよー! 気をつけてーー!」
「俺たちがついてるから大丈夫だー! 死んでもこのロープは放さない! だから安心しろー!」
「早く! 早くしろ! 気を緩めてお前が流されたら許さないからな!」
「ボーっとしてんじゃねぇぞ! さっさと女の子連れて帰って来い! オレの寿命を何年縮める気だ!」

 みんなが大声でオレに声をかけてくれている。
 なんだか、すごい、嬉しかった。

 大丈夫だ。そのときオレは確信した。

 オレも唯も助かる。助かって、二人で怖かったねって言って、笑うんだ!!



「じゅっ、じゅんぺーーーーー!」
 耳をつんざく唯の悲鳴が響いた。反射的にオレは唯のほうを見る。
 唯は上流のほうをまばたきせずに目を見開いて見つめていた。
 オレも唯の視線を追う。


「――なっ……」


 目に飛び込んできたのは、3階建てほどの高さがある水の壁。
 周りの木々など全てを飲み込み、破壊しながら、そいつは迫ってくる。

「て、鉄砲水だと!?」
 最後のその言葉が耳に響いたと同時に、オレは波に飲み込まれた。

 
 水が一気に肺に流れ込んでくる。苦しくて、滅茶苦茶に手足を動かす。
 それでも圧倒的な勢いでオレはグルグルと回され、もうどっちが上でどっちが下かわからない。
 もう、息が、続かない。


 ダメだ!




 そう思ったとき、いきなりオレは地面に投げ出された。
 痛む体の節々も気にせずに、思いっきり空気を吸い込む。
「――ッハァハァハァハァッ!」
 口から飲んでしまった水も吐き出す。
 体中泥だらけだ。どうやら川べりから少し離れた土手の斜面に座りこんでいるみたいだ。
 足元には大人十人でも運べないような大きな木がボロボロになって、横たわっている。
 あの水で流されてきたんだ。
 そんなものに飲み込まれていたと思っただけで、背筋に悪寒が走った。

「坊主ーー! 大丈夫か!」
 ロープを持っていてくれと頼んでおいたおじさんが駆け寄ってきた。
「鉄砲水がきたからみんなで急いでロープを持ってこの土手を駆け上ったんだ。
 危なかった。あと一瞬でも遅かったら、俺たちも飲み込まれて、今頃全員死んでた」

「よ、よか……」
「は? なんだ坊主? 大丈夫か?」

「良かった。みなさんが、無事、で。もし、オレのせいで、多くの、この町の大人を
巻き込んでしまったら、オレ……オレ…………」
「坊主……。おめぇ、大した奴だよ。よくやった。よくやったよ、おまえは……。
この町の誰も、坊主を責めたりなんか、しねぇよ……」


「おじさん?」


 ふと、気付いた。
 オレは何をしに川に飛び込んだんだっけ? 誰かを助けるためじゃなかったっけ?
 

「――唯!!」


 唯が立っていた中州を見る。
 さっきの鉄砲水のせいなのか、川は先ほどよりも落ち着いていて、中洲は完全にあらわになっていた。



「……いない」
 
 でもいない。
 さっきまで確かにオレの名前を呼んで泣いていた。
 小さくて。
 でもかわいくて。
 昔からずっといっしょで。
 川で遊ぼうっていったら喜んで。
 カキ氷もおごるって言ったらもっと喜んで。
 オレの嘘を信じこんで、オレとのために必死になってコスモスを探してくれた。



 唯の姿がどこにもなかった。





「誰も、おまえを責めたりなんかしねぇよ。間違ってもねぇよ。だから、おまえも自分を
責めるんじゃねぇぞ」
 おじさんがそう言って、服が汚れるのも厭わずにオレのことを力強く抱きすくめてくれた。
 いつの間にか周りに立っていた大人たちもみんなさめざめと泣いていた。




 オレは、なんだか心にぽっかり穴が開いてしまったみたいだった。

 ただ、一筋だけ、右目から涙が流れたんだと思う。


[No.1162] 2008/10/26(Sun) 13:43:10
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第8話 (No.1162への返信 / 7階層) - バル



「もうっ! 淳くんいったいいつまで寝るつもりなの!」
「どぅわっっ!!」
 梢に思いっきり布団がわりにかけていたタオルケットを剥ぎ取られる。
 寒くはないし、このまま寝ろと言われれば寝られるけれど、なんとなく何かが体にかかっていないと眠れないのは俺だけなのか?

「わかったよ。起きる起きる」
「もうっ。きのうもお祭のときどっかにいなくなっちゃうし……」
「はいはい」 
 梢のお小言をさらりと聞き流しながら、ふとちゃぶ台の上に置いてある一冊のノートに目がいった。

(そうだ。日記をつけようと思ってたんだったな)

「だいたい淳くんは昔から――ちょっと! 淳くん聞いてるの!?」
「とうっ!」
 声とともに梢の肩に手をかけた。途端に、

「ぴぎゃっ!?!?!?」
 なんかへんてこな声をあげた。全身も伸び上がっている。
 顔までみるみる真っ赤に染まっていく。

「ほれほれほれ」
 面白くてぺたぺたぺたといろんな所を触ってみる。

「――っっ……!! ――……!!?」
 なんだかもう言葉になっていない。

「いやーーーーーーー!!!!!」
 そして、そのまま発狂して部屋から走り去ってしまった。


「あいつ……まだあれ治ってないのか……」
 梢の男性恐怖症。
 あれはいつになったら治るんだろうか……。

 とりあえず気を取り直して、ちゃぶ台に置いてあるノートを開いて鉛筆を持ち、畳の上にあぐらをかいて日記をつける。

 とにかく、昨日の祭りのときに会った、唯にそっくりな女の子。
あの子のことが頭から離れない。あの子に会ったことで、昔のことも思い出した。
 つらつらと、ノートに文字を埋めていく。
 昨日の出来事を書くだけでも四苦八苦して、結構な時間をかけてなんとか書き上げた。

(東条は自分が体験したことじゃなくて、空想の物語をあんなに面白く、魅力的に書けるなんてやっぱ凄いな……。俺もそんな風に何かを表現してみたいかも)

 なんとなくそんなことを考えながら、ノートを閉じ、鉛筆を投げ出して後ろに倒れこみ畳の上に大の字になった。


「あの子。今日もいるのかな?」

 ふとそう思った。祭りはもうやっていないけれど、あの子は今日もあの場所にいる。なんにもわからないのに、なぜか俺は確信していた。

「今日の夜、またあの場所に行ってみよう」
 そして、もう一回ちゃんと聞くんだ。
「君は本当に唯なのかって」


TALE 第8話 「唯と再び」



 月明かりが辺りを照らす中、俺は梢や梢の家族に見つからないようにそっと家を抜け出して祭りがあった神社にやってきた。
 祭りが終わった後の神社はびっくりするくらい静かだった。
 本当に昨日ここで祭りがあったのかと思ってしまうくらい閑散としている。
 そんななか、俺は森への入り口に立っていた。
 森はただただ鬱蒼としていて、恐怖の対象でしかなかったけれど、今日の森は「もしかしたら唯がいるかもしれない」という考えがあるからかどうかはわからないけれど、怖いだけでは無くて、妙なドキドキ感もある。

 草を踏みしめる感覚が昨日を思い出させる。
 こうして歩いていて、いつの間にか、帰り道がわからなくなってしまって、あの子と出会ったのだ。



「あれ……?」
 なんだかまたもや、木に囲まれている。例の如く、帰り道はわからない。

「おいおい。シャレにならないんですけど……」
 ちょっと冷や汗が垂れる。

「でも、このタイミングであの子が……」

 そう思って、周りを見回してみたけれど、何も見えない。それどころか鳥の鳴き声すら聞こえない。


「……や、やべー。もしかして、本格的に迷った?」
 どうやら今日は本当にあの子は出てきてくれないみたいだ。

(とりあえずどうしよう)
 そう考えていたとき、耳にふと水の音が響いてきた。

(水の流れる音がする……)
 導かれるように、その音のする方へ歩いていく。
 どんどん近くなる音。それとともに周りの風景も若干変わってくる。
 今まで背の高い木が多くて、ただただ鬱蒼としていたけれど、音の方向へ行くに連れて、低い木が多くなり、暗くても存在感を出す色鮮やかな花までが咲いているのを見つけた。


「川だ!」
 音を辿っていったら、川にでた。
 とても細い小川だった。誰にも知られないように、ひっそりと流れる。そんな小川。
水の流れも緩やかで、水深も踝が浸かる程度で浅く、川底の石までしっかりと見える。
でも、まっすぐに流れているわけではなく、右に左にと曲がりくねりながら流れている感じだ。
 ふと、上流のほうへ目を向けた。

「あっ」

 そこにあの子はいた。
 昨日のお祭りの格好のまま。キレイな紅色で染められている浴衣だ。
 川の真ん中にある少し大きな石の上にちょこんと座りながら、指先だけ川につけて川の流れを感じていた。

「あのっ!!」
 思わず大きな声がでる。でも、気付いてくれていないみたいで、そっと手をふり指の水をはじくと、少し浴衣の裾を気にしながら川を渡っていこうとしてしまう。
 このままじゃ本当にもう会えないかもしれない。そんな気持ちがよぎった。


「唯!!!」

 つい名前を呼んでいた。
 するとさっきの声では気付いてくれなかったあの子は、唯の名前を呼んだだけで、びくっとはたから見てもわかるほど体を震わせ、周りを見回し、そして俺を見つけた。

「じゅんぺー!」
 驚くほどの笑顔。思わず声をかけた俺のほうがビックリしてしまう。
 ぴちゃぴちゃと水音を立てながら俺のほうへ小走りに寄ってくる。

「じゅんぺー、また唯に会いに来てくれたの?」
「お、おう……」
 なんだか気恥ずかしい。

 でも、やっぱり会えて嬉しかった。
 どこからどう見ても、唯にしか見えなかった。
 唯にまた会えた。そう思えただけで、俺の心はなんだか、弾んだ。

「何して遊ぼっか?」
「え?」
「だって、唯と遊んでくれるために来てくれたんでしょ?」
「いや……そういうわけでは……」
「え〜〜、遊ぼうよぅ、じゅんぺーー!!」
「いやいやいや、俺いまいちおう、遭難者だし」
「ソウナンシャ?」
「そう迷って帰れなくなってしまった人のこと」
「じゅんぺー迷って帰れなくなっちゃったの?」
「そういうこと。かっこわりーけど……」
「じゃあ――」
 俺のことを仰ぎ見ながら、なにか企み顔をみせる唯らしき子。

「唯と遊んでくれたら、帰り道、教えてあげる」
 にかっと歯を見せて笑ってくる。
 か、
 かわいい。

「ねぇ、いいでしょ? じゅんぺー?」
「お、おう」
 断れなかった。
 そんな唯そっくりな顔で、唯そっくりな笑顔で聞かれたら。


「よーーーし! それじゃあ、まずは魚とりだーーーー!!」
「ちょ、ちょっと待って!」
「何だよじゅんぺー。早く遊ぼうよー」
 待ちきれなくて地団駄を踏んでいる。
「君はさ、本当に唯なのか?」
「なに? まだ疑ってたの?」
「だって、唯はもう死んでるはずだから……」
「うん。死んでる♪」
「だよな。死んでるよな。――ってえっ! 死んでる!?」
「そうだよ。まずじゅんぺーがそう言ったんじゃん!」
「で、でも、じゃあなんで足があって、こんな風に俺と会って、俺と喋れてんの?」
「幽霊って、足があっちゃいけないの? じゅんぺーと喋っちゃいけないの?」
「い、いや、まぁそういうわけでは……」
 たしかに、必ずしもそう、というわけではない……のか?

「まぁどうでもいいじゃんそんなこと。じつは唯だって、よくわかってないし。
 いつのまにかこういう風になってたんだもん」
「だもん……ってそんな簡単に――」





「コスモス」
「え?」

 急に言われて一瞬わからなかった。

「だから、コスモスだよ。川の底に咲いてるんでしょ? 」
「あ――」
 川の底に咲いているコスモス。結婚の夢を担っている一輪のあるはずもない花。

「そのことを知っているのは私だけでしょ?」
 そう。その嘘を知っているのは俺と唯だけ。ただ、唯は嘘だということは知らないけれど。

「……じゅんぺー」
「なんだ?」

 いままで終始笑っていた唯が、少し、憂いを含んだ表情を見せた。
 こんな唯を俺はいままで見たことがなかった。
 唯は何年間、この町で俺のことを待ち続けていたのだろう。
 誰か唯と遊んであげている子はいたのだろうか。
 いなかっただろう。
 寂しかったんだろうな。
 なのに、俺は、この町を離れた。
 唯を自分の嘘で殺してしまったことを誰にも言えなくて。
 それなのに、町の人は最後まで唯を助けようとした俺のことを
まるで英雄みたいにして誉めまくったし、みんな俺に同情してくれた。唯のお父さんやお母さんまで、そうだった。
 でも、俺はそれに耐えられなかった。
 自分の嘘で唯があの日、川に飲み込まれてしまったこと。
 なのに自分は嘘がばれるのを恐れながらものうのうと生きている。
 耐えられなかった。
 俺は、逃げたんだ――――。





「遊ぼう。じゅんぺー」

 くしゃっと、涙をこらえるような笑顔で唯は俺に手を差し伸べた。
 俺はその手を断る理由が見つからなくて、自分の手をそっと上にのせた。


[No.1163] 2008/10/26(Sun) 13:46:01
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第9話 (No.1163への返信 / 8階層) - バル

 それから毎晩。俺は唯と遊んだ。
 唯は今までの遊び足りなかった分を取り戻すようにはしゃぎまわっていた。
 どうやら体力もなにもかも当時のままみたいだ。
 そんな唯を見れば見るほど、当時のことを思い出す。

 そして楽しかった。

 それが素直な気持ちだった。
 やっぱり、唯は俺にとって妹みたいな存在で、いつも俺にくっついていたから、かわいらしかった。
 何年も忘れていたこの感覚。
 あの子が唯だってことは何日もいっしょに遊んでいてわかった。
 さっきも思ったことだけど、昔ずっといっしょにいたから、今いっしょに遊ぶとあの頃の唯のくせみたいなものがちらっちらっとだけど唯の仕草に見える気がした。
 まぁ幽霊が喋ったりするっていうのは今でも違和感はあるんだけど、唯も言っていたが、結局のところどうでも良かった。
 重要なのは、俺が唯と遊んでいることだったから。



TALE 第9話 「届け! 梢の想い」




 今日も梢と梢の家族が起きないようにそっと玄関の引き戸をしめる。
鍵もしっかりと閉め、いつものように神社へと向かおうとした。

「淳くん」

 暗闇のなか、急に名前を呼ばれた。

「っ誰だ?」
 周りを見渡してみても真っ暗でよく見えない。
 今日は月も出ていないから本当の闇だ。
 でも、この声には聞き覚えがある。
「梢なのか?」
 半信半疑で暗闇に呼びかけてみる。
「……そうだよ」
 すこしの沈黙の後、そう答えが返ってきた。
 俺の目もようやく暗さに慣れてきて周りがぼやっと見える。
 すると目の前に梢はいた。

「どうしたんだよ、こんな時間に」
「それはこっちのセリフだよ!」
 少し怒ったような声だ。
「毎晩毎晩。どこに行ってるの?」
「どこって…………」
 
 唯のところに行っているんだ。と本当のことを答えても別に問題はなかったはずなのに、何故か俺は素直にそう口に出すことができなかった。
 もちろん、もう死んでしまっている唯と会っていると言ってそのまま信じてもらえるとは思えなかったから黙っているという考えもあった。
 でも、それよりは梢に唯のことを話してしまったら、もう唯に会えなくなるような気がして言えなかったのが本当のところだ。

「どこなの?」
「……梢には関係ないよ」
「――――」
 言った後、はっとした。
 梢にはこっちに戻ってきてから家に泊めてもらったり、夏祭りにも誘ってらったり、いろんなことで世話になっているのに。なによりも唯と同じ幼馴染なのに「関係ない」なんてそんな突き放したような言い方をしてしまうなんて。

「――ひどいよ、淳くん」
「ご、ごめん」
「……本当は淳くんの口から直接言ってほしかった。でも……」
「え?」
「私、知ってるよ。淳くんが、唯ちゃんに会いに行ってること」
「えぇっ!?」
 なんで、梢が俺と唯のことを知っているのだろう? もしかして、知らないうちに後をつけられていたのだろうか? ……いや、それはないだろう。今までそんな気配を感じたことはなかった。

「ごめんね、淳くん。私、日記を見ちゃったの……」
「日記……」
 そう。俺はずっと日記をつけていた。毎晩唯と遊んでみんなが起きる前には言えに戻ってきてそのまま寝る前に、日記をつけていたのだ。確かに、それを読めば俺が毎晩唯と遊んでいたことはわかる。
「悪気はなかったの。でも、お掃除をしてたらノートを落としちゃって、その拍子にページが開いて、
そしたら……。まさか唯ちゃんと……」
 そう言うと梢は口元に手をやった。まさか、そんなはずはないといった感じだった。
 やっぱり、いくら俺の日記を読んだとは言っても、いきなり死んだはずの人間と夜中遊んでいるなんて言われても信じることができないのだろう。

「淳くん。唯ちゃんと……本当なの?」
「――本当、だよ」
 そう正直に言うしかない。梢にどうとられるとしても、それは今事実なのだから。

「唯ちゃん。死んでるんだよね?」
「本人はそう言ってる。でも、今ちゃんとこの世界にいるんだ。ちゃんと俺としゃべって、
足があって、飛び跳ねて、本当に毎晩楽しそうに笑うんだよ」
「…………」
「梢。わかるよ。普通に考えたら、そんなことありえないもん。でも、本当なんだ。
そして、いま唯は俺のことを求めてる。ずっといなかった遊び相手がやっとこの町に帰ってきて、あいつは今、心の底から楽しそうなんだ。そんな楽しそうな笑顔を消すことなんて俺にはできない。もし、今日遊びに行かなかったら、明日はいないかもしれない。もう、俺は唯が悲しむ
顔をみたくない。一度、俺は唯を助けることができなかったから……。その分も、今返してやりたい
んだ。だから、俺は今日も行く」

 そう言って梢の脇を抜けようとしたが、服の袖をギュッと掴まれた。

「梢……」
「――――」
 梢は俯いて俺の服の袖を掴んでいる。表情は見ることができない。
「わかってくれ、梢。今、唯の傍にいてやれるのは、俺しかいないんだ」
「――――」
「梢……」
 
 梢は何も反応を示さないで、ただ俺の袖を掴んだままだ。
 可哀相かもしれないが、梢の手を解いて、唯のもとへ急ごうと梢の手を触ろうとしたときだった。

「……間違ってるよ」
 最初は聞き間違いかと思うほど小さな声だった。
「間違ってるよ、淳くん」
 二度目はさっきよりも大きく、それでもか細かったがはっきりと言った。
「俺が、間違ってる……?」
「そうだよ」
 梢は掴んでいた俺の袖を勢いよく放し、そして俺の目をしかと見据えて言った。

「淳くんはこの町に何をしに帰ってきたの?」
 
――俺がこの町に何をしに帰ってきたか?

「唯ちゃんに伝えたいことがあったんじゃないの? いろんな繋がってることをはっきりさせたくて帰ってきたんじゃないの? もし、淳くんがさっき言ったように今自分にできることは唯ちゃんの傍にいて、いっしょに遊んで、一時でも長く唯ちゃんを笑顔にしておくことだと思っているなら、それは大きな間違いだよ! だって、どんなに楽しそうに笑っているとしても、はしゃいでいるとしても、唯ちゃんは本当はもうこの世界にはいないんだよ? もう死んでるんだよ? いまの淳くんを見てるの、凄く辛いよ。私が日記を見つけたあとも、毎晩毎晩、唯ちゃんのところへ行っていた。その後ろ姿。私にはとりつかれているようにしか見えなかったよ……」

「とりつかれてるって……」
 なんだか唯のことを悪霊か何かみたいに言われている気がしてつい口を挟む。

「違うの。そうじゃない。淳くんが唯ちゃんにとりつかれているように見えたんじゃないの。そうじゃなくて、淳くんはやっぱりまだ、あの川での事故のことを自分の中で乗り越えられていないんだよ。唯ちゃんにとりつかれているわけじゃない。淳くんはあの事故の責任にとりつかれているだけなんだよ!」

「――梢。俺、唯のとこ、行くよ」
「淳くん!」

 呼び止めて、また俺の服の裾を掴んだ梢の手を今度は優しくどかした。

「大丈夫。今日で唯のところへ行くのは最後にするから。最後にちゃんとお別れは言いたいから――ってあれ?」

 さっきまでいた梢の姿がどこにもない。
「あぁ、そっか、俺、梢のこと触ったから……」
 どうせまたびっくりしてどこかに走っていってしまったんだろう。
「まったく……」
 ちょっとため息を吐いて、俺は最後になるだろう神社への道に足を向けた。 


[No.1164] 2008/10/26(Sun) 13:49:18
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜第10話 (No.1164への返信 / 9階層) - バル

 

 神社への道を歩く。途中で梢から言われた言葉がまた頭の中によみがえる。

「あの事故の責任にとりつかれているか……」

 それはやっぱりあると思った。俺はあの事故のことを物凄く意識して
いる。当然だ。俺が嘘を吐かなければ唯が死ぬことはなかった。
 ただ、その責任だけで唯と今いっしょに遊んでいるんじゃない。
 唯と遊ぶことは本当に楽しかった。
 もし、本当に責任というものだけで遊んでいたのなら、俺はすぐに唯への申し訳なさから心が持たなくなって、毎晩遊ぶことはできなかったと思う。

 だから、俺は今晩まで自分がやってきたことが全部間違いだとは思ってない。
 

ただ、

「淳くんは何をしにこの町に帰ってきたの?」
 
 梢のこの言葉が一番こたえた。
 そうなんだ。俺が何のために帰ってきたか。これを忘れて唯と遊んでいたことが一番の問題なんだ。

 だから、今晩それをしっかりとさせる。
 
 空を見上げる。今夜はキレイな満月だ。
 なぜだろう。月夜にはなんだか心が昂ぶるような、穏やかなような不思議な気持ちになる。
空も飛べそうな……なんかそんな詩の歌もあったな。でも本当にそんな気持ちになる。

 よく考えてみれば、幽霊といっしょに遊んでるってすごい不思議な話だよな。
唯っていう幼馴染が相手だったからか、今まで意識していなかったけれど、俺いま物凄い特異な体験しているよな。

 でも、なんとなくだけど、こういうふうに唯と話せるのは一生は続かない気がする。
 なんで? と言われたら答えられないんだけど……ただ、なんとなく。





TALE 第10話 「そして、泉坂へ――」





 唯は初めてあったときと同じように川の流れを確かめるように指をつけて流れを感じているようだった。

「唯!!」
 大声で呼ぶと、唯は気付いて俺をみた。
「じゅんぺー」
 そう言ってこっちに寄ってこようとする。
「ちょっと待て! そのまま聞いてくれ!」
 そんな唯をその言葉で止めた。

 唯は不思議そうな顔をしてその場で律儀に立ち止まる。


 そんな律儀な姿を見て、やっぱり唯はいつまでたっても唯のままだと思い、少し顔が綻んでしまう。
 
 思えばあの事故だって、唯が俺の嘘に気づけば起こらなかったことだ。もちろん俺が嘘をつかなければよかったのだが、唯の純真さ・素直さもアダになったと思う。

「唯! そのまま聞いてくれ!」
 
 俺と唯の間には少し距離がある。直線距離で5〜6mだろうか。少し高低さもあって俺より一段高いところに唯は立っているから、俺が唯を見上げるようなかたちになっている。そして、唯の後ろには月が輝いていて、唯の姿を後ろから照らし出していた。
 
「今日は言わなきゃならないことがあるんだ!」

 唯は黙って俺の言葉を待っている。表情にいつものような明るさは感じられない。
 決心が鈍る。
(ダメだ。怖気づくな!)
 心の中で弱気になっている自分を叱咤した。
(俺は唯に伝えなきゃいけないことがあるから帰ってきたんじゃないか! もしここで何も言えずに泉坂へ帰ったら、俺は昔と変らないただの嘘つきだ!)

「唯! 俺、おまえに嘘を吐いていたんだ!」
 自分でも声が震えているのがわかる。
 でも言わなきゃいけない。

「コスモス……!」
「え?」

「俺がお前に教えた川底に咲いてるっていうコスモス……あれ、嘘なんだ! 俺が恥ずかしくてつい言っちゃった嘘なんだ!」
「――――」
「ごめん! ごめん唯!」
 謝ってなんとかなる問題じゃないことは充分わかってる。でも謝らないわけにはいかない。
 
「――――」
 唯は黙ったまま俺をまばたきもせずに見つめている。




 そのままお互い何も言葉を発しない時間がいくら続いただろう。
 時が無限のように流れる。いままでこんなに時間が過ぎるのが長いと感じたことはなかった。

「なんで?」
 沈黙を破ったのは唯だった。
「なんで今頃言うの?」
「…………」
「もう、唯は死んじゃってるんだよ? 今そんなこと言われても、どうしようもないよ……」
「…………」
「もし、唯のことを思うなら、黙っていてくれていても良かったよ……」
「……ごめん」

「でも――。唯はそんなじゅんぺーのことが、大好きだったよ」 
 
 笑っていた。月夜の光を背後にしながら、唯は笑っていた。
 その笑顔は無理矢理つくっているわけではないけれど、決して本心から楽しくて笑っているようではなくて、その証拠に、唯の目には涙が溢れていた。

「……唯」
 さっき唯は「大好きだったよ」と言った。それは、どういう意味なのだろうか――。

「自分が間違ったことをしたら、どんなに恥をかくとしてもちゃんと謝らなきゃと思う。正義感みたいなものなのかな? じゅんぺー変らないね」
「でも、俺は間違いではすまされないようなことを――」
「しかたないよ。だって、間違えない人なんてこの世にはいるはずないんだもん」


「それにね、じゅんぺー。聞いて欲しいの」
 自然と唯と目を合わせる。唯も俺の目を涙をためながらしっかりと見つめてくる。

「わたし、コスモスが嘘だってわかってたよ」
「え?」
 信じられなかった。


「だって、川底に咲いてる花なんて見たことないもん。じゅんぺー嘘下手だよ」
 唯は軽く微笑んでいる。
 でも、俺は納得することができない。
「で、でもあの後、唯は一生懸命コスモスを探してたじゃないか!」
 そう。もし嘘だとわかっていたなら、その場で言えば良いし、なによりあんなに懸命に探すはずがない。



「唯はね、ちょっとおバカさんなんだよ」
 


 そう言って少しだけ言葉をとぎる。けれど視線は外さない。

「嘘だとしても、頑張って探してれば、じゅんぺーのことだから結局心配になって戻ってきてくれるって、唯のことを気にしてくれるって、そしてじゅんぺーのことが好きっていう気持ちも伝わるって思ってた」

「――そ、そんな……」

「えへへ。バカだよね。そのまま死んじゃうなんてさ」
 まるでちょっとしたイタズラがばれた時のような軽さで言う。

「でも……。ううん。だからこそ、じゅんぺーはそんなに唯に縛られなくっていいんだよ」

「唯?」

「事故の責任を感じて、じゅんぺーが唯と毎晩遊んでくれていたのもわかってたんだ。でも、初めてお祭りの日にじゅんぺーを見つけたとき、すっごく嬉しくて、嬉しくて。声をかけたら気持ちがとめられないのわかってたのに。やっぱり我慢できなくて、あの日話しかけちゃった。そしたら、じゅんペーは驚くほど唯の知ってるじゅんぺー通りで凄く懐かしくなって。唯はもう死んじゃってるのに……。じゅんぺーのことが――好き――っていう抑えていた気持ちが、心の中から溢れでてきて……。もし、じゅんぺーが謝るならこのことだよ! 唯が弱みにつけこんでるのをじゅんぺーがもっと早く、怒って、もう会えないって言ってくれてたら、こんなに辛くはなかったのに! こんなにいっぱいいっぱい遊んだら、唯、じゅんぺーのこと忘れたくても忘れられないよ!」

――唯……。

 唯はいっきにまくしたてた後、堪えきれないように声をだして泣きじゃくってしまった。
 対する俺は、ただただ圧倒されていた。
 まさか、唯が俺の嘘に気づいているなんて思わなかった。そして、それでもコスモスを探し続けていたなんて……。

 でも、唯はひとつ、勘違いをしたままだ。

「唯! 聞いてくれ!」
 唯はなんとか泣き声を押し殺して、俺の話に耳を傾けようとする。

「俺、唯と遊んでて本当に楽しかったぞ!」
 耳だけじゃなく、心にまで届くように大きな声をだす。
「さっき唯は事故の責任だけで、俺が唯と遊んでいたって言ってたけど、それは違うよ! 俺は本当に唯と久々に会えて嬉しかったし、楽しかったんだ! もちろん事故のことも最初は考えてた。だけど、唯と毎晩会うにつれて、どんどん遊ぶこと自体が楽しくなってきちゃって、最近は唯と遊ぶことしか頭になかったんだ」

 俺はただ、正直に自分の気持ちを話すことだけに集中する。それが唯に対する精一杯の答えだと思ったから。

「そしたらな、今晩、梢に怒られた」
「『何しに帰ってきたんだ』って。『この町に残してきたいろんなことをきれいに失くすために戻ってきたんじゃないか』って。正直、梢の言葉がなかったら俺はこのままずっと唯と遊んで、そのまま夏休みが終わって、また何もしないまま泉坂へ帰ることになっていたと思う。だから梢には凄い感謝してるんだ。……ってそんなことを唯に言っても仕方ないんだけど――。でも、だから俺はいま唯にしっかり自分のこと伝えられてる。でも、それって俺の自己満足なんだよな、それで唯を傷つけるってこと、本当にごめんって思う……」

 そうだ。いままで俺は結局俺のことしか考えていなかったんだ。あらためて自分の浅はかさに嫌気がさす。結局、俺は唯を傷つけただけじゃないか……。

 唯は少し落ち着いてきたのか、もう泣き止んで顔をゴシゴシとこすっていた。

「ごめん、じゅんぺー。唯、最後のほうすこし感情的になっちゃって……。誤解させたね」
 唯はゆっくりと喋りだした。

「さっきも言ったけどね、そんなじゅんぺーのことが唯は大好きなんだ。ホントだよ? だからね」

 また言葉をとぎる。そしてポーンとその場でジャンプしたかと思うと、唯はそのまま空中に浮いていた。

「唯!?」
 びっくりして、俺は唯の近くに駆け寄る。





「だからね、じゅんぺーは恋をして」





 そう言いながら少しずつ、少しずつ空にむかって浮かんでいってしまう。 

「唯!? 唯!!」

「私はもう死んじゃってるから、だからもうじゅんぺーと恋をすることはできないけれど、でもね、じゅんぺーにはこの世界の誰よりも幸せになってほしいよ」

「唯!」
 俺はなんなんだ? ただバカみたいに唯の名前を呼ぶことしかできない。
 このままじゃ唯がもう会えないところに飛んでいってしまうのに!
 そう俺の感覚が叫んでいるのに、何も、できない……。


「ね。じゅんぺー、唯の最後のわがまま聞いてくれる?」

「聞く! 聞くよ!」
 その言葉を聞くと唯はすがすがしいほどの笑顔をまた、俺に見せてくれた。
 
 あぁ、終わってしまう。
 
 直感でそう感じた。
 


「唯。ずっとじゅんぺーのそばにいるね。じゅんぺーがこれからどんな道を選んでも、唯だけは、最後までじゅんぺーの味方――」

「ゆ、ゆい……」
 堪えきれず、俺の目から涙がブワっと溢れた。なんで、なんでそんなに優しいこと言うんだよ。もう会えないみたいに、言うんだよ!

「それじゃあね、じゅんぺー……」
 唯はそう言うとくるりと俺に背を向けた。と同時に唯の体全体が仄かに光を帯びた。
すると足元からキラキラと、光る砂が風にさらわれていくように唯の姿が消えていってしまう。


「待て! 最後にこれだけは聞いてくれ! 唯!」
 消えていく唯に俺は大声で呼びかける。
 もう唯の体は腰の部分まで消えてしまっている。でも顔を俺のほうにしっかりとむけてくれた。


「俺、頑張るよ! まだ自分の道もわからないような俺だけど……。でも頑張るから! 俺のことちゃんと見ててくれ! そして、俺の一生が終わったら、必ず唯に会いに行くから! そのときにいっしょにコスモスの花、探そう! ずっと、ずっと! 探そう!!」


 もっと言いたいことがたくさんあるのに、これしか言えない自分が本当に情けない。
 だけど唯はそんな俺を見て、涙を流してくれた。

「ありがとう……。ありがとうね、じゅんぺー――」





 そして唯の姿は月夜の中に輝きながら消えていった。










 ピリリリリリリイリリリリリイ

 列車の発車ベルが鳴り響く。

「淳くん。それじゃあ気をつけて……。また手紙書くね。今度はちゃんと返してよ?」
 梢がおみやげの南部せんべいをもう列車の中にいる俺に窓から手渡ししながら言う。
「わかってる。今度からはちゃんと返すし、なるべく長期休みには帰ってくるよ」

 唯との別れの後、神社からの帰り道に梢が待っていた。
 俺は先ほどの別れがずっと頭の中に残っていて、涙が止まらなくて、ひどい顔だった。
梢はそんな俺をそっとやさしく抱きしめてくれた。
 男性恐怖症で、男の人に触れるだけで逃げ出してしまうはずなのに。梢はふるふると震えながらもちゃんと俺を抱きしめてくれていた。
「淳くん。……わたし、淳くんが好きだよ」
 梢は、俺の耳元でそっと囁いた。
「だからわかる。淳くんはまだわたしを好きじゃないんだなって」
 梢も泣いているんだろうか? 顔が見えないからわからないけど、声が若干震えている気がする。
「だからね、淳くん。泉坂へ帰って、思いっきり悩んできて。わたしはもちろんあきらめないから。わたしを含めて、淳くんが誰と恋をしていきたいのか、悩んで欲しいの……」
 梢の言葉が俺の胸をそくそくとうつ。
 あぁ、俺はこんなにもいろんな人に愛されているんだ。そう気付いて、俺の涙はいっそう溢れた。




 プシューーーーーー    ガコン

 どうやらもう列車が出るらしい。
「それじゃあね、淳くん!」
 列車がゆっくりと滑り出す。
 梢はちぎれんばかりに手を振ってくれている。
 どんどん列車は加速していく。途中まで走って追いかけてくれていた梢も、スピードに追いつけなくなって、今では立ち止まってジャンプしながら手を振っている。
 そして、その姿はとても小さくなって。列車がカーブに入ると見えなくなった。



 ゆっくりと座席に体をまかせる。
 今年の夏はいろいろなことがあった。
 忘れることのできない、夏だった。
 窓から吹く風が、クーラーのついていない田舎の列車の車内を抜けて、心地よい。

 そのとき、窓から風にのってそっと何かが入ってきた。
 それは俺の太ももの上にふわりと落ちた。
 何かと不思議に思って見てみる。
 するとそれはコスモスの花びらだった。
 上品な紫色の優しい色のコスモス。
 まだ季節的には早いかもしれない。
 6月から咲く早生品種もあるらしいから、もしかしたらそれかもしれない。
 でも、俺はこのコスモスは、唯が俺にくれたおみやげなんだと、勝手に思い込んだ。



 そして、俺は泉坂へと、帰っていく。




―― To the end of the second curtain;「TALE」, and the following curtain…… ――


[No.1165] 2008/10/26(Sun) 13:54:11
A.s.s.I.d.y第2幕〜TALE〜 あとがき (No.1165への返信 / 10階層) - バル


もう誰も私のことを知っている人はいないと思いますので……。

はじめまして、バルと申します。
まず始めに、約2年も連載をストップしていたこと、本当に申し訳ありませんでした。
なぜ連載をストップさせてしまっていたのか……。その明確な理由は何故か自分でもよくわかりません。最初はアイデアに詰まって、筆をとめました。
 そして少し経っていざ書こう、と思い筆をあげたものの、以前のようなアツい文が書けず、書いては消し、書いては消しを繰り返しました。するとだんだんとサイトも私の知っている人がひとりひとりとこのサイトを去っていき、なんとなく、私がここにいるのは間違いではないのか? と思ってしまっていました。そう考えてしまうと、「なぜ私は二次小説を書いているんだ?」という思いが頭の中に浮かんできて、なんとなく筆をおいてしまいました。

 誰にも何も言わず。私はこの連載を本当に投げ出してしまいました。 そしていつしか、サイトの存在自体、頭の中から消えてしまいました。

 
 そのまま私は今年大学3年生になりました。
 就職活動です。就職活動では「自分を見つめなおす」という意味で「自己分析」というものをしなければなりません。
 そのときに「OVER DRIVE」。このサイトが蘇ったのです。
 私は高校時代に何をしていたのか……。
 そうだ。当時有名だったCheeさん(名前がうろ覚えですが)の二次小説に感動し、自分も書いてみたいと思い、わたしは当時ねぎっち(ねぎさんの事です)が管理人をしていたこのサイトに行き着きました。その頃は、ねぎっちだけが小説を書いていて、他の書き手を募集しているのですが、まだ誰も他に書き手がいない頃でした。
 若いというのは凄いもので、私は迷わず自分の拙い小説をねぎっちに送っていました。
 今思い返すと、よくあんなに拙いものを輝かしいこのサイトにUPしていただけたと思っています。
それでも私は狂ったように書きました。私の面白くもない小説を読んで、感想を残してくれる人もいる。
私にとってそれは本当に力になり、心から楽しいことでした。

 そんなことを思いだすとともに、わたしはこの小説のことを思い出しました。
「これでは、いけない」
 
「ひとまずでもいいから、ちゃんと区切りをつけなければならない」
 そう思い、私は今回、この第2幕「TALE」に改めて筆をつけました。


 人間というものは凄いもので、あれほどキレイに忘れていたことだったのに、いざ書き出すとおもしろいように当時考えていたアイデアが頭の中に溢れてきました。
「あぁ、俺は本当に書くのが楽しくてしょうがなかったんだ……」
 あらためて感じました。


 私の「A short sentence I dedicate you」は第3幕までの予定です。
 
 ここまで言っていて大変申し訳ないのですが、とりあえずということで第2幕を完結させました。
 6話で製作日数では2週間ほどでしょうか。本当に申し訳ないのですが、就職活動や私生活がかなり忙しく、なかなか時間が取れません。なので、また少し時間を置いて執筆することになると思います。



 でも、わたしはこの「A short sentence I dedicate you」を完結させます。
 この小説は、私にとって、人生のひとつなのです。
 誰からも見向きもされない小説だとしても、私にとってはかけがえのない作品だったのです。
 愚かな私は今頃気付きました。
 
 もし、私のこの自己満足を読んでくれている方がいるならば、もう少しの間待ってやってください。
 私はゆっくりですが、必ず淳平を幸せにしてやりたいと思っています。



最後に、ねぎっちと現管理人さん。
 このような場をつくってくれたこと、残してくれたこと。
 心から感謝しております。

 長々となってしまいましたが、これをあとがきとさせていただきます。
 

 本当に2年間の沈黙。申し訳ございませんでした。


[No.1166] 2008/10/26(Sun) 13:57:07
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