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カランコエ 〜あなたを守る〜 (親記事) - バーツ

一目惚れだった

顔を見た瞬間、俺はキミに恋をした

でも、キミは俺みたいな奴のことは眼中にないと思ってた

ずっと片思いのままだと思ってた

この初恋は実るわけがないと思ってた

でも、この時はまだ知らなかったんだ

本当は、キミがあんな事を思っていたなんて

この時はまだ知らなかったんだ

数年後、キミのために俺があんな事になるなんて

そう、この時はまだ・・・

「カランコエ 〜あなたを守る〜 」


[No.742] 2008/01/31(Thu) 20:28:48
カランコエ 〜あなたを守る〜 1 (No.742への返信 / 1階層) - バーツ

冬の寒さも抜けきった4月

桜舞い散る公園内のベンチに一人静かに座っている俺

真中淳平 泉坂高校2年生

両手の上には一冊の雑誌が置かれている

その雑誌を開きパラパラとめくっていくと、あるページで手の動きが止まった

そこには数枚の女性のグラビア写真が載っており、そしてこう書いてある

『西野つかさちゃん 高校2年生』

『部活には入っておらず、夢である歌手になるため日々勉強に励んでいる』

『“たくさんの人の前で歌うことが私の喜びです”と語る彼女』

『歌唱力はずば抜けており、歌手デビューは近いかもしれない』

『つかさちゃんへのファンレターはサンライズ編集部まで』

一通り読み終わると、笑顔で写真に写る西野に目を移す

西野つかさ 泉坂高校2年生

彼女は学校内のアイドル的存在であり、俺と一緒のクラス

そして、恥ずかしながら俺の初恋の相手

「西野・・・・」

不思議だよな・・・・クラスメイトが雑誌のグラビアに載るなんて・・・・

パタッと雑誌を閉じ溜め息を一つつく

「もともとそんなに近くはなかったけど、これじゃあますます遠い存在に感じちまうよなぁ」

そして再び溜め息

「なーにが遠い存在だ」

「わぁ!!」

突然声をかけられたことに驚きパッと後ろに振り返った

「外村ぁ!?」

「どれどれ・・・・お前の大大大好きな西野つかさ様々のグラビアショットを拝見させてもらうぞ」

外村ヒロシ 泉坂高校2年生

こいつも一緒のクラスで、一応?親友でもある

外村は俺から雑誌を奪い取ると、ベンチに胡座をかいて座り中身を読み始めた

「おい外村!勝手に見てんじゃねぇよ!てか何でここにいるんだ!」

「そんな口の効き方していいのかなぁ?マ〜ナカく〜ん?」

「は?」

マ〜ナカく〜んって・・・・気持ち悪っ!

「誰のおかげでこの本の事知ったと思ってんだ?この号につかさちゃんが出るってわかったのは俺が毎月コレを購読してっからだろ」

そうだけど・・・・

「ここにいるのはさっきそこの本屋でコレを買って、今はその帰り道だからだ」

だったら俺のじゃなくて自分で買ったやつ読みやがれ!

「つかさちゃんこの事ヒミツにしてっから知ってんの俺とお前くらいなんだぜ」

へぇー・・・・

「それにしてもつかさちゃん嫌がってたわりには案外ノリノリで写ってんじゃねぇーか」

外村は雑誌に喰いついて見てやがる

それよりだ・・・・・・・・

「外村‥お前西野の事いろいろ知ったふうじゃねぇか」

「だって昨日デートしたから」

昨日・・・・デート・・・・・・・・?

・・・・・・・・ぁあ!?

「テメェ他に好きな子いるくせに!お前なんか‥お前なんかこうしてやらぁ!」

俺は外村の首根っこを掴んでグイグイと引っ張った

「じ・・冗談に決まってんだろ!街でバッタリ会ったからちょっと話しただけだって」

外村は乱れた呼吸を整えながら言った。

「ホントにそうなのかなぁ?」

「なっ・・親友を疑う気か!」

お前の場合は親友でも疑うわ!

「2月だったっけ・・・・ほら、つかさちゃんどっかのテレビの歌番組に出たろ?」

そういえばそんなこともあったな・・・・

「そん時にこの編集のヤツに気に入られたらしくてさ・・・・」

――――――・・

――――――――・・・・

――――――――――・・・・・・

「自分の宣伝にもなるだろうからやってみないかって言われて・・・・」

「ほー」

「情報系の雑誌って聞いたから安心してたんだけど、いきなり水着きせられちゃって・・・・」

「一応あたし自身の宣伝にはなったかもだけど、変なポーズとらされるし・・・・」

変なポーズだぁ!?

「ホンットにサイテーだったんだから!」

「雑誌のグラビアの事絶対ヒミツだよ外村くん!あんなもの誰にも見られたくないから・・・・」

「あ‥っと、悪ぃ!真中に喋っちまった・・・・」

「えっ・・・・」

――――――――――・・・・・・

――――――――・・・・

――――――・・

「俺の名前出したのか!?」

外村のヤロォ・・・・

「それよかあん時の顔・・・・」

「あ?」

「真中に喋ったって言った時のつかさちゃんの“えっ”って顔」

「それが何だよ?」

「ひょっとしてつかさちゃんお前に気があったりして・・・・」

ドキッ・・・・

西野が・・俺のこと・・・・?

マジで?ホントに?あの西野が俺のこと?

――――――・・・・・・・・

「あたし‥キミのことがずっと好きだった・・・・」

「俺もだよ・・西野・・・・」

「・・大好き・・・・」

「あぁ・・・・」

――――――・・・・・・・・

エヘヘッ・・エヘッ‥‥

「‥‥妄想中悪いがあり得ない話だ。真に受けるだけお前が見苦しくなるぞ」

見苦しくなるって‥‥

「お前はいいよなー気軽に話なんかできてよ」

「それくらいできるだろ普通‥‥」

「そんなことできたらとっくにしてるっつの」

「じゃあ何だよ?」

俺は外村に背を向けて話し出した

「なんつーか‥好きな子前にすると何も話せなくなんだよ」

「‥‥」

「よくあるだろ‥言いたいことあるのに口に出せないみたいなさ」

「‥‥」

「そーゆータイプなんだよ俺。だからダメなんだ‥‥」

「‥‥」

「なぁ外村。お前は俺の気持ちわかってくれ‥る‥‥」

振り返ったら、外村は雑誌に夢中になっていた

「ヤッパリつかさちゃんカワイーなー!」

‥‥‥‥

‥‥殺す!絶対コイツ殺す!

俺の話をロクに聞きもしないで何が親友だ!

「‥まぁあれだ。その性格直さねー限りつかさちゃんとは話もできないってこった」

なんだちゃんと聞いてたのかよ‥‥

「‥あぁ‥‥」


[No.748] 2008/02/01(Fri) 20:44:27
カランコエ 〜あなたを守る〜 2 (No.748への返信 / 2階層) - バーツ

「あーーぁ、やっぱかわいいよなぁ西野‥‥」

夜、部屋のベッドの上に寝っ転がりながらまた雑誌を読んでいた

「デートなんて夢のまた夢だろうな‥‥」

そう呟いたとき、昼に外村に言われた言葉が頭をよぎる。

【ひょっとしてつかさちゃんお前に気があったりして‥‥】

「‥‥‥‥」

気がある‥‥

「わけねぇよな‥‥」

【気があったりして‥‥】

「‥‥あり得ない事もないか‥‥」

ウンウンと首を縦に振りつい一人で納得してしまった

「はぁ‥‥」

それはそうと‥

西野のグラビア見た俺は明日どんな顔であいつと会えばいいんだ!

翌日‥‥

学校へつき教室に入ると

「ねぇどんなグラビアだったの!?」

「水着だよなぁ?」

「サインくれサイン」

案の定西野が持て囃されていた

こりゃアイドルだな‥‥

西野ってこんな騒ぎイヤじゃねーのかな‥‥

ふと西野に目をやった

「もういいでしょ?恥ずかしいからやめてよー」

‥‥ってそうでもなさそうか

否定しながらも少し照れてるし‥‥

「あれー?お前の初恋の相手が困った顔してるけど?」

肩にポンッと手を置かれた

見るとそこにはサッカー部の朝練終わりの眠たそうな大草がいた

「別に困ってるように見えねぇけどな」

「そんなこと言って本当は気にしてるくせに」

「誰が?」

「お前が」

入り口で喋っていると、俺と大草が来たことに気付いた友達が声をかけてきた

「おい真中!大草!西野がさぁ」

「もうっ!これ以上ひろめないでよ!」

「グラビアに出たんだってよ!」

そんなこと知ってるっつーの‥‥

ここは流れに乗っといたほうがいいのか?

俺が言おうとした時、西野がこっちを向いた

今出かかった言葉がかき消されて、真逆のことを言ってしまった

「‥‥だから?」

うわっ!俺のバカ!これじゃ反応薄いって!

完璧西野に興味ないって思われちゃうじゃんか!

「おい!ちょっと真中‥‥」

大草に呼ばれたけど、言ったことに後悔していた俺は無視して足早に自分の席に向かった

「思ったこと言えないどころか逆走してんじゃねぇか」

イスに座ると後ろの席の外村が嫌味ったらしく言ってきた

「うっせぇ」

そう返したと同時に担任の黒川先生が教室に入ってきた

「席に着けー」

騒がしかった教室が先生の声で一気に静まり返る

「えー、今年も恒例の新入生歓迎会を実施することとなった」

去年俺らがやってもらったつまんねーアレか‥‥

「各クラスひとつ出し物をするから、実行委員を男女1人ずつ決めるんだが‥‥」

先生はそう言いかけると教卓の中から箱を取り出した

「くじ引きで決めるからなー」

そしてみんながくじを引いている時、背中をツンツンッと指で押された

「つかさちゃんとなれたらいいな。なぁ真中?」

「奇跡でも起こらねー限り無理だよ」

‥‥‥‥で

「くじ引きの結果‥‥」

なんと‥‥‥‥

「実行委員は真中と西野に決まった」

奇跡が起こってしまった‥‥‥‥


[No.749] 2008/02/01(Fri) 20:46:34
カランコエ 〜あなたを守る〜 3 (No.749への返信 / 3階層) - バーツ

さて‥‥どうしたものか‥‥

今学校から西野と一緒に帰っているわけだけど‥‥

緊張感はあまりない

俺にはとっては珍しいことだ

なぜかって?

それは‥‥

「ねぇ‥‥淳平くん?」

「な‥なに?」

「なんか‥‥恐いね」

「そうだ‥ね‥‥」

2人でヒソヒソ話しながら後ろをチラッと振り返る

そこには学校からずっと付いてくる多数の男たち

多分雑誌に載った西野目当てだな

そいつらから「なぜお前がその位置にいるんだ」的なオーラが出ており、その威圧感から恐怖心を覚えたから

時間は1時間前に遡る

ーーーーーー‥

ーーーーーーーー‥‥

ーーーーーーーーーー‥‥‥

「さってと、出し物どうしよっか」

授業も終わり、今は放課後

クラスの人は部活とか帰宅とかでいない

教室には俺と西野の2人っきり

話し合いにはもってこいの状況

そして外村に言われた俺の性格を直す環境も十分に整っている

“チャンスは最大限に生かす”

俺のお気に入りの言葉

「おーい、聞いてる?」

「へ?あ‥‥うん」

「しっかりしてよね、淳平くん」

「はい‥‥」

緊張してあまり上手く会話が出来ない

かといって、西野と初めて話したわけではない

中学の時2、3年は一緒のクラスだった

つまり中高合わせて同じクラスが4回目ということだ

そのため会話はある程度はしてきたほうだと思う

まぁ俺からは話しかけたことは一切ないけど‥‥

西野の人気は中学の頃から凄くて、毎日のように告白をされていた気がする

だが、西野は今のところ告白を全て断ってきている

俺の知る限り誰とも付き合ったことがないと思う

かっこいい奴は山ほどいたのに

でも俺はその方が嬉しいのだけれど‥‥

「なにニヤニヤしてんの?」

俺ってば知らぬ間にニヤついてたのか!?

「なっ‥なんでも‥‥ないよ?」

「そっ?変なの‥‥」

西野に変なのって言われた‥‥

まぁそれはいいとして1つ気になるのが‥‥

「淳平くんは何か良い案ある?」

そう、この呼び方

男子はみんな名字で呼ぶのに、なぜか俺だけ名前で呼ばれる

「淳平くーん?」

最初は確かに真中くんだったはず‥‥

でもいつからかこの淳平くんになっていた

「おーい‥‥」

こんな時に外村のあの言葉をまた思い出す

【ひょっとしてつかさちゃんお前に気があったりして‥‥】

‥‥まさかな‥‥

「淳平!!」

「ひゃっ!?」

耳元で大声で名前を呼ばれた

キーンってなってる耳を抑えながら横を向くと、手を腰に当てて少し怒った顔をしている西野

そんな姿もかわいい‥‥と思ってしまう俺は相当ヤバいな‥‥

「真面目に考えろよな!」

「スミマセン‥‥」

西野が本当に怒り出す前に何か案を出さなければ‥‥

そしてとっさに出た言葉が

「西野がみんなの前で歌えばいいじゃん」

「クラスみんなじゃなくてあたし1人?」

「え‥‥だって西野歌上手いじゃん!この前テレビにも出てたし。それに西野の歌声俺好きだし‥‥」

‥‥ハッ!

俺今結構喋っちゃったぞ‥‥

西野を見ると少し俯き加減だった

そっか、そうだよな‥‥

クラスの出し物なのに西野1人ってのはかわいそうだよな

やっぱみんなでやるやつの方がいいよな

「別に‥‥いいんだけど‥‥」

‥‥え?

いいんですか‥‥?

でも”けど“ってなんだ?

「けど?」

「淳平くんもやってよね?」

「‥‥‥‥は?」

やるって‥‥何を?

「あたし歌うからピアノ弾いてよ」

「‥‥んなっ!?」

ーーーーーーーーーー‥‥‥

ーーーーーーーー‥‥

ーーーーーー‥

というわけで、今は西野家に向かっている最中なのです

ちなみに俺は小6までピアノを習っていたため、他人よりは出来るはず

小さい頃に聞いたピアノの音が心地よくて、それでいてかっこよくて

そんな理由で小1頃からピアノを習い始めた

確か先生の名前は‥‥“上村”だったかな?

俺がピアノを弾けるのを知っているのか、西野は俺に頼んできたのだろう

あの後曲は家で決めようという西野の提案から今に至るわけだけど‥‥

クソッ!後ろの男どもめ‥‥いつまで追ってくる気だ?

これじゃ西野の家に入れないじゃないか

かれこれ20分はこのままだ

いい加減どっか行けよ‥‥

「あっ」

そんなことを思っていると、突然西野が何か思い出したように声を出した

「なに?」

「この様子じゃあたしの家は無理っぽそうだから、あそこ行こ」

「あそこって‥‥どこ?」

「いいからいいからっ!ついてきて!」

するといきなり西野は走り出した

仕方なく言われた通りについていく

数分後‥‥

「ここ!」

ついた先には3階建てのビルらしき建物

そして看板にはこう書かれていた

「上村‥‥スクール‥‥?」

“上村”‥‥‥‥?

「そっ」

なんだここ?

ってかなんでこんなとこに連れてきたんだ?

「じゃ中に入ろっか?」

「えっ‥ちょっと‥‥」

西野は俺の手を取り歩き始めた

手を握られた瞬間ドキッとしたのは言うまでもない

ん、あれ?後ろにいた男共もいつの間にかいない‥‥?


[No.756] 2008/02/02(Sat) 14:48:32
カランコエ 〜あなたを守る〜 4 (No.756への返信 / 4階層) - バーツ

〜つかさside〜

追っかけ集団から逃げるためにここに来ちゃったよ‥‥

まぁいっか

「じゃ中に入ろっか?」

あたしは淳平くんの手を取って歩きだした

「えっ‥ちょっと‥‥」

淳平くんを見ると顔が真っ赤だ

どうしたんだろ?

あたしと手を握るのが恥ずかしいのかな?

そんなことを思いながら階段を上がる

「なぁ‥‥ここって何のビル?」

淳平くんが小さな声で聞いてきた

「あたしが通ってる音楽教室みたいなものかな」

だからあたしも小さめの声で言った

別に大きな声を出しても構わないんだけどね

ここのビルは全部防音設備が整ってるから

そういえば、どうして淳平くんにピアノを弾いてと頼んだかという理由

以前大草くんと話した時に‥‥

ーーーーーー‥

ーーーーーーーー‥‥

ーーーーーーーーーー‥‥‥

「そういえば、真中って意外な特技があってさぁ」

「淳平くんの意外な特技?」

「そう。あいつピアノ弾けるんだとよ」

「うわぁ、そりゃ意外だねー!」

「だろ?つっても弾いてる所は一度も見たことないんだけどなぁ」

ーーーーーーーーーー‥‥‥

ーーーーーーーー‥‥

ーーーーーー‥

教室であたしはそのことをふと思い出したので淳平くんに伴奏を頼んだのです

そして2階につき正面のドアを開ける

「先生いるー?」

今日は教室は休みだけど、大抵の日はここにあたしの歌を指導する先生がいる

「あれ?つかさちゃんじゃない?どうしたの?」

奥から聞こえる声の主は上村先生

優しい女の人だ

「先生、ちょっとここのピアノ借りていい?」

「いいけど‥‥なんで?」

「新入生歓迎会であたし歌を歌うの。で、その練習に」

「そっかぁ。で?ピアノは誰が弾くの?」

「あたしの友達。淳平くん、こっち来て」

あたしは淳平くんに手招きした

「失礼しまーす‥‥」

淳平くんはあたしの後ろからゆっくりと出てきた

中に入って淳平くんと先生が目を合わせた時

「「あっ!」」

どちらからともなく声を出した

「ちょっと、淳平くんじゃない!?いやー何年振り?」

「なんでここに先生がいるんですか!?」

えっ?なに?

どういうこと?

2人とも知り合いなの?

「あのー、先生は淳平くんのこと知ってるんですか?」

「知ってるもなにも、私の一番最初の教え子だもん。ねっ、淳平くん?」

「えーと‥‥まぁ‥‥」

淳平くんは照れながら答えていた

「何で言ってくれないのよ?」

「いや、そんなこと言われても‥‥」

「まぁまぁいいじゃない」

そしてしばしの間3人で話していた

話も一段落した頃‥‥

「そういえば、何を歌うのかしら?」

あっ‥‥それまだ決めてないんだった‥‥

「淳平くんどうしよっか?」

「俺は別に‥‥何でも‥‥」

素っ気なく答える淳平くん

「淳平くんが弾けるのじゃないとダメだよね」

うーん‥‥何かいいのはないものか‥‥

すると先生はクスッと笑ってこう言った

「大丈夫よつかさちゃん。彼は大抵のものは何でも弾けるから」

「へっ?」

何でも弾ける?

「先生!ちょっとそれは無理があるんじゃ‥‥」

だってあの淳平くんだよ?

あたしの話を聞かない淳平くんだよ?

いつも上の空な淳平くんだよ?

まぁちょっと言い過ぎたけど‥‥

それでも普通の高校生

そんなプロじゃあるまいし‥‥

「安心しなさい。そこんとこは私が保障する」

保障するってどんだけですか‥‥

「でも‥‥」

「ホラ、早く決めちゃいなさいよ」

先生に急かされたので手早く決めることにした

「じゃあ‥‥」

実は最近歌いたい曲があった

あたしと同い年の男性歌手“リュウ”が歌っている曲だ

歌詞が良くゆったりとしたテンポで、なんとも心温まる歌

「“カランコエ”‥‥とかでも大丈夫ですか?」

少し不安気味に聞いた

「大丈夫よ。楽譜は‥‥確かあったはずだから」

楽譜あるんだ‥‥

「じゃあつかさちゃんはいつもの発声の練習からね」

「はい」

「じゃあ淳平くんは‥‥」

「練習します」

うん、練習しなくちゃね

せめて右手だけでも弾けるようにならなきゃ

あたしはこの時、まだ淳平くんのピアノのレベルを甘くみていた

だって‥‥淳平くんだもん‥‥

まさかこんなところにピアノの天才がいるとは知らずに‥‥

「わかったわ。わからないところがあったら言ってね」

そしてあたしが練習を開始しようとした時だった

「なんだこれ‥‥簡単じゃん‥‥」

えっ‥‥?

今淳平くん何か言わなかった?

簡単とかって聞こえような‥‥

ピアノの方を見ると、イスに座って貰った楽譜を真剣に見ている淳平くんがいた

その姿に‥‥あたしはドキッとした

なんか‥‥かっこいいな‥‥

そんなあたしに先生は気付いたみたい

「どうしたの?」

「いや‥‥何でもないです」

先生はあたしの態度で何を考えているか分かったらしく

「彼が気になる?」

と聞いてきた

「ちょっと‥‥いやかなり‥‥」

あたしがそう言うと、先生はフッと意味深な笑みをこぼして

「すぐにわかるわ」

と一言こう言った

次の瞬間、あたしは淳平くんにド肝を抜かされることとなる

〜つかさside 終〜


[No.759] 2008/02/02(Sat) 19:01:44
カランコエ 〜あなたを守る〜 5 (No.759への返信 / 5階層) - バーツ

上村スクールが先生の所だったなんて‥‥

世の中は案外狭いんだな

「はい。これが楽譜ね」

「どうも」

先生から渡された三枚の紙

曲名の“カランコエ”‥‥

‥‥ってどんな意味だ?

「腕は鈍ったかな?」

「そりゃあ4年も触ってませんからね」

「まっ、君なら大丈夫でしょ」

そう言いながら先生は西野の方に歩いていった

大丈夫って何がだ‥‥?

そして貰った楽譜を眺める

見た感じは‥‥

「なんだこれ‥‥簡単じゃん‥‥」

‥‥と口に出したものの今は弾けるかどうかわからない

とりあえず真剣に楽譜を眺めた

相変わらず五線譜の上に黒と白の丸が沢山並んでいる

でも、その数が多ければ多いほど難しい曲ってわけでもない

要は曲に溶け込むことが出来るかどうかの問題だ

‥‥っていうより演奏を楽しめりゃ曲は何だっていい

そう思うのは俺だけだろうか?

数分後‥‥‥‥

‥‥‥‥よしっ

大体流れは読めた

目を瞑り深呼吸をする

久しぶりだなぁ‥‥この感じ‥‥

演奏前の胸の高鳴り‥‥高揚感‥‥

目を開けると黒と白の二色の鍵盤

そっと指をそえる

前に一度だけ先生に言われたことがある

ピアノを前にすると俺は人が変わると

そんなこと自分じゃわからない

考えたこともない

まぁいいや‥‥

今は‥‥全神経を‥‥この指に‥‥


















‥‥‥‥ふぅ‥‥

弾き終わり、目を瞑って深呼吸をした

いやぁ、久しぶりだから指が上手く動かねぇ

途中で2回も音外したし

ったく、ダメだなこりゃ‥‥

歓迎会までに間に合うかな?

そしてゆっくり目を開けた

いつの間にか演奏前後に目を瞑り深呼吸をするのが昔っから癖になっていた

そうすると気持ちが落ち着くんだ

「先生ー?ここどうやんのー?」

少し躓いた所を尋ねるため先生を呼んだ

‥‥‥‥

‥‥あれ?

返事がない?

振り向くと、クスクス笑う先生と口をあんぐり開けてこっちを凝視する西野の姿が目に入った

こんなこと言っちゃあなんだけど‥‥

今の西野の顔‥‥笑える‥‥

絶対言ったら怒られるから言わないけどね

でもそんな顔も好き

‥‥と思ってしまう俺はおかしいだろうか

俺最近西野にハマってんなー

いや、前からずっとだけど‥‥

やっぱり俺は西野が好きなんだな、うん

そう改めて実感した

「どうか‥‥しました?」

平然を装ってわざと不思議そうに聞くと、先生が笑いながら言った

「さすが黄金の指ねー」

「黄金の‥指‥‥?」

「あぁ、それは私が今勝手に付けただけ」

なんだそりゃ‥‥

そういえば先生って何かしらに名前付けるの好きだったっけ

それよりさっきから西野が身動き一つしてねぇぞ‥‥?

どうしたんだろう?

「で‥‥どうだったかな、つかさちゃん?」

先生は西野に聞いた

「‥‥どうもこうもないですよ‥‥」

‥‥ん?

それはどういう意味だ‥‥?

やっぱ俺の演奏がマズかったのか?

そりゃそうだよな‥‥

4年もやってなかったんだ、下手に思われて当たり前か

しかし次に発した西野の言葉は予想もしないことだった

「淳平くんって何者‥‥?」

‥‥はい?

何者って‥‥‥‥

「普通の男子高校生だけど‥‥?」

西野は何か信じられないといった目で俺を見てくる

俺なんか変なこと言ったか?

「まぁつかさちゃんの反応は当然だねー」

「へっ?」

どういうこと‥‥?

「淳平くんさぁ、何でピアノやめたんだっけ?」

やめた理由?

そりゃあ‥‥

「実力がないからですよ?」

だって一回楽譜見て弾けないんじゃねぇ?

ピアニストって何でも軽々と弾いちゃうしさ?

多分俺にはピアノは向いてないんだよ

「淳平くん‥‥それは嫌味?」

今度は西野に聞かれた

嫌味って‥‥何が?

「淳平くんはねぇ、自分の標準ラインが高すぎるんだよ」

今度は先生に言われた

‥‥そうかぁ?

俺の標準はいつも先生だったけど‥‥

「君は音大のトップレベルの実力だよ」

音大のトップ‥‥?

いやいやいやいや!

そんなことないから!

「自覚がないだけね‥‥。周りに競う相手もいない、対戦相手はいつも私だったでしょ?」

言われてみれば確かに‥‥

「だってあの時は先生に追いつきたくて必死で‥‥」

あの頃はピアノ一筋だったからなぁ‥‥

毎日必ず鍵盤に手を乗せてたからな、うん

「まっ、いいわ。つかさちゃん、練習しなきゃ!」

「あっ‥‥はい‥‥」

よし、やっと西野の歌声が聞ける

そう思うとドキドキが止まらなかった


[No.762] 2008/02/03(Sun) 17:13:07
カランコエ 〜あなたを守る〜 6 (No.762への返信 / 6階層) - バーツ

〜つかさside〜

淳平くんが深呼吸して目を瞑った

緊張してるのかな?

そう思った直後、あたしの目に飛び込んできたのはまるで別人のような淳平くんだった

そしてこの場所の空気が変わった感じがした

いつもの彼からは考えられないほど研ぎ澄まされた集中力でピアノを弾いている

「どうなってるの‥‥」

そっと呟いたのを先生は聞き逃さなかった

「わかった?これが彼‥‥真中淳平の実力よ」

淳平くんの実力‥‥

「でもピアノはここ最近弾いてないって‥‥」

何年もやってないのにあんな綺麗に弾けるわけないよ

「そうらしいわね。でも淳平くんにとってそれは関係ないんじゃないかな」

関係ない?

不思議そうなあたしに先生は話を続けた

「私も驚いたわよ。もともと素質はある方だったんだけどね。習っていくうちに、楽譜を渡したらいつの間にか次の日には弾けるようになっちゃってて‥‥」

素質あったんだね‥‥

人は見かけによらないなぁ

でも‥‥そしたら何で?

「何でピアノやめたんですか?」

先生は淳平くんを優しく見つめながら言った

「中学への進学で区切りがよかったのと‥‥」

と‥‥?

「‥‥自分には実力がないからですって」

実力がないって‥‥

どう考えてもそれはあり得ないでしょ!?

「そう言われた時は唖然としたわよ。【楽譜一回見て弾けないんじゃプロにはなれない】って言い出して」

何その理由‥‥

普通は誰でもそうじゃない?

みんながみんなプロになりたくてピアノしてるわけじゃないでしょ?

「引き止めなかったんですか?」

「まぁね。本人がやめるって言ってるんだから引き止めても無駄でしょ?」

「そうですけど‥‥」

でも‥‥もったいないよ‥‥

自分からやめちゃうなんて‥‥

黙ったままあたしも淳平くんを見た

その時淳平くんは‥‥笑っていた

あたしはその笑顔にまたドキドキした

「ピアノを弾くときの淳平くんね‥‥今みたいにいつも笑ってたのよ」

そうなんだ‥‥

楽しいのかな?

それとも久しぶりの演奏が嬉しいのかな?

やっぱり君はすごいよ‥‥

物凄くかっこいい‥‥

「でもね、改めて今日彼の演奏を聞いて確信したわ」

「えっ‥‥?」

「彼は天才よ‥‥」

真剣な顔つきで言う先生に圧倒された

開いた口が塞がらなかった

先生がこんなことを言うなんて今までになかったから‥‥

少したって淳平くんは弾き終わった

鍵盤から手を離しまた目を瞑り深呼吸してる

目を開けると今までのあの空気はどこへいったんだと言わんばかりにいつもの彼に戻っていた

目を瞑って深呼吸するのはある意味スイッチの切り替えのためにやってるのかな?

あたしはまだ口が開いたままだ

淳平くんはこっちを見て不思議そうに言った

「どうか‥‥しました?」

どうかしました?って‥‥

淳平くんは何もなかったように聞いてくる

もしかして二重人格?

「で‥‥どうだったかな、つかさちゃん?」

どうだったと聞かれましても‥‥

「‥‥どうもこうもないですよ‥‥」

なんて言ったらいいんだろ‥‥

とりあえず出た言葉がこれだった

「淳平くんって何者‥‥?」

もっとマシな事は言えたはずなのに頭に浮かんでこなかった

それだけ淳平くんの演奏の印象が強かったってことだ

「普通の男子高校生だけど‥‥?」

それはいつものことでしょ?

今はまるっきり別人に見えたよ?

「淳平くんさぁ、何でピアノやめたんだっけ?」

「実力がないからですよ?」

ホントにそれがやめた理由なんだ‥‥

「淳平くん‥‥それは嫌味?」

思ったことをついつい口に出してしまった

「淳平くんはねぇ、自分の標準ラインが高すぎるんだよ」

そうだそうだ

「君は音大のトップレベルの実力だよ」

うん?

先生、それはちょっと言い過ぎじゃないかい?

まぁいいけどさ‥‥

なんかあたしの歌のレベルが低いみたいに聞こえちゃったよ

淳平くんに少し嫉妬しちゃうな‥‥

「自覚がないだけね‥‥。周りに競う相手もいない、対戦相手はいつも私だったでしょ?」

「だってあの時は先生に追いつきたくて必死で‥‥」

先生は音大でトップレベルだったもんね

まぁ自称だけど

だから淳平くんもこんなレベルになっちゃったんだね

素質もあったらしいし

それに比べてあたしは‥‥素質あるのかな?

努力して練習は人一倍やってきたつもりだったけど、なんか不安になってきたよ‥‥

雑誌とかに載って歌唱力抜群とか書かれてもてはやされて

正直いい気になってた

まだ若いけど実力が認められたんだって思ってた

でも‥‥今目の前の淳平くんを見たらあたしの実力なんて‥‥

「まっ、いいわ。つかさちゃん、練習しなきゃ!」

先生に言われて我に返った

「あっ‥‥はい‥‥」

この時あたしの中で2つの気持ちが入り交じっていた

淳平くんのピアノを弾く姿を見て心奪われたこと

もしかしたらあたし‥‥淳平くんのことが‥‥

そして今までには感じなかった不安のこと

それらを胸に秘めたまま、あたしはいつもの練習へと入っていった

〜つかさside 終〜


[No.763] 2008/02/03(Sun) 17:19:53
カランコエ 〜あなたを守る〜 7 (No.763への返信 / 7階層) - バーツ

現在午後8時

2人で家へと帰宅中です

それにしても西野凄かったなー

目の前で西野の歌声聞けてホント良かった

ちゃんと聞いたの初めてだったし

ある意味男どもに追っかけられたお陰だな

じゃなかったらあの場所には行けなかったし、先生にも会えなかったし

今日は久しぶりに良い日だ

だけどね?

今俺らの間には微妙な空気が流れているんですよ

なぜかって?

そんなこと知りませんよ

先生と別れてから一度も喋ってないんです

チラッと横目で西野を見ると、何処か切なそうな表情してるし

俺なんかしたっけ?

西野に嫌われたのかな‥‥?

さっき西野が歌ってる最中、ずっとマジマジと見てたしさ?

それが原因か?

いや、それはないはず

歌手になりたいならそれくらいは耐えられるはずだ

‥‥多分

じゃあ他に何かしでかしたか?

うーん‥‥‥‥

頭の中で色々考えながら道を歩いています

5分経過‥‥

この雰囲気‥‥耐えられない‥‥

かといって自分から話し出せないこのもどかしさ

はぁー‥‥‥‥

俺って情けない奴だなぁ‥‥

すると

「淳平くんってさ」

西野に突然話しかけられました

俺はいきなりだったから驚いて

「はひ?」

変な声を出してしまった

ミスった‥‥

ヤバい‥‥絶対笑われる‥‥

そう思ったのですが‥‥

「ピアノ‥‥上手だよね?」

真顔で言われました

笑われなくてよかった

でもなぜそんなことを‥‥?

と思ったけど、ここは真面目に答えなければ失礼だ

「そう?」

言ってから思った

なぜ疑問系なんだと

西野に聞き返してどうする

ありがとうと言っておけば良かった

「うん‥‥」

会話‥‥終了‥‥

‥‥ってわけにもいかない

せっかく西野と2人っきりなんだ

これはチャンスだぞ

勇気を出すんだ俺!

「西野だって歌‥‥上手じゃん?」

頑張って頑張って言った言葉がこれでした

結局西野に同じようなことを言ってしまった

まぁ俺にしては良くやった方だ

西野の答えを待つ

「‥‥」

‥‥‥‥あれ?

返事がない?

どうしてだ?

そう思って西野の顔を見ると

「どっ‥‥どうしたの!?」

泣いていました‥‥

え?俺が泣かせた?

俺のせいか?

ヤバいよヤバいよ!

何で泣いてんだよ!?

女の子が泣く姿を生で初めて見た俺はどうすることも出来なくて

「ごめん!マジでごめん!俺が悪かった!」

謝りました

理由はわからないけどとにかく謝りました

すると西野は

「淳平くんのせいじゃないよ‥‥」

小さな声で、それでいてはっきり言ってくれました

俺のせい‥‥じゃない?

「じゃあ‥‥どうして‥‥?」

そう尋ねると

「ゴメン‥‥あたし帰るね‥‥」

と言って急に走り出しました

えっ?帰る?

慌てた俺は声をかけました

「えっ?あっ、ちょっと!おい西‥野‥‥」

だけど、その頃には西野の姿は暗闇に呑まれて見えなくなっていて、俺の声は尻すぼみに小さくなっていきました

何で?どうして?

ずっとこの言葉が頭の中を回っている

どうしちまったんだ?西野‥‥

泣いた理由がわからない

その後、家について自分の部屋に入りベッドに横たわった

それ以降、夜は西野の事が頭から離れなくて、一睡もできませんでした

頭に浮かぶのは、最後に見た涙を流している西野の顔

ふと気が付くと、カーテンの隙間からいつの間にか昇っていた太陽が俺の部屋を眩い光で照らしていました


[No.766] 2008/02/03(Sun) 21:42:17
カランコエ 〜あなたを守る〜 8 (No.766への返信 / 8階層) - バーツ

〜外村side〜

みなさんどうも初めまして

外村ヒロシです

えー、簡単な自己紹介を

趣味は美少女の写真撮り、特技はパソコン、最近ハマっていることは真中の行動を観察すること

ざっとこんなもんかな

実は、昨日放課後の真中とつかさちゃんをコッソリ見てたんですよ

多分気付かれてないはず

そこで色々なことを聞きました

つかさちゃんが歓迎会で歌を歌うとか、その時真中がピアノを弾くとか

真中ってピアノ弾けるのか?

あの真中が?

どうしようもないヘタレの真中が?

すみません、言い過ぎました‥‥

そして成り行きで2人がつかさちゃんの家に行くことになったのです

もちろんワタクシ跡をつけます

だっておもしろそうじゃん?

そのため2人より先に校門前に行くと‥‥

男どもがいるわいるわ‥‥

正直迷惑です

そして例の2人が来ると案の定俺と同じく跡をつけだしました

まぁつかさちゃん目当てだろうな

全く、俺のストーキングの邪魔をするなってんだ

前方の2人もヒソヒソ話しながら後ろをチラッと振り返って見てくるし

てか真中の奴ちゃんとつかさちゃんと話せてるじゃねぇか

あんなに無理だと言ってたくせに

進歩したなぁ

って思ってる場合じゃない

邪魔なんだよお前ら

いい加減腹が立った俺はある行動に出ました

それは‥‥

「あっ、おまわりさーん!ここに男女2人をストーカーする怪しい男の集団がいまーす!」

さぁ、引っかかれ!野郎ども!

「なにっ!?おい、逃げるぞ!」

男どもは瞬く間にどっかに走り去ってしまった

かーっかっかっかっ

あんな古典的なウソに引っかかるとはアホな奴らじゃ!

でもホントに引っかかるとはね

そう思ったのも束の間‥‥

‥‥あれ?

前にいた真中とつかさちゃんがいない?

そして遠くを見ると、一緒に走っている2人の姿が見えた

ヤバい!早く追いかけなくては!

こうみえて足の速さはクラスで一番の大草の次に速い俺

人は見かけによらないってこういうことをいうんだろうな

自分で言うのもあれだけどさ

一気に追いつきそうな距離まで差を縮めた

そして歩いて2人の行方を見守ると、あるビルの前で止まった

看板を見ると“上村スクール”と書かれている

はて?この名前どこかで聞いた覚えがあるような‥‥

すると、中に2人が入っていくではないか

ちぇっ‥‥

今日はここまでか

明日は真中に聞き込みをせねば

俺は一人家路についた

翌日‥‥

珍しく朝早く学校に来た俺

その理由はもちろん真中

昨日のその後を早く聞かなければ

体はウズウズしている

だがしかし、一向に真中が来る気配がない

どうしたんだ?真中の奴‥‥

「おはよう!お前ら早く席に着けー!」

やがて担任の黒川先生が教室に入ってきた

あのバカは完全に遅刻だな

まぁたまにあることか

そう思った直後、先生からの一言

「今日は真中と‥‥あと西野が欠席だな」

‥‥‥‥は?

真中が休み!?

今まで学校を遅刻することはあっても休んだことのない真中が?

それにつかさちゃんも!?

何があったんだあの2人‥‥

昨日あの後に何が起きたのだろうか?

まさか‥‥あいつら‥‥

よからぬことをやっちゃったんじゃ‥‥

‥‥なわけないか

あのオクテの真中がそんな事できるわけがないな

一人で納得していると

「ねぇ外村?淳のやつどうしちゃったの?アイツが学校休むとかあり得なくない?」

俺の右隣のトモコちゃんが話しかけてきた

ちなみに淳とは真中のこと

昔から2人は仲がいいらしい

「さぁ?俺もわかんない‥‥」

「つかさにメール打っても返事来ないしさぁ」

つかさちゃんのこともちょっと心配だよな

「俺今日の帰りに真中の家に寄ってみるよ」

「わかった。私はつかさの家行くね!」

「おう」

それにしても‥‥

マジで何があったんだ?

〜外村side 終〜


[No.769] 2008/02/04(Mon) 16:40:53
カランコエ 〜あなたを守る〜 9 (No.769への返信 / 9階層) - バーツ

〜トモコside〜

いやー、今日はいい天気だねー

日本晴れってやつ?

こんな日は何か良いことがありそうな気がするよ

私は朝学校につくと、いつもやっていることがあります

それは教室のベランダから私の大好きな人が登校するのを眺めること

これは高校入った頃からやってます

え?それは誰かって?

実は‥‥淳です

昔っから私の傍には必ず淳がいました

最初は幼なじみに近い関係だったけど、いつの間にか彼のことを好きになってました

ホントは私の理想ってかなり高いんですけどね

淳は顔は普通だし運動や勉強はまるっきりダメ

強いて言えば優しい性格ってとこが長所かな?

私はそんな淳が好きなんです

このことは今のところ誰も知りません

中学からの親友つかさでさえも

もちろん淳だって知らないはずです

告白は‥‥受けるのは多いけど、自分からするってなると全然ダメです

フラれるの恐いから‥‥

だったら今はまだこの関係が続く方がいいです

まぁ、いつかこの恋が実ればと思い毎日を生きています

にしても‥‥

今日は来るの遅くないかい?

いつもだったらもう来てもいいはずなのに‥‥

それにつかさもまだ来てない

少し経つと先生がやってきました

「おはよう!お前ら早く席に着けー!」

淳は遅刻かー?それにつかさはどうしたんだろ?

そう思いながら慌てて席に戻ります

「今日は真中と‥‥あと西野が欠席だな」

えっ?

淳とつかさが休み?

2人が休むとか珍しいな

風邪かな?

つかさにメール送っとくか

『つかさー?今日どうしたのー?』

よしっ

淳は何で休んだんだろ?

隣の外村に聞いてみるか

「ねぇ外村?淳のやつどうしちゃったの?アイツが学校休むとかあり得なくない?」

すると、外村は顔だけこっちに向けて答えた

「さぁ?俺もわかんない‥‥」

わかんないかぁ‥‥

「つかさにメール打っても返事来ないしさぁ」

まだ送って1分経ってないけどね

「俺今日の帰りに真中の家に寄ってみるよ」

「わかった。私はつかさの家行くね!」

「おう」

そしてその後、つかさからのメールの返信がないまま放課後になりました

「じゃあつかさの家行ってくる!」

「わかった」

私は学校を出ました

すると校門辺りで他校の男子が沢山群がっているではないか

昨日も来てたよなぁ

それよりつかさの家に早く行かなくちゃ‥‥

学校から歩いて20分

ようやくつきました

家のインターフォンを鳴らすと、中からつかさのお母さんが出てきた

「あらトモコちゃん?」

「こんにちは、おばさん。あの‥‥今日つかさ学校休んだから心配になって‥‥。つかさ大丈夫ですか?」

するとおばさんは困ったような顔をして言った

「それがねぇ‥‥昨日夜に帰ったっきり部屋に閉じこもっちゃって‥‥。病気じゃないみたいなんだけど、心配だったから学校を休ませたの」

「そうですか‥‥」

つかさ大丈夫かな‥‥?

今までこんな事なかったから心配だな‥‥

昨日何かあったのかな?

「よかったら上がってって?つかさもトモコちゃんに会ったら元気になると思うから」

「え?でも‥‥」

「大丈夫よ!さっ、上がってちょうだい?」

「じゃあ‥‥お邪魔します」

家の中に通された

そしておばさんに連れられてつかさの部屋へ

「つかさー?トモコちゃん来てくれたわよー?」

しかし中からつかさの返事はない

「寝てるのかしら‥‥?まぁいいわ。どうぞ入って?今お茶菓子持ってくるから」

「ありがとうございます」

おばさんが下の階に降りてから私は部屋をノックした

「つかさ?入るよ?」

ガチャッ‥‥

〜トモコside 終〜


[No.770] 2008/02/04(Mon) 16:45:07
カランコエ 〜あなたを守る〜 10 (No.770への返信 / 10階層) - バーツ

今日は学校を休みました

‥‥というよりサボりました

あぁ‥‥夢の皆勤賞が‥‥

ってのは冗談です

休んだ理由は2つ

非常に眠かったこと

そして、西野にどんな顔をして会ったらいいかわからないこと

まぁ後者の影響の方が大きいかな

だって昨日の今日だしねぇ?

俺には無理だぁ‥‥

すると外村からメールが来た

『何で学校休んでんだ?帰りお前の家寄るからな』

家来るんだ?

はぁ‥‥メール返すの面倒だなぁ‥‥

そう思っていると、また外村からのメール

『今日つかさちゃんも学校休んだ』

西野が!?

何で?

やっぱ昨日泣いてたのって理由あったんじゃ‥‥

気になった俺は

『何で西野休みなの?』

外村に尋ねてみた

すぐに返事は返ってきた

『知らん』

文章短い‥‥

そう思い今度はトモにメールを送った

ちなみにトモとはトモコのこと

小中高と学校が同じで女友達としては一番仲がいい

幼なじみとまではいかないもののそれに近い関係である

『西野も学校休んでるんだって?何かあったの?』

トモなら何か知っているかもしれない

西野と親友だって言ってたし

そう思った俺は少し期待して返事を待っていた

数分後、トモからメールがきた

急いで内容を見る

『私もわかんないんだよ。今日つかさの家寄ってみるからわかったら教える。てか淳はサボり?』

こいつもわかんないのか

まぁ後でわかることだしいっか

俺は『うん』と外村より短い文章を返して、眠るためにベッドに倒れ込んだ

数時間後‥‥‥‥

ガチャッ‥‥

部屋のドアが開く音で目が覚めた

モゾモゾと布団の中で動き、頭の近くにある時計を手に取る

時間は‥‥夕方の4時!?

結構寝たなー

「真中ー?外村様が来てやったぞ」

顔を上げると外村が机のイスに座っていた

「お前ノックぐらいしろよ」

「しましたけど何か?」

したんだ‥‥

ベッドから降り一つ背伸びをした

「で?俺に何の用?」

重い瞼を擦りながら外村に聞く

「昨日あの後どうしたんだ?」

「あの後?」

何のことだ?

「とぼけるなよな。ホントはわかってるくせに」

いや、外村の言ってる意味が全然わかんないんですけど‥‥

俺が頭の上に?を浮かべていると

「はぁ‥‥。お前とつかさちゃんが“上村スクール”に入った後だよ!」

痺れを切らしたように外村が言った

「なっ!?」

何でお前がそのことを知ってるんだ!?

誰も知らないはずだろ?

「何で俺がそれを知ってるか知りたいか?」

コクッと首を縦に振って頷いた

「それは俺が昨日ずっとお前らの跡をつけてたからだ」

「はぁ?」

それって完全にストーカーじゃ‥‥

「あぁ、それと後ろにいた男どもは俺のストーキングを邪魔したから排除したぞ」

だからビルの前についたときにはいなかったのか

ってことはストーカーしたって認めるんだ‥‥

「で?昨日つかさちゃんと何かあったんだろ?」

何でお前はそんなにカンがいいんだ?

いや、外村のことだ

俺が西野を好きってこと知ってるから、ただ単に興味があって聞いてきたのかもしれない

まぁどっちにしろ相談する相手が欲しかったしな

仕方ない、話してやるか‥‥

「実は‥‥」

俺は昨日あったことを全て話した

―――――――‥‥

―――――‥‥

「‥‥っていうわけなんだけど」

「ふーん‥‥」

外村は腕を組んで考え始めた

改めて話してる間考えたけど、西野の泣く理由がわからない

でも、確実にあそこで何かあったのは事実なんだ

行きと帰りで全くといっていいほど西野の表情が違かったから

「俺が思うに‥‥」

外村が話し始めた

「つかさちゃんは自分とお前の実力を比べちまったんじゃねぇの?」

実力を比べた?

どういうことだ?

「つかさちゃんはテレビにも出たし雑誌にも載った」

うんうん

「つかさちゃんの実力は一応世間に認められたってことになるだろ?」

まぁそりゃそうだろ

西野は凄いから

「それなのにだ」

ん?

「お前がつかさちゃんの目の前で度肝を抜くような演奏をしちまったわけだ」

そうかぁ?

「それを見たつかさちゃんは、雑誌やテレビに映らなくてもこんなに実力を持つ人がいるんだって思ったわけだ」

うーん‥‥

「よくわからない‥‥」

「じゃあ聞くが、お前は自分にピアノの実力があると思うか?」

俺に実力が‥‥?

「いいや、ないと思うけど‥‥」

すると外村は溜め息を一つついて言った

「それが問題なんだよ」

えっ?

「いいか?お前はな‥‥―――」


[No.771] 2008/02/04(Mon) 16:50:26
カランコエ 〜あなたを守る〜 11 (No.771への返信 / 11階層) - バーツ

〜トモコside〜

「つかさ?入るよ?」

ガチャッ‥‥

「ん‥‥?」

私は部屋に入るなりつかさの事を心配そうに見つめながら聞いた

「つかさ‥‥寝てた?」

「うん‥‥今起きたばっか」

眠たい目を擦りながらベッドから起き上がるつかさ

ちょうどその時おばさんがやって来た

「寝てたの?」

「うん」

そして持ってきた紅茶やらクッキーやらを机の上に置き、

「これからちょっと出かけてくるから後のことはよろしくね」

私達にそう言い残した後、おばさんは出て行った

「それで‥‥どうしたの?」

つかさが笑顔で聞いてきた

無理した作り笑顔だってバレバレだよ‥‥?

「つかさが心配だから来たんじゃない。メールも返さないし‥‥」

「メール?」

つかさは首を傾げている

そして急いで携帯を手にとった

「あっ‥‥」

多分気付いてなかったんだね‥‥

「ごめんね、返信しなくて‥‥」

「ううん、大丈夫だから」

腰を下ろして紅茶を一口飲み、そして私は真っ直ぐにつかさの目を見て話し出した

「何か‥‥あったの?」

するとつかさは突然暗い表情になり俯いた

やっぱり何かあったんだね‥‥

私は優しく語りかける

「つかさ‥‥顔上げて?私でよければ話聞くからさ?」

つかさの顔を覗き込むと目に涙を溜めていた

少しして、つかさはそっと呟いた

「天才‥か‥‥」

「えっ?」

天才‥‥?

何のこと‥‥?

つかさが言った意味が分からなかった

「実は昨日ね‥‥」

ゆっくりと、そして静かにつかさは話し始めた

―――――――‥‥‥

―――――‥‥

ようやく話し終わった頃、つかさはいつの間にか泣いていた

こんなつかさの姿を見るのは初めてだった

私にとって、つかさはいつも笑顔が絶えない明るい子ってイメージしかなかった

今まで弱い自分を見られたくなくて強がっていたのだろうか

私はそう思った

それより‥‥

「気にしてるのは自分に本当に実力があるのかってこと?」

この問い掛けにつかさは頷いた

うーん‥‥

何と言えばいいものか‥‥

ってか淳ってそんなに凄いのか?

ピアノを習っていたことは知ってたけどさ

まぁつかさが言うんだから本当なんだろうな‥‥

「淳平くんを見てね、あぁ‥‥あたしって何なんだろう‥‥って思っちゃって」

つかさは手で涙を拭いながら言った

「どうみても実力が十分あるのにね、淳平くんは自分には実力がないって言うんだもん」

「うん‥‥」

「やってることは違うけど同じ音楽でしょ?だから‥‥不安になっちゃって‥‥」

「うん‥‥」

「雑誌とかテレビとかで取り上げられて、やっと自分に少し自信がついてきたって思えるようになったのに‥‥」

「うん‥‥」

「一気にその自信が無くなっちゃったよ‥‥」

つかさの話に相槌を打つことしかできなかった

何て言ってあげたらいいか分からなかった‥‥

“気にしなくていいんじゃない?”、“大丈夫だって”、“元気出しなよ?”‥‥

頭には色んな言葉が浮かんでくる

だけど‥‥

今つかさにそんな気休めみたいな言葉をかけてあげたところでどうなる?

恋愛の相談とかだったら躊躇する事なく言っていたかもしれない

でも今は違う

これは彼女の“夢”なのだ

毎日必死に練習して、辛いことも苦しいことも乗り越えて

まだ若いのにも関わらずテレビに出て雑誌にも載って

周りから期待されたりもてはやされたりして

そしてやっと自信がついて

それを‥‥たった一回だけ‥‥

たった一回淳が目の前でピアノ弾いただけでこんな事になってしまったつかさに
‥‥

私は何て声をかけてあげればいい‥‥?

「明日からはちゃんと学校に行くから。もう心配しなくて大丈夫だよ?」

つかさはそんな私の心を察したのか笑って言ってくれた

つかさ‥‥

何であなたは笑えるの‥‥?

辛いのはずなのに‥‥どうして?

私にはその笑顔を直視することができず、胸が痛んだ

「それよりさ!淳平くんってホントに凄いんだよ!」

つかさは話題を変えた

そうだ‥‥

私には今はつかさを楽しませたり喜ばせたり、それ位しかできない

でも‥‥それが少しでもつかさの役に立てるのなら‥‥

「そっかー。あのバカにも他人より秀でたものがあるのねー」

「今度聞いてみなよ!絶対ビックリするから!」

「うん!そうするよ!」

ごめんね、つかさ‥‥

何もしてあげられない無力な親友を許してください‥‥

〜トモコside 終〜


[No.776] 2008/02/05(Tue) 16:57:08
カランコエ 〜あなたを守る〜 12 (No.776への返信 / 12階層) - バーツ

〜外村side〜

真中の家を出た後、俺はある場所へ向かった

そして10分もしないうちに目的地に着いた

中に入り階段を上る

正面のドアを開くと、中には少数の生徒が練習をしていた

すぐにお目当ての人が見つかり声をかけた

「亜紀さん!」

すると、亜紀さんは振り返りビックリした様子でこちらに歩いてきた

「ヒロシ君じゃない!?一体どうしたの!?」

「ちょっと用があって‥‥」

見ると、急な俺の訪問に周りは戸惑っている

「そっか。あっ、みんな今日はもう終わりにしていいわよ!」

「ありがとうございましたー!」

亜紀さんの一声で、中にいた生徒達は部屋を出て行った

みんな歳は俺より若そうだ

「で?用って?」

そうそう、大事な話があるんですよ

「真中とつかさちゃんのことなんだけど‥‥」

今更だが、俺の来た場所とは“上村スクール”

昨日“上村”って名前が気になって親に聞いてみた

そしたら思った通り、そこの先生をやっている“上村亜紀”は、俺の母親の妹だった

「昨日来たわよ?」

「知ってる。それでちょっと話があって‥‥」

俺は真中から聞いたことを全て話した

話し終わると、亜紀さんは何か思い出したらしい

「私がいけなかったのかもね‥‥」

「どういうことですか?」

俺が尋ねると、昨日のつかさちゃんのことを俺に話してくれた

亜紀さんもどこか感づいていたらしく、昨日はいつもと様子が違うとすぐわかったらしい

どことなく思い詰めた表情で練習をしていたんだと

先生の立場として、やっぱり心配だったみたいだ

「そうだったんだ‥‥」

「うん‥‥つかさちゃんに悪いことしちゃったわね‥‥」

それはそうと‥‥

「実際のところ真中はそんなに凄いの?」

ここは聞いておく必要があるな

「凄いわよ!ピアノを辞めなければ今頃は大変なことになってるわよ!」

そこまで言っちゃいますか‥‥

まぁ、亜紀さんが言うんだ

本当に凄い腕前の持ち主なんだろう

今度演奏を聞く必要があるな

「そういえば、竜彦くんどうしてる?最近会ったりした?」

竜彦とは父親の弟の子供

つまり俺のいとこだ

年は俺とタメである

「いんや、会ってないよ」

「そっかぁ。あの子は今忙しいからねー」

竜彦は今、とある仕事をしている

今はまだ秘密だけど

「つかさちゃんもその内そうなるでしょ?」

「そうよね。つかさちゃんもおっきくなってほしいわ」

おっきく‥‥ね‥‥

「あっ!そういやアイツ、この前沢山買いすぎたからってCD送ってきた」

「あはは。竜彦くんらしいわね」

「ホントバカだよなー。じゃあ‥‥俺は帰るよ」

「淳平くんにまた来るように言っといて!」

「わかった」

俺は上村スクールを後にした

外はもう真っ暗

それにしても‥‥

4月だというのにこの寒さは一体何なんだ!

風が冷たすぎるだろう!

俺に風邪を引けっていうのか!

明日は絶対学校行かなきゃいけないのに

まぁいいや

家に帰ったら久しぶりに竜彦にでもメールしてみるか

〜外村side 終〜


[No.777] 2008/02/05(Tue) 17:02:12
カランコエ 〜あなたを守る〜 13 (No.777への返信 / 13階層) - バーツ

いつもと何ら変わりない朝

いつも通りに起き、いつも通りに支度をし、いつも通りに家を出る

が、今日は一つ違ったことがあった

それは‥‥

「おっはよー、淳!」

なんでトモが俺の家の前にいるんだ?

「ん?その顔は何か言いたげだなぁ」

「どうしたの?朝から俺の家に来るなんて」

全く、珍しいこともあるもんだ

「うん。ちょっと話したいことがあって」

「話したいこと?」

何だろ?

「つかさのことだよ‥‥」

西野の名前を聞いた瞬間、胸の奥がズキッとした

そして昨日の外村の言葉が頭をよぎる

ーーーーーー‥

ーーーーーーーー‥‥

ーーーーーーーーーー‥‥‥

「いいか?お前はな‥‥自分自身を過小評価し過ぎなんだよ」

過小評価?俺が?

「さっきお前は自分に実力がないって言ったよな?」

「まぁ‥‥」

「つかさちゃんの先生に褒められてもそう言えるのか?音大卒の先生に」

‥‥ん?

ちょっと待てよ‥‥?

なんでこいつ先生が音大卒ってことまで知ってんだ?

外村の情報ルートは一体どうなってんだ?

「どういう意味?」

「はぁ‥‥。もう面倒だからはっきり言うぞ?」

外村は俺に間髪入れる間も与えず言った

「俺が思うにつかさちゃんはお前自身の実力がないって言葉で相当落ち込んじまったんだよ」

「は‥‥!?」

「理由は自分で考えろ。俺はもう帰るからな」

そう言って外村は部屋を出ていった

ーーーーーーーーーー‥‥‥

ーーーーーーーー‥‥

ーーーーーー‥

「おーい!淳ー?聞いてる?」

「あぁ‥‥ごめん、聞いてなかった」

「人の話はちゃんと聞けよな!」

「うん‥‥それで?」

「昨日話したんだけどね?本人はそれらしき姿は無理してあまり見せないんだけど、私が見た感じ結構落ち込んじゃってて‥‥」

外村の言ってた通りだ‥‥

「な‥んで‥‥?」

こう尋ねると、トモは昨日の西野との会話を話してくれた

色々あってやっと自信がついたこと

それを少なからず俺のあの言動が関係して崩してしまったこと

そのために今までにないくらい落ち込んでしまったこと

話し終わると、お互いに黙り込んでしまった

もちろん、あの時言った言葉はワザとじゃないし嘘でもない

俺の標準は先生であるのも今現在変わらない

でも、他人からしてみればそこに標準を置くのがおかしいらしい

俺にはこのことはよく分からない

標準なんてのは、人それぞれ違って当たり前だと思う

例えば勉強だったら、俺は苦手だから標準は出来なくて当たり前になっている

でも毎回学年一位を取っている外村からしてみれば、標準は一位もしくは上位とかになるんじゃないだろうか

そういうもんじゃないのかなぁ‥‥

それより、今回の事で思ったことがある

人の気持ちは言葉一つで急激に変わってしまうものなのだということ

例えそれが自分、そして周りからしてみれば何気ない普通のことだとしても、ある一人は傷ついたり落ち込んだりしているかもしれない

こう考えると、人と話すのが少し恐くなる

もう西野の時のような過ちはしたくないな‥‥

でもそれって気を付けるにも限りがあるんじゃないか?

うーん‥‥

頭の中で考え込んでいると

「でもね、つかさ言ってたんだ」

トモの言葉で我に返った

「【世の中にはあたしより凄い人なんてたくさんいる。この前はそのことを急に知らされて受け入れることが出来なかっただけだ】って」

‥‥‥‥?

「どういうこと‥‥?」

「要するに、つかさより歌が上手かったり淳よりピアノが上手な人は今この世にはたくさんいるでしょ?」

「うん」

そりゃそうだ

俺みたいな奴より凄いのはいっぱいいるはずだ

「それを少しでも受け入れられないと、今回のつかさみたいに、私はダメだなぁ‥‥って落ち込んじゃったりするわけよ」

「でも逆にそれを受け入れることが出来れば、もっと頑張ろうとかって思えるようになるわけ」

「うん‥‥」

「つまりは気持ち次第ってことだよね。それにその人の事情とかその時のタイミングとか‥‥色んな事が混ざり合わさってくる。プロとかそれを目指している人は特にね」

「難しいよね、そういうのって」

トモの話を聞いて改めて思った

人の気持ちは生き物だということを

生きている限り変わり続けるのだということを

「まっ、つかさなら大丈夫でしょ!こんなんで悄げるようなら歌手にはなれないと思うし。それにつかさは負けず嫌いだしね!」

「そうだったらいいんだけどさ」

気付いた頃には学校についていた

学校までの時間がいつもより短く感じた

朝から難しい事考えてたからな‥‥

靴を履き替え廊下を歩く

「それより!淳ってそんなにピアノが上手いの?習ってたことは知ってたけどさ」

これは何て答えれば‥‥

俺が出した答えは

「‥‥わかんない」

「何よそれ」

そう言ってトモはクスッと笑う

クラスにつくと、西野は先に来ていて、外村と楽しそうに話をしていた

その姿に俺は幾分安心して、自分の席へと歩いていった


[No.778] 2008/02/05(Tue) 17:04:52
カランコエ 〜あなたを守る〜 14 (No.778への返信 / 14階層) - バーツ

〜つかさside〜

朝の教室

今、外村くんと話しています

内容は‥‥あのことです

「真中から教えてもらったよ」

「そっか‥‥」

「気休めにしか聞こえないかもしれないけどさ、頑張りなよ!」

「‥‥うん、ありがとね」

今のあたしにはその言葉で十分嬉しかった

昨日のトモコもなんとか話を面白くしたり楽しくしたり、あたしの気持ちを考えてくれていたんだと思う

あたしは良い親友や友達に恵まれたな

この時改めてそう思った

「そうそう!つかさちゃんが通ってるあのスクールの上村先生ね、実は俺の知り合いなんだよ!」

「え?ホントに!?」

「あぁ。また真中を連れて来いって言ってた」

淳平くんの名前を聞いた瞬間、あの光景が思い出された

あの日、あたしは彼を置いて一人で先に帰ってしまった

泣いていたあたしをとても心配してくれた淳平くん

自分が悪い訳じゃないのに何回もゴメンと謝ってくれた淳平くん

今思うと、そんな優しさに心打たれているあたしがここにいた

ちゃんと謝らなきゃな‥‥

「おっ、真中おはよー」

「えっ‥‥」

外村くんの声に反応して振り向くと、そこには淳平くんが立っていた

「「あっ‥‥」」

ついつい声が被ってしまった

後ろにはトモコの姿が見える

一緒に登校したんだろうか

トモコは声に出さず口で“ガンバレ”って言っている

あたしは目で合図した

視線を戻すと、淳平くんは何か言いたげな感じであたしを見ている

「ちょっと‥‥いい?」

あたしは先に言葉を発すると、廊下に出て歩き出した

淳平くんも後に続く

廊下では一言も話さなかった

少しして着いた先は、誰もいない空き教室

ここならちゃんと面と向かって話せると思ったからだ

中に入って淳平くんと向かい合わせになる

そしてあたしが口を開こうとした時、

「ごめん!!」

えっ‥‥?

突然淳平くんに謝られた

「俺‥‥西野のこと‥‥」

そんな‥‥謝らないでよ‥‥

むしろあれはあたしが悪いのに‥‥

「ううん、あたしが悪いの‥‥。淳平くんは何にも悪くないよ?」

あたしは優しく言ってあげた

これ以上彼に迷惑はかけられい

「でも‥‥」

「いいの!これはあたしの問題だし!」

しかしまだ何か言いたそうだ

そんな中、あたしは話を続けた

「それに‥‥よかった」

「よかった?」

淳平くんは不思議そうに首を傾げている

「うん。淳平くんの演奏が聴けてよかった。あたしももっと頑張らないとって思ったし」

そう言ってニコッと笑いかけた

「それなら‥‥いいんだけどさ」

淳平くんも納得したみたいだ

「それより今日ヒマ?」

「今日‥‥?」

「先生がもう一度来てほしいって言ってたからさ!あたしも今日練習あるし‥‥どうかな?」

新入生歓迎会も近いしね

あと5日後くらいだったような‥‥?

「あ‥‥うん。大丈夫‥‥」

「よかった。じゃあ教室戻ろう?」

あたしは歩き出す

「西野!!」

突然、後ろから淳平くんに呼び止められた

「俺も‥‥俺も西野の歌声聴けてよかった」

「‥‥ありがと」

あたしは笑って言って、教室に戻った


[No.806] 2008/02/14(Thu) 00:04:37
カランコエ 〜あなたを守る〜 15 (No.806への返信 / 15階層) - バーツ

〜トモコside〜

「‥‥で?」

「うん?」

「どうして後を付いてくるんだよ?」

前を歩く淳が後ろに振り返り言った

それに対し私はニコッと笑い、隣の外村は手でVサインを作っている

「まぁいいんじゃない?歓迎会前に誰かに聴いてほしかったしさ」

そーだそーだ!

「まぁ、西野がそう言うなら‥‥」

「サンキュー、つかさ!」

私はつかさに向けて言った

「その代わり!真面目に聴いてよね?」

「「もちろん!」」

外村と声が被った

今日は淳とつかさの練習を見学する事になって、今4人で上村スクールに向かっています

「そういえば‥‥つかさ?一次審査は通ったの?」

この前、とある芸能事務所が歌手グループを結成するためにオーディションを行いました

つかさは一週間ほど前にその一次審査に参加し、もうすぐ結果が送られてくるらしいです

「わかんない。今日か明日くらいには家に手紙が来るらしいんだけど‥‥」

「通ってるといいね」

「うん!」

すると、

「ちなみにさ、その事務所って何て名前?」

外村が尋ねた

「確か‥‥“下柳プロダクション”?とかなんとかだった気が‥‥」

曖昧だなー

「“下柳”‥‥」

外村はうーんと唸って何かを一生懸命思い出そうとしている

まぁ、それはほっといて‥‥

「でさ!歓迎会、何歌うの?」

「ん?あれだよ!今流行りのリョウが歌ってる‥‥」

「あっ!」

つかさが話している途中で外村が大声を上げた

「なっ‥‥何よ、いきなり」

私はビックリして外村を見た

すると突然外村の顔がニヤーッとしだし、口を開いた

「それってさ?作るのは男女4人のグループ?」

「うん。そうだよ?」

「そんで、1人はもう決まってる?」

「んー‥‥確かにそんなこと言ってたかも‥‥」

「しかも応募は18未満?」

「うん」

「やっぱり‥‥」

そう言うと、外村は1人納得したようにうんうんと首を縦に振っている

「ちょっと!何のことよ!?」

私はこの話がスゴく気になり少し大きめの声で聞いた

「ん?何でもないよ?」

何でもないだぁ!?

「絶対何でもあるだろ!」

私が外村につかみかかろうとした時

「おーい!着いたぞー!」

淳の声が聞こえたので途中で外村から離れた

ビルの中に入り、階段を上って二階に上がる

正面のドアを開けると、そこには広いスペースにピアノが一台、そしてボイストレーニングに用いられるであろう機材が置いてあった

「あっ、いらっしゃーい!」

奥からでてきたのは30代後半くらいの女性

多分この人は前につかさが言っていた上村先生であろう

「あら?今日は2人は見学かしら?」

先生はあたしと外村を優しそうな目で見て言った

この人は絶対性格良いな

「あ、私つかさの友達のトモコって言います!」

そう言って、ペコッとお辞儀をした

初めてだから挨拶はちゃんとしないとね

「君がトモコちゃんね?初めまして!私は上村亜紀です。よろしくね?」

「あっ、はい!」

んー、この人の前だとなんか緊張しちゃうなー

「じゃあ‥‥どうする?早速やってみる?」

「まだ合わせたことないんですけど‥‥」

つかさが心配そうな顔で言っている

「淳平くん?あなたはどう?」

「俺はいつでもいいっすよー」

むぅ‥‥?

何なんだ、淳のあの余裕そうな顔は

そんなに淳はスゴいのか!?

「そうね‥‥。じゃあ一応やる前にボイトレ少しやろっか?つかさちゃん」

「はい」

「淳平くんちょっと待っててねー」

つかさは練習に入った

やっぱ本格的なんだなー

つかさの姿を見てそう思っていると

「なぁ」

外村が話しかけてきた

「何よ?」

「真中の奴‥‥どうしちまったんだ?」

「は?」

言ってる意味が分からないんだけど‥‥

「いや、真中のこと見てみ?」

私は外村の言われた通りに淳を見た

「えっ?」

思わず声を出してしまった

「あんな真中‥‥俺初めて見たぞ?」

私はゴクッと息を呑んだ

そこにいたのはいつもと顔つきの違う淳

彼のことを十年以上見てきたけれど、こんな姿を見るのは初めてだった

「つかさから聞いたんだけど、淳ってさ‥‥“天才”‥‥なんだって‥‥?」

「亜紀さんも同じこと言ってた‥‥」

亜紀さん?

‥‥あぁ、先生のことか

2人は親戚だって言ってたな

それより‥‥だ

淳の様子がいつも全然違う‥‥

怖いっていうか威圧感があるっていうか‥‥

何かあの雰囲気に呑み込まれそう‥‥

「‥‥よしっ!じゃあやろっか!」

つかさのボイトレも終わったみたいで、こちらにやって来た

「用意はいいー?」

「「はい!」」

「それじゃ、いつでもどーぞ!」

つかさと淳は目でアイコンタクトをしている

淳が目を瞑り深呼吸をした

そして次の瞬間、私は予想もしなかったことを目の当たりにした

〜トモコside 終〜


[No.807] 2008/02/14(Thu) 00:06:07
カランコエ 〜あなたを守る〜 16 (No.807への返信 / 16階層) - バーツ

〜外村side〜

「じゃあまた来てねー!」

笑顔で手を振る亜紀さんと別れ、俺らは帰路についた

真中とトモコちゃんは逆方向なので、俺はつかさちゃんと帰っている

それにしても‥‥

「しっかし驚いたなー!」

「でしょでしょ?あたしだって最初は凄くビックリしたんだから!あの淳平くんが!?ってね」

そう、つかさちゃんの言う通りだ

あの真中があんな特技を持っていたとは‥‥

正直言って、不覚にも真中をかっこいいと思ってしまった俺がいる

ピアノを弾く姿だけ見たら女の子からは結構モテるんじゃないだろうか?

まぁ有り得ないと思うけど

「つかさちゃんは凄かったよ!けど、俺には真中のインパクトの方が強すぎて、ちゃんと歌聞けてなかったな」

「あはは。やっぱスゴいよね、淳平くんは」

そう話すつかさちゃんはどことなく嬉しそうな、はたまた楽しそうな感じだ

「こりゃ優勝狙えるんじゃねぇの?」

「かもねー」

そして俺はふと思ったことを聞いてみた

「つかさちゃんってさ‥‥」

「ん?」

「やっぱり夢は歌手?」

すると、つかさちゃんは少し黙った後話し始めた

「もちろん、そうなりたいなとは思うよ?」

へぇー、やっぱりそうなんだ

でもつかさちゃんならなれるかもな

そう思っていると

「だけどね‥‥」

ん?だけど‥‥?

「だけど、最近思うんだ‥‥」

「何を?」

「それであたしは幸せになれるのかなぁって思って‥‥」

言いたいことがイマイチよく分からない

「どういうこと?」

つかさちゃんは前をまっすぐ向いて話を続けた

「勿論、夢を叶えられたらどれだけ嬉しいことなんだろうなって思う。昔っからの夢だから‥‥」

「ただ、そうなるためには何かを犠牲にしなくちゃいけない」

何かを得るためには何かを犠牲にするってやつか‥‥

「その犠牲の中に他にもっと幸せなこと‥‥例えば恋愛とかかな?そんなことがあるかもしれないでしょ?」

「好きな人が出来て、好きな人といつも一緒にいて、好きな人を愛せて‥‥。そんなことが出来たら物凄く幸せだと思う」

「でも歌手になるってことはそういうことを全部切り捨てなきゃいけない。もしかしたら、切り捨てた中に本当に一番大切なことがあるかもしれない」

「そう考えると、そこまでしてあたしはその夢を叶えたいのかなーって思っちゃう自分がいて‥‥」

‥‥‥‥

「淳平くんの演奏を聴いてからかな?その時落ち込んで、頭で色々考えて、それで自分の幸せは何処にあるんだろうって‥‥」

「‥‥そう思うあたしは変かな?」

つかさちゃんは微笑みをこぼした

彼女の夢は“歌手”

それはこの先も変わらないことなんだろう

ただ、そのためには何らかの“犠牲”が必要

そこには様々なことが含まれてくる

さっきも言った恋愛なんかがいい例えだ

“夢の為ならそんなこと”って言われればそうなのかもしれない

でも、女子高校生に恋愛なんかするなって言う方が無理があると俺は思う

誰だって好きな人の1人や2人は長い人生の間に出来るわけで、今まさに青春を送っている俺らにとっては一番恋愛をしやすい環境にある

“夢”か“恋愛”か‥‥

つかさちゃんは例えだと言っていたけれど、ホントはその事で悩んでいるんじゃないだろうか?

俺でもこんなこと聞かれたら迷うと思う

夢は捨てられない、でも恋をしたい

2つ一緒に出来たらどれだけ楽なことか‥‥

そう考えた後、

「‥‥いいんじゃねーの?」

俺は口を開いた

「えっ?」

つかさちゃんは俺を見る

「俺はまだ夢とかないし恋愛もしてないからよくわからないけど、自分が納得する道を選ぶことができればそれで‥‥さ」

「そんなもんかな?」

「そんなもんだろ。“後悔しないように毎日を必死に生きてりゃ必ず幸せは付いてくる”って俺のいとこは言ってたけどな」

「へぇー」

ん?待てよ?

そうなると‥‥

「じゃあつかさちゃん?その好きな人とはもう巡り会ったりしちゃってんの?」

つかさちゃんは俺の質問にちょっと驚いた様子だったが、俯き加減にこう答えた

「‥‥かもね」

‥‥‥‥は!?

「え?マジ!?誰々!?」

メッチャ気になる!

真中がつかさちゃんを好きってこと知ってるから余計に!

「‥‥なーんてね!冗談だよ、冗談!」

「嘘だー!絶対今顔がマジだったって!」

「残念、演技でしたー!外村くん、騙された?騙されたでしょー?」

「んなっ‥‥!?」

演技‥‥?

そうこうしてるうちにつかさちゃんの家の前だ

「ん?ポストに何か入ってる‥‥」

つかさちゃんはボソッと呟いた

確かに、ポストには封筒らしきものが一通入っている

つかさちゃんが中を開け、入っていた白い紙を開き見ている

「あっ‥‥あぁーー!!」

突然叫びだした

「ん?どした?」

俺はつかさちゃんに近寄った

「一次審査通った!」

つかさちゃんは俺に白い紙を突き出してきた

「どれどれ‥‥?[あなたはオーディション一次審査を通過致しましたので御報告いたします]‥‥。マジだ!やったじゃん!」

「ありがとー!」

つかさちゃんは満面の笑みを浮かべ喜んでいる

真中にもこの笑顔見せてやりたいな

‥‥よしっ!

俺は鞄に閉まってあったデジカメを取り出し、つかさちゃんに向けた

カシャッ!

「えっ?」

うん、我ながらいい画が撮れた

「外村くん?今何したの?」

つかさちゃんが俺を怪しそうに見てくる

「写真撮った。ホラ、一応記念にね!」

「‥‥そっか!」

よかった、何も言われなくて

いつもなら“コラーッ!!”って怒るからなぁ

「じゃあ、また明日ね!」

「うん!」

つかさちゃんと別れた

夜道を1人帰っているとき俺は思った

あの時‥‥

【‥‥かもね】

あの時の顔は絶対演技なんかじゃない

暗闇でも微かに頬が赤く染まってたのを俺は見た

多分つかさちゃんは今好きな人がいる

明日真中に報告せねば‥‥


[No.808] 2008/02/14(Thu) 00:08:29
カランコエ 〜あなたを守る〜 17 (No.808への返信 / 17階層) - バーツ

〜トモコside〜

「つーかーれーたー!」

隣で淳が叫んでいる

帰り道、つかさと外村と別れた私達は、淳がお腹が減ったということで近くのコンビニに立ち寄った

「うっさいわねー!他の人に迷惑でしょ?」

「んなこと言ったって周り見てみぃ?だーれもいないから」

そう言われたので辺りを見回す

‥‥あれ?

ホントにだれもいないし‥‥

この時間帯には部活帰りの学生とかで人が結構いるはずなんだけどなー

珍しいこともあるもんだな

「淳ー?何買うのー?」

雑誌を読んでいた私は、いつの間にか飲み物売り場に移動していた淳にちょっと大きめの声で聞いた

別に人がいないんだからいいよね

「いろいろー?」

そう答えながらビールなどのアルコール類が入っている所を見ている

いろいろって‥‥

しかも何で疑問系?

コイツはよく分かんないな

みんなといる時は普通なくせに、2人の時とかは何ていうか天然?みたいな感じがある

まぁ、そういう所も好きなんだけど

私は雑誌を置いて淳の元へ行き、

「アンタまだ二十歳じゃないでしょうが!」

と言って、淳の頭にチョップをした

「いってぇ‥‥お前馬鹿か?どう考えても見てるだけだろ?」

叩かれた所を手で押さえながら睨んできた

「はいはい、さっさと買いなよ」

私は淳を急かし、また雑誌を読みに戻った

一つの本を手に取り、パラパラッとページをめくる

そしてあるページで私の手は止まった

そこには、[誕生日プレゼントを贈ろう]と書いてあった

そういえば、淳の誕生日は5月の最初だったよな?

去年は確か‥‥

‥‥あれ?何あげたんだっけ?

うーんと‥‥えーっと‥‥

頭の中で約一年前のことを必死に思い出そうとするがなかなか出てこない

「トモー?行くぞー?」

そのことに夢中になっていた私は淳の声で我に返った

コンビニを出てまた歩く

「結局何買ったの?」

「いろいろだよ」

「だからいろいろって何よ!?パンとかおにぎりとかあるでしょ?」

「じゃあパンとおにぎり」

じゃあって‥‥

ダメだ、もうついていけません‥‥

「なぁ、公園よってかねぇ?座って食べたいから」

「はぁ‥‥いいよ」

そして近くにある公園に入った

すると‥‥

「おい‥‥ここヤバいよな‥‥?」

「私も思った‥‥」

周りにはカップルがたくさん

おまけにみーんなイチャイチャしてる

こりゃ私達がいたら場違いにも程があるね

「どうする‥‥?」

「そんなこと言われても‥‥」

2人で入り口に突っ立ったまま動けず‥‥

取り合えずこの状況を打開したい私は

「じゃあ‥‥ウチ来る?」

と、言ってみる

「‥‥そうするか」

淳は苦笑いしながら言ってきた

言ってみるもんだな

淳が私の家に来るのは久しぶりなので、ちょっと嬉しかったりもする

この公園を通れば私の家はすぐなんだけど、そうもいかないので少し遠回りをして私の家に向かった


[No.809] 2008/02/14(Thu) 00:11:58
カランコエ 〜あなたを守る〜 18 (No.809への返信 / 18階層) - バーツ

「ただいまー」

トモの声が家の中に響き渡る

まだ5時半だし、誘いも断る理由がなかったので、トモの家にお邪魔することにした

いやー、何年ぶりだ?

小学校の時以来だからなー

すると、トモのお母さんがやって来た

「おかえり。あら?淳くんじゃない!?久しぶりねー!」

「お久しぶりです」

お辞儀をして挨拶をする

「じゃ、上行こう?」

「あぁ」

トモに促され、おじゃましまーすと一言言った後、俺は家の中へ上がった

トモの部屋に入ると、部屋が白と黄色で包まれていた

前来たときとは中身がガラリと変わっていて、ちょっと驚いた

まぁ、何年も経つんだ

変わらない方がおかしいよな

「そこら辺座ってて」

そう言われたので、一瞬ベッドに目を向けたが、少し抵抗があったため小さい円上のテーブルの横に座った

「俺自分で買ったやつ食べに来ただけなんだけど‥‥」

そう言って顔を上げるといつの間にかトモがいなくなっていた

どこ行ったんだ‥‥?

仕方なく、テレビをつけ、コンビニ袋から買ったパンを食べ始めた

数分後‥‥

「淳、今日ウチで夕食食べてって?」

そう言いながらトモが部屋に戻ってきた

「あー、いいの?‥‥って!?」

テレビを見ていた俺は視線をトモの方に向けて唖然とした

だって!だってさ!?

コイツ今どんな格好で戻ってきたと思うよ?

ちゃんと服は着てるけどメッチャ露出度高いぜ?

ヤバいよこれ!!

上から見たら胸見えそうだし、下から見たらパンツ見えそうだし‥‥

それに俺も一応男だしさ‥‥

って!そんな問題じゃなくて!

俺は目のやり場に困って視線をテレビに戻した

「ん?どしたー?」

トモは不思議そうに俺の顔を覗き込んできた

やめろ!バカッ、あんまり近付くな!

理性がぶっ飛んじまうだろう!!

コイツは学校で結構モテてる

顔とか普通にカワイイし‥‥

こんな時、幼なじみといっても一人の女として意識してしまう

「なっ‥何でも‥‥ねーよ?」

そうは言うものの目を合わせられない俺

「‥‥?変なのー」

俺からやっと離れた

それはこっちのセリフだっつの!

そしてトモは俺の後ろにあるベッドに座った

‥‥ダメだ

こいつのせいでテレビに集中できん

背後からの視線がスンゲー気になる‥‥

「それにしてもさー」

突然喋り出した

俺の体は一瞬ビクッとなった

「淳ってピアノあんなに上手かったんだね」

何を言い出すかと思えばそんなことか

「おう」

「ちょっと‥‥かっこよかったよ」

「‥‥っ!?」

は?今コイツ何て言った?

かっこよかった‥‥って言ったよな?

俺が?この俺がか!?

心臓が飛び出しそうなくらい速く鳴ってる

こういう場合俺は何て言えばいいんだろうか‥‥

とりあえず‥‥

「‥‥おう」

また同じ言葉を言ってしまいました

俺ってば情けない奴‥‥

素直に“ありがとう”って言えばよかったじゃねぇか

後悔の波が押し寄せた

でも、こうなったのもあれだ

トモがあんな格好してきたせいだ!

そうに違いない、うん

1人で無理やり頭の中で納得させた

そして少しの間互いに黙ってしまった

そのおかげで俺の心臓は普通に戻り、テレビに集中する事が出来る、そう思っていた

そう、この時までは‥‥

「‥‥ねぇ」

「ん?」

返事をしたもののなかなか次の言葉を返してこない

「どうしたー?」

俺は振り向かず答えた

すると、

「‥‥ゴメン」

いきなり謝ってきた

意味がわからない俺

「何が?‥‥っ!?」

振り向こうとした時だった

トモがいきなり俺の背中に抱きついてきたのだった‥‥


[No.820] 2008/02/17(Sun) 00:18:43
カランコエ 〜あなたを守る〜 19 (No.820への返信 / 19階層) - バーツ

状況が理解できない俺

いや、だって‥‥ねぇ?

ゴメンって謝られたり急に抱きつかれたり‥‥

トモは一体どうしちまったんだ?

シーンと部屋が静まり返る中、聞こえてくるのはテレビから流れる音だけ

あれからトモは抱きついてきたまま一言も喋らない

あのー‥‥トモコさん?

胸が‥‥胸が当たってるんですけど‥‥

何て言えるわけもなく時間だけが刻々と過ぎていく

そして、この雰囲気に痺れを切らした俺は言葉を発した

「何か‥‥あった?」

出来るだけ優しい声で言った

コイツがこんな事してくるなんて今までなかったからな

俺の未だに心臓の鼓動は速いままだけど、頭は何故か冷静だった

「‥‥ゴメン」

トモはそう言って俺から離れた

「謝られる様なことされた覚えねーぞ?」

俺はゆっくり振り向いた

すると、

「おまっ‥‥泣いてんの!?」

トモは目に涙を溜めていた

「泣いてないし‥‥」

トモはそう言うものの、瞳から零れ落ちる涙はどうすることもできないでいる

意味分かんねぇ‥‥

抱きついてきた意味も、ゴメンと謝る理由も、今こうして泣いている訳も‥‥

何か俺変なこと言ったか?

まさか‥‥

頭にはつい先日のことがよぎった

西野を泣かせてしまった時のことを

また人を傷付けた?

でも俺、今回は何も言ってないよな?

おうと返事をしたくらいだろ?

じゃあ何だ?他に理由あんのか?

「俺‥‥何かした?」

気が利いた言葉じゃないけど、俺が一番聞きたいことだった

トモは首を横に振る

「じゃあ‥‥どうした?」

すると、トモはこう言った

「何でもない‥‥ただ抱き付きたかっただけ‥‥」

涙目で言うトモに俺はドキッとした

何故か知らないけど、トモが愛おしく思えた

西野のこと好きなはずなのに、何か‥‥今の俺‥‥

「じゃあ何で泣いてるんだよ?」

「これは‥‥あくびしたらこうなったのよ」

トモは涙を拭いながら俺に笑顔を見せた

いや、絶対あくびじゃねぇだろ?

「あっ、もうご飯出来てるんじゃない?」

時計を見ると6時をとっくに越していた

「ほら、下行こう?」

トモは立ち上がり歩き出した

この時、俺は自分で自分が止められなかった

その瞬間は西野よりトモの方が頭の中を占領いたんだ

部屋のドアを開けようとするトモを俺は後ろからギュッと抱きしめた

何でこんな事してるんだろう‥‥

俺は西野が好き

なのに‥‥なのにどうして俺はトモを抱きしめている?

「淳‥‥?」

小さな声でが俺の名前を呼んでいる

さらに俺はトモを強く抱きしめる

「なんか‥‥あったんじゃねーの?」

トモの耳元でそっと呟いた

長年の付き合いだから何となくそんな予感がしたんだ

しかし、トモは黙ったまま俯いてしまった

「俺‥‥心配なんだよ。ずっと一緒にいたから何となくだけど分かるんだ。トモに何かあったんじゃないかって‥‥」

トモは黙ったまま腕の中でこっちを向いて俺を見上げた

目にはまた涙が溜まっている

そしてトモが口を開いた

「私‥‥私ね?ずっと前から‥‥」

「トモー!淳くーん!ご飯出来たわよー!」

下からおばさんの声がした

ビックリして俺はトモから離れてしまった

「今‥‥何て言おうとした?」

俺は聞いてみた

あの言葉の後が物凄く気になる

「‥‥また今度ね」

「は‥‥?」

「もう今日は言わない!ほらっ、早く下行くよ!」

笑ってそう言ったトモは走って下に行ってしまった

なんだよ、気になるじゃねーか!

まぁいっか

最後にはいつものトモの笑顔に戻ってたし

けど‥‥俺のあの時の気持ちは何だったんだ‥‥

俺‥‥どうしたんだろう‥‥

そして俺はつけっ放しだったテレビを消して、階段を降りていった


[No.821] 2008/02/17(Sun) 00:20:15
カランコエ 〜あなたを守る〜 20 (No.821への返信 / 20階層) - バーツ

〜大草side〜

ついにきました、俺の出番!

20話目にしてやっと自分視点の話だよ

ここまで長かった‥‥

出たのとか最初ら辺だけじゃね?

えー改めて初めまして、大草です

みなさん、俺の名前ご存知ですか?

真中は淳平、外村はヒロシ、西野はつかさ

さて俺は‥‥?

‥‥‥‥

‥‥ですよね、わかりませんよね

誰か名付けてください

‥‥冗談です

俺だって名前くらいあるんだ!

こうなったのは俺のせいじゃないし、うん

今自分で自分を納得させました

悲しい奴だなぁ、俺‥‥

まぁ、それは置いといて

サッカー部の朝練も終わり、部室で着替え、教室に急ぎ足で向かう

だっていっつも黒川先生朝来るの早いんだよ

教室のドアをガラガラッと勢いよく開ける

目に飛び込んできたのは、教卓の周りでキャーキャー声を上げて話す女子

毎日思うけど、うっせーよ!お前ら!

それより先生はまだ来てないみたいだ

これで一安心だな

次に目に入ったのは、机の上でジーッと何かを眺める真中の顔

その視線の先には‥‥いました、西野つかさ

親友のトモコちゃんと何やら楽しそうに喋っている

あいつも飽きないねー‥‥

好きならさっさと告白すればいいのに

俺は適当にみんなに挨拶をして自分の机にカバンを置き、真中の所へ向かった

「オッス、真中」

手を上げ笑顔で言うと

「あぁ‥‥」

目は西野の方を向いたままピクリとも動かない

お前どうした!?

いつもはおはようとかちゃんと俺見て言うくせに今日はそれだけ!?

「‥‥何かあった?」

俺は真中に尋ねながら近くにあったイスに座った

すると真中は俺に話しかけてきました

「なぁ、大草」

「なに?」

「人を好きになるって‥‥どんな感じ?」

‥‥‥‥

「‥‥はい?」

今‥‥なんつった?

いきなりのことに聞き返してしまった

「だーかーらー、人を好きになるってのはどんな感じなんだよ?」

コイツ‥‥

「頭でも打ったか?」

俺は真中の頭をマジマジと見た

「打ってない」

真中は俺を軽く睨む

そして視線を戻した

「はいはい。で、いきなりどうした?そんなこと聞いて」

「それより質問に答えろよ」

ったく、しょうがねぇなぁ

好きってどんな感じと聞かれても‥‥

んー‥‥

「こう‥‥胸がキュンってなったりするんじゃねぇの?」

あぁ‥‥

自分で言ってて恥ずかしくなってくるわ‥‥

すると、真中は静かに言った

「昨日トモと色々あってさ、そんで‥‥今お前が言ったみたいになった」

トモコちゃんと?

てか真中‥‥胸がキュンってなったのか!?

「色々って?」

「‥‥色々だよ」

気のせいか?

少し真中の顔が赤くなったのは‥‥

「その色々が重要なんだろが」

真中は少し黙った後

「言わなきゃダメ?」

俺を見てそう言った真中の顔は確実に赤かった

おもしれぇ奴‥‥というより可愛い奴め

俺は当たり前のようにこう言った

「ダメ」

すると真中は、

「耳貸せ」

と小声で言って、俺に手招きをしてきた

仕方なく耳を寄せて真中の話を聞くことに

ーーーーーーーーーー‥‥‥

ーーーーーーーー‥‥

「はぁ!?マジで!?」

ついつい大きな声で言ってしまったがために、クラス中の視線が俺と真中に注がれた

勿論、西野やトモコちゃんも見ている

マズい‥‥これは非常にマズいぞ‥‥

「あっ‥‥とー、真中ちょっと来い」

俺はベランダに真中を連れ込んだ

「それホントなのか?」

窓を閉めて、真中に聞く

「あぁ、全部ホントのことだよ」

いやー、どうなってんの?

真中やるときはやるんだねー

てかさてかさ?

もしかしてトモコちゃんって‥‥

「つかさちゃんって好きな人いるらしいぞ」

「「‥‥っ!?」」

横を見ると、さっきまでいなかった外村がいつの間にか俺の隣にいた

いつ来たんだよ‥‥

「それもホント?」

俺は外村に聞いた

「昨日の帰りにそれらしきこと言ってた」

うわぁ‥‥どうすんの真中?

今三角関係ってやつになりかけてるぞ‥‥?

「俺はどうしたらいいんだ‥‥」

真中はボソッと呟くと教室に戻ってしまった

真中が自分の席に戻ったのを見計らってか、外村が話し出した

「大草知ってるか?トモコちゃんな、いっつも真中が学校来るときこのベランダから真中のこと見てんだぜ?」

えっ‥‥?

「なんでそんなこと知ってんの?」

「気付いたのは去年の秋頃だな。俺同じクラスだったから分かってんだ。勿論トモコちゃんは俺がこのこと知ってんの気付いてないし、真中もこのことは知らない」

じゃあ‥‥やっぱりトモコちゃんって‥‥

「多分‥‥ずっと真中のことが好きだったんだと思う」

マジかよ‥‥?

でも真中は‥‥

「真中が好きなのはつかさちゃんだけだろ?トモコちゃん可哀想だよな‥‥」

外村はそう言って窓越しにトモコちゃんを見る

そうだったんだよ、俺もそう思ってた

ついさっきまでは‥‥

「いや、それがさ‥‥違うっつーかなんつーか‥‥」

「は‥‥?どういうこと?」

外村はビックリした様にパッと俺に視線を戻した

俺は真中から話されたことを外村に言った

「‥‥そっか」

あれ?リアクション薄くないかい?

もっと驚くかと思ってたのに

「俺が思うに‥‥」

「ん?」

「つかさちゃんの好きな人は‥‥」

この後言われたことは、あの三角関係が完璧に出来上がることを物語っていた

外村のこういう時に言うことは、俺が聞いた内じゃ今まで外れた試しがなかった

真中は西野が好き

だけど、その好きは本当の好きかどうかわからなくなって

そして昨日からはトモコちゃんのことで頭が一杯で

だからさっきは西野じゃなくトモコちゃんを見ていたんだな

そのトモコちゃんは真中が好き

さらに西野の好きな人は‥‥外村曰わく‥‥

「真中だ」

3人の複雑な関係はここから始まったんだ

数年後に訪れる悪夢、そして奇跡へのカウントダウンが、この時、ゆっくりとスタートし始めたことをまだ誰も知らない‥‥


[No.822] 2008/02/17(Sun) 00:28:48
カランコエ 〜あなたを守る〜 21 (No.822への返信 / 21階層) - バーツ

新入生歓迎会も無事終了し、時間はあっという間に過ぎて、学校も明日から夏休みに入ろうとしていた

今は放課後。ミーンミーンと蝉の声が鳴り響く中、俺は教室のベランダから茜色に染まる校庭をボーッと眺めている

あれからというもの、西野とトモのことをついつい目で追っかけてしまう日々が続いた

学校では勿論のこと、西野とは上村先生のスクールにちょくちょく行くようになったことでよく会うし、トモとは学校帰りをたまに一緒に帰ったりする

2人とも俺の気持ちに気付いていないから、俺がそれらしき行動をとれば何か進展はあるかもしれない

でも、もしそんなことをして嫌われたらと思うと、何もできない自分がいる

2人は俺のことを友達や幼なじみとしか思っていないだろうし、ましてや好きだなんて感情を持っていることは無いに等しいだろう

それに、今は2人が好きなんだ

いずれどっちかにしなくちゃいけない、そんな時が来たとしても、今は‥このままで‥‥

「なーに黄昏てるのさ」

「ん?」

横を見ると、俺を見るトモがいた

「別に‥‥」

お前のこと考えてた――‥なんて言えないよ‥‥

「ふーん‥‥」

そう言いながらも、まだ俺のことを見てくる

何か言いたそうな顔だ

「‥‥何だよ?」

「いやー、淳と出会ってどれくらい経つのかなぁと思って」

「小学校からだから‥‥10年くらい?」

「そっか、もうそんなになったんだ」

そう言いながら、トモは白い壁の部分に寄りかかった

「それがどうかした?」

「ううん、ただ何となく気になっただけ」

トモは風に揺れる黒い髪の毛を耳に掛ける

その仕草に俺はドキッとした

オレンジ色の光が当たってトモの顔が輝いて見える

キレイだなぁ‥‥

「淳はさ‥‥私に出会えてよかった?」

「えっ?」

いきなりの質問に思わず声が出てしまった

「どうなの?」

そう聞いてきたトモは、優しそうな、それでいてどこか寂しそうな顔をしていた

何でそんなこと聞くんだろう?

「よかったよ。トモに出会えてよかった」

優しくトモを見ながら言った

本当にそう思っている

いつも一緒にいたからわかるんだ

強がりで、意地っ張りで、わがままなトモ

優しくて、素直で、友達想いなトモ

多分、家族以上に俺は彼女のことを知っているかもしれない

バカなことやって笑った時も、雨の日に傘を忘れた俺を助けてくれた時も

いつも隣には君がいた。トモがいた

そして、昔も今も、トモの笑顔は俺に元気や勇気、癒やし‥‥たくさんのものを与えてくれる存在

だから、俺はトモに出会えて本当によかった、そう思ってる

「私も。私も淳に出会えてよかった」

トモはニコッと笑いながら言った

「そうじゃなかったら、こんな気持ち分からないままだった」

「は?」

こんな気持ち?何のことだ?

俺が考えていると、

「淳、大好き」

と言って、俺の頬に軽く触れるだけのキスをしてきた

「えっ?なっ‥ななな何やった!?」

突然のことにビックリして慌てふためく

そんな俺を見てトモはクスクス笑いながら言った

「大好きって言ってキスした」

「大好き‥‥?」

ちょっと待て!?

これは‥その‥‥大好きってのはつまり‥‥

「もちろん、幼なじみとしてね」

頭の整理がつく前にトモが言った

「あ、そういう意味ね‥‥」

少し落ち込む俺

「じゃあキスは?あれは何だったんだよ!?」

そうだよ!あれはどう考えても‥‥

「え?外国じゃ普通っしょ?」

ケロッと言うトモ

「ここは日本だ!」

対抗する俺

いつものこんな些細な事が幸せと感じるのは、やっぱり君のことが好きだからだろうな

「別に減るもんじゃないし、いいじゃない?」

「それは‥まぁ‥‥」

「じゃあ、私帰るから!またね!」

トモがベランダから教室に戻っていった

「トモに‥キスされた‥‥」

さっきの光景を頭の中で思い出し、つい顔がニヤけてしまう

「でも‥幼なじみとして‥‥か‥‥」

幼なじみとして好き

今の俺には嬉しいような悲しいよう、何とも言えない感情が襲っていた

それを振り切るかのようにハァと一つ溜め息をついて首をブンブンと横に振っていた頃、

「早く私の気持ちに気付け、バカ淳」

トモが俺の背中を窓越しに見ながらこう言い残して教室を後にしたのを、俺は知らない

そして、俺達は夏休みを迎える


[No.844] 2008/02/22(Fri) 23:46:37
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