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No.827に関するツリー

   恋時計 - バーツ - 2008/02/19(Tue) 00:16:10 [No.827]
恋時計 プロローグ - バーツ - 2008/02/19(Tue) 00:20:02 [No.828]
恋時計 第1話 - バーツ - 2008/02/19(Tue) 00:28:32 [No.829]
恋時計 第2話 - バーツ - 2008/02/21(Thu) 00:24:30 [No.835]
恋時計 第3話 - バーツ - 2008/02/22(Fri) 23:48:50 [No.845]
恋時計 第4話 - バーツ - 2008/02/22(Fri) 23:53:53 [No.846]
恋時計 第5話 - バーツ - 2008/02/24(Sun) 23:24:04 [No.849]
恋時計 第6話 - バーツ - 2008/02/24(Sun) 23:28:17 [No.850]
恋時計 第7話 - バーツ - 2008/02/27(Wed) 23:56:29 [No.869]
恋時計 第8話 - バーツ - 2008/02/27(Wed) 23:59:27 [No.870]
恋時計 第9話 - バーツ - 2008/02/28(Thu) 00:05:58 [No.871]



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恋時計 (親記事) - バーツ

頭に浮かんだの書いてみようと思います。

ですが、メインは「永遠にともに」と「カランコエ」の方なので、更新はスローペースになります。

また、途中打ち切りもあり得るかもです。みなさんの感想等しだいでどうしていくか決めたいと思います。

もし続いたとすれば、どちらかが完結次第、更新のペースを早くしたいと思います。


[No.827] 2008/02/19(Tue) 00:16:10
恋時計 プロローグ (No.827への返信 / 1階層) - バーツ

「あぁ、またこの夢か‥‥」

ここ最近、夜によく見るようなった夢がある

一人の女の子が遠く離れた場所にポツンと立っている

顔はボヤけていてよく見えない

俺が必死に歩み寄ろうとしても近付くことが出来ない

「くそっ、一体どうなってんだよ!」

いつものように苛立ちを隠さずにはいられない俺

すると、その女の子は言った

「運命って信じる?」

「はっ?」

ずっと向こうにいるはずの女の子の声が聞こえる

その天使のような優しい声はどこか懐かしい感じがした

(またいつもと同じこと言ってるよ‥‥)

何回も同じ夢を見て、何回も女の子は同じ言葉を言う

いつもはそのまま夢から覚めてしまうけれど、今日は話しかけてみることにした

「おい、それってどういう‥‥」

俺が聞こうとした時、その女の子はスッと周りの闇に呑まれていなくなってしまった

「チッ、またかよ‥‥」

俺は舌打ちをした

どうせ今日も何も分からないまま夢から覚めるんだ

俺はそう思っていたが、今日は少し違かった

時間が経っても未だに夢から覚める気配がない

(どうなってんだ‥‥?)

いつもと異なる現象に少し戸惑っていると、

「忘れちゃったの?」

後ろから女の子の声がした

「えっ?」

急いでパッと振り返るけれど、誰もいない

「私は今でも覚えてる」

今度は前から

顔を向けても、やっぱり誰もいなかった

おちょくられているようで段々と腹が立ってきた俺は大きい声で怒鳴った

「おいお前!一体どこにいるんだよ!?」

闇に俺の罵声が響き渡る

女の子は少し黙った後にこう言った

「君の心の中だよ」

ーーーーーーーーーー‥‥‥

ーーーーーーーー‥‥

ガバッ!

ベッドから起き上がった

カーテンの隙間からは朝の太陽の光が射し込まれている

体は寝てるときにかいたと思われる汗で濡れていた

「マジで何なんだよ‥‥」

ついさっき夢で見たことを思い出す

(あの女の子‥‥なんか俺のことを知ってる風な言い方だったよな)

そう思いながら時計を見る

針は朝の7時30分を指していた

「ヤベッ!初日っから遅れるわけにはいかねぇじゃん!」

急いでハンガーに掛けてある真新しい制服に着替え、ベッドの横に置いてあった教科書などを詰め込んだカバンを手に取り階段を下りた

「淳平ー?朝ご飯はいらないのー?」

「いらねー!食ってたら遅刻しちまう!」

キッチンから聞こえてくる母さんの声に答え、洗面所まで行き簡単に身支度を整える

「淳兄ー?早くしないと遅刻するよー?」

家の前で俺のことを待っている妹が言った

急ぎ足で玄関まで行き靴を履いてバンッとドアを開ける

「いってきまーす!」

そして俺は勢いよく家を飛び出した

歩きながら空を見上げる

今日は雲一つない快晴

俺の新生活はいいスタートになりそうだ


[No.828] 2008/02/19(Tue) 00:20:02
恋時計 第1話 (No.828への返信 / 2階層) - バーツ

俺の名前は真中淳平

8月に泉坂に引っ越してきたばかり

引っ越しの理由は親父の仕事上の都合

まぁ、ごく普通な理由

なので、学校も泉坂高校ってとこに転校することになった

俺には今隣を歩いている一つ下の妹がいる

名前は梓(あずさ)

コイツを一言で言うと、とにかくうるさい

いつも喋っている気がする

「淳兄、彼女とはどうしたの?」

お前‥‥朝から普通そんな話をするか?

重いだろ?

「べつに」

適当な返事をした俺に、

「彼女とは、ど・う・し・た・の!?」

と、梓は大声で言ってきた

お前しつこい‥‥

「終わった」

俺はそれだけ言った

俺には前の学校にいたときに付き合っていた女がいた

別に好きじゃなかったんだけど、どうしてもとしつこく言われたので仕方なく付き合っていた

だから、今回の転校をキッカケに別れることができて良かったと思っている

「えー、なんで別れちゃったのさー?私綾ちゃん好きだったのに!」

「だって俺東城のこと好きじゃねぇもん。てか女自体好きじゃない」

そう。俺は女が嫌いだ

なんでそうなったのか根本的なことは全然覚えてなくて、いつの間にか嫌いになっていた

まぁ理由なんざ今考えれば色々出てくるんだけどさ

うるさいし、何かと騒ぐし、香水臭いし、化粧濃いし、男の前ではコロコロ態度変わるし、女同士で色々あるし‥‥

それに、可愛かったりキレイだったりする女に男がまとわりついていくことの意味が分かんない

可愛いからなんだ?キレイだからなんだ?女はどうせ女だろ?みんな一緒だよ

「じゃあ私は?淳兄から見て私も嫌いに入るのかな?」

梓は俺の顔を覗き込んできた

コイツは世間一般で言えばかなり可愛い方だろう

「梓に好きとか嫌いはないだろ?兄妹なんだから」

「じゃあ、どっちかっていうと?」

そう言って覗きこんだ顔をさらに近付けてくる

お前絶対好きって言われんの期待してるだろ?

てか俺に好きと言えって目してるよ‥‥

はぁ‥‥仕方ないか

「‥‥好きな方じゃん?」

「好きな‥‥“方”?」

そこ強調すんなよ‥‥

「‥‥好き」

すると梓は途端に笑顔になった

「よし!ならオーケー!」

おいおい、何がオーケーなんだよ?

意味わかんねぇし

でも、どっちかと言えば好きなんだろうな。俺が心を開ける女の人は母さんと梓くらいだし

あとは‥‥無理。開かない。ってか開きたくもない

だから彼女が欲しいとも思わない

「それよりお前はあのバカとはどうしたの?」

「バカとは失礼ね!ちゃんと遠距離恋愛してますよーだ!」

こいつには今付き合って2年の彼氏がいる。そいつは俺たちの幼なじみで、俺もよく遊んだりしていた

「遠距離つっても同じ東京だぞ?」

「距離は遠いでしょ?」

「お前ら会えないのによく我慢できんな?」

「私達の愛のパワーはスゴいんだから!みくびらないでよね!」

「はいはい」

たわいもない話をしながら歩いていると、いつの間にか学校についた

「職員室行けばいいんだっけ?」

「場所は‥‥っと、あった。二階上がってすぐだな」

学校内の説明の書いてある掲示板を見て、階段を上ってすぐにある職員室のドアを開けた

「あのー、転校してきた真中ですけどー」

「同じく真中ですけどー」

2人でそう言うと、中にいた先生たちが一斉にこっちを見た

恐っ!なんか俺ら睨まれてるし

そのせいか、梓は俺の後ろにサッと隠れた

「おーい、君たちこっちに来てくれー」

ドアのところに棒立ちになっていると、奥から女の先生に呼ばれた

「淳兄早く行こうよ」

「お‥おう‥‥」

急いで向かうと、そこには校長?もしくは教頭?らしきハゲたオッサンがいた

「君たちが真中兄妹ね?」

真中兄妹って‥‥

「はい。俺が兄の淳平で、こっちが妹の梓です」

言い終わってペコッとお辞儀をした

「うん。じゃあお兄さんの担任は黒川先生で、妹さんの担任は白鳥先生ね」

俺の担任はさっき俺たちを呼んだ女の先生だった

少し若そう。27、8歳くらいか?

「真中、これからよろしく!」

「あっ‥はい」

うわぁ、この人いかにも彼氏いないって感じだな。男が欲しいってオーラがビシビシ伝わってくるわ‥‥

隣を見ると、白鳥先生が梓に手を差し出していた

「よろしく!」

「は‥はぁ‥‥」

梓は苦笑いしながら握手している

こっちはこっちで彼女いないんだろうな

つーか筋肉スゴッ!スーツの上からでもわからぁ。こりゃ絶対体育会系だな

「じゃあ教室行くぞ!真中は2―Cだ」

「はい」

黒川先生は歩き出した

「学校終わったら連絡しろよ?今日は一緒に帰ろ」

俺は梓に耳打ちをして先生の後についていった

職員室を出て早々‥‥

「真中は彼女とかいるのか?」

「はっ?」

この人いきなりなんてことを聞くんだ!?

転校生にむかって彼女いるかだぁ?

頭おかしいんじゃねぇの!?

そうは思いながらも俺は笑顔で言った

「いいえ?いませんよ?」

「そ‥そうか‥‥」

すると、あろうことかこのオバサン‥‥じゃなくて黒川先生の頬が若干赤くなってるじゃねぇか

しかも、俺のことを横目でジーッと見てくるし

もしかして俺‥‥狙われてる!?

そう考えると急に寒気がした

背中が!背中がゾワゾワッてするよ!

その後は何も話すことなく、しばし無言のまま廊下を歩き続けた

「ここだ」

先生に言われ顔を上げた。どうやらクラスについたみたいだ

「じゃあ呼んだら入ってこい」

そう言うと、先生は教室のドアをガラガラッと開けて中に入っていった

どうか‥‥どうか今日一日先生に襲われず、何事もなく無事学校を終えることができますように‥‥

俺は手を合わせ祈った

「真中ー、入ってこい」

先生に呼ばれた

俺は教室の中へ足を一歩踏み入れる

この後、俺はこの学校で、このクラスで、あの人に出会ったんだ

そしてその時、止まったままだった俺の恋時計は静かに動き始める

衝撃の真実を知ることになるあの日を目指して‥‥


[No.829] 2008/02/19(Tue) 00:28:32
恋時計 第2話 (No.829への返信 / 3階層) - バーツ

「キャー!カッコイーッ!!」

俺が教室に入ったと同時に、女子の悲鳴にも似た黄色い声が教室中に響き渡る

その甲高い声は痛くなるくらいに俺の頭に響いてくる

うぜぇー‥‥

そうは思いながらも一応ニコッと愛想笑いをする

女にかっこいいと言われてこれほどまでに嬉しくないのは世界中探しても俺だけなんじゃないだろうか

教卓の隣に立つと、その声は一段と大きくなった

「静かに!えー、転校生の真中淳平くんだ。真中、簡単に自己紹介してくれ」

先生が喋るとみんな静かになった

自己紹介っていっても何を言おうか‥‥

「えーっと、真中淳平です。これからよろしくお願いします」

まぁここは普通に言うのがベストだよな

周りからはパチパチと拍手が沸き起こる

すると、その音をかき消すかのように一人の女が手を挙げて俺に尋ねてきた

「はいはーい!真中くんは彼女いるんですかー?」

またですか?そんなこと俺に聞いてどうすんだよ?

「いませんよ?」

苦笑いしながら答えた。

「じゃあ私、真中くんの彼女に立候補しちゃいまーす!」

質問してきた女がバッと勢いよく立ち上がって言った

突然何を言い出すんだ、お前!

俺はこの女の言動に唖然として、開いた口が塞がらなくなった

「私も真中くんがいーなー!」

「なら私もー!」

そして周りもそれに便乗するかのようにギャーギャーと騒ぎ始めた

あのー‥‥キレていいですか‥‥?

転校初日だから何もない限り我慢しようと思ってたけど、それも限界に達したよ

「真中くーん!私と付き合ってー!」

ウザい!ウザい!!ウザいー!!!

ダメだ‥‥爆発する‥‥

「お前ら静かに‥‥」

「うっせーんだよ、ブス!お前らなんかに興味ねぇっての!俺女嫌いだから気安く話しかけんな!!」

黒川先生が何か言おうとしたが、俺はそれを遮って言った

教室内は瞬く間にシーンとなっていく

俺以外のクラスにいる人はみんなポカーンと口を開けて俺を見ている。もちろん黒川先生も

特に、さっき俺に色々言ってきた女たちは目が飛び出すんじゃないかってほど目を大きく開いている

ブッ、ダサい顔‥‥

にしても、うーん、これはさすがに言い過ぎたか‥‥

ったく、仕方ないなぁ

「‥‥ってのは冗談ですよ。どうぞ、立候補してください?」

俺はニコッとわざとらしい笑顔で言った

「あ‥あはは‥‥」

周りはみんな苦笑い

「じゃ、じゃあ真中の席は一番後ろの空いているところだ‥‥」

先生どもってるじゃねぇか

「はい」

俺はスタスタと歩いていってイスに座った

すると、隣の男が声をかけてきた

「俺、外村。よろしくな、真中」

「あぁ、よろしく」

外村という男は髪が長くて、正面から見ると目が見えない

お前それで黒板見えんのか?

「さっき言ったアレ、本当のことだろ?」

おー、勘がいいじゃん

「よくわかったね」

「いや、あれだけ大声であんなこと言えば誰でもわかるって」

確かに。それもそうだな

「まぁ、これで女が寄り付かなくなるだろ」

「もしかして‥‥“あっち”系ですか?」

手で仕草をしてケラケラ笑いながら言った

「お前バカか?」

キッと外村を睨む

「冗談だって!でも、本当に女嫌いなの?」

「まぁね」

「なんで?」

しつこい奴だな‥‥

梓といい勝負かもしれないな、うん

「なんでって‥‥さっきみたいにうるさいし、何かと騒ぐし。理由はたくさんあるよ」

要するに、女は嫌いなんだよ

「そうじゃなくて」

「あ?」

そうじゃなくて?コイツ何が言いたいんだ?

「もっと深い理由あるんじゃねぇの?その‥何か女のことでトラウマがあるとかさ」

「えっ‥‥?」

「違うか?」

深い理由?トラウマ?

そんなこと考えたこともなかった

俺は記憶のある頃から今までずっと女が嫌いということで生きてきた

何でそうなったかなんてどうでもよかった

だから、そんなこと分かるはずがない

つーか、今日初めて会った人によくそこまで突っ込んだこと聞けるな

「そうだとしても、俺は女が嫌い。その事実だけでいいだろ?」

そう言うと、外村はどこか腑に落ちないといった表情を浮かべたが、渋々納得したのか前を向いた

その視線の先には、黒川先生が今月にある修学旅行のことについて何か喋っているところだった

まぁ、どうでもいいや

そういえば、もう片方の隣は誰だ?

逆に顔を向けると、そこにいたのは長く伸びた黒い髪の毛、そして顔にあまり合っていなさそうな黒い眼鏡をかけた女だった

それより‥‥スカート長っ!

学校の基準にピッタリ合わしてるんじゃね?こんな人初めて見たよ‥‥

そう思いながらも、何故か名前が気になった

俺は外村に聞いた

「外村」

「ん?」

「俺の隣の女、名前何て言うの?」

「あれ?女嫌いなんじゃなかったっけ?」

「それはそうだけど‥‥」

どうしても名前が気になるんだよ!

こんなこと初めてなんだから

目で訴えると、外村はハァと溜め息を一つついて言った

「西野つかさ。御覧の通りの顔に容姿、さらにかなり内気な性格。だから周りからは全く相手にされない。ただ一人を除いてね」

ふーん。やっぱりそうなんだ

「一人って?誰?」

ここまた気になるんだけど

「西野のさらに向こう側にいる人。トモコちゃんって言って、この学校じゃかなりモテることで有名。西野とは大違い」

「へー」

俺はトモコちゃんと言われた女を見た

うん。梓には劣ってるけど結構可愛いな

確かに西野とは大違いだ

って、俺何かと梓と比べてるな‥‥

「でも何故か2人は仲がいい」

ん?仲がいい?

「どうして?」

「知らね。あ、ちなみにそれはこの学校の七不思議の一つね」

「‥‥あっそ」

七不思議とかどんだけだよ‥‥

俺は再び西野に目をやった

うーん‥‥

この横顔‥‥懐かしい感じがするのはどうしてだ?

見ていて心温まるような‥‥

俺はそう思いマジマジと西野を眺めた

西野はそんな俺に全く気付くことなく、黒川先生の話に静かに耳を傾けて真面目に聞いている

透き通るような白い肌、大きな瞳、体は意外と細そう‥‥

‥‥あれ?ちょっと待て?

俺‥‥この人見たことある‥‥

いつかは分からないけど、多分‥‥いや絶対見たことある!

いつだっけ?てかどこで見たんだ?

クソッ、思い出せない‥‥

そしてこれが、彼女を“西野つかさ”と知ってからの初めての出会いだった


[No.835] 2008/02/21(Thu) 00:24:30
恋時計 第3話 (No.835への返信 / 4階層) - バーツ

今は四時間目。もうすぐ授業の終わりを告げるチャイムが鳴る

あれから隣に座っている西野のことをずっと考えていた

いつ会ったか、どこで会ったか――‥

だけど、全く何も思い出せない

直接聞けば早い話だけど、西野の醸し出す雰囲気、さらに休み時間はいつもいないことから、自分から話しかけられずにいた

キーンコーンカーンコーン―――‥‥

「きりーつ、れー」

そして昼休みになる

「はぁー、ダメだ。何も思い出せねぇ」

ため息をついて横を見ると、ほんの一瞬だけ西野と目が合った

ドキッ――‥

えっ‥‥?

何だ‥‥今の胸の感覚は‥‥

「あ‥‥あの‥‥」

俺は西野に話しかけようとした

――‥が、西野は俺から目を逸らすとすぐに立ち上がり、逃げるようにまたどこかへ行ってしまった

うーん‥‥本当に会ったことあるのかなぁ‥‥

今更ながら、自分で思ったことに疑問を抱いた

―――‥それよりさっきのは‥‥一体‥‥

ダダダッ――‥

「真中くーん!一緒にお昼食べよー!」

俺の元へ走り寄ってくる女子

最初にあれだけ言ったのに効果は全く無かったらしい

休み時間も周りが女だらけになっていたからな

「近寄るなって!」

俺はそう言いながら前の方で話している外村の所へそそくさと逃げた

「や〜ん、照れちゃって〜!か〜わい〜!」

女どもはキャッキャ言っている

照れてねぇよ!バカにすんな!

「モテモテだね〜、転校生くん?」

「可哀想だな、真中。女の子嫌いだなんて」

今話しかけてきたのは大草と小宮山

前の休み時間に話したばっかの二人

大草はかなりかっこいいけど、小宮山は‥‥まぁヤツの為にも言わない方がいいな、うん

「大草ー、あの女どもを何とかしてくれよ。昼飯奢るからさ!なっ?」

手を合わせて必死に頼み込む

俺に近寄らなけりゃ何だっていい

つーかこの際、いっそのこと全部大草のところへ行け!

コイツならちゃんと相手してくれるだろ

「無理だなー。昼飯は女の子たちが俺のために弁当作ってきてくれるから」

大草は自分の席を指差した

そこには山積みにされた弁当の数々‥‥

目を凝らしてよーく見ると、中には手紙付きのものまで

いわゆるラブレターってやつか?

「は?何アレ?てかお前あんなに食えるの?」

目を大きく開いて大草を見る

その体格からしてあれ全部は無理だろー

「食えるわけないだろ?だから大体は小宮山に手伝ってもらってる」

「そういうことだ」

小宮山はゴツい指でVサインを作っている

――‥ってーことはだ。女子が大草にあげた弁当はほとんどが小宮山に食われてるってことか‥‥

少しだけ弁当作った女が可哀想だな

「それより真中ー、お前も明日からああなるぞ」

「‥‥マジで?」

「マジで」

シラッと言う外村

「頑張れ転校生ー」

茶化すように言う大草

「余ったら小宮山様が食ってやるぞ」

食べる気満々で言う小宮山

3人して人事みたいに言いやがって!

昼飯代は浮くけど、俺の机に弁当が山積み‥‥

うわー‥あり得ねー‥‥

想像しただけでブルッと身震いがした

「ん?そういやぁ、お前先生に呼ばれてなかった?」

外村が今思い出したかのように言う

「へっ?‥‥あ、そういえば」

確かに最初の休み時間の時に言われたような気が‥‥

「早く行ってこい!黒川先生怒ると恐いぜ?」

「マジ?じゃあ早く行かなきゃ!」

俺は教室を飛び出して職員室に向かった

―――――‥‥

中にはいると、黒川先生はすぐに視界に入ってきた

少々ご立腹なのか、腕を組み、足も組んで、トントンと軽く貧乏揺すりをしながらイスに座っていた

「すいません、先生」

一応申し訳なさそうに謝る

「遅いぞ!私をいつまで待たせる気だ!?」

あっちゃぁ、ホントに怒ってらぁ‥‥

「ちょっとお腹痛くてトイレ行ってたんです‥‥」

そう言って、わざと痛そうに顔を歪めて腹を抑える

このウソは通じるか‥‥?

「そ‥そうか‥‥。なら仕方ないな」

ラッキー!通じちゃったよ

「で、用って何ですか?」

「委員会のことなんだがな。真中には図書委員をやってもらう。それで、明日ウチのクラスが担当だから」

先生は一枚の紙を渡してきた

「まぁやることはそこに書いてある通りだ」

「俺だけ‥‥ですか?」

俺だけは絶対イヤだよ?サボれないじゃん

「大丈夫。もう一人いるから」

その言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした

‥‥でも相手が女子は嫌だな

「えーと、確か図書委員は‥‥」

先生は机の引き出しを開けてガサゴソと何かを探している

多分名簿とかだろうな

その間、俺は渡された紙を見た

なになに‥?

本の返却、図書室の掃除、棚の手入れ―――‥‥

箇条書きで上から下まで色々と書いてある

‥‥ってこんなあるの!?めんどくせー!

そう思っていると、

「―――‥っと、あったあった。もう一人は‥‥西野だな。お前の隣の席の」

―――‥‥えっ?

俺と西野‥‥?

「じゃあ明日の放課後、よろしくな」

先生は俺の肩を軽くポンと叩いて奥の方に行ってしまった

「どうしてそうなるかなぁ‥‥」

はぁ‥‥

何で俺と西野なわけ?

俺は重い足取りで職員室を後にした


[No.845] 2008/02/22(Fri) 23:48:50
恋時計 第4話 (No.845への返信 / 5階層) - バーツ

今日の授業は全て終わり、放課後になった

「真中くーん!一緒に帰ろー!」

甘ったるい声を出す女ども

「イ!ヤ!だ!」

キッパリと言ってやった

来るな!近寄るな!目障りだ!

「えー、なんでー?」

そう言ってジワジワと詰め寄ってくる

助けを求めようと外村に目でサインを送ったが、アイツはこの光景を笑いながら楽しそうに見ている

裏切り者めー!

それよりこのままじゃ‥‥埋もれ死ぬ!

俺はとっさに囲みから逃げて廊下に出た

すると、遠くから声がする

「淳兄ー!たすけてー!」

見ると、梓がこっちに向かって走ってきてるではないか

後ろには男どもが目をギラつかせて梓を追っている姿が見受けられる

可愛い妹をこんな目にさせやがって‥‥

お前ら‥‥ぶっ殺す!

梓はそのまま俺に飛びつくと、背中に手を回してギュッ力強く抱きしめてきた

「淳兄!恐いよー!」

梓は泣きながら叫んでいる

「真中くーん!その子誰よー!?」

「梓ちゃん!そいつはいったい誰なんだ!?」

周囲を見渡すと、俺達を取り囲むようにして、かなりの人だかりができている

なんでこんなことになってんだ!?

「真中!その可愛い女の子は誰なんだ!?」

外村が興味津々といった様子で聞いてくる

廊下にギャーギャーとたくさんの声が飛び交う

頭が‥‥頭が壊れる‥‥

完全にキレた俺

本日二回目‥‥いってもいいですか‥‥?

「真中くーん!」

「梓ちゃーん!」

プチン‥‥

「うるせー!!」

俺の怒鳴り声でその場が一気に静まり返った

「コイツは俺の妹だ!!文句あっか!?わかったならさっさとそこを退きやがれ!!」

―――――――‥‥‥

―――――‥‥

やっとのことで学校を抜け出した

はぁ‥‥初日っからこれじゃ明日からが思いやられるわ‥‥

「淳兄?学校はどうだった?」

さっきの騒動で疲れきっている俺に、梓は笑顔で聞いてきた

「んー‥‥女がウザかった」

「アハハ、それはしょうがないよ。淳兄カッコいいからね」

「別に好き好んでこうなったわけじゃないし」

「そんなこと言わないの。それよりさっきね、超可愛い人見ちゃった!」

梓は凄く楽しそうに話している

「超可愛い人?」

梓が言うんだ、相当な人なんだろう

「うん!金髪のショートの子!上履き青色だったから淳兄と同じ学年だよ!」

この学校は上履きの先っぽの色で学年が決められている

一年は赤、二年は青、三年は黄、という風に

「へー」

俺はそっけない返事をした

「なに?その興味なさそうな返事は」

呆れたように俺を見る

「だって興味ねぇもん」

どーでもいーよ、可愛くたって何だって別に‥‥ねぇ?

「はぁ‥‥淳兄早く女嫌い直しなよね!」

梓は最近これが口癖になってきている

何でそんなに俺の女嫌いを直したいんだろうか

「はいはい」

適当に軽く受け流す

そして、ふと外村の言葉を思い出した

深い理由‥‥トラウマ‥‥

俺の女嫌いはどうしてなった?

記憶がない内に何かあったのか‥‥それとも単に思い出せないだけなのか‥‥

考えてもやっぱり分からない

思い悩むことを止め、ゆっくりと空を見上げた

まだまだ夏の暑さも残る九月の夕暮れ時

―――‥‥

「運命って信じる?」

――‥‥‥えっ?

夢の中の女の子の声がした

今朝の出来事なのに随分前のように感じる

オレンジ色に染まる茜空に遠目から見たときの彼女の面影浮かべた―――‥‥

―――‥あれ?

何でお前が彼女と重なるんだ‥‥?

‥‥西野‥‥‥‥


[No.846] 2008/02/22(Fri) 23:53:53
恋時計 第5話 (No.846への返信 / 6階層) - バーツ

翌日―――‥‥

朝っぱらから俺の周りはウルサかった

いくら女を追い返しても、その度にまた違う女がやってくる

これじゃストレスが溜まっていく一方だ

うーん‥‥何か女が寄ってこない良い方法はないものか‥‥

頭を抱えて悩み込む

そんな俺の様子を見てか、外村が話しかけてきた

「真中ー、そんなに女の子に近寄って欲しくなけりゃ彼女作ればいいじゃん」

か‥彼女!?

「なんでぇ!?」

外村のヤロウ、いきなり突拍子もないこと言ってくれるな‥‥

「真中に彼女がいる→女の子は真中を諦めて近寄らなくなる→真中の周りは静かになる。どうよ、この流れは」

外村は人差し指を立てて語っている

「名付けて“真中に彼女を作ろう大作戦”」

‥‥そのまんまじゃん

まぁ確かに?外村の言う通り彼女を作れば女は寄り付かなくなると思うけど‥‥

「でもなぁ‥‥」

俺に彼女なんて柄じゃないし

「何かを得るなら何かを犠牲にしなきゃいけねぇんだぞ!」

「いや、だけど‥‥」

どっちにしろ女は俺の側に1人はいるわけで

それに犠牲にされる女もちょっと可哀想だし

「犠牲が彼女を作ることって俺らからしてみれば贅沢すぎるぞ!なぁ、小宮山!」

外村がそう言うと、いつの間にか俺の前にいた小宮山が答えた

「そうだそうだ!俺なんか何を犠牲にしても彼女なんて作れないんだからな!」

小宮山に彼女ができるってことは天と地がひっくり返っても絶対ないだろ

「真中、俺もその考えいいと思うぞ。もしかしたらお前の女嫌いを直すチャンスかもしれないしな」

小宮山の隣にいた大草まで‥‥

「女嫌いは別に直さなくたっていいだろ!」

「誰かいい候補はいねぇかなぁ」

外村が呟いている

俺の話はスルーですか‥‥

「候補‥ね‥‥」

そう呟きながらチラッと横を見る

西野はトモコちゃん?とかいう人と話している

昨日から西野のことが頭から離れないんだよなぁ

西野が彼女だったら‥‥どうなるのかな‥‥

何も喋らないままかもな

でも西野は‥‥無理だよ、うん

俺がどうとかの問題じゃなくて、あっちがそう思ってそうだし

でも、あれだけ物静かだったら側にいてもウルサくないしいいんだろうな‥‥

‥‥って何考えてんだ俺!

何で‥‥西野のことばっか‥‥

その時、この三人は何を思ったか、俺が西野と話しているトモコちゃんを見ていたと勘違いしたらしく、

「トモコちゃんかー。まぁ真中ならいけるんじゃね?」

「うん。いいと思うよ」

「じゃあ、後は俺達に任しとけ」

勝手に話を進めていた

「ちょっと待て!!」

これにはさすがに待ったをかけた

当の本人達は“えっ、何が?”といった顔をしてる

「何がどうなってお前らに任すんだよ!?」

「真中の告白の相手はトモコちゃんで、放課後のセッティングを俺らに任せとけってこと」

外村が説明した

俺が告白だぁ!?

絶・対・嫌・だ!

「俺そんなことしねぇぞ!大体放課後は委員会が‥‥」

そうだよ!俺には図書委員という黒川先生から託された大事な任務が‥‥

「ダメ」

へ?

「絶対告れ」

えー!?

「さもなくばお前を殺す」

こ‥殺す‥‥?

ってかコイツらの目が恐いよ‥‥

まるで“お前にトモコちゃんはやりたくねぇんだ、馬鹿野郎!”って言ってるみたいだよ

目は口ほどに物を言う‥‥ってこの場合使い方合ってるのかな?

「まぁ、場所は図書室にしてやるよ」

そう言い残して奴らはどこかへ行ってしまった

全く、何をしでかしてくれたんだお前らは‥‥

それよりだ!告白なんて俺は一体どうすればいいんだ!?

したことないからわからん‥‥

“ずっと前から好きでした”

いや、会ったの昨日が初めてだし

“俺の女になれ”

‥‥なんて言えるはずないし

“付き合って下さい”

外村たちに面白くないとか言われそうだし‥‥

てか時間止まれ!いや巻き戻れ!

俺の告白を無しにしてくれ!

――‥なんて願いも叶うわけがなく、とうとう放課後になってしまった

あ、ちなみに昼休み俺の机の上は外村の言った通りに弁当で占領されたけど、全部小宮山が食べてくれました

あいつの胃袋は宇宙だ‥‥


[No.849] 2008/02/24(Sun) 23:24:04
恋時計 第6話 (No.849への返信 / 7階層) - バーツ

「じゃあな、真中。健闘を祈ってるぞ」

そう言った後、外村達はニヤッと不気味な笑みを残して図書室から出て行った

「はぁ‥‥」

告白なんてしたくねぇよ

なんか罰ゲーム受けてるみたいになってきたし‥‥

そう思いながらチラッと時計を見る

約束の時刻は五時

その頃になったらトモコちゃんがここへ来るらしい

それまで三十分、まだ少し時間はある

「めんどくせーな‥‥」

俺は嫌々ながら掃除をすることにした

その間、西野とは一言も話さなかった

当然と言えば当然なんだろうけど、それが少しだけ嫌だった

俺は最近おかしい

女はどうでもいい存在

でも、コイツは違った

まだこの学校に来て二日

偶然このクラスになって、偶然西野の隣になっただけ

なのに、初めてあった感じがしなくて、どこか懐かしい感じがした

毎時間の授業は全く頭に入ってこなくて、考えるのは隣で必死に先生の話を聞く西野のことばかり

寝たフリをしてそっと西野の横顔を見つめたりする

どうしてお前は俺の頭の中に侵入してくるんだ?

西野は他の女とは違うからか‥‥?

俺に近寄ってこない、話しもしない、見向きもしない

だから余計気になる

そんな理由で俺は西野のことを考えてるのか?

いや、目が合った時の胸のあの感覚の意味を知りたいからか?

それとも、会ったことがあるかもというくだらない事をまだ考えているからか?

いずれにしても、女は大嫌いなはずなのに、コイツにだけ興味を持ち始めていた

もっと‥‥西野を知りたい――‥

掃除道具を持ったまま本棚越しに西野を見た

――――――――‥‥‥

――――――‥‥

五時まであと数分になった時だった

「トモコに告白するんですか?」

シーンと静寂に包まれていた図書室に西野の小さな声が響く

いつの間にか西野はこちらに振り向いていた

「まぁ‥‥成り行きで‥‥」

初めての会話

二人だけの空間

俺と西野の間には大きな本棚

二人は距離にしてほんの数メートルの近さ

でも、今の俺にはその長さが数キロにも感じられた

ジッとこちらを見つめ続ける西野

吸い込まれそうな綺麗な瞳から、俺は目が放せなくなった

「あの‥‥」

西野は何か言葉を口にしようとしている

でも、なかなか声に出せずに、仕舞には俯いてしまった

「どうした?」

俺は声をかけた

女と話す時は言葉がトゲトゲしくなる俺なのに、今は自分でも嘘じゃないかって思えるくらい優しい口調だった

短い沈黙の後、西野はゆっくりと顔を上げて呟いた

「サイテー‥‥」

「はっ‥‥?って、おい!!」

サイテーって何のことだ?と、疑問に思う間もなく俺が大声を上げたのは、西野がその言葉を言ったと同時に走り出したからだ

「待てよ!!」

俺は慌てて西野の後を追いかけた

廊下に出て階段を上がっていく

西野は躊躇することなく立ち入り禁止の柵を飛び越えて、屋上への階段を駆け上っていった

「アイツ‥‥何のつもりだ‥‥?」

西野は扉をバンッと開け屋上に出た

「ハァッ‥ハァッ‥走るの速っ‥‥」

やっとのことで俺も屋上に出る

「‥‥っ!?」

そこで目にした光景に俺は息を呑んだ

西野つかさは黒い長髪、黒縁メガネ

だけど、目の前にいるのは――‥

「男なんか‥‥大っ嫌い!!」

黒い髪とメガネが地面に落ち、俺のことを鋭い眼差しで睨みつける、金髪でショートカットの西野だった‥‥


[No.850] 2008/02/24(Sun) 23:28:17
恋時計 第7話 (No.850への返信 / 8階層) - バーツ

何がどうなってんだ‥‥?

下に落ちている髪の毛とメガネ

立っているのは金髪の西野

さらにその西野は俺を睨みつけている

目の前の状況に驚きすぎて言葉が出ない

唯一認識できたのは、夕陽に照らされた西野が髪の毛がキラキラと輝いて見えることだけだった

「君さぁ」

西野の剣幕の表情から発せられた声は、俺の体をビクつかせるのに十分過ぎるものだった

「何様のつもりなわけ?女が嫌いだか何だか知らないけど、人の親友を自分の為に利用しないでよね!」

“利用”という言葉が重くのしかかる

西野の言う通り、俺はトモコちゃんを利用しようとしていた

彼女が出来れば女は寄り付かなくなると思ったから

ただ、自分自身のために

「男は誰だってそうだよ。女の気持ちなんか全然考えないでいっつも自分中心」

西野の言葉‥‥ムカつくのに言っていることが合ってるから言い返せない

自分中心‥‥

今の俺にピッタリ当てはまる

「女嫌いを治すために付き合わされる女側の身にもなってみなよ!最後は傷つくんだよ!?悲しむんだよ!?」

一つ一つの言葉が胸に響く

西野はゆっくりと俺の方に近付いてきた

そして、目の前で立ち止まる

パシッ!

乾いた音とともに、俺の左頬に痛みが走った

「許さない」

胸にドーンと雷が落ちたようなトドメの一撃を喰らった感じがした

西野はそう言い放って屋上を去った

たった一人残された俺

叩かれて赤くなった頬を手で抑える

「ハハ‥許さないだって‥‥」

その場にしゃがみ込んみ、頭を抱えた

何でこうなっちまったんだ‥‥

自分の為だけに彼女を作ろうとした俺が悪いのか?

でも、それは半ば強制的に外村達がやれって言い出して‥‥

いや‥‥人のせいにするのはいけねぇんだ

全部自分が悪い

俺が人を利用しようとしたせいだ

だから‥‥こんな目に‥‥

それより、何で‥‥

「何で俺泣いてんだよ‥‥」

目からは自然と涙が溢れ、地面にポタポタとこぼれ落ちていた

泣くことなんて滅多になかった

どんな事があっても泣いたりはしなかったのに、今は涙が止まらない

それは叩かれた頬の痛みのせいでもなくて

自分が過ちを犯そうとしてしまったことに対しての後悔でもなくて

多分、いや絶対西野に嫌われたから‥‥

理由はそれしか見つからなかった

「‥‥戻ろう」

涙を手で拭い立ち上がると、残された西野のカツラと眼鏡が目に入った

「なんで変装なんかしてたんだろ‥‥」

そっと手で拾い上げ、屋上を出て図書室に向かった

階段を下りていくと、図書室の方から叫び声が聞こえた

「つかさ!?」

これは‥‥確かトモコちゃんの声

急いで声のする方へ駆け出した

図書室の前まで来ると、困惑気味のトモコちゃんの姿

そして、トモコちゃんにしがみつくようにしてその場でうずくまっているのは――‥

「西野‥‥」

「あ‥‥真中くん‥‥」

俺に気付くと、トモコちゃんはボソッと呟いた

西野はここに俺がいるということに気が付いたのか、こちらを向く

「あ‥‥」

西野と目があった

言いたいことがあるのに、開いたままの口から言葉が出ない‥‥

互いに見合ったまま沈黙

そして――‥

「ごめんなさい‥‥」

「えっ‥‥?」

な‥んで‥‥?

「本当にごめんなさい‥‥。怒ったり叩いたりして‥‥ごめんなさい‥‥」

泣きながら西野が俺に謝ってきた‥‥


[No.869] 2008/02/27(Wed) 23:56:29
恋時計 第8話 (No.869への返信 / 9階層) - バーツ

「ウッ‥ヒック‥‥グスッ‥‥」

西野は顔を手で覆いながら泣きじゃくっている

何でお前が俺に謝ってんだ‥‥?

絶対立場逆じゃん‥‥

「つかさ‥‥取りあえずその姿は見られちゃマズいから図書室入ろ?」

トモコちゃんは西野の肩を抱き、ゆっくり立ち上がらせた

西野はコクッと頷くと、おぼつかない足取りで歩き出す

んー‥‥この場合俺はどうすれば‥‥?

その場に立ち尽くしていると、

「真中くん?早く」

俺も来るようにと、トモコちゃんは手で促してきた

「あ‥あぁ‥‥」

言われるがままに中に入る

西野はイスに座るなり俯き、手で涙を拭っている

「つかさから全部聞いたよ」

トモコちゃんは話し始めた

「つかさがしたこと怒ってる?その‥‥叩いたり怒鳴ったりしたこと」

不安げな面持ちで聞いてくる

怒ってるかって?

そんなわけないじゃん

全部俺が悪いのに、西野はそれを注意しただけ

叩かれたのも当然のことだと思っている

まぁちょっと痛かったけど‥‥

それでも、西野の言動に一つも間違いはなかった

俺はトモコちゃんを傷つけてしまうところだった

いや、もう傷つけたのかもしれない

それだけのことをしようとしていたんだ

謝るのは俺の方だ‥‥

「怒ってない。寧ろ俺は怒られなきゃいけねぇんだ」

俯いている西野を見つめながら言った

「西野が言ってくれなきゃ、俺は最低なことしてた」

自分への苛立ちを隠せず、拳をギュッと力強く握りしめる

「謝るのは俺の方だ」

そう言って深々と頭を下げた

「本当にごめん!俺が‥‥俺が全部いけなかったんだ!」

謝って許してくれるならいくらでもって謝ろう

許してくれるのならば‥‥

「つかさのこと‥‥許してくれるの?」

だから逆だって‥‥

「許すも何も‥‥最初っからそんなこと考えてないし‥‥」

俺はゆっくりと顔を上げた

すると、あろうことかトモコちゃんはクスクスと笑っている

いやいや、今笑う場面じゃないから!

スンゲー真面目に俺が謝ってんのに‥‥

そう思っていると

「意外にいい人じゃん」

横から声が‥‥

パッと顔を向ける

「はっ‥‥?」

そこには信じられない光景が‥‥

「泣く意味なかったかな〜」

頬杖ついて俺のことをジーッと見ている西野

お前‥今まで泣いていたはずじゃないのか‥‥?

「西‥野‥‥?」

西野の名前を口にすると、奴はとんでもないことを言い出した

「は?気安く人の名前呼ばないでくれる?」

えっ‥‥?

西野ってこんな言葉遣いする人だっけ!?

「あたし男が大っ嫌いって言ったよね?一回言ったことはちゃんと覚えてろよな、真中淳平!」

ど‥‥どうなってんだー!?


[No.870] 2008/02/27(Wed) 23:59:27
恋時計 第9話 (No.870への返信 / 10階層) - バーツ

「おーい、淳平ー?目が点になってるぞー?」

西野が俺に向かってからかい気味に言ってくる

いや、そうなるの当たり前だし!

しかも、何故に俺を名前で呼ぶ!?

ってか‥なにこの状況‥‥

訳が分からず、トモコちゃんを見た

「説明してあげる」

ニコッと笑うと西野の隣に座り、“座って”と俺に言ってきたので、対面して席についた

「最初に言うと、つかさは真中くんと同じで異性、つまり男が嫌いなの」

西野と俺を交互に指差しながら言った

俺と同じ‥‥?

「つかさ、理由をどうぞ」

「うるさい、汚い、しつこい、エロい、キモい、ウザい、――‥」

こらこら、お前言い過ぎだろ‥‥

まぁ人のこと言えないけどさ

「あー、もういいよ」

トモコちゃんは歯止めの効かなそうな西野の話しっぷりに待ったをかけた

途中で止められたことに少しムッとしている西野

「変装してたのは、男を近寄らなくするため」

俺が机の上に置いたカツラと眼鏡を指差す

あー、なるほど‥‥

確かに地味な女の格好すれば男は話しかけないからか

「内気な性格は演技。本当はコレね」

「ちょっと!コレ扱いしないでくれる!?」

「要するに表と裏があるの。わかった?」

トモコちゃんは西野の言葉をスルーした

表と‥裏‥‥?

じゃあ今は表なのか?それとも裏?

「この事知ってるのは私と保健室の先生だけ」

「でも君にバレた。いや、正確には“バラした”って言い方が合ってるね」

西野が初めて口を挟んできた

あれ?でもおかしいよな?

「なんで‥俺にバラした?」

初めて口を開いた

「あ、それ私も思った」

トモコちゃんもそう感じていたみたいだ

「いや‥なんていうか‥‥」

すると、西野は困ったような顔をして黙り込んだ

「‥‥?」

俺の頭にハテナが浮かぶ

コイツ‥‥意味もなくバラしたのか?

バンッ!

「と‥とにかく、理由は何でもいいでしょ!」

机を叩いて立ち上がり、少し声を荒げて言った

うわっ、無理やり押し切っちゃったよ‥‥

「絶対誰にも言わないでよね!わかった!?言ったらアンタぶっ殺すよ!?」

俺に念を押す西野

女が殺すなんて言葉を軽々しく使うなよな‥‥

トモコちゃんは未だ納得いかない顔をしている

わかるよ、その気持ち!

それはそうと‥‥

「気になることが‥一つ‥‥」

「なに!?」

俺が言ったと後直ぐに西野は聞き返してきた

また俺のこと睨んでるし‥‥

「さっき俺を怒ったのは‥‥?」

「君にムカついたから」

‥‥ならいいや

「じゃあその後泣いてたのは?」

「あれは演技。君の事を試した」

‥‥試した?

「謝ったらまともな人、謝らなかったらクズ以下みたいな?」

淡々と話す西野

「‥‥喧嘩売ってんのか?」

「そんな事言える筋合いあるの?人を利用しようとした君にさ」

西野は顔色一つ変えないで言う

「‥‥」

俺は言葉に詰まってしまった

「まぁいいじゃない、つかさ。私まだ何もされてないし。それに見たでしょ?真中くん真剣に謝ってくれてたよ?」

トモコちゃん、ナイス!

初めて家族以外の女をまともだと思えた

しかし、この女ときたら‥‥

「あれのどこが真剣なのよ!?どうせ心の中じゃ全っ然反省なんかしてないんでしょ!?」

プッチーン!

今のはさすがにキレたぞ?

ああえばこう言うみたいなことしてんじゃねーよ!

「泣きマネして俺を騙した奴にそんなこと言われたかねぇよ」

「もしかして逆ギレ?カッコ悪〜!!」

「さっきっから黙って聞いてれば人のことメチャクチャに言いやがって!頭まで下げてちゃんと謝っただろ!?」

「何?女相手にムキになってんの?かなりダサいんだけど」

互いに睨み合いが続いた

ムカつくーっ!!

男だったら思いっ切りブン殴ってるところだ!

この瞬間、西野は今までで俺の一番嫌いな女になった

静かだと思ったらウルサいし

内気だと思ったら俺以上に自己中だし

それにかなり喧嘩腰の態度だし

嫌われたくないと思った俺がバカだった

屋上で流した俺の涙を返せ!!

すると、この光景を横から見ていたトモコちゃんが一言

「なんかさ〜、二人が付き合ったら面白いかもね」

はっ?何言ってんの!?

「「面白くない!」」

うわっ!声被った!

マジ最悪だ‥‥

「ほら、息ピッタリ」

「誰がこんな奴と付き合うか!だったら女にまとわりつかれてた方がマシだ!」

俺はキッと睨みつける

「それはこっちのセリフだし!」

西野も負けじとこっちを睨んできた

目と目が合い、互いの間に火花が散っている

「絶対いいと思うんだけどなぁ‥‥」

おいおい、まだ言うか!?

俺はトモコちゃんを冷めた目で睨む

「じょ‥冗談だってー‥‥」

アハハと苦笑いして答えている

西野つかさ。本当は悪魔のような性格で、俺の生涯で最大の敵

「あたしの正体誰かにバラしたら容赦なくイジメるからね!」

「やれるもんならやってみろ!」

俺達が出会ったことは誰もが偶然と思うだろう

そして、これから未来に起きることは誰もが口を揃えて奇跡と言うだろう

でも‥それは違かった

「お前なんか大っ嫌いだ!」

「アンタなんか大っ嫌いよ!」

今はこんな犬猿の仲みたいな感じだけど‥‥

俺達が出会ったのは必然で、未来に起きることは運命だったんだ

そうだよな?西野‥‥

いや‥お前は俺の中じゃ西野であって西野じゃなかったな‥‥

まさかお前が‥‥俺の――――‥


[No.871] 2008/02/28(Thu) 00:05:58
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