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No.1056へ返信

all Life is ...(前書き) - EVE - 2005/04/13(Wed) 18:17:03 [No.1031]
Life is ... Prologue: 瞳を閉じて - EVE - 2005/04/13(Wed) 18:24:04 [No.1033]
おまけ - EVE - 2005/04/15(Fri) 04:30:20 [No.1048]
Life is ... Scene 1: 真中淳平という少年 - EVE - 2005/04/15(Fri) 21:12:55 [No.1056]
おまけ2 - EVE - 2005/04/17(Sun) 05:49:11 [No.1072]
Life is ...Scene 2: masterpiece - EVE - 2005/04/18(Mon) 03:42:37 [No.1082]
おまけ3 - EVE - 2005/04/18(Mon) 07:19:43 [No.1083]
Life is ...Scene 3: Now we met. 前編 - EVE - 2005/04/25(Mon) 14:16:51 [No.1098]
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Life is ... appendix: その肩に、そっと - EVE - 2005/06/21(Tue) 22:20:45 [No.1146]
Life is ...Scene 4: jealousy -嫉妬- - EVE - 2005/06/21(Tue) 22:24:31 [No.1147]
おまけ5 - EVE - 2005/07/05(Tue) 21:01:37 [No.1153]


Life is ... Scene 1: 真中淳平という少年 (No.1048 への返信) - EVE

真中淳平 12歳


一見して、彼にはなにも無かった。

悪意を持って言い換えれば『無能』だ。

知能、体格、容姿

そのどれもが平凡以下。精神にいたっては、その年齢を加味しても未熟で幼稚である。

同性より精神的成長の早い異性からみれば、なんとも劣った生き物と言わざるを得ない。

わかりやすく言えば、『もてるわけがない』のである。残念ながら恋に恋する乙女たちには、ミジンコの美点を探すなどという、世の研究者たち、その中でもある意味希有な人々のような行為を実践かつ継続する暇は某汎用決戦兵器が起動する確立よりもない。09システムである。まさに眼中どころの話ではない。

同性にとってはどうかというと、単なるからかいの種でしかなかった。それほど姓に対する意識が薄かったこの時期においても、彼は自然『競争者足らない』のレッテルを貼られていたのかもしれない。ひょうきんな性格で『いじめ』の対象にはならなかったが、彼の世間を考えない発言、もしくは行動は、呆れときに失笑を生むこともしばしばだった。

年長者、特に教師達にしてみれば、まさに悩みの種であったに違いない。彼の言う『夢』とやらに対する熱意を認めないわけではないが、せめて義務教育ぐらいは満足に習得してほしい、というのが彼らの本音であった。『夢』を抱くことは、大いに歓迎すべきことであるが、それを実現するのに、人間の文化的活動における基盤となる義務教育は、最低限必要になるはずだし、ましてマイナスになることはないのだから。例外として幼いころより、運動もしくは芸術において特異な才能を世に示す人間がいることは確かだ。彼らにとってはその才能を、幼少より集中的にのばしたほうがより彼らのためになるかもしれない。だが、特異な才能の保持者として認められる『機会』と『手段』がなければ『示された才能』もまた存在し得ない。真中淳平においては、そのどちらもが不足している。

なぜなら、彼の家庭環境は一般的な中流家庭である。父、母、本人の三人家族。日常を過不足なくおくる普通の家庭で、父は幼いころにサッカー選手にあこがれながら中学、高校を卒業、その後平凡な大学を経て現在の会社に就職、そこで妻と出会い結婚、今に至る。母も素敵な男性との出会いを夢見て地元の中学、高校、大学を卒業し、父の勤めていた会社に就職、しばらく事務関係の仕事を持ったのち、夫と結婚、その後真中淳平を宿した際に退職、家庭に入って今に至る。つまり父、母ともに、所謂『芸能界』にかかわったことはおろか、彼の『夢』について何かしらの経験もしくは知識を持っているわけもないのだ。

さらに、真中淳平本人にいたっては、『夢』を見ていながらそこへ至る道を模索するのでもなく、ただ、好奇心と憧れを持って妄想しているだけで、そこへ向けて歩き出す以前に、それを示す指針となる知識すらない。どこにあるかも分からない目的地に向かって『いざ』というのが、そもそもの間違いなのだ。それを実行しているかに見える実在する冒険者たちも、経験と知識による裏付けなしに彼らの野望は達成はできはしない。かれらは野望に対して明確な『目的』意識もしくは『目標』をもっているわけで単に『夢想』しているわけではない、『追って』いるのだ。

もはや彼のは才能以前の問題かもしれない。


現在の真中淳平を知るうえで、こんなエピソードがしばしば見かけられる。



「皆さんは、将来どんな職業に就きたいですか?」


ごくごくありふれた、小学六年生の授業の一コマ。中学への進学が現実味を帯びるこの時期の生徒達は、未来への希望に瞳を輝かす。憧れの大人たちの姿を自分の将来の姿に重ね合わせて、あるものは大リーグでプレイする野球選手などのトップアスリートを想像し、あるものはやたら現実的にサラリーマンという。ただ、このころになると、なかなか大それたことを口にするのは恥ずかしくなってくるものだ。指名されると、どうしても無難なもしくは多数派の意見を上げる。しかしここで、真中淳平はやたら生真面目に「俺、映画監督になる!?」などと声を張り上げるものだから、生徒達のからかいの的になる羽目になる。

「なれるわけないだろ?」「こっども〜。」「まなかが〜?」などである。

「なんだと〜!? そんなのやってみないとわからないじゃないか!! 夢見ることの何が悪いんだよ!?」

ちなみに誰もそんなことは言っていない、というエピソード。


ようするにクラスで将来について語る際に、『夢』についてからかわれて激怒するというものだ。事実、この年の少年少女たちは、すくなからず未来に対して漠然とした願望なり憧れを抱いているし(実際にアンケートなどによると、野球選手や俳優などもそれなり票を集めていたりするのだ。)、その実現の可能性などは経験の乏しい彼/彼女には判断できない。彼らはただ、いきなり登場した熱血漢をからかってみただけなのだ。もちろんこの時期から真剣に将来について考えている者もいるだろう。そういう者達にとって、到達点とはこれからの彼らの生活や生き方を左右する重要なものであっておいそれと人に暴露していいものではない、だからなかには淳平の行為を彼らの目標を貶める行為として受け取り不快感を示したものもいるかもしれない。しかし淳平自身それに気づいていないわけではないのだ。ただ、『夢』に対して自分が五里霧中という状態に無意識に不安と焦りを覚えていて、それを刺激されて声を荒げてしまったのだ。


このときの彼に言うのは少し酷だが、真中淳平には自分の目的を達成する上で、決定的に足りないものがあった。


それは、


しっかりとした『芯』と『自分を律する心』である。


進路を語る以前に屋台骨すら危ういというなんともお粗末なものだ。自律心というのは思春期を経て徐々に固められていくものである。それまでは家族のサポートなどによって形を成しているものあり、小学六年生がいきなり大人のようなそれを持っていることは極めて稀で、真中淳平も多聞にもれずその点も未熟だった。


彼はこの時点であらゆる意味で子供だった。


それは、上に挙げたように悪い意味でもあるが、もちろん良い意味でもある。彼は、芯こそしっかりしていず定まってはいないものの、曲がり、捻くれているわけでは決してない。むしろ、幼いころより一途に好奇心や憧れの延長として夢を抱いていたため、素直で誰よりも純粋だった。確かに『能力』、『恋愛対象』といった観点からすれば明らかに彼は戦力外だが、彼の単純でひょうきんな『人となり』はクラスでも、おおむね好評で、友人達との交流も多く、男女とわず彼のことが話題に上ることは多々あったのだ。また、余談だが以前に『南戸唯』と親しかったことも彼の性格が悪くないことを示している。







                そんな彼『真中淳平』とともに、物語は幕を開ける。


[No.1056] 2005/04/15(Fri) 21:12:55
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